「クサガメって臭いってホント?」「飼い始めたけど冬眠させるべき?」――クサガメを飼い始めた方から、こんな疑問をよく受けます。
クサガメは、日本の池や川で昔から親しまれてきたカメです。子どもの頃に捕まえた経験がある方も多いのではないでしょうか。丈夫で飼いやすく、うまく飼えば30〜50年も一緒に過ごせる長寿のパートナーになってくれます。
でも、飼い始めると「臭い」「冬眠どうする?」「水替えが大変」など、想像以上に奥が深くて戸惑う方も少なくありません。
この記事では、クサガメの基本的な生態から、飼育環境の作り方、臭い対策、冬眠の管理方法、繁殖まで、飼育に必要なすべての情報を網羅的にお伝えします。初心者の方でもこれ一記事読めば、クサガメを健康に長く飼い続けることができるはずです。
- この記事でわかること
- クサガメの基本情報
- ニホンイシガメ・アカミミガメとの比較
- 飼育環境の作り方
- 屋外飼育 vs 室内飼育
- 水質・温度管理
- 餌の与え方
- 臭いの対策
- 冬眠のさせ方と注意点
- 繁殖・産卵管理
- かかりやすい病気と対処法
- この記事に関連するおすすめ商品
- よくある質問(FAQ)
- クサガメを長寿に育てるための飼育のコツ
- まとめ
- この記事でわかること
- クサガメの基本情報
- ニホンイシガメ・アカミミガメとの比較
- 飼育環境の作り方
- 屋外飼育 vs 室内飼育
- 水質・温度管理
- 餌の与え方
- 臭いの対策
- 冬眠のさせ方と注意点
- 繁殖・産卵管理
- かかりやすい病気と対処法
- この記事に関連するおすすめ商品
- よくある質問(FAQ)
- クサガメを長寿に育てるための飼育のコツ
- まとめ
この記事でわかること
- クサガメの生態・分類・ニホンイシガメやアカミミガメとの違い
- 室内飼育・屋外飼育それぞれの設備の作り方
- UVBライト・バスキングライト・フィルターの選び方
- 水質・水温・陸地温度の適正管理方法
- 配合飼料・野菜・生き餌のバランスある与え方
- 臭いの原因(臭腺とは)と実践的な臭い対策
- 冬眠のさせ方・冬眠させない場合の注意点
- 繁殖・産卵の準備と孵化管理
- かかりやすい病気(肺炎・ビタミンA欠乏・甲羅の病気)と対処法
- よくある疑問10問への回答
クサガメの基本情報
分類と学名
クサガメは、爬虫類の中でも比較的飼いやすいカメとして知られています。分類上はカメ目イシガメ科に属し、学名は Mauremys reevesii(モーレミス・リーベシイ)です。英語では「Reeves’ Turtle(リーブスカメ)」と呼ばれています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Mauremys reevesii |
| 分類 | 爬虫綱 カメ目 イシガメ科 クサガメ属 |
| 英名 | Reeves’ Turtle |
| 分布 | 日本・中国・朝鮮半島・台湾 |
| 甲長 | オス:10〜15cm、メス:20〜30cm |
| 寿命 | 30〜50年(飼育下) |
| 食性 | 雑食性(動物性・植物性どちらも食べる) |
| 特徴的な行動 | 危険を感じると臭腺から臭いを放つ |
体の特徴と見た目
クサガメの背甲(甲羅の上側)は黒褐色〜暗緑色で、3本の縦方向の隆起(キール)があります。これがクサガメを他のカメと区別する大きな特徴のひとつです。
成体では全体的に黒みを帯びてくる個体が多く、特にオスは成熟すると全身が真っ黒になる「メラニズム」(黒化)が進むことがあります。頭部と首には黄色〜オレンジ色の縞模様があり、若い個体ほど鮮やかです。
腹甲(お腹の甲羅)は黒い斑点が入るのが特徴で、ニホンイシガメとの大きな違いのひとつです。
「クサガメ」という名前の由来
クサガメという名前の由来は、その「臭い(くさい)」から来ています。危険を感じたとき、後ろ足の付け根にある「臭腺(しゅうせん)」から強烈な臭いを放つことがあります。慣れた個体では臭いを出さなくなることが多いですが、捕まえたばかりのクサガメや警戒している個体は臭いを出しやすいです。
日本ではかつて「ゼニガメ」と呼ばれてペットショップで売られていたこともありますが、「ゼニガメ」は本来ニホンイシガメの幼体を指す言葉で、現在は幼体のクサガメもゼニガメとして流通していたことが知られています。
クサガメの行動・性格
クサガメは比較的おっとりとした性格のカメで、慣れてくると飼い主に近づいて餌をねだるようにもなります。ただし、個体差が大きく、神経質でなかなか慣れない子もいれば、最初からフレンドリーな子もいます。
野生下では池・湖・川・水田など様々な水辺に生息し、泳ぐのが得意です。陸上でも活発に動き回り、特に天気の良い日は岩や倒木の上で日光浴(バスキング)を長時間行う姿が見られます。夜間は水底や水草の陰でじっとしていることが多いです。
気温が高い夏の日中は水中で過ごす時間が増え、活動のピークは朝と夕方です。飼育下でも同様のリズムを示す個体が多く、給餌は朝か夕方が消化に良いとされています。
クサガメは視覚・嗅覚・聴覚を持ち、特に視覚が発達しています。飼い主が近づくと素早く反応してアピールするのも、この優れた視覚のおかげです。音にも敏感で、給餌前に容器をトントンと叩く習慣をつけると、音だけで餌の時間を学習することもあります。
在来種か外来種か?近年の研究
クサガメの起源については、長年にわたり議論が続いてきました。もともと中国大陸原産で、人の手によって日本に持ち込まれた「外来種」である可能性が指摘されていましたが、近年の遺伝子解析や化石記録の研究では、弥生時代ころには日本に定着していた「古代帰化種」であるという説が有力になっています。
この問題は飼育上は直接関係ありませんが、クサガメが自然界で繁殖し生息していることを考えると、捕まえた個体を安易に放流しないことが重要です。飼育個体の遺伝子が野生個体に混入することを防ぐためにも、責任を持って最後まで飼育することが飼い主の義務です。
ニホンイシガメ・アカミミガメとの比較
ペットとして流通するカメの中で、クサガメと混同されやすいのがニホンイシガメとミシシッピアカミミガメです。それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| 比較項目 | クサガメ | ニホンイシガメ | ミシシッピアカミミガメ |
|---|---|---|---|
| 背甲の特徴 | 3本の縦キール・暗褐色 | 縦キールなし・茶褐色 | 縦キールなし・緑色 |
| 腹甲の特徴 | 黒い斑点模様 | 黒い模様なし(クリーム色) | 複雑な模様あり |
| 頭部の特徴 | 黄〜オレンジの縞模様 | 縞模様なし | 耳の後ろに赤いマーク |
| 成体サイズ | メス20〜30cm | メス12〜20cm | メス20〜30cm |
| 飼育難易度 | ★★☆(やや簡単) | ★★★(やや難しい) | ★☆☆(簡単) |
| 臭い | あり(臭腺) | ほぼなし | ほぼなし |
| 法的規制 | なし | なし | 特定外来生物(条件付き) |
| 入手しやすさ | ○ | △(希少・高価) | △(飼育は可能だが販売規制あり) |
飼育環境の作り方
飼育容器(水槽・衣装ケース)の選び方
クサガメの飼育容器は、成体の大きさを考慮して選ぶ必要があります。甲長の5倍以上の幅が確保できる容器が理想です。メスの成体(甲長25cm程度)であれば、最低でも幅120cm×奥行き60cm程度の大型容器が必要になります。
一般的によく使われる飼育容器は以下の通りです:
- 大型衣装ケース(90〜120Lサイズ):コスパが良く、成体1頭の飼育に最適
- 90〜120cmガラス水槽:観察しやすいが重く移動が大変
- プラ舟(トロ舟):屋外飼育に最適。安価で大容量
- 専用爬虫類ケージ:見た目がきれいだがコストが高い
幼体のうちは小さめの容器(60cm水槽程度)でも飼育できますが、成長に合わせてステップアップしていきましょう。
陸地の作り方
クサガメは半水棲のカメです。体を完全に乾かせる陸地(バスキングスポット)が必ず必要です。陸地がないと甲羅が乾燥できず、甲羅の病気(水カビなど)の原因になります。
陸地は以下の方法で作れます:
- 市販の亀用浮島:簡単に設置でき、水面から出た状態を作れる
- レンガ・石:安定感があり自然な見た目。ただし重いので水槽底に注意
- プラスチックかご+石:DIYで大きな陸地を作れる
陸地の高さは水面から10cm以上あると理想的です。カメが脱出しないよう、容器の高さと陸地の高さのバランスに気をつけてください。
UVBライト(紫外線ライト)の選び方
UVBライトはクサガメの飼育に欠かせない設備です。カメは紫外線(UV-B)を受けることで皮膚でビタミンD3を合成し、カルシウムの吸収を促進します。UVBが不足すると、甲羅や骨が正常に形成されず「くる病(代謝性骨疾患)」を引き起こします。
室内飼育では太陽光が届かないため、必ずUVBライトを設置してください。
選ぶ際のポイント:
- UVBの出力が記載されている爬虫類専用ライトを選ぶ(「UV-B 5.0」「UV-B 10.0」等)
- 照射距離に合わせた出力を選ぶ(遠い場合は高出力が必要)
- 6〜12ヶ月で交換(紫外線量は見た目に関係なく経時劣化する)
バスキングライト(保温球)の設置
バスキングライトは陸地を温めるためのライトです。クサガメは変温動物なので、体温を上げるために日光浴(バスキング)が必要です。陸地にスポット的に当てて、バスキングスポットの温度を32〜35℃にしましょう。
UVBライトとバスキングライトを一緒に購入できる「2灯式スタンド」も市販されており、設置がコンパクトになるのでおすすめです。
フィルターの選び方
クサガメは非常に水を汚しやすい生き物です。魚の3〜5倍の排泄量があると言われています。フィルターなしでは毎日の水替えが必要になるため、適切なフィルターの選択が重要です。
クサガメ飼育で人気のフィルタータイプ:
- 上部フィルター:ろ過能力が高く、メンテナンスが楽。水深が確保できる水槽向き
- 外部フィルター:最もろ過能力が高い。大型個体の飼育に最適
- 投げ込みフィルター(水中フィルター):コストが低いが能力も低め。幼体向き
- 外掛けフィルター:スペースが限られる場合に便利
屋外飼育 vs 室内飼育
屋外飼育のメリットと注意点
クサガメは本来野外で生活しているカメですので、屋外飼育は非常に向いています。太陽の自然な紫外線が当たることで、ビタミンD3の合成が促進され、骨格や甲羅が丈夫に育ちます。また、自然の日照・温度変化がホルモンバランスを整え、繁殖行動も促しやすくなります。
屋外飼育のメリット:
- 紫外線ライト不要(自然光でUVB補給)
- 自然な温度・光周期で健康的に育てられる
- 冬眠を自然に行わせられる
- 臭いが室内にこもらない
屋外飼育の注意点:
- カラス・イタチ・ハクビシンなどの天敵対策(ネットや蓋が必須)
- 夏の直射日光による水温上昇(30℃以上は危険)
- 台風・大雨による容器の流出
- 脱走対策(外壁が60cm以上必要)
室内飼育のメリットと注意点
室内飼育は観察がしやすく、季節を問わず一定の環境を維持できます。冬眠させない管理も比較的簡単です。一方で、UVBライト・バスキングライト・フィルターなどの設備投資が必要になります。
室内飼育のメリット:
- 天敵の心配がない
- 温度管理がしやすい
- 冬眠させずに通年活動させられる
- 観察・スキンシップがとりやすい
室内飼育の注意点:
- UVBライト・バスキングライトが必須
- 水の臭いが室内にこもりやすい
- 大型化したとき置き場所に困ることがある
- ライト代などのランニングコストがかかる
水質・温度管理
適正水温と季節管理
クサガメが活発に行動する水温は20〜28℃です。水温が15℃を下回ると動きが鈍くなり始め、10℃以下になると冬眠モードに入ります。夏場に水温が30℃を超えると食欲が落ちたり、体調を崩しやすくなるため注意が必要です。
室内飼育で冬眠させない場合は、ヒーターを使って25℃前後に保ちましょう。爬虫類・両生類用のヒーターや、観賞魚用のサーモスタット付きヒーターが使えます。
適正水質とpH
クサガメは水質への適応力が高く、多少の変化には対応できます。ただし、アンモニアや亜硝酸が蓄積すると体調を崩すため、フィルターと定期的な水替えで水質を維持することが大切です。
| 管理項目 | 適正値・目安 | 注意ポイント |
|---|---|---|
| 水温 | 20〜28℃(活動時) | 30℃超えに注意。夏は日陰必須 |
| pH | 6.5〜7.5(弱酸性〜中性) | 水道水(pH7前後)でOK |
| バスキングスポット温度 | 32〜35℃ | 低いと体温が上がらずバスキングしない |
| 室温(室内飼育時) | 20〜28℃ | 冬は暖房との兼ね合いを考える |
| 水替え頻度 | 週1〜2回(フィルターあり) | フィルターなしは毎日〜2日に1回 |
| 水深 | 甲長の1.5〜2倍程度 | 浅すぎると遊泳できない。深すぎると溺れる危険も |
| カルキ(塩素)除去 | 必須 | カルキ抜き剤使用またはバケツで一晩置く |
水替えの方法とコツ
クサガメは魚と比べて水を汚すのが非常に速いため、水替えは飼育の要です。全換水より部分換水(1/3〜1/2)を頻繁に行う方が、水質の急変を防げて安心です。
水替えの際は、フィルターのスポンジや底砂もあわせて軽く洗うと汚れが溜まりにくくなります。ただし、ろ過バクテリアを完全に殺さないよう、必ず水道水ではなくカルキ抜きした飼育水またはカメの水槽の水で洗いましょう。
夏場は特に水の腐敗が速まります。水温が28℃を超える場合は水替え頻度を増やし、直射日光が長時間当たらないよう日除けも検討してください。底砂を敷いている場合は砂の中に汚れが蓄積しやすいため、週1回程度プロホース(底砂クリーナー)で吸い出す作業が有効です。
餌の与え方
クサガメの食性と主食
クサガメは雑食性で、動物性・植物性どちらも食べます。主食は市販の配合飼料(亀用ペレット)で問題ありません。バランスよく栄養素が設計されており、これだけでも健康に育てられます。
餌は与えた直後に食べ残したものを取り出すことが大切です。食べ残しはすぐに腐敗して水質を悪化させます。
配合飼料(ペレット)の選び方
亀専用の配合飼料にはさまざまなサイズがあります。幼体には小粒タイプ、成体には大粒タイプを選びましょう。フロート(浮遊)タイプが一般的で、食べ残しが目で見て確認できるため管理しやすいです。
主なペレットの特徴:
- テトラ レプトミン:定番の亀用フード。バランスが良く多くのカメが好む
- GEX ビタミン入り亀のエサ:ビタミン補給もできる便利なフード
- キョーリン ひかりクレスト カメ:高タンパクで成長期の亀に適している
副食(野菜・生き餌)の与え方
ペレット主食に加えて、副食として野菜や生き餌を与えると栄養バランスが向上します。ただし、副食を多く与えすぎると偏食になることがあるため、あくまで「おやつ程度」にとどめましょう。
与えてよい食材:
- 野菜:小松菜・チンゲン菜・レタス・ニンジン(カルシウムが豊富な葉物野菜が特に良い)
- 魚・エビ:シラスや乾燥エビ(高たんぱく。与えすぎると肥満に注意)
- 生き餌:メダカ・ドジョウ・ミミズ・コオロギ(カメが狩る楽しみも提供できる)
- 果物:リンゴ・イチゴなど(少量のご褒美として)
与えてはいけない食材:
- ホウレン草(シュウ酸がカルシウム吸収を阻害)
- ネギ・タマネギ・ニラ(毒性あり)
- アボカド(すべての爬虫類に有害)
- 加工食品・塩分の多い食べ物
餌の量と頻度
与える量の目安は「頭の大きさ分程度」を1回の給餌量とするのが一般的です。成体は1日1〜2回、幼体は毎日食べられるだけ与えます。
水温が20℃を下回ってくると食欲が落ち始めます。15℃以下では食べなくなることも多いため、食欲に合わせて給餌量を調整してください。水温が低いのに無理に食べさせると消化不良の原因になります。
臭いの対策
クサガメの臭腺とは
クサガメの臭いの原因は「臭腺(しゅうせん)」です。後ろ足の付け根(鼠径部)と脇の下(腋窩部)に計4つの臭腺があり、脅威を感じたときにムスクのような独特の臭いを放出します。
この臭いは天敵から身を守るための防衛手段です。飼育環境に慣れた個体は臭いを出すことがほとんどなくなりますが、捕まえたばかりや神経質な個体は頻繁に臭いを出すことがあります。
臭腺の臭い自体は水に溶けても残るため、水交換も大切ですが、臭いを出させないような穏やかな扱いがもっとも重要です。
水の臭いの原因と対策
クサガメ飼育で感じる「臭い」のもうひとつの原因は、水の汚れです。カメの排泄物・食べ残し・皮膚から剥がれた角質などが水中で分解されてアンモニアが発生し、独特の生臭さを生みます。
水の臭い対策:
- フィルターの充実:ろ過バクテリアによる生物ろ過が効果大
- 水替えの頻度を上げる:週1〜2回を目安に
- 餌の食べ残しをすぐ取り除く:スポイトやピンセットで残飯除去
- ゼオライト(活性炭)入りフィルター材の使用:アンモニア吸着効果
- 屋外飼育への切り替え:換気が良い環境では臭いが気にならない
室内飼育の臭い対策:置き場所のコツ
水槽を換気扇や窓の近くに置くだけでも臭いのこもりが大幅に改善します。また、水槽を蓋で完全に塞ぐと臭いがこもりやすいので、通気孔のある蓋を選ぶか、ある程度開けておくことをおすすめします。
個体が臭いを出しにくくするには
クサガメが臭いを出すのは「怖い」「危ない」と感じたときです。日常的に穏やかに扱い、ストレスを最小限にすることで、臭いを出す頻度を減らせます。
具体的な方法:
- 急激な動作で驚かさない(容器に近づくときはゆっくり)
- 持ち上げるときは甲羅の両側をしっかり持つ(足をブラブラさせない)
- 毎日同じ時間に給餌するなど、ルーティンを作る
- 水替えの際もゆったりとした動作で行う
冬眠のさせ方と注意点
冬眠させるかどうかの判断
クサガメは秋が深まり水温が10℃以下になると自然に冬眠に入ります。冬眠させることで繁殖ホルモンが正常に分泌され、翌春以降の発情・産卵に良い影響を与えます。また、自然な生活サイクルに沿った飼育ができます。
ただし、冬眠は体力が必要なため、以下の個体には冬眠を避けた方が安全です:
- 生まれて1年目の幼体(体力が十分でない)
- 病気・怪我をしている個体
- 秋までに十分な体重増加ができていない個体
- 購入したばかりで環境に慣れていない個体
冬眠前の準備(秋の過ごし方)
冬眠を成功させるためには、秋(9〜11月)の過ごし方が重要です。冬眠前にしっかり体力をつけておくことが、無事に春を迎えるカギになります。
秋〜冬眠前のチェックリスト:
- 十分な餌やりで体内に栄養を蓄えさせる
- 水温が15℃以下になったら給餌を止める(消化不良防止)
- 健康チェック(目・鼻・口・甲羅・皮膚の状態確認)
- 冬眠用の容器を準備する
冬眠の方法(水中冬眠 vs 陸上冬眠)
クサガメの冬眠方法は大きく分けて「水中冬眠」と「陸上冬眠」の2種類があります。
水中冬眠(推奨):
深い水深(20〜30cm以上)の容器に入れ、水が凍らない場所(屋外でも縁の下など)に置きます。カメは水底でじっとしたまま越冬します。皮膚からの酸素吸収で呼吸するため、水面が凍らない程度の水量が必要です。
陸上冬眠:
土や腐葉土を敷いた容器に入れ、土中に潜って冬眠させる方法です。水分を保てる土質が必要で、乾燥しすぎると脱水で死亡することがあるため管理が難しい面があります。
冬眠明けの対処法
春になり水温が10℃を超えてくると、カメが自然に目覚め始めます。冬眠明けのカメはとても衰弱しているため、急に大量に餌を与えるのは禁物です。
冬眠明けのステップ:
- 水温が15℃以上になるのを待つ
- 健康チェック(目を開けているか・四肢が正常に動くか確認)
- 少量の餌から徐々に給餌量を増やす
- バスキングを十分にさせる
- 水温が安定した20℃以上になれば通常飼育に戻す
冬眠させない場合のヒーター管理
冬眠させない場合は、水中ヒーターで水温を25℃前後に保つことで、通年活発に活動させることができます。ヒーターはサーモスタット付きのものを選び、誤作動による水温上昇を防ぎましょう。
ただし、室内での保温飼育は電気代がかかります。また、毎年冬眠させないと繁殖が難しくなる場合があります。
繁殖・産卵管理
雌雄の見分け方
クサガメの性別はある程度成長した個体(甲長8cm以上)であれば、外見で判断できます。
| 判別ポイント | オス | メス |
|---|---|---|
| 尾の長さ | 長くて太い | 短くて細い |
| 腹甲(お腹の甲羅) | 凹んでいる(交尾時の姿勢のため) | 平ら |
| 体の大きさ | 小さい(10〜15cm) | 大きい(20〜30cm) |
| 体色(成熟後) | 全身が黒くなる傾向 | 黒化は少ない。黄色い模様が残る |
| 前足の爪 | 長い(交尾時に使う) | 短め |
繁殖のための条件
クサガメの繁殖には、自然の季節変化を体験させることが重要です。冬眠を経験させることで春に交尾行動が起きやすくなります。
繁殖の流れ:
- 春(4〜5月):冬眠明け後に交尾が行われる。オスがメスを追い回し、前足でメスの顔を触る求愛行動を見せる
- 初夏(5〜7月):メスが産卵場所を探し始める。陸地を歩き回ったり、土を掘るような動作をし始めたら産卵が近い
- 産卵:柔らかい土や砂に穴を掘り、1回に3〜10個程度の卵を産む
- 孵化:60〜80日前後で孵化(気温によって変わる)
産卵場所の作り方
産卵のためには、メスが穴を掘れる十分な深さの土が必要です。深さ15〜20cm以上の土(川砂・腐葉土など)を入れた産卵ボックスを用意しましょう。
産卵ボックスは飼育容器の一角に設置するか、産卵期のみ別容器に移して産ませます。産卵したら卵を掘り出し、孵卵器(インキュベーター)または温度管理ができる場所で管理します。
産卵間近のサインとして、メスが陸地を歩き回る・後ろ足で地面を掻く・餌への反応が鈍くなるなどの行動が見られます。こうしたサインが出たら産卵ボックスを準備し、夜間や早朝に産卵することが多いため観察を続けましょう。
卵の孵化管理
産卵された卵は向きを変えないよう注意しながら、湿らせたバーミキュライト(孵化用底材)に埋めて管理します。温度28〜30℃・湿度80〜90%程度を維持すると、60〜80日程度で孵化します。
孵化が近くなると、卵の表面に水滴が付いたり、卵が若干膨らんで見えることがあります。孵化直前に卵に小さな切れ目(ピッピング)が入り、そこから数時間〜1日かけて幼体が出てきます。完全に出てきてから取り出してあげましょう。無理に引き出すと、まだ卵黄が繋がっている場合があり危険です。
孵化した幼体は、最初の数日間は卵黄を吸収しながら過ごします。この間はまだ餌を食べないため、給餌は卵黄が吸収されてから(ヘソが閉じてから)開始します。
かかりやすい病気と対処法
肺炎・気道感染症
クサガメがかかりやすい代表的な病気のひとつが肺炎です。低温・通気不良・水質悪化などのストレスによって引き起こされます。
症状:口を開けてゼーゼーと呼吸する、水面に浮いたままで潜れない、傾いて泳ぐ、食欲低下。
原因:急激な温度変化・冷えた水への長時間露出・不衛生な水質。
対処法:保温してカメを暖め、できるだけ早く爬虫類を診られる獣医師に相談してください。抗生物質の投与が必要なことが多く、自然治癒はほぼ見込めません。
ビタミンA欠乏症(眼の病気)
症状:目が腫れる・白く濁る・目が開かない。まぶたが膨張して目が見えなくなる。
原因:野菜不足・配合飼料のみに偏った食事によるビタミンA不足。
対処法:小松菜・チンゲン菜などビタミンAを含む緑黄色野菜を与え、必要に応じてビタミン剤を添加します。症状が重い場合は獣医師へ。
代謝性骨疾患(くる病)
症状:甲羅が柔らかい・変形する・骨格が歪む。四肢に力が入らない。
原因:UVBライト不足・カルシウム不足・ビタミンD3不足によるカルシウム代謝異常。
対処法:UVBライトを設置・交換し、カルシウム補給剤(カルシウムパウダー)を餌に添加します。進行した場合は獣医師へ。予防が最大の対策です。
甲羅の病気(水カビ・シェルロット)
症状:甲羅に白い斑点やふやけた部分が現れる。表面が剥がれる・穴が開く(シェルロット)。
原因:水質悪化・陸地での乾燥不足・真菌感染・細菌感染。
対処法:軽症なら水質改善とバスキングの充実で自然治癒することもあります。患部をヨード液(イソジン)で消毒する方法もありますが、悪化している場合は獣医師へ。
食欲不振・拒食
症状:餌を食べない日が続く。
原因:水温低下・病気のサイン・ストレス・季節的な変化(冬眠前)・偏食。
対処法:水温を確認し、適正範囲内であれば病気のサインである可能性を疑い観察を続けます。2週間以上まったく食べない場合は獣医師へ相談を。
爬虫類を診られる動物病院を事前に探しておこう
すべての動物病院がカメを診られるわけではありません。「爬虫類対応」「エキゾチックアニマル専門」の動物病院をあらかじめ探しておくと、いざというときに慌てずに済みます。特に冬眠明けの春と夏〜秋は体調不良が出やすい季節です。
| 病名 | 主な症状 | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 肺炎 | ゼーゼー呼吸・傾いて泳ぐ | 低温・水質悪化 | 保温・獣医師へ |
| ビタミンA欠乏 | 目が腫れる・白濁 | 緑黄色野菜不足 | 野菜追加・ビタミン剤 |
| 代謝性骨疾患 | 甲羅が柔らかい・変形 | UVB不足・カルシウム不足 | UVBライト設置・カルシウム添加 |
| 水カビ・シェルロット | 甲羅の白斑・剥がれ | 水質悪化・乾燥不足 | 水質改善・バスキング充実 |
| 拒食 | 餌を食べない | 水温低下・ストレス・病気 | 水温確認・2週間以上は獣医師へ |
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クサガメ飼育のおすすめ商品
亀用配合飼料(テトラ レプトミン)
約1,000〜2,500円
クサガメに必要な栄養バランスが設計された定番フード。幼体から成体まで対応
爬虫類用UVBランプ
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室内飼育に必須のUVBランプ。クサガメの甲羅・骨格を健康に保つために欠かせない
亀用フィルター(外部フィルター・上部フィルター)
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よくある質問(FAQ)
Q, クサガメはなぜ臭いのですか?
A, クサガメは後ろ足の付け根などにある「臭腺」から、危険を感じたときに独特の臭いを放出します。これは天敵から身を守るための防衛手段です。飼育環境に慣れた個体は臭いをほとんど出さなくなります。水の臭いが気になる場合は、フィルターの強化と水替えの頻度を上げることで大幅に改善できます。
Q, クサガメは冬眠させないといけませんか?
A, 必ずしも冬眠させる必要はありません。水中ヒーターで水温を25℃前後に保つことで、通年活動させることができます。ただし、繁殖を目指す場合は冬眠経験が繁殖行動に良い影響を与えます。健康状態が不安な個体や幼体は冬眠を避けた方が安全です。
Q, クサガメの寿命はどのくらいですか?
A, 適切な環境で飼育された場合、30〜50年以上生きることがあります。野生個体でも20〜30年以上生きる記録があります。クサガメは長生きするペットですので、飼い始める際は「一生面倒を見る」という覚悟を持つことが大切です。
Q, クサガメに必要な水槽サイズはどのくらいですか?
A, 成体(特にメス・甲長20〜30cm)の場合、幅120cm以上の容器が理想です。甲長の5倍以上の幅が目安とされています。幼体のうちは60cm程度でも飼育できますが、成長に合わせて容器を大きくしていく必要があります。
Q, クサガメはどのくらい食べさせればよいですか?
A, 1回の給餌量の目安は「カメの頭の大きさ分程度」です。成体は1日1〜2回、幼体は毎日与えましょう。食べ残しが出るようなら与えすぎです。肥満は病気の原因になるため、適正体重を維持することが長寿への近道です。
Q, クサガメはなついますか?
A, 犬や猫のように積極的になつくわけではありませんが、飼い主の顔や声を認識する能力はあります。毎日給餌することで「この人=餌をくれる存在」と学習し、近づくと首を伸ばしてアピールするようになります。スキンシップは嫌いな個体も多いため、無理に触れないことが信頼関係を築くコツです。
Q, クサガメとニホンイシガメを一緒に飼えますか?
A, 推奨しません。クサガメとニホンイシガメは交雑(ハイブリッド)が起きることがあり、遺伝的な問題が生じます。また、ニホンイシガメはクサガメより弱い傾向があり、食事や縄張り争いで圧迫されることがあります。混泳させる場合は十分な広さとシェルターを確保し、慎重に観察してください。
Q, 甲羅が白くなってきました。病気ですか?
A, 甲羅の白い変色にはいくつかの原因が考えられます。乾燥・脱皮・水カビ・シェルロット(細菌感染)などです。陸地でバスキングした後に白っぽく見える程度なら正常ですが、白い斑点が増える・表面が剥がれる・柔らかくなるといった症状があれば水カビまたはシェルロットの可能性があります。水質改善とバスキングの充実を試み、悪化する場合は獣医師へ相談してください。
Q, クサガメの卵はどうすれば孵化しますか?
A, 産卵された卵は向きを変えないよう注意しながら取り出し、湿らせたバーミキュライトに半分埋めた状態で管理します。温度28〜30℃・湿度80〜90%を保つと、60〜80日程度で孵化します。市販の爬虫類用インキュベーターがあると管理が楽になります。乾燥しすぎると卵がしぼみ、過湿だとカビが生える危険があるためバランスが大切です。
Q, クサガメを飼育していますが、野外に逃がしてもいいですか?
A, 絶対にやめてください。飼育個体を野外に放すことは法律上の問題がある場合があり(外来生物法・自然公園法等)、生態系への影響も懸念されます。また、飼育下で育ったカメは野外での生存能力が低く、放流後に短命になることが多いです。飼えなくなった場合は、爬虫類の引き取りをしている団体や里親募集サービスを探してください。
Q, クサガメのオスとメスはどう見分ければよいですか?
A, 最も確実な判別方法は「尾の長さ」です。オスは尾が長く太く、排泄孔が甲羅の縁より外側にあります。メスは尾が短く細く、排泄孔が甲羅の縁より内側にあります。また、成熟したオスは全身が黒くなる「黒化」が起きやすく、腹甲がわずかに凹んでいます。甲長8cm以上になると比較的判別しやすくなります。
クサガメを長寿に育てるための飼育のコツ
日々の健康チェックの仕方
クサガメの健康管理は、毎日の観察が基本です。病気の多くは早期発見・早期対応で治癒率が大幅に上がります。以下のポイントを給餌のたびにチェックする習慣をつけましょう。
- 目:両方しっかり開いているか。腫れや白濁がないか
- 鼻・口:鼻水・泡が出ていないか。口が正常に閉じるか
- 甲羅:変色・軟化・剥がれがないか。白い斑点が増えていないか
- 皮膚・四肢:傷や腫れがないか。爪が正常か
- 食欲:餌に対する反応はいつも通りか
- 排泄:便の色・量・硬さに異常がないか
- 動き:バスキングを行っているか。水中で自然に泳いでいるか
少しでも「いつもと違う」と感じたら、水温・水質・ライトを確認して環境を整え、改善しない場合は早めに爬虫類専門の動物病院に相談することをおすすめします。
脱走対策と飼育ケースの安全管理
クサガメは意外と力が強く、また器用な動きができます。水槽の縁に足を掛けて脱走を試みることがあるため、容器の高さを十分確保するか、しっかりした蓋を設置することが重要です。
特に注意が必要なシチュエーション:
- 産卵期のメス:産卵場所を探して積極的に移動しようとする
- 水替え中:容器の外に出たまま乾燥・熱中症になる危険がある
- 屋外飼育:壁を乗り越えたり、隙間をくぐって脱走する個体もいる
室内で脱走した場合、カメが見つからないと乾燥・餓死・踏み潰しなどの危険があります。「いつもいる場所にいない」と気づいたら、部屋の隅・家具の下・暗い場所を重点的に探してください。
多頭飼育する場合の注意点
クサガメを複数飼育する場合は、個体間のサイズ差と性別に注意が必要です。
- サイズ差:大きな個体が小さな個体をいじめることがある。甲長差が2cm以上あると、小さい方がストレスを受けやすい
- オス同士:縄張り争い・喧嘩が起きやすい。特に繁殖期(春〜初夏)は攻撃性が増す
- オスとメス:交尾のストレスでメスが弱ることがある。メスが休める場所を十分確保する
- スペース:多頭飼育は単独飼育の2〜3倍の広さが必要。1頭あたりの泳ぐスペースを確保する
複数の個体が同じ容器でのびのびと暮らせるよう、シェルター(隠れ家)・バスキングスポット・餌場を複数用意してあげましょう。
クサガメの長寿の秘訣
30〜50年生きるとされるクサガメの長寿を実現するために、最も重要なことは「ストレスの少ない安定した環境を維持し続けること」です。
長寿に向けた管理のポイント:
- 適正体重の維持:肥満は内臓への負担を増やし、寿命を縮める。足の付け根に脂肪が溜まりすぎていないかチェック
- UVBの継続的な確保:室内飼育では定期的なライト交換を怠らない
- 年1回の健康診断:爬虫類を診られる獣医師による定期健診で、目に見えない異常を早期発見
- 水質の安定:急激な水質変化を避け、フィルターのメンテナンスを定期的に行う
- ストレスの最小化:過度なハンドリング・騒音・温度の急変を避ける
まとめ
クサガメは、適切な飼育環境を整えれば30〜50年もの長きにわたって私たちの生活に寄り添ってくれる、とても魅力的なパートナーです。
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます:
- 飼育容器:成体のメスには幅120cm以上の大型容器を。陸地(バスキングスポット)は必須
- ライト:室内飼育では UVBライトとバスキングライトの両方が不可欠。UVBは6〜12ヶ月で交換
- フィルター:クサガメは水を汚しやすいため、能力の高いフィルターを選ぶ
- 水温:活動時は20〜28℃。冬眠させない場合はヒーターで25℃前後を維持
- 餌:配合飼料を主食に、緑黄色野菜を副食として。与えすぎに注意
- 臭い対策:フィルター強化+水替え頻度アップで大幅改善。個体を穏やかに扱うことも重要
- 冬眠:健康な成体は冬眠させた方が自然なサイクルで育てられる。幼体・病体は保温飼育を
- 病気予防:UVB確保・水質維持・適正栄養が三大予防策。爬虫類対応の動物病院を事前に確認
「臭い」という名前を持つクサガメですが、慣れた個体は臭いをほとんど出さなくなりますし、毎日の給餌を通じて少しずつ飼い主を認識してくれるようになります。
最初は地味に見えるかもしれないクサガメですが、一緒に過ごす時間が長くなるほど、その個性やしぐさに愛着が湧いてきます。日常の水替えのひとときや、春の冬眠明けの瞬間など、クサガメとの生活には他のペットでは味わえない独特の喜びがあります。
クサガメは犬や猫のように毎日散歩に連れて行く必要はありませんし、大きな鳴き声を上げることもありません。でも、その分「確かにここにいる」という存在感と、静かな命の輝きを感じさせてくれます。水槽の前でじっと見ていると、何時間でも過ごせてしまうほど、その表情は豊かです。
クサガメを迎えたら、ぜひ長期的な視点で飼育計画を立ててください。「今の住環境で30年飼い続けられるか」「将来もし転勤になった場合どうするか」まで考えておくと、より責任ある飼育につながります。それだけ真剣に向き合う価値がある、それがクサガメという生き物の魅力だと私は思っています。
クサガメの飼育でご不明な点があれば、ぜひコメント欄でご質問ください。同じく日本の淡水生物を飼育されている方には、以下の記事もあわせてご覧いただけると嬉しいです。
「クサガメって臭いってホント?」「飼い始めたけど冬眠させるべき?」――クサガメを飼い始めた方から、こんな疑問をよく受けます。
クサガメは、日本の池や川で昔から親しまれてきたカメです。子どもの頃に捕まえた経験がある方も多いのではないでしょうか。丈夫で飼いやすく、うまく飼えば30〜50年も一緒に過ごせる長寿のパートナーになってくれます。
でも、飼い始めると「臭い」「冬眠どうする?」「水替えが大変」など、想像以上に奥が深くて戸惑う方も少なくありません。
この記事では、クサガメの基本的な生態から、飼育環境の作り方、臭い対策、冬眠の管理方法、繁殖まで、飼育に必要なすべての情報を網羅的にお伝えします。初心者の方でもこれ一記事読めば、クサガメを健康に長く飼い続けることができるはずです。
この記事でわかること
- クサガメの生態・分類・ニホンイシガメやアカミミガメとの違い
- 室内飼育・屋外飼育それぞれの設備の作り方
- UVBライト・バスキングライト・フィルターの選び方
- 水質・水温・陸地温度の適正管理方法
- 配合飼料・野菜・生き餌のバランスある与え方
- 臭いの原因(臭腺とは)と実践的な臭い対策
- 冬眠のさせ方・冬眠させない場合の注意点
- 繁殖・産卵の準備と孵化管理
- かかりやすい病気(肺炎・ビタミンA欠乏・甲羅の病気)と対処法
- よくある疑問10問への回答
クサガメの基本情報
分類と学名
クサガメは、爬虫類の中でも比較的飼いやすいカメとして知られています。分類上はカメ目イシガメ科に属し、学名は Mauremys reevesii(モーレミス・リーベシイ)です。英語では「Reeves’ Turtle(リーブスカメ)」と呼ばれています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Mauremys reevesii |
| 分類 | 爬虫綱 カメ目 イシガメ科 クサガメ属 |
| 英名 | Reeves’ Turtle |
| 分布 | 日本・中国・朝鮮半島・台湾 |
| 甲長 | オス:10〜15cm、メス:20〜30cm |
| 寿命 | 30〜50年(飼育下) |
| 食性 | 雑食性(動物性・植物性どちらも食べる) |
| 特徴的な行動 | 危険を感じると臭腺から臭いを放つ |
体の特徴と見た目
クサガメの背甲(甲羅の上側)は黒褐色〜暗緑色で、3本の縦方向の隆起(キール)があります。これがクサガメを他のカメと区別する大きな特徴のひとつです。
成体では全体的に黒みを帯びてくる個体が多く、特にオスは成熟すると全身が真っ黒になる「メラニズム」(黒化)が進むことがあります。頭部と首には黄色〜オレンジ色の縞模様があり、若い個体ほど鮮やかです。
腹甲(お腹の甲羅)は黒い斑点が入るのが特徴で、ニホンイシガメとの大きな違いのひとつです。
「クサガメ」という名前の由来
クサガメという名前の由来は、その「臭い(くさい)」から来ています。危険を感じたとき、後ろ足の付け根にある「臭腺(しゅうせん)」から強烈な臭いを放つことがあります。慣れた個体では臭いを出さなくなることが多いですが、捕まえたばかりのクサガメや警戒している個体は臭いを出しやすいです。
日本ではかつて「ゼニガメ」と呼ばれてペットショップで売られていたこともありますが、「ゼニガメ」は本来ニホンイシガメの幼体を指す言葉で、現在は幼体のクサガメもゼニガメとして流通していたことが知られています。
クサガメの行動・性格
クサガメは比較的おっとりとした性格のカメで、慣れてくると飼い主に近づいて餌をねだるようにもなります。ただし、個体差が大きく、神経質でなかなか慣れない子もいれば、最初からフレンドリーな子もいます。
野生下では池・湖・川・水田など様々な水辺に生息し、泳ぐのが得意です。陸上でも活発に動き回り、特に天気の良い日は岩や倒木の上で日光浴(バスキング)を長時間行う姿が見られます。夜間は水底や水草の陰でじっとしていることが多いです。
気温が高い夏の日中は水中で過ごす時間が増え、活動のピークは朝と夕方です。飼育下でも同様のリズムを示す個体が多く、給餌は朝か夕方が消化に良いとされています。
クサガメは視覚・嗅覚・聴覚を持ち、特に視覚が発達しています。飼い主が近づくと素早く反応してアピールするのも、この優れた視覚のおかげです。音にも敏感で、給餌前に容器をトントンと叩く習慣をつけると、音だけで餌の時間を学習することもあります。
在来種か外来種か?近年の研究
クサガメの起源については、長年にわたり議論が続いてきました。もともと中国大陸原産で、人の手によって日本に持ち込まれた「外来種」である可能性が指摘されていましたが、近年の遺伝子解析や化石記録の研究では、弥生時代ころには日本に定着していた「古代帰化種」であるという説が有力になっています。
この問題は飼育上は直接関係ありませんが、クサガメが自然界で繁殖し生息していることを考えると、捕まえた個体を安易に放流しないことが重要です。飼育個体の遺伝子が野生個体に混入することを防ぐためにも、責任を持って最後まで飼育することが飼い主の義務です。
ニホンイシガメ・アカミミガメとの比較
ペットとして流通するカメの中で、クサガメと混同されやすいのがニホンイシガメとミシシッピアカミミガメです。それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| 比較項目 | クサガメ | ニホンイシガメ | ミシシッピアカミミガメ |
|---|---|---|---|
| 背甲の特徴 | 3本の縦キール・暗褐色 | 縦キールなし・茶褐色 | 縦キールなし・緑色 |
| 腹甲の特徴 | 黒い斑点模様 | 黒い模様なし(クリーム色) | 複雑な模様あり |
| 頭部の特徴 | 黄〜オレンジの縞模様 | 縞模様なし | 耳の後ろに赤いマーク |
| 成体サイズ | メス20〜30cm | メス12〜20cm | メス20〜30cm |
| 飼育難易度 | ★★☆(やや簡単) | ★★★(やや難しい) | ★☆☆(簡単) |
| 臭い | あり(臭腺) | ほぼなし | ほぼなし |
| 法的規制 | なし | なし | 特定外来生物(条件付き) |
| 入手しやすさ | ○ | △(希少・高価) | △(飼育は可能だが販売規制あり) |
飼育環境の作り方
飼育容器(水槽・衣装ケース)の選び方
クサガメの飼育容器は、成体の大きさを考慮して選ぶ必要があります。甲長の5倍以上の幅が確保できる容器が理想です。メスの成体(甲長25cm程度)であれば、最低でも幅120cm×奥行き60cm程度の大型容器が必要になります。
一般的によく使われる飼育容器は以下の通りです:
- 大型衣装ケース(90〜120Lサイズ):コスパが良く、成体1頭の飼育に最適
- 90〜120cmガラス水槽:観察しやすいが重く移動が大変
- プラ舟(トロ舟):屋外飼育に最適。安価で大容量
- 専用爬虫類ケージ:見た目がきれいだがコストが高い
幼体のうちは小さめの容器(60cm水槽程度)でも飼育できますが、成長に合わせてステップアップしていきましょう。
陸地の作り方
クサガメは半水棲のカメです。体を完全に乾かせる陸地(バスキングスポット)が必ず必要です。陸地がないと甲羅が乾燥できず、甲羅の病気(水カビなど)の原因になります。
陸地は以下の方法で作れます:
- 市販の亀用浮島:簡単に設置でき、水面から出た状態を作れる
- レンガ・石:安定感があり自然な見た目。ただし重いので水槽底に注意
- プラスチックかご+石:DIYで大きな陸地を作れる
陸地の高さは水面から10cm以上あると理想的です。カメが脱出しないよう、容器の高さと陸地の高さのバランスに気をつけてください。
UVBライト(紫外線ライト)の選び方
UVBライトはクサガメの飼育に欠かせない設備です。カメは紫外線(UV-B)を受けることで皮膚でビタミンD3を合成し、カルシウムの吸収を促進します。UVBが不足すると、甲羅や骨が正常に形成されず「くる病(代謝性骨疾患)」を引き起こします。
室内飼育では太陽光が届かないため、必ずUVBライトを設置してください。
選ぶ際のポイント:
- UVBの出力が記載されている爬虫類専用ライトを選ぶ(「UV-B 5.0」「UV-B 10.0」等)
- 照射距離に合わせた出力を選ぶ(遠い場合は高出力が必要)
- 6〜12ヶ月で交換(紫外線量は見た目に関係なく経時劣化する)
バスキングライト(保温球)の設置
バスキングライトは陸地を温めるためのライトです。クサガメは変温動物なので、体温を上げるために日光浴(バスキング)が必要です。陸地にスポット的に当てて、バスキングスポットの温度を32〜35℃にしましょう。
UVBライトとバスキングライトを一緒に購入できる「2灯式スタンド」も市販されており、設置がコンパクトになるのでおすすめです。
フィルターの選び方
クサガメは非常に水を汚しやすい生き物です。魚の3〜5倍の排泄量があると言われています。フィルターなしでは毎日の水替えが必要になるため、適切なフィルターの選択が重要です。
クサガメ飼育で人気のフィルタータイプ:
- 上部フィルター:ろ過能力が高く、メンテナンスが楽。水深が確保できる水槽向き
- 外部フィルター:最もろ過能力が高い。大型個体の飼育に最適
- 投げ込みフィルター(水中フィルター):コストが低いが能力も低め。幼体向き
- 外掛けフィルター:スペースが限られる場合に便利
屋外飼育 vs 室内飼育
屋外飼育のメリットと注意点
クサガメは本来野外で生活しているカメですので、屋外飼育は非常に向いています。太陽の自然な紫外線が当たることで、ビタミンD3の合成が促進され、骨格や甲羅が丈夫に育ちます。また、自然の日照・温度変化がホルモンバランスを整え、繁殖行動も促しやすくなります。
屋外飼育のメリット:
- 紫外線ライト不要(自然光でUVB補給)
- 自然な温度・光周期で健康的に育てられる
- 冬眠を自然に行わせられる
- 臭いが室内にこもらない
屋外飼育の注意点:
- カラス・イタチ・ハクビシンなどの天敵対策(ネットや蓋が必須)
- 夏の直射日光による水温上昇(30℃以上は危険)
- 台風・大雨による容器の流出
- 脱走対策(外壁が60cm以上必要)
室内飼育のメリットと注意点
室内飼育は観察がしやすく、季節を問わず一定の環境を維持できます。冬眠させない管理も比較的簡単です。一方で、UVBライト・バスキングライト・フィルターなどの設備投資が必要になります。
室内飼育のメリット:
- 天敵の心配がない
- 温度管理がしやすい
- 冬眠させずに通年活動させられる
- 観察・スキンシップがとりやすい
室内飼育の注意点:
- UVBライト・バスキングライトが必須
- 水の臭いが室内にこもりやすい
- 大型化したとき置き場所に困ることがある
- ライト代などのランニングコストがかかる
水質・温度管理
適正水温と季節管理
クサガメが活発に行動する水温は20〜28℃です。水温が15℃を下回ると動きが鈍くなり始め、10℃以下になると冬眠モードに入ります。夏場に水温が30℃を超えると食欲が落ちたり、体調を崩しやすくなるため注意が必要です。
室内飼育で冬眠させない場合は、ヒーターを使って25℃前後に保ちましょう。爬虫類・両生類用のヒーターや、観賞魚用のサーモスタット付きヒーターが使えます。
適正水質とpH
クサガメは水質への適応力が高く、多少の変化には対応できます。ただし、アンモニアや亜硝酸が蓄積すると体調を崩すため、フィルターと定期的な水替えで水質を維持することが大切です。
| 管理項目 | 適正値・目安 | 注意ポイント |
|---|---|---|
| 水温 | 20〜28℃(活動時) | 30℃超えに注意。夏は日陰必須 |
| pH | 6.5〜7.5(弱酸性〜中性) | 水道水(pH7前後)でOK |
| バスキングスポット温度 | 32〜35℃ | 低いと体温が上がらずバスキングしない |
| 室温(室内飼育時) | 20〜28℃ | 冬は暖房との兼ね合いを考える |
| 水替え頻度 | 週1〜2回(フィルターあり) | フィルターなしは毎日〜2日に1回 |
| 水深 | 甲長の1.5〜2倍程度 | 浅すぎると遊泳できない。深すぎると溺れる危険も |
| カルキ(塩素)除去 | 必須 | カルキ抜き剤使用またはバケツで一晩置く |
水替えの方法とコツ
クサガメは魚と比べて水を汚すのが非常に速いため、水替えは飼育の要です。全換水より部分換水(1/3〜1/2)を頻繁に行う方が、水質の急変を防げて安心です。
水替えの際は、フィルターのスポンジや底砂もあわせて軽く洗うと汚れが溜まりにくくなります。ただし、ろ過バクテリアを完全に殺さないよう、必ず水道水ではなくカルキ抜きした飼育水またはカメの水槽の水で洗いましょう。
夏場は特に水の腐敗が速まります。水温が28℃を超える場合は水替え頻度を増やし、直射日光が長時間当たらないよう日除けも検討してください。底砂を敷いている場合は砂の中に汚れが蓄積しやすいため、週1回程度プロホース(底砂クリーナー)で吸い出す作業が有効です。
餌の与え方
クサガメの食性と主食
クサガメは雑食性で、動物性・植物性どちらも食べます。主食は市販の配合飼料(亀用ペレット)で問題ありません。バランスよく栄養素が設計されており、これだけでも健康に育てられます。
餌は与えた直後に食べ残したものを取り出すことが大切です。食べ残しはすぐに腐敗して水質を悪化させます。
配合飼料(ペレット)の選び方
亀専用の配合飼料にはさまざまなサイズがあります。幼体には小粒タイプ、成体には大粒タイプを選びましょう。フロート(浮遊)タイプが一般的で、食べ残しが目で見て確認できるため管理しやすいです。
主なペレットの特徴:
- テトラ レプトミン:定番の亀用フード。バランスが良く多くのカメが好む
- GEX ビタミン入り亀のエサ:ビタミン補給もできる便利なフード
- キョーリン ひかりクレスト カメ:高タンパクで成長期の亀に適している
副食(野菜・生き餌)の与え方
ペレット主食に加えて、副食として野菜や生き餌を与えると栄養バランスが向上します。ただし、副食を多く与えすぎると偏食になることがあるため、あくまで「おやつ程度」にとどめましょう。
与えてよい食材:
- 野菜:小松菜・チンゲン菜・レタス・ニンジン(カルシウムが豊富な葉物野菜が特に良い)
- 魚・エビ:シラスや乾燥エビ(高たんぱく。与えすぎると肥満に注意)
- 生き餌:メダカ・ドジョウ・ミミズ・コオロギ(カメが狩る楽しみも提供できる)
- 果物:リンゴ・イチゴなど(少量のご褒美として)
与えてはいけない食材:
- ホウレン草(シュウ酸がカルシウム吸収を阻害)
- ネギ・タマネギ・ニラ(毒性あり)
- アボカド(すべての爬虫類に有害)
- 加工食品・塩分の多い食べ物
餌の量と頻度
与える量の目安は「頭の大きさ分程度」を1回の給餌量とするのが一般的です。成体は1日1〜2回、幼体は毎日食べられるだけ与えます。
水温が20℃を下回ってくると食欲が落ち始めます。15℃以下では食べなくなることも多いため、食欲に合わせて給餌量を調整してください。水温が低いのに無理に食べさせると消化不良の原因になります。
臭いの対策
クサガメの臭腺とは
クサガメの臭いの原因は「臭腺(しゅうせん)」です。後ろ足の付け根(鼠径部)と脇の下(腋窩部)に計4つの臭腺があり、脅威を感じたときにムスクのような独特の臭いを放出します。
この臭いは天敵から身を守るための防衛手段です。飼育環境に慣れた個体は臭いを出すことがほとんどなくなりますが、捕まえたばかりや神経質な個体は頻繁に臭いを出すことがあります。
臭腺の臭い自体は水に溶けても残るため、水交換も大切ですが、臭いを出させないような穏やかな扱いがもっとも重要です。
水の臭いの原因と対策
クサガメ飼育で感じる「臭い」のもうひとつの原因は、水の汚れです。カメの排泄物・食べ残し・皮膚から剥がれた角質などが水中で分解されてアンモニアが発生し、独特の生臭さを生みます。
水の臭い対策:
- フィルターの充実:ろ過バクテリアによる生物ろ過が効果大
- 水替えの頻度を上げる:週1〜2回を目安に
- 餌の食べ残しをすぐ取り除く:スポイトやピンセットで残飯除去
- ゼオライト(活性炭)入りフィルター材の使用:アンモニア吸着効果
- 屋外飼育への切り替え:換気が良い環境では臭いが気にならない
室内飼育の臭い対策:置き場所のコツ
水槽を換気扇や窓の近くに置くだけでも臭いのこもりが大幅に改善します。また、水槽を蓋で完全に塞ぐと臭いがこもりやすいので、通気孔のある蓋を選ぶか、ある程度開けておくことをおすすめします。
個体が臭いを出しにくくするには
クサガメが臭いを出すのは「怖い」「危ない」と感じたときです。日常的に穏やかに扱い、ストレスを最小限にすることで、臭いを出す頻度を減らせます。
具体的な方法:
- 急激な動作で驚かさない(容器に近づくときはゆっくり)
- 持ち上げるときは甲羅の両側をしっかり持つ(足をブラブラさせない)
- 毎日同じ時間に給餌するなど、ルーティンを作る
- 水替えの際もゆったりとした動作で行う
冬眠のさせ方と注意点
冬眠させるかどうかの判断
クサガメは秋が深まり水温が10℃以下になると自然に冬眠に入ります。冬眠させることで繁殖ホルモンが正常に分泌され、翌春以降の発情・産卵に良い影響を与えます。また、自然な生活サイクルに沿った飼育ができます。
ただし、冬眠は体力が必要なため、以下の個体には冬眠を避けた方が安全です:
- 生まれて1年目の幼体(体力が十分でない)
- 病気・怪我をしている個体
- 秋までに十分な体重増加ができていない個体
- 購入したばかりで環境に慣れていない個体
冬眠前の準備(秋の過ごし方)
冬眠を成功させるためには、秋(9〜11月)の過ごし方が重要です。冬眠前にしっかり体力をつけておくことが、無事に春を迎えるカギになります。
秋〜冬眠前のチェックリスト:
- 十分な餌やりで体内に栄養を蓄えさせる
- 水温が15℃以下になったら給餌を止める(消化不良防止)
- 健康チェック(目・鼻・口・甲羅・皮膚の状態確認)
- 冬眠用の容器を準備する
冬眠の方法(水中冬眠 vs 陸上冬眠)
クサガメの冬眠方法は大きく分けて「水中冬眠」と「陸上冬眠」の2種類があります。
水中冬眠(推奨):
深い水深(20〜30cm以上)の容器に入れ、水が凍らない場所(屋外でも縁の下など)に置きます。カメは水底でじっとしたまま越冬します。皮膚からの酸素吸収で呼吸するため、水面が凍らない程度の水量が必要です。
陸上冬眠:
土や腐葉土を敷いた容器に入れ、土中に潜って冬眠させる方法です。水分を保てる土質が必要で、乾燥しすぎると脱水で死亡することがあるため管理が難しい面があります。
冬眠明けの対処法
春になり水温が10℃を超えてくると、カメが自然に目覚め始めます。冬眠明けのカメはとても衰弱しているため、急に大量に餌を与えるのは禁物です。
冬眠明けのステップ:
- 水温が15℃以上になるのを待つ
- 健康チェック(目を開けているか・四肢が正常に動くか確認)
- 少量の餌から徐々に給餌量を増やす
- バスキングを十分にさせる
- 水温が安定した20℃以上になれば通常飼育に戻す
冬眠させない場合のヒーター管理
冬眠させない場合は、水中ヒーターで水温を25℃前後に保つことで、通年活発に活動させることができます。ヒーターはサーモスタット付きのものを選び、誤作動による水温上昇を防ぎましょう。
ただし、室内での保温飼育は電気代がかかります。また、毎年冬眠させないと繁殖が難しくなる場合があります。
繁殖・産卵管理
雌雄の見分け方
クサガメの性別はある程度成長した個体(甲長8cm以上)であれば、外見で判断できます。
| 判別ポイント | オス | メス |
|---|---|---|
| 尾の長さ | 長くて太い | 短くて細い |
| 腹甲(お腹の甲羅) | 凹んでいる(交尾時の姿勢のため) | 平ら |
| 体の大きさ | 小さい(10〜15cm) | 大きい(20〜30cm) |
| 体色(成熟後) | 全身が黒くなる傾向 | 黒化は少ない。黄色い模様が残る |
| 前足の爪 | 長い(交尾時に使う) | 短め |
繁殖のための条件
クサガメの繁殖には、自然の季節変化を体験させることが重要です。冬眠を経験させることで春に交尾行動が起きやすくなります。
繁殖の流れ:
- 春(4〜5月):冬眠明け後に交尾が行われる。オスがメスを追い回し、前足でメスの顔を触る求愛行動を見せる
- 初夏(5〜7月):メスが産卵場所を探し始める。陸地を歩き回ったり、土を掘るような動作をし始めたら産卵が近い
- 産卵:柔らかい土や砂に穴を掘り、1回に3〜10個程度の卵を産む
- 孵化:60〜80日前後で孵化(気温によって変わる)
産卵場所の作り方
産卵のためには、メスが穴を掘れる十分な深さの土が必要です。深さ15〜20cm以上の土(川砂・腐葉土など)を入れた産卵ボックスを用意しましょう。
産卵ボックスは飼育容器の一角に設置するか、産卵期のみ別容器に移して産ませます。産卵したら卵を掘り出し、孵卵器(インキュベーター)または温度管理ができる場所で管理します。
産卵間近のサインとして、メスが陸地を歩き回る・後ろ足で地面を掻く・餌への反応が鈍くなるなどの行動が見られます。こうしたサインが出たら産卵ボックスを準備し、夜間や早朝に産卵することが多いため観察を続けましょう。
卵の孵化管理
産卵された卵は向きを変えないよう注意しながら、湿らせたバーミキュライト(孵化用底材)に埋めて管理します。温度28〜30℃・湿度80〜90%程度を維持すると、60〜80日程度で孵化します。
孵化が近くなると、卵の表面に水滴が付いたり、卵が若干膨らんで見えることがあります。孵化直前に卵に小さな切れ目(ピッピング)が入り、そこから数時間〜1日かけて幼体が出てきます。完全に出てきてから取り出してあげましょう。無理に引き出すと、まだ卵黄が繋がっている場合があり危険です。
孵化した幼体は、最初の数日間は卵黄を吸収しながら過ごします。この間はまだ餌を食べないため、給餌は卵黄が吸収されてから(ヘソが閉じてから)開始します。
かかりやすい病気と対処法
肺炎・気道感染症
クサガメがかかりやすい代表的な病気のひとつが肺炎です。低温・通気不良・水質悪化などのストレスによって引き起こされます。
症状:口を開けてゼーゼーと呼吸する、水面に浮いたままで潜れない、傾いて泳ぐ、食欲低下。
原因:急激な温度変化・冷えた水への長時間露出・不衛生な水質。
対処法:保温してカメを暖め、できるだけ早く爬虫類を診られる獣医師に相談してください。抗生物質の投与が必要なことが多く、自然治癒はほぼ見込めません。
ビタミンA欠乏症(眼の病気)
症状:目が腫れる・白く濁る・目が開かない。まぶたが膨張して目が見えなくなる。
原因:野菜不足・配合飼料のみに偏った食事によるビタミンA不足。
対処法:小松菜・チンゲン菜などビタミンAを含む緑黄色野菜を与え、必要に応じてビタミン剤を添加します。症状が重い場合は獣医師へ。
代謝性骨疾患(くる病)
症状:甲羅が柔らかい・変形する・骨格が歪む。四肢に力が入らない。
原因:UVBライト不足・カルシウム不足・ビタミンD3不足によるカルシウム代謝異常。
対処法:UVBライトを設置・交換し、カルシウム補給剤(カルシウムパウダー)を餌に添加します。進行した場合は獣医師へ。予防が最大の対策です。
甲羅の病気(水カビ・シェルロット)
症状:甲羅に白い斑点やふやけた部分が現れる。表面が剥がれる・穴が開く(シェルロット)。
原因:水質悪化・陸地での乾燥不足・真菌感染・細菌感染。
対処法:軽症なら水質改善とバスキングの充実で自然治癒することもあります。患部をヨード液(イソジン)で消毒する方法もありますが、悪化している場合は獣医師へ。
食欲不振・拒食
症状:餌を食べない日が続く。
原因:水温低下・病気のサイン・ストレス・季節的な変化(冬眠前)・偏食。
対処法:水温を確認し、適正範囲内であれば病気のサインである可能性を疑い観察を続けます。2週間以上まったく食べない場合は獣医師へ相談を。
爬虫類を診られる動物病院を事前に探しておこう
すべての動物病院がカメを診られるわけではありません。「爬虫類対応」「エキゾチックアニマル専門」の動物病院をあらかじめ探しておくと、いざというときに慌てずに済みます。特に冬眠明けの春と夏〜秋は体調不良が出やすい季節です。
| 病名 | 主な症状 | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 肺炎 | ゼーゼー呼吸・傾いて泳ぐ | 低温・水質悪化 | 保温・獣医師へ |
| ビタミンA欠乏 | 目が腫れる・白濁 | 緑黄色野菜不足 | 野菜追加・ビタミン剤 |
| 代謝性骨疾患 | 甲羅が柔らかい・変形 | UVB不足・カルシウム不足 | UVBライト設置・カルシウム添加 |
| 水カビ・シェルロット | 甲羅の白斑・剥がれ | 水質悪化・乾燥不足 | 水質改善・バスキング充実 |
| 拒食 | 餌を食べない | 水温低下・ストレス・病気 | 水温確認・2週間以上は獣医師へ |
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亀用配合飼料(テトラ レプトミン)
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クサガメに必要な栄養バランスが設計された定番フード。幼体から成体まで対応
爬虫類用UVBランプ
約2,000〜5,000円
室内飼育に必須のUVBランプ。クサガメの甲羅・骨格を健康に保つために欠かせない
亀用フィルター(外部フィルター・上部フィルター)
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水を汚しやすいクサガメには強力なフィルターが必須。水替えの手間を大幅に削減できる
※ 価格は変動します。最新価格はリンク先でご確認ください
よくある質問(FAQ)
Q, クサガメはなぜ臭いのですか?
A, クサガメは後ろ足の付け根などにある「臭腺」から、危険を感じたときに独特の臭いを放出します。これは天敵から身を守るための防衛手段です。飼育環境に慣れた個体は臭いをほとんど出さなくなります。水の臭いが気になる場合は、フィルターの強化と水替えの頻度を上げることで大幅に改善できます。
Q, クサガメは冬眠させないといけませんか?
A, 必ずしも冬眠させる必要はありません。水中ヒーターで水温を25℃前後に保つことで、通年活動させることができます。ただし、繁殖を目指す場合は冬眠経験が繁殖行動に良い影響を与えます。健康状態が不安な個体や幼体は冬眠を避けた方が安全です。
Q, クサガメの寿命はどのくらいですか?
A, 適切な環境で飼育された場合、30〜50年以上生きることがあります。野生個体でも20〜30年以上生きる記録があります。クサガメは長生きするペットですので、飼い始める際は「一生面倒を見る」という覚悟を持つことが大切です。
Q, クサガメに必要な水槽サイズはどのくらいですか?
A, 成体(特にメス・甲長20〜30cm)の場合、幅120cm以上の容器が理想です。甲長の5倍以上の幅が目安とされています。幼体のうちは60cm程度でも飼育できますが、成長に合わせて容器を大きくしていく必要があります。
Q, クサガメはどのくらい食べさせればよいですか?
A, 1回の給餌量の目安は「カメの頭の大きさ分程度」です。成体は1日1〜2回、幼体は毎日与えましょう。食べ残しが出るようなら与えすぎです。肥満は病気の原因になるため、適正体重を維持することが長寿への近道です。
Q, クサガメはなついますか?
A, 犬や猫のように積極的になつくわけではありませんが、飼い主の顔や声を認識する能力はあります。毎日給餌することで「この人=餌をくれる存在」と学習し、近づくと首を伸ばしてアピールするようになります。スキンシップは嫌いな個体も多いため、無理に触れないことが信頼関係を築くコツです。
Q, クサガメとニホンイシガメを一緒に飼えますか?
A, 推奨しません。クサガメとニホンイシガメは交雑(ハイブリッド)が起きることがあり、遺伝的な問題が生じます。また、ニホンイシガメはクサガメより弱い傾向があり、食事や縄張り争いで圧迫されることがあります。混泳させる場合は十分な広さとシェルターを確保し、慎重に観察してください。
Q, 甲羅が白くなってきました。病気ですか?
A, 甲羅の白い変色にはいくつかの原因が考えられます。乾燥・脱皮・水カビ・シェルロット(細菌感染)などです。陸地でバスキングした後に白っぽく見える程度なら正常ですが、白い斑点が増える・表面が剥がれる・柔らかくなるといった症状があれば水カビまたはシェルロットの可能性があります。水質改善とバスキングの充実を試み、悪化する場合は獣医師へ相談してください。
Q, クサガメの卵はどうすれば孵化しますか?
A, 産卵された卵は向きを変えないよう注意しながら取り出し、湿らせたバーミキュライトに半分埋めた状態で管理します。温度28〜30℃・湿度80〜90%を保つと、60〜80日程度で孵化します。市販の爬虫類用インキュベーターがあると管理が楽になります。乾燥しすぎると卵がしぼみ、過湿だとカビが生える危険があるためバランスが大切です。
Q, クサガメを飼育していますが、野外に逃がしてもいいですか?
A, 絶対にやめてください。飼育個体を野外に放すことは法律上の問題がある場合があり(外来生物法・自然公園法等)、生態系への影響も懸念されます。また、飼育下で育ったカメは野外での生存能力が低く、放流後に短命になることが多いです。飼えなくなった場合は、爬虫類の引き取りをしている団体や里親募集サービスを探してください。
Q, クサガメのオスとメスはどう見分ければよいですか?
A, 最も確実な判別方法は「尾の長さ」です。オスは尾が長く太く、排泄孔が甲羅の縁より外側にあります。メスは尾が短く細く、排泄孔が甲羅の縁より内側にあります。また、成熟したオスは全身が黒くなる「黒化」が起きやすく、腹甲がわずかに凹んでいます。甲長8cm以上になると比較的判別しやすくなります。
クサガメを長寿に育てるための飼育のコツ
日々の健康チェックの仕方
クサガメの健康管理は、毎日の観察が基本です。病気の多くは早期発見・早期対応で治癒率が大幅に上がります。以下のポイントを給餌のたびにチェックする習慣をつけましょう。
- 目:両方しっかり開いているか。腫れや白濁がないか
- 鼻・口:鼻水・泡が出ていないか。口が正常に閉じるか
- 甲羅:変色・軟化・剥がれがないか。白い斑点が増えていないか
- 皮膚・四肢:傷や腫れがないか。爪が正常か
- 食欲:餌に対する反応はいつも通りか
- 排泄:便の色・量・硬さに異常がないか
- 動き:バスキングを行っているか。水中で自然に泳いでいるか
少しでも「いつもと違う」と感じたら、水温・水質・ライトを確認して環境を整え、改善しない場合は早めに爬虫類専門の動物病院に相談することをおすすめします。
脱走対策と飼育ケースの安全管理
クサガメは意外と力が強く、また器用な動きができます。水槽の縁に足を掛けて脱走を試みることがあるため、容器の高さを十分確保するか、しっかりした蓋を設置することが重要です。
特に注意が必要なシチュエーション:
- 産卵期のメス:産卵場所を探して積極的に移動しようとする
- 水替え中:容器の外に出たまま乾燥・熱中症になる危険がある
- 屋外飼育:壁を乗り越えたり、隙間をくぐって脱走する個体もいる
室内で脱走した場合、カメが見つからないと乾燥・餓死・踏み潰しなどの危険があります。「いつもいる場所にいない」と気づいたら、部屋の隅・家具の下・暗い場所を重点的に探してください。
多頭飼育する場合の注意点
クサガメを複数飼育する場合は、個体間のサイズ差と性別に注意が必要です。
- サイズ差:大きな個体が小さな個体をいじめることがある。甲長差が2cm以上あると、小さい方がストレスを受けやすい
- オス同士:縄張り争い・喧嘩が起きやすい。特に繁殖期(春〜初夏)は攻撃性が増す
- オスとメス:交尾のストレスでメスが弱ることがある。メスが休める場所を十分確保する
- スペース:多頭飼育は単独飼育の2〜3倍の広さが必要。1頭あたりの泳ぐスペースを確保する
複数の個体が同じ容器でのびのびと暮らせるよう、シェルター(隠れ家)・バスキングスポット・餌場を複数用意してあげましょう。
クサガメの長寿の秘訣
30〜50年生きるとされるクサガメの長寿を実現するために、最も重要なことは「ストレスの少ない安定した環境を維持し続けること」です。
長寿に向けた管理のポイント:
- 適正体重の維持:肥満は内臓への負担を増やし、寿命を縮める。足の付け根に脂肪が溜まりすぎていないかチェック
- UVBの継続的な確保:室内飼育では定期的なライト交換を怠らない
- 年1回の健康診断:爬虫類を診られる獣医師による定期健診で、目に見えない異常を早期発見
- 水質の安定:急激な水質変化を避け、フィルターのメンテナンスを定期的に行う
- ストレスの最小化:過度なハンドリング・騒音・温度の急変を避ける
まとめ
クサガメは、適切な飼育環境を整えれば30〜50年もの長きにわたって私たちの生活に寄り添ってくれる、とても魅力的なパートナーです。
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます:
- 飼育容器:成体のメスには幅120cm以上の大型容器を。陸地(バスキングスポット)は必須
- ライト:室内飼育では UVBライトとバスキングライトの両方が不可欠。UVBは6〜12ヶ月で交換
- フィルター:クサガメは水を汚しやすいため、能力の高いフィルターを選ぶ
- 水温:活動時は20〜28℃。冬眠させない場合はヒーターで25℃前後を維持
- 餌:配合飼料を主食に、緑黄色野菜を副食として。与えすぎに注意
- 臭い対策:フィルター強化+水替え頻度アップで大幅改善。個体を穏やかに扱うことも重要
- 冬眠:健康な成体は冬眠させた方が自然なサイクルで育てられる。幼体・病体は保温飼育を
- 病気予防:UVB確保・水質維持・適正栄養が三大予防策。爬虫類対応の動物病院を事前に確認
「臭い」という名前を持つクサガメですが、慣れた個体は臭いをほとんど出さなくなりますし、毎日の給餌を通じて少しずつ飼い主を認識してくれるようになります。
最初は地味に見えるかもしれないクサガメですが、一緒に過ごす時間が長くなるほど、その個性やしぐさに愛着が湧いてきます。日常の水替えのひとときや、春の冬眠明けの瞬間など、クサガメとの生活には他のペットでは味わえない独特の喜びがあります。
クサガメは犬や猫のように毎日散歩に連れて行く必要はありませんし、大きな鳴き声を上げることもありません。でも、その分「確かにここにいる」という存在感と、静かな命の輝きを感じさせてくれます。水槽の前でじっと見ていると、何時間でも過ごせてしまうほど、その表情は豊かです。
クサガメを迎えたら、ぜひ長期的な視点で飼育計画を立ててください。「今の住環境で30年飼い続けられるか」「将来もし転勤になった場合どうするか」まで考えておくと、より責任ある飼育につながります。それだけ真剣に向き合う価値がある、それがクサガメという生き物の魅力だと私は思っています。
クサガメの飼育でご不明な点があれば、ぜひコメント欄でご質問ください。同じく日本の淡水生物を飼育されている方には、以下の記事もあわせてご覧いただけると嬉しいです。


