ミドリガメ(アカミミガメ)は、かつて縁日やペットショップで安価に販売され、日本で最も身近なカメとして親しまれてきました。しかし2023年6月1日、ついに「条件付特定外来生物」に指定され、新たに購入することはできなくなりました。
「今飼っているミドリガメはどうすればいいの?」「これからも飼い続けられるの?」そんな不安を感じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
結論から言えば、すでに飼育中の個体は届出不要でこれまで通り飼い続けることができます。ただし、野外への放流は絶対に禁止で、違反した場合には厳しい罰則が設けられています。
この記事では、アカミミガメ(ミドリガメ)の生態・飼育方法・法規制・健康管理・冬眠・在来種への影響まで、飼い主が知っておくべきすべての情報を網羅的にまとめています。すでに飼っている方も、これから責任を持って付き合っていくために、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事でわかること
- アカミミガメ(ミドリガメ)の基本的な生態と特徴
- 条件付特定外来生物の規制内容と罰則の詳細
- 適切な飼育環境(水槽・紫外線ライト・バスキングスポット)の整え方
- 水質管理のポイントと水換えの頻度
- 餌の種類・与え方・カルシウム補給の方法
- 甲羅の病気やビタミンA欠乏症などの健康管理
- 冬眠させる場合・させない場合の越冬方法
- アカミミガメが在来種に与える影響と私たちの責任
- 飼育に関するよくある質問(FAQ)10問以上
アカミミガメ(ミドリガメ)の基本情報
まずはアカミミガメの基本的なプロフィールを押さえておきましょう。「ミドリガメ」という愛称で親しまれていますが、正式な和名はミシシッピアカミミガメです。耳の後ろ(鼓膜の位置)にある鮮やかな赤い斑紋が最大の特徴で、この赤い模様が「アカミミ」という名前の由来になっています。
分類・学名・原産地
アカミミガメは爬虫綱カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属に分類されるカメです。日本で「ミドリガメ」として流通しているのは、そのうちの亜種ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)です。
原産地はアメリカ合衆国南部からメキシコ北東部にかけての地域で、ミシシッピ川流域を中心に広く分布しています。流れの緩やかな河川、池、沼地、湿地帯などの淡水域に生息し、日光浴ができる場所(倒木や岩など)がある環境を好みます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 和名 | ミシシッピアカミミガメ |
| 学名 | Trachemys scripta elegans |
| 英名 | Red-eared slider |
| 分類 | 爬虫綱カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属 |
| 原産地 | 北アメリカ南部(米国ミシシッピ川流域〜メキシコ北東部) |
| 最大甲長 | オス:約20cm / メス:約28cm |
| 体重 | 最大約2kg |
| 寿命 | 飼育下で約25〜40年 |
| 食性 | 雑食(幼体は動物食寄り、成体は植物食の割合が増加) |
| 法的地位 | 条件付特定外来生物(2023年6月1日〜) |
体の特徴・大きさ
幼体(ベビー)のときは甲長わずか3cm程度で、鮮やかな緑色の甲羅を持つことから「ミドリガメ」と呼ばれます。しかし成長するにつれて体色は暗褐色〜オリーブグリーンへと変化し、成体になると甲羅の緑色はほとんど失われます。
成体のサイズはオスとメスで大きく異なります。オスは甲長10〜20cm程度、メスは15〜28cm程度にまで成長します。メスの方が一回り大きくなるのが特徴です。また、オスは前脚の爪が非常に長く伸びるのも見分けポイントの一つです。
寿命は飼育環境によって大きく左右されますが、適切に管理された飼育下では25〜40年と非常に長寿です。「子どもの頃に飼い始めたミドリガメが、大人になっても元気に生きている」というケースは珍しくありません。
性格・行動パターン
アカミミガメは好奇心旺盛で活動的な性格です。人に慣れやすく、飼い主が近づくと餌をねだるように寄ってくる個体も多くいます。ただし、持ち上げたり触ったりすると噛みつくこともあるため、取り扱いには注意が必要です。特に成体は顎の力が強いので、不用意に指を近づけないようにしましょう。
日中は活発に動き回り、陸地に上がって日光浴(バスキング)をする姿がよく見られます。日光浴は体温調節や甲羅の健康維持に不可欠な行動です。水中では泳ぎが得意で、餌を探して潜ったり、底砂を掘ったりする様子も観察できます。
繁殖期になるとオスはメスの前で前脚の長い爪を震わせるユニークな求愛行動を行います。この行動は飼育下でも観察することができ、カメの興味深い生態の一つです。
条件付特定外来生物としての規制内容
2023年6月1日から、アカミミガメ(ミドリガメ)は「条件付特定外来生物」に指定されました。これは外来生物法に基づく規制で、従来の特定外来生物とは異なる「条件付き」の枠組みが新たに設けられたものです。
ここでは飼い主として絶対に知っておくべき法律の内容を詳しく解説します。
最重要ポイント
すでにペットとして飼育している場合は、届出・申請・許可なしでそのまま飼い続けることができます。ただし、野外への放流、販売、譲渡(無償を含む)、購入は禁止されています。
規制の概要と背景
アカミミガメは日本国内に推定約800万匹が生息するとされ、あまりにも広く飼育されているため、通常の「特定外来生物」に指定すると飼育自体が原則禁止となり、大量の遺棄(野外への放流)が発生する恐れがありました。
このため、飼育は引き続き認めつつ、販売や放流などを禁止する「条件付特定外来生物」という新しいカテゴリーが作られたのです。目的は、これ以上の野外個体数の増加を防ぎ、在来の生態系への被害を食い止めることです。
2023年6月1日の前と後で何が変わったのか
条件付特定外来生物の指定により、アカミミガメを取り巻く法律上のルールは大きく変わりました。指定前と指定後の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 2023年5月31日以前 | 2023年6月1日以降 |
|---|---|---|
| 購入 | ペットショップ・ホームセンターなどで自由に購入可能 | 購入禁止(違反で懲役または罰金) |
| 販売 | 自由に販売可能 | 販売禁止(違反で懲役または罰金) |
| 譲渡 | 友人や知人への譲渡は自由 | 無償であっても譲渡禁止 |
| 飼育の継続 | 制限なし | 指定前から飼育している個体は届出不要で継続可能 |
| 野外への放出 | 法的な罰則規定は弱かった | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 輸入 | 大量輸入が行われていた | 輸入禁止 |
つまり、指定前にすでに飼育していた個体については何の届出も必要なく、これまで通りの飼育を続けて問題ありません。一方で、新たに入手する手段はすべて絶たれたことになります。なお、業として飼育・保管を行う事業者(ペットショップ、動物園、研究機関など)については、環境省への届出が別途必要となるケースがあります。事業者に該当するかどうか不明な場合は、最寄りの地方環境事務所に問い合わせることをおすすめします。
飼い主に認められていること
条件付特定外来生物に指定された後も、一般の飼い主には以下の行為が認められています。
- 飼育の継続:すでに飼っている個体は、届出や許可なしでこれまで通り飼い続けられます
- 飼育設備の改善:水槽の買い替えや飼育環境のグレードアップは自由に行えます
- 獣医への受診:病気やケガの治療のために動物病院へ連れて行くことは問題ありません
- 終生飼育:最後まで責任を持って飼い続けることが求められます
禁止されていること・罰則
一方で、以下の行為は法律で厳しく禁止されており、違反した場合には重い罰則が科されます。
| 禁止行為 | 内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 野外への放出 | 池・川・公園などへの放流、逃がす行為 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 販売・頒布 | 有償・無償を問わず他人に渡す行為 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 購入・譲受 | 新たに入手する行為(もらうことも含む) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 輸入 | 海外から持ち込む行為 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 逸走(脱走させる) | 適切な管理を怠り逃がしてしまう行為 | 違法となる場合あり |
※法人の場合は最大1億円以下の罰金が科される可能性があります。
飼い続けられなくなった場合の対処法
長寿なカメを最後まで飼い続けることが理想ですが、引っ越しや高齢化などでどうしても飼育が難しくなる場合もあります。その場合は以下の方法を検討してください。
- 自治体への相談:環境省や各自治体の環境課に相談すると、引き取り先の情報を教えてもらえることがあります
- 動物園・水族館への相談:受け入れ可能な施設がある場合もあります
- NPO・カメの保護団体:引き取りを行っている団体も存在します
「無償でも他人に譲渡することは原則禁止」ですので、SNSなどで里親を探す行為も法律違反となる可能性がある点に注意してください。必ず自治体に相談するようにしましょう。
飼育環境の整え方
アカミミガメを健康に長く飼育するためには、適切な飼育環境の整備が不可欠です。幼体のときは30cmの小さなプラケースでも飼育可能ですが、成長に合わせて大きな水槽へと移行する必要があります。
水槽のサイズ選び
アカミミガメの水槽サイズは、カメの成長に合わせて段階的に大きくしていくのが理想です。
- 幼体(甲長5cm以下):45cm水槽またはプラスチックケースでも可
- 若齢個体(甲長5〜15cm):60cm水槽(約60リットル)
- 成体(甲長15cm以上):90cm水槽以上を強く推奨(約150リットル以上)
- 大型メス(甲長25cm以上):120cm水槽、衣装ケース、またはトロ舟が現実的
カメは魚と比べて水を汚しやすいため、余裕を持ったサイズの水槽を選ぶことが水質管理のしやすさにもつながります。コスト面では、大型のプラスチック製衣装ケースやセメントを混ぜるためのトロ舟(プラ舟)も実用的な選択肢です。
紫外線ライト(UVBライト)
アカミミガメの飼育において、紫外線ライトは絶対に欠かせない設備です。紫外線B波(UVB)はカメの体内でビタミンD3を合成するために必要で、ビタミンD3がなければカルシウムを正常に吸収できません。カルシウム不足は代謝性骨疾患(MBD)や甲羅の軟化・変形を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
屋外で飼育している場合は太陽光から十分な紫外線を得られますが、室内飼育では爬虫類用のUVBライトの設置が必須となります。アカミミガメに適したUVBライトはUVB出力5.0%〜10.0%のタイプです。ライトの設置距離は製品によって異なりますが、バスキングスポットから20〜30cmの距離に設置するのが一般的です。ガラスやプラスチックの蓋を通すとUVBが大幅にカットされてしまうため、ライトとカメの間に遮蔽物がない状態で設置してください。
ライトは6〜12ヶ月ごとに交換が必要です。紫外線の出力は使用とともに低下するため、見た目は点灯していても実際のUVB量は不足している場合があります。UVBメーター(ソラメーターなど)があれば劣化を数値で確認できますが、持っていない場合は半年〜1年を目安に定期交換するのが安全です。
バスキングスポット(陸場)
バスキングスポットとは、カメが水から上がって体を乾かし、日光浴をするための陸地のことです。アカミミガメは半水棲のカメであり、水場と陸場の両方が必要です。
バスキングスポットの要件は以下の通りです。
- カメの全身が完全に水から出られる広さがあること
- カメの体重を支えられる強度があること
- 水面からスムーズに上がれるスロープがあること
- バスキングライトで表面温度を30〜35℃に保てること
市販の浮島や、レンガ・石を組み合わせた自作の陸地が利用できます。大きなカメの場合は、水槽の一端に園芸用の人工芝を敷いた棚を設置するのも効果的です。
バスキングライト(保温ライト)
UVBライトとは別に、バスキングスポットを温めるためのバスキングライト(保温球)が必要です。カメは変温動物であるため、体温を上げて消化や免疫機能を活性化させるために、温かい場所で「バスキング」する必要があります。
バスキングスポットの表面温度は32〜35℃を目安に設定しましょう。一方、水温は24〜28℃に保つことで、陸場と水中の間に約5〜10℃の温度勾配(グラデーション)が生まれます。このグラデーションがあることで、カメは自分の体調に合わせて暖かい場所と涼しい場所を行き来し、体温を自律的に調節できます。バスキングライトのワット数は水槽のサイズと陸場までの距離によって異なりますが、50W〜75Wが一般的です。必ず温度計で実際の表面温度を測定し、35℃を大きく超えないよう調整してください。
ヒーターと温度管理
アカミミガメの適正水温は24〜28℃です。日本の冬季は室内でも水温が下がるため、冬眠させない場合は水槽用ヒーターの設置が必要になります。
サーモスタット付きの水槽用ヒーターを使用し、カメがヒーターに直接触れてやけどしないよう、ヒーターカバーを必ず取り付けてください。カメは力が強いので、吸盤式のヒーターは外されてしまうことがあります。しっかりと固定できるタイプを選びましょう。
飼育に必要な設備一覧
| 設備 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 水槽(90cm以上推奨) | 必須 | 成体はトロ舟・衣装ケースも可 |
| UVBライト | 必須 | 6〜12ヶ月で交換。屋外飼育なら不要 |
| バスキングライト | 必須 | 陸場の温度を30〜35℃に |
| バスキングスポット(陸場) | 必須 | 全身が乗れる大きさ |
| 水槽用ヒーター | 冬季必須 | サーモスタット付き・カバー付き推奨 |
| フィルター(濾過装置) | 強く推奨 | 上部式または外部式が適切 |
| 水温計 | 必須 | 水温管理の基本 |
| カルキ抜き | 推奨 | 水道水の塩素を除去 |
| 水質テスト | 推奨 | アンモニア・亜硝酸をチェック |
水質管理と水換え
アカミミガメの飼育で最も手間がかかり、かつ最も重要なのが水質管理です。カメは魚と比べて排泄量が圧倒的に多く、食べ残した餌も水を急速に汚す原因になります。水質の悪化は皮膚病や甲羅の病気、内臓疾患など、さまざまな健康問題に直結します。
適正な水質パラメータ
カメの飼育水は以下のパラメータを維持するように管理しましょう。
| パラメータ | 適正値 | 注意点 |
|---|---|---|
| 水温 | 24〜28℃ | 冬場はヒーターで維持 |
| pH | 6.5〜8.0 | 中性付近が理想 |
| アンモニア | 0ppm | 検出されたら即水換え |
| 亜硝酸 | 0ppm | 検出されたら即水換え |
| 硝酸塩 | 40ppm以下 | 定期的な水換えで管理 |
| 塩素 | 0ppm | カルキ抜きで除去 |
水換えの頻度と方法
水換えの頻度はフィルターの有無やカメのサイズ、水量によって異なりますが、目安は以下の通りです。
- フィルターなし:毎日〜2日に1回の全換水
- フィルターあり:週に1〜2回、水量の1/2〜1/3を換水
フィルターを使用している場合は、濾過バクテリアを維持するために全量を一度に換えるのではなく、部分換水を行うのがポイントです。また、フィルター掃除と水換えは同時に行わず、1〜2週間ずらして行うことでバクテリアへのダメージを最小限に抑えられます。
換水時は、水道水に含まれる塩素(カルキ)がカメの皮膚や目にダメージを与えることがあるため、カルキ抜き剤を使用するか、汲み置き水(24時間以上放置した水道水)を使用してください。
フィルターの選び方
カメの飼育に使用するフィルターは、魚の飼育よりも強力なものが必要です。カメは排泄量が非常に多いため、水槽サイズに対してワンランク上のフィルターを選ぶのがセオリーです。
- 上部式フィルター:60〜90cm水槽向け。メンテナンスがしやすく、カメ飼育の定番
- 外部式フィルター:90cm以上の大型水槽向け。濾過能力が高いが、メンテナンスはやや手間
- 投げ込み式フィルター:サブフィルターとして併用。単体ではカメの水量には不足
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餌の種類と与え方
アカミミガメは雑食性のカメです。幼体のときは動物性タンパク質を多く必要としますが、成長するにつれて植物性の餌の割合が増えていきます。栄養バランスの取れた食事を与えることが、健康で長生きするカメを育てる秘訣です。
主食:カメ用配合飼料(ペレット)
飼育の主食としては、市販のカメ用配合飼料(ペレットフード)が最も手軽で栄養バランスに優れています。カメに必要なタンパク質、ビタミン、ミネラル、カルシウムが適切に配合されており、これだけで基本的な栄養は賄えます。
代表的な製品としては、テトラ レプトミン、キョーリン カメプロス、ジェックス カメ元気などがあります。複数のメーカーの製品をローテーションで与えるのもおすすめです。
副食:野菜・果物
成体のアカミミガメには、配合飼料に加えて新鮮な野菜を定期的に与えましょう。野菜は食物繊維やビタミンの補給に役立ちます。
与えてよい野菜:
- 小松菜(カルシウムが豊富でおすすめ)
- チンゲン菜
- 水菜
- レタス(栄養価は低いがカメが好む)
- にんじん(薄くスライスして)
- かぼちゃ(茹でて小さくカット)
与えてはいけない野菜:
- 玉ねぎ・ネギ類(中毒を起こす危険あり)
- ほうれん草(シュウ酸がカルシウムの吸収を阻害)
- アボカド(毒性がある)
- キャベツ・ブロッコリー(少量なら問題ないが、甲状腺機能に影響する成分を含むため大量には与えない)
果物について:
果物はおやつとして少量を与える分には問題ありませんが、糖分が多いため与えすぎに注意してください。適量を月に1〜2回程度がおすすめです。
- いちご(小さくカットして少量)
- バナナ(薄くスライスして1〜2切れ)
- りんご(皮をむいて小さくカット)
- メロン・スイカ(水分補給にもなるが糖分に注意)
なお、柑橘類(みかん・レモンなど)は酸が強いため避けてください。
おやつ・補助食
以下の食材は、おやつや栄養補助として適量を与えると効果的です。
- 乾燥エビ(乾燥川エビ):カルシウムが豊富で嗜好性も高い
- メダカ・金魚などの生き餌:自然に近い食行動を促進(給餌頻度は控えめに)
- 乾燥イトミミズ:幼体に特に好まれる
- 鶏ささみ・ゆで卵の白身:タンパク質補給に(少量のみ)
- カットルボーン(イカの甲):水槽に入れておくとカメが自分で齧ってカルシウムを摂取
カルシウム補給の重要性
アカミミガメにとってカルシウムは甲羅と骨格の形成・維持に欠かせない栄養素です。カルシウムが不足すると、甲羅が柔らかくなったり変形したりする「代謝性骨疾患(MBD)」を発症するリスクがあります。
カルシウム補給の方法としては以下が有効です。
- カルシウムを強化した配合飼料を主食にする
- 小松菜などカルシウム豊富な野菜を定期的に与える
- 乾燥エビやカットルボーンをおやつとして与える
- 爬虫類用のカルシウムパウダーを餌にまぶす(週に2〜3回、ペレットや野菜に振りかけて与える)
- UVBライトでビタミンD3の体内合成を促進する(カルシウムの吸収に不可欠)
カルシウムパウダーには「ビタミンD3入り」と「D3なし」の2種類があります。UVBライトを正しく設置している場合はD3なしのカルシウムパウダーで十分ですが、UVB環境に不安がある場合はD3入りを選ぶと安心です。ただし、ビタミンD3の過剰摂取は内臓にダメージを与えるため、D3入りの場合は週1回程度に留めましょう。
餌の量と頻度
餌の量の目安は「カメの頭の大きさ」程度です。これを基準にした給餌頻度は以下の通りです。
- 幼体(1歳未満):毎日1回、頭の大きさ程度の量
- 若齢個体(1〜3歳):毎日〜2日に1回
- 成体(3歳以上):2〜3日に1回
過度な給餌は肥満や水質悪化の原因になります。カメが5分以内に食べきれる量を目安にし、食べ残しがあればすぐに取り除きましょう。
健康管理とかかりやすい病気
アカミミガメは比較的丈夫なカメですが、飼育環境の不備や栄養不足が続くとさまざまな病気を発症します。日頃から健康チェックを行い、異常があれば早めに爬虫類を診てくれる動物病院に相談しましょう。
甲羅の病気(シェルロット)
シェルロットとは、甲羅が細菌や真菌に感染して腐敗する病気です。水質が悪い環境で長期間飼育されているカメに多く見られます。
症状:
- 甲羅の一部が白くなる、変色する
- 甲羅が柔らかくなる部分がある
- 甲羅から異臭がする
- 甲羅の表面がぼろぼろと剥がれる
原因と予防:
- 水質の悪化(こまめな水換えで予防)
- 日光浴不足(UVBライトとバスキングスポットの確保)
- 外傷からの二次感染(水槽内の尖った装飾物に注意)
軽度のシェルロットは、患部をイソジン(ポビドンヨード)で消毒し、しっかり乾燥させることで改善する場合がありますが、重度の場合は必ず獣医師の診察を受けてください。
ビタミンA欠乏症(ハーダー氏腺炎)
ビタミンA欠乏症は、偏った食事を続けた場合に発症しやすい病気です。特に乾燥エビばかりを与えている場合にリスクが高まります。
症状:
- まぶたが腫れて目が開けられなくなる(ハーダー氏腺炎)
- 鼻水が出る
- 食欲がなくなる
- 皮膚が荒れる
予防と対策:
- 栄養バランスの取れた配合飼料を主食にする
- ビタミンAを含む野菜(にんじん、かぼちゃ、小松菜など)を定期的に与える
- 重症の場合は獣医師によるビタミンA注射が必要
代謝性骨疾患(MBD)
カルシウム不足やビタミンD3不足、紫外線不足が原因で発症する骨と甲羅の病気です。
症状:
- 甲羅が柔らかくなる
- 甲羅が変形する(ボコボコになる)
- 四肢が曲がる
- 活動量が低下する
予防:
- UVBライトを正しく設置する
- カルシウムを十分に含む食事を与える
- 適切な日光浴の機会を確保する
水カビ病(真菌感染症)
水質の悪い環境で飼育されているカメの皮膚や甲羅に白い綿のようなカビが付着する病気です。
症状:
- 皮膚や甲羅に白いフワフワした付着物
- 皮膚が白くふやける
対策:
- 水質を改善する(水換え頻度を増やす)
- バスキングの時間を増やして体を乾燥させる
- 患部をイソジンで消毒する
- 改善しない場合は獣医師に相談
肺炎(呼吸器感染症)
水温の急激な変化や低水温での長期飼育が原因で発症することがあります。
症状:
- 口を開けて呼吸する(開口呼吸)
- 鼻から泡や鼻水が出る
- 水中で体が傾く(肺に炎症がある側が浮く)
- 食欲低下
肺炎は重篤な病気であり、自宅での治療は困難です。上記の症状が見られたら、すぐに爬虫類を診察できる動物病院を受診してください。
日常の健康チェックポイント
毎日の餌やりや水換えのタイミングで、以下の項目をチェックする習慣をつけましょう。
- 甲羅:柔らかい部分はないか、変色していないか、異臭はないか
- 目:腫れていないか、白い膜がかかっていないか
- 鼻:鼻水や泡が出ていないか
- 皮膚:白いカビ状の付着物はないか、傷はないか
- 行動:食欲はあるか、活発に動いているか、バスキングしているか
- 泳ぎ方:体が傾いていないか、水底に沈んだままではないか
冬眠について
アカミミガメは変温動物であり、野生下では気温が低下する冬季に冬眠します。飼育下でも冬眠させることは可能ですが、リスクを伴う行為であり、経験のない飼い主には冬眠させずにヒーターで加温して越冬させる方法をおすすめします。
冬眠させる場合の手順
冬眠を選択する場合は、以下の手順を守ってください。
1. 冬眠前の準備(10月頃から)
- 夏〜秋にかけて十分に餌を与え、体力をつけさせる
- 水温が20℃を下回り始めたら徐々に餌の量を減らす
- 水温が15℃を下回ったら完全に給餌を中止する(消化管内に餌が残った状態で冬眠すると、未消化の餌が体内で腐敗し死に至ることがある)
- 給餌中止後2〜3週間で消化管が空になるのを待つ
2. 冬眠環境の準備
- 冬眠用の容器に深さ20cm以上の水を張る
- 水底に落ち葉や水苔などの隠れ場所を用意する
- 水温が5〜10℃を安定して維持できる場所に設置する(0℃以下は死亡のリスク)
- 屋外の場合は、日当たりが良すぎない場所を選ぶ(気温の急上昇を避ける)
3. 冬眠中の管理
- 水が減ったら足し水する(乾燥は厳禁)
- 水温が0℃以下にならないよう注意する
- カメを不用意に動かしたり起こしたりしない
- 定期的に生存確認を行う(完全に動かない状態が正常)
4. 冬眠明け(3月〜4月頃)
- 水温が15℃を超え始めるとカメが自然に目覚める
- 目覚めてから数日〜1週間は餌を与えず、体を慣らす
- 少量の餌から徐々に通常量に戻す
冬眠させない場合(加温越冬)
冬眠にはリスクが伴うため、特に以下のケースでは冬眠させずにヒーターで水温を維持して越冬させることをおすすめします。
- 幼体や若齢個体(体力が不十分)
- 体調が優れない個体、痩せている個体
- 冬眠経験のない飼い主
- 室内飼育で温度管理が不安定な環境
加温越冬の場合は、水槽用ヒーターで水温を24〜28℃に維持し、通常通りの餌やりとライトの点灯を続けます。冬場も夏場と同様のサイクルで飼育できるため、管理が楽で安全です。
室内冬眠と屋外冬眠の違い
冬眠させる場合、室内と屋外ではそれぞれメリットとデメリットがあります。
| 項目 | 室内冬眠 | 屋外冬眠 |
|---|---|---|
| 温度管理 | エアコンのない部屋で5〜10℃を維持 | 自然の気温に依存 |
| メリット | 温度の急変を防ぎやすい | 自然に近い環境で冬眠できる |
| デメリット | 暖房の影響で温度が上がりすぎるリスク | 凍結や急な寒波のリスク |
| 向いている地域 | 関東以北など冬が厳しい地域 | 関西以南で極端な冷え込みが少ない地域 |
| 注意点 | 暖房を使う部屋には絶対に置かない | 水面が凍結しないよう水深を十分に確保する |
冬眠の温度推移タイムライン
冬眠のプロセスは急に始めるものではなく、秋から徐々に温度を下げていく「助走期間」が重要です。以下に月ごとの目安をまとめました。
- 9月:通常飼育。食欲が旺盛な時期なので、しっかり餌を与えて体力を蓄えさせる
- 10月:水温が20℃前後に下がり始める。餌の量を少しずつ減らし始める
- 11月前半:水温15〜18℃。餌の量をさらに減らし、週1回程度に
- 11月後半:水温が15℃を下回ったら完全に給餌を中止。ここから2〜3週間で消化管を空にする
- 12月〜2月:水温5〜10℃で冬眠本番。動きがほとんどなくなるのが正常
- 3月:水温が10℃を超え始めると徐々に活動を再開。15℃を超えたら少量の餌を与え始める
- 4月:水温が20℃前後に戻ったら通常の飼育サイクルに復帰
在来種への影響と私たちの責任
アカミミガメが「条件付特定外来生物」に指定された最大の理由は、日本の在来生態系に深刻な影響を与えているためです。飼い主として、なぜこの規制が設けられたのかを理解しておくことは非常に重要です。
日本における分布の現状
アカミミガメは1950年代からペット用として大量に輸入され、その後、飼育放棄や脱走によって全国各地の河川・池・湖沼に定着しました。現在では北海道から沖縄まで、日本全国に推定約800万匹が野外に生息しているとされています。
環境省は2015年に「生態系被害防止外来種リスト」においてアカミミガメを「緊急対策外来種」に位置づけ、その後2023年の条件付特定外来生物指定へとつながりました。
ニホンイシガメへの影響
アカミミガメの増加によって最も大きな被害を受けているのが、日本固有種のニホンイシガメ(Mauremys japonica)です。ニホンイシガメは以下の理由からアカミミガメとの競合に不利な立場にあります。
- 体サイズの差:アカミミガメの方が大型になるため、餌や日光浴場所の競争で優位に立つ
- 繁殖力の差:アカミミガメは1回の産卵で2〜25個の卵を産み、繁殖力が高い
- 環境適応力の差:アカミミガメは幅広い環境に適応でき、ニホンイシガメよりも生息域を拡大しやすい
- 攻撃性:アカミミガメはニホンイシガメに対して攻撃的に振る舞うことがある
各地でニホンイシガメの生息数が減少しており、その主な原因の一つとしてアカミミガメとの競合が指摘されています。さらに深刻な問題として、アカミミガメがニホンイシガメにサルモネラ菌などの病原体を媒介する可能性も研究者から指摘されています。ニホンイシガメは環境省のレッドリストで準絶滅危惧種(NT)に分類されており、保全が急務となっています。
クサガメへの影響
日本の池や川でよく見かけるクサガメ(Mauremys reevesii)もアカミミガメの影響を受けています。クサガメはニホンイシガメよりも環境適応力が高いものの、アカミミガメとの間で日光浴場所(バスキングサイト)の奪い合いが確認されています。日光浴場所はカメにとって体温調節や甲羅の健康維持に不可欠な資源であり、この競合によってクサガメの個体群にもストレスがかかっています。
また、クサガメとニホンイシガメの間では交雑(ハイブリッド個体の出現)が問題になっていますが、アカミミガメの勢力拡大が在来カメ全体の生息密度を低下させることで、この問題をさらに複雑化させているという指摘もあります。
その他の生態系への影響
アカミミガメの影響はカメ類だけにとどまりません。雑食性で食欲旺盛なアカミミガメは、水辺の生態系全体に広範な被害を及ぼしています。
- 水草の食害:成体は植物食の割合が高く、在来の水草を大量に食べることで水中の植生を破壊する。水草が失われると、魚やエビの隠れ場所や産卵場所も同時に失われる
- 両生類への影響:カエルの卵やオタマジャクシを捕食し、両生類の繁殖成功率を低下させる
- 魚類への影響:小魚や魚の卵を捕食する。特に浅瀬で産卵する在来魚にとって脅威となる
- 蓮(ハス)の食害:蓮の若芽や花茎を食べてしまい、全国各地の蓮池で深刻な景観被害が報告されている。奈良の寺院の蓮池や各地の公園で、ハスが壊滅的な被害を受けた事例がある
- 水生昆虫への影響:ヤゴ(トンボの幼虫)やゲンゴロウなどの水生昆虫も捕食対象となっている
飼い主としてできること
私たちアカミミガメの飼い主が今すぐできることは、以下の通りです。
- 終生飼育の徹底:最後まで責任を持って飼い続ける
- 脱走防止の徹底:水槽のフタや庭の柵を点検し、脱走できない環境を整える
- 絶対に放流しない:どんな理由があっても、野外に放してはいけない
- 正しい知識を広める:周囲の人にもアカミミガメの問題について伝える
よくある質問(FAQ)
Q, ミドリガメ(アカミミガメ)は今からでも飼えますか?
A, 2023年6月1日以降、新たに購入・譲受することは法律で禁止されています。すでに飼育している個体のみ、届出不要でそのまま飼い続けることができます。
Q, 飼っているミドリガメを友人にあげることはできますか?
A, 無償であっても他人への譲渡(頒布)は原則禁止です。違反すると罰則の対象となります。どうしても飼えなくなった場合は自治体の環境課に相談してください。
Q, ミドリガメの飼育に届出は必要ですか?
A, 一般家庭でペットとして飼育する場合、届出・申請・許可は一切不要です。これまで通り飼い続けて問題ありません。
Q, アカミミガメが脱走してしまったらどうなりますか?
A, 適切な管理を怠って脱走させた場合、法律違反となる可能性があります。脱走した場合はすぐに捜索し、見つからない場合は自治体に連絡してください。脱走防止のため、水槽のフタの設置や屋外飼育場の柵の点検を徹底しましょう。
Q, アカミミガメの水槽はどのくらいの大きさが必要ですか?
A, 成体の場合、最低でも90cm以上の水槽を推奨します。大型のメスは甲長28cmにもなるため、120cm水槽やトロ舟の使用が理想的です。
Q, 紫外線ライトなしで飼育できますか?
A, 屋外で十分な日光浴ができる環境であればライトは不要ですが、室内飼育の場合はUVBライトが必須です。紫外線がないとビタミンD3を合成できず、カルシウムの吸収障害や代謝性骨疾患(MBD)を発症するリスクがあります。
Q, ミドリガメの水換えはどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A, フィルターなしの場合は毎日〜2日に1回の全換水、フィルターありの場合は週1〜2回の部分換水(水量の1/3〜1/2)が目安です。カメのサイズや水量によって調整してください。
Q, 冬眠させた方がよいですか?
A, 冬眠は必須ではありません。冬眠にはリスクが伴うため、特に初めての方や幼体の飼育では、ヒーターで水温を24〜28℃に維持して冬眠させずに越冬させることをおすすめします。
Q, ミドリガメはどのくらい生きますか?
A, 適切な飼育環境であれば、25〜40年と非常に長寿です。「子どもの頃に飼い始めたカメが、大人になっても元気」というケースは珍しくありません。終生飼育の覚悟を持って飼い始めることが大切です。
Q, ミドリガメの目が腫れて開かないのですが、どうすればよいですか?
A, ビタミンA欠乏症(ハーダー氏腺炎)の可能性があります。配合飼料を主食にし、にんじんや小松菜などビタミンAを含む食材を与えてください。改善しない場合は爬虫類を診察できる動物病院を受診しましょう。
Q, アカミミガメとニホンイシガメは一緒に飼えますか?
A, 混泳は推奨しません。アカミミガメはニホンイシガメよりも体が大きく攻撃的になることがあり、餌や日光浴場所の競合も起きます。それぞれ別の水槽で飼育してください。
Q, ミドリガメの甲羅が白くなってきたのですが、病気ですか?
A, 甲羅の脱皮(正常な現象)の可能性もありますが、白くフワフワしたものが付着している場合は水カビ病、甲羅の一部が変色して異臭がする場合はシェルロット(甲羅の腐敗)の可能性があります。水質を改善し、バスキングの時間を増やしても改善しない場合は獣医師に相談してください。
まとめ
アカミミガメ(ミドリガメ)は、2023年6月1日から条件付特定外来生物に指定されましたが、すでに飼育中の個体は届出不要でこれまで通り飼い続けることができます。大切なのは、法律を正しく理解し、最後まで責任を持って飼育することです。
この記事のポイントを改めて整理します。
- 法規制:新たな入手は禁止。既に飼育中の個体は届出なしで飼育継続OK。野外放流・販売・譲渡は厳禁(違反で3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
- 飼育環境:90cm以上の水槽、UVBライト、バスキングスポット、ヒーター(冬季)が必須
- 水質管理:こまめな水換えと強力なフィルターで清潔な水を維持する
- 餌:配合飼料を主食に、野菜やカルシウム源をバランスよく与える
- 健康管理:甲羅・目・皮膚を毎日チェックし、異常があれば早めに受診
- 冬眠:初心者はヒーターで加温越冬がおすすめ。冬眠させる場合は厳密な温度管理が必要
- 在来種への配慮:脱走防止を徹底し、終生飼育を貫く
アカミミガメは適切に飼育すれば25〜40年も生きる、とても長寿な動物です。その長い付き合いの中で、飼い主もカメも幸せに暮らしていくために、正しい知識と適切な飼育環境を整えていきましょう。
※この記事の情報は2026年3月時点のものです。条件付特定外来生物に関する最新の規制内容は、環境省の公式ページでご確認ください。






