「ドジョウ」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?泥の中でくねくね動く、ちょっと地味な魚……そう思っていた時期が私にもありました。でも実際に飼い始めてみると、その愛嬌のある動き、コミカルな表情、そして種類ごとに全く異なる個性に完全に魅了されてしまいました。
日本には実に多様なドジョウが生息しています。田んぼや用水路でおなじみのマドジョウ、美しい縞模様が特徴のシマドジョウ、清流の宝石とも呼ばれるホトケドジョウ、そして渓流に棲む希少なアジメドジョウやスジシマドジョウなど、個性豊かな面々が揃っています。
この記事では、日本産ドジョウの全種類を徹底解説します。各種の生態・特徴・飼育方法から採集のコツ、水槽設置のポイント、混泳相性、繁殖方法まで、私なつが実際の飼育経験をもとに丁寧にお伝えします。「ドジョウを飼ってみたい!」という方から「もっと深く知りたい!」という方まで、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事でわかること
- 日本に生息するドジョウの全種類と比較一覧
- マドジョウの生態・特徴と初心者向け飼育方法
- シマドジョウの特徴と飼育のコツ(流水性の管理)
- ホトケドジョウの現状と飼育における注意点
- アジメドジョウ・スジシマドジョウなど希少種の紹介
- 採集方法と在来種保護に関する重要なルール
- 底砂の選び方・水槽レイアウトのポイント
- 混泳できる魚・できない魚の判断基準
- 繁殖のさせ方と稚魚の育て方
- 病気の予防・対処法と長期飼育のコツ
- よくある質問(FAQ)12問を完全回答
日本産ドジョウの種類一覧と比較
日本には現在、少なくとも10種類以上のドジョウ類(コイ目ドジョウ科など)が生息しています。広義には「ドジョウの仲間」としてまとめられることが多いですが、正確には複数の属・科に分類されます。私が実際に野外調査や水槽観察で出会ってきた種類を中心に、代表的な日本産ドジョウを一挙紹介します。
代表的な種類をまとめると以下のようになります。
| 種類 | 体長 | 生息地 | 保全状況 | 飼育難易度 |
|---|---|---|---|---|
| マドジョウ | 10〜20cm | 全国の平野部・田んぼ・用水路 | 低危険(LC) | ★☆☆(易しい) |
| シマドジョウ | 10〜12cm | 全国の中〜上流域の砂礫底 | 準絶滅危惧(NT) | ★★☆(中程度) |
| ホトケドジョウ | 5〜8cm | 湧水・細流・田んぼ周辺 | 絶滅危惧Ⅱ類(VU) | ★★★(難しい) |
| アジメドジョウ | 6〜9cm | 近畿〜中部の渓流 | 絶滅危惧Ⅱ類(VU) | ★★★(難しい) |
| スジシマドジョウ大型種 | 10〜16cm | 関東・中部の河川中流域 | 絶滅危惧Ⅱ〜ⅠB類 | ★★☆(中程度) |
| トウカイコガタスジシマドジョウ | 6〜9cm | 東海地方の砂礫底河川 | 絶滅危惧ⅠB類(EN) | ★★★(難しい) |
| ヒメドジョウ | 4〜7cm | 東北〜関東の細流・湿地 | 絶滅危惧Ⅱ類(VU) | ★★★(難しい) |
| ナガレホトケドジョウ | 5〜8cm | 近畿〜中国の流水域 | 絶滅危惧ⅠB類(EN) | ★★★(難しい) |
| フクドジョウ | 7〜10cm | 北海道・東北の清流 | 準絶滅危惧(NT) | ★★☆(中程度) |
| イシドジョウ | 6〜9cm | 中国地方〜九州の渓流 | 絶滅危惧ⅠB類(EN) | ★★★(難しい) |
ドジョウ類の分類について
日本のドジョウ類は分類上、主にドジョウ科(Cobitidae)に属しています。かつては「シマドジョウ科(Botiidae)」として別の科に分けられていた種もありましたが、近年の分子系統解析により分類が整理されつつあります。一般的な飼育者の観点では、体型・習性・生息環境の違いで種を理解するのが実用的です。
大まかには「泥底に潜るタイプ(マドジョウなど)」と「砂礫底の流れを好むタイプ(シマドジョウ・アジメドジョウなど)」に分けられます。水槽設置のアプローチが異なるため、どちらのタイプを飼育するかによって設備選びが変わります。
絶滅危惧種が多い背景
上の表を見てわかる通り、日本産ドジョウの多くが絶滅危惧種に指定されています。主な理由は以下の通りです。
- 水田の圃場整備による生息地(水路・小川・湿地)の消失
- 農薬・生活排水による水質悪化
- カワヒバリガイ・ブラックバスなど外来種による捕食圧の増加
- コンクリート護岸による自然護岸の減少
- 気候変動に伴う水量変動・水温上昇
特に里山の湧水地帯・細流を好む種(ホトケドジョウ・ヒメドジョウなど)は、そうした環境が急速に失われたことで個体数が激減しました。飼育する際は採集・入手方法に十分注意しましょう。
マドジョウの特徴と飼育方法
マドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)は、日本でもっとも身近なドジョウです。田んぼのあぜ道や用水路、池の泥底などで広く見られ、夏祭りの屋台でもおなじみの存在。「ドジョウ」といえばまずこの魚を思い浮かべる方がほとんどでしょう。初心者でも飼いやすく、淡水魚飼育入門にも最適です。
マドジョウの基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Misgurnus anguillicaudatus |
| 分類 | コイ目 ドジョウ科 マドジョウ属 |
| 体長 | 10〜20cm(飼育下では15〜20cmになることも) |
| 寿命 | 5〜10年(飼育下) |
| 適水温 | 5〜25℃(最適15〜22℃) |
| 適正pH | 6.5〜7.5 |
| 分布 | 北海道〜九州の平野部全域、朝鮮半島・中国大陸にも分布 |
| 食性 | 雑食性(藻類・デトリタス・水生昆虫・小型甲殻類) |
| 保全状況 | 低危険(LC:最も懸念が少ない) |
| ヒゲの数 | 5対10本(上顎3対・下顎2対) |
マドジョウの体の特徴
マドジョウは細長い円筒形の体型をしており、成魚は15〜20cmほどに成長します。体色は黄褐色〜暗褐色で、背面から側面にかけて不規則な斑点が並びます。口は下向きで、口のまわりに5対10本のヒゲ(上顎に3対、下顎に2対)があります。このヒゲで底砂の匂いを嗅ぎながら、食べ物を探します。
また、ドジョウは腸管でも空気中の酸素を吸収できる特殊な能力を持っています。これを腸呼吸と呼び、溶存酸素が少ない水田や用水路でも生き延びられるのはこのためです。水面に上がってきてぷくっと空気を吸い、肛門から出す仕草は腸呼吸の瞬間で、飼育下でもよく見られる行動です。
マドジョウの飼育環境の整え方
水槽サイズは、1〜2匹なら45cm水槽、3匹以上なら60cm以上を用意しましょう。マドジョウは比較的大型になり、砂に潜る行動が多いため横幅のある水槽が向いています。高さよりも底面積の広い水槽が最適です。
底砂はマドジョウが潜れる細かい砂(田砂・川砂・ボトムサンド)を5cm以上敷きましょう。潜ることはストレス解消にもなる本能的な行動なので、砂のない環境では落ち着けずに弱ってしまうことがあります。大磯砂や砂利など粒が大きすぎるものは潜れないため不向きです。
フィルターは外部フィルターまたは上部フィルターがおすすめ。水流は強すぎない設定にし、吸水口は細かいスポンジで覆って稚魚・小型個体の吸い込み事故を防いでください。底面フィルターは砂に潜るドジョウが掃除・交換を難しくするため、あまりおすすめしません。
水温管理はマドジョウは5℃から25℃と幅広い温度に対応します。ただし、30℃を超えると急激に弱るため夏場の高温には要注意。冷却ファンまたは水槽用クーラーで水温を25℃以下に保つようにしましょう。冬場は無加温でも越冬できますが(底砂に潜って冬眠状態になります)、15〜22℃程度に維持すれば年間を通じて活発に活動します。
マドジョウの餌の選び方と与え方
マドジョウは雑食性なので、沈下性の配合飼料を主食に与えると管理が楽です。浮上性の餌は水面まで上がってこないマドジョウには向きません。沈んだ後、底面でもぐもぐと食べる姿がとても愛らしいです。
おすすめの餌は以下の通りです。
- ドジョウ専用の沈下性ペレット(キョーリンひかりドジョウなど)
- コリドラス用タブレット(よく沈んで食べやすい)
- 冷凍赤虫(嗜好性が非常に高い。おやつ程度に与えるのがベスト)
- 乾燥糸ミミズ
- 野菜のおやつ(茹でたほうれん草・キュウリなど)
給餌は1日1〜2回、3〜5分で食べ切れる量が目安です。与えすぎると水質悪化の原因になります。食べ残しはすぐに取り除くようにしましょう。
シマドジョウの特徴と飼育方法
シマドジョウ(Cobitis biwae)は、体側に走る美しい縞模様から名付けられた、マドジョウと並ぶ代表的な日本産ドジョウです。マドジョウより細身でスマートな体型をしており、砂礫底の流れがある場所を好みます。飼育下でも清水を好む傾向があるため、マドジョウよりやや飼育難易度は上がりますが、その分美しい姿を間近で観察できる喜びがあります。
シマドジョウの基本情報と体の特徴
シマドジョウは体長10〜12cmほどで、マドジョウより一回り小さく細身の体型です。体色は淡黄色〜白色を基調とし、体側に2本のラインと褐色の小斑点列が並ぶのが特徴です。近縁種にオオシマドジョウ・アリアケシマドジョウ・ヤマトシマドジョウなどがおり、体の模様のパターンで見分けます。
眼の下に眼下棘(がんかきょく)と呼ばれる小さな棘を持ち、敵に攻撃されると棘を立てて防衛します。網での採集時に棘が絡まりやすいので注意が必要です。また、ヒゲはマドジョウと同じく10本(5対)あります。
シマドジョウの飼育のポイント
シマドジョウはマドジョウより酸素量・水質の清潔さに敏感です。以下のポイントを守れば長期飼育が可能です。
- 水槽サイズ:60cm以上を推奨(底面積が広いほど良い)
- 底砂:細かい川砂または田砂を5cm以上。砂に潜れる環境が必須
- フィルター:外部フィルターが最適。エアレーションも必ず設置
- 水温:15〜23℃が最適。25℃を超えないよう管理
- 水換え:週1〜2回、1/3〜1/4程度。清水を好むため水質維持が重要
- 水流:弱い水流を作るとよりイキイキと行動する
シマドジョウの近縁種について
シマドジョウの仲間は日本各地に地域固有の種・亜種が存在します。代表的なものを紹介します。
- オオシマドジョウ(Cobitis magnostriata):関東〜東海に分布。シマドジョウより大型になる
- アリアケシマドジョウ(Cobitis striata striata):九州北部・有明海流入河川固有
- ヤマトシマドジョウ(Cobitis sp.):中部〜近畿に分布する種群
- トウカイコガタスジシマドジョウ:東海地方固有の小型種。絶滅危惧ⅠB類
これらはそれぞれ固有の生息地を持つため、採集の際は地域のルールに加えて、種の同定にも注意が必要です。
ホトケドジョウの特徴と保全の現状
ホトケドジョウ(Lefua echigonia)は、日本産ドジョウの中でもとりわけ特別な存在です。最大体長8cm程度と小型で、丸みのある顔とつぶらな瞳が仏様のように穏やかに見えることからこの名が付けられました。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されており、生息地では保護の取り組みが進んでいます。
ホトケドジョウの生態と生息環境
ホトケドジョウは湧水や細流、水田周辺の小水路など、水温が低く清潔な流れを好みます。他のドジョウと異なり、ヒゲは3対6本と少なく、体型も丸みを帯びた可愛らしい印象です。分布は本州の日本海側(新潟〜島根)と一部太平洋側に限られており、生息地は非常に限局的です。
生息に必要な環境条件が厳しく、農業用排水路の整備・湧水の枯渇・農薬による水質汚染などで生息地が激減しました。現在は湧水が湧き出る自然護岸の細流や、保全活動が行われている水田地帯の水路など、ごく限られた場所にしか生息していません。
ホトケドジョウの飼育における注意点
ホトケドジョウの飼育は水温管理が最大の難関です。適水温は10〜20℃と低く、夏場の高水温(25℃以上)に非常に弱いため、水槽用クーラーが必須となります。これが飼育難易度を高めている最大の要因です。
- 水温:10〜20℃(夏は冷却機器が必須)
- 水質:清水を好む。弱酸性〜中性(pH 6.5〜7.2)
- 水槽:45〜60cm。底砂は細かい砂を使用
- 餌:赤虫・ミジンコ・糸ミミズが好物。人工飼料への慣らしは時間がかかる
- 混泳:温和だが、ヤゴ・ドジョウ類・コイ科との混泳は要確認
- 採集・入手:絶滅危惧種につき採集には細心の注意が必要。販売店での購入を推奨
ホトケドジョウの保全活動
各地でホトケドジョウの保全活動が行われています。地域住民・学校・NPOが連携して湧水環境を守る取り組みや、学校ビオトープでの飼育・繁殖プログラムなどが進んでいます。飼育経験のある方は、こうした保全活動への参加や支援も検討してみてください。
アジメドジョウ・スジシマドジョウなどの希少種
日本には、一般的にはあまり知られていない希少なドジョウが数多く存在します。これらはいずれも特定の地域・環境にしか生息しておらず、飼育のためには専門的な知識と設備が求められます。ここでは代表的な希少種を紹介します。
アジメドジョウ
アジメドジョウ(Niwaella delicata)は、近畿地方から中部地方の渓流に生息する小型のドジョウです。体長6〜9cmで、渓流の岩の隙間や早瀬の砂礫底に棲んでいます。「アジメ」という名前は、かつてこの魚を「鯵目(あじめ)」と呼んでいたことに由来するとも言われています。
飼育には水温15℃以下の清潔な流水環境が必要で、水槽での長期飼育は非常に難しい種類のひとつ。環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。渓流環境の整備・ダムによる流量変化・河床の変化が個体数減少の主な原因です。
スジシマドジョウ大型種(各地域種)
スジシマドジョウの仲間は日本各地に複数の種・亜種が分布しています。かつては「スジシマドジョウ」として一括されていましたが、近年の研究で地域ごとに異なる種(または亜種)であることが明らかになってきました。
- スジシマドジョウ大型種(関東型):関東〜中部。絶滅危惧Ⅱ類
- スジシマドジョウ大型種(東海型):東海地方。絶滅危惧ⅠB類
- スジシマドジョウ小型種:近畿・中国地方。準絶滅危惧〜絶滅危惧Ⅱ類
いずれも砂礫底の河川中流域に棲み、微細な砂の中に潜る習性を持ちます。飼育下では砂潜り行動が頻繁に見られ、観察していて非常に楽しい種類です。
イシドジョウ・ナガレホトケドジョウ
イシドジョウ(Cobitis takenoi)は中国地方〜九州の渓流・山地河川に生息する、岩盤や礫の隙間を好む希少種です。体側の斑紋が特徴的で、絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。
ナガレホトケドジョウ(Lefua sp.)は近畿・中国地方の流水環境に生息する、ホトケドジョウの近縁種です。ホトケドジョウが湧水・止水を好むのに対し、ナガレホトケドジョウは名前の通り流れのある環境に棲んでいます。こちらも絶滅危惧ⅠB類に指定されており、生息地は非常に限られています。
ヒメドジョウ・フクドジョウ
ヒメドジョウ(Cobitis lutheri)は東北〜関東の細流・湿地に生息する小型のドジョウで、体長は4〜7cmと日本産ドジョウの中で最も小さい部類に入ります。湿地性の環境に特化しているため、生息地の乾燥化・開発には特に脆弱です。
フクドジョウ(Barbatula toni)は北海道・東北に分布し、清流の石の下に棲む習性があります。体型はマドジョウに似ていますが、胸鰭が発達しており、早瀬でも岩に密着して流されない特性を持っています。北海道での分布が広く、アイヌ文化とのかかわりも深い魚です。
採集方法と在来種保護のルール
ドジョウを採集する場合は、在来種の保護と法律・ルールの遵守が最優先です。楽しい採集活動が、知らず知らずのうちに生態系に悪影響を与えることがないよう、必ず以下の点を確認してください。
採集前に確認すべきこと
ドジョウを採集する前に、以下の事項を必ず確認しましょう。
- 採集が禁止・制限されている場所ではないか(国立公園・国定公園内の採集は禁止)
- 対象種が採集禁止種に指定されていないか(特定の都道府県では種別に採集禁止規定がある)
- 私有地・農地での採集には地権者の許可が必要(田んぼや用水路は農家の所有物)
- 川・用水路の採集には漁業権の確認(漁協管轄区域では入漁券が必要なケースがある)
おすすめの採集方法
ドジョウ採集に適した道具と方法を紹介します。
- タモ網(手網):浅場の草際や泥底を掬う。最も基本的な方法
- セルビン(ウケ):えさを入れた筒型の罠を置く。朝・夕に回収
- サデ網・押し付け網:草の根元や石の下に押し当てて掬う
採集後は必ずバケツに水を入れてエアレーションをかけ、魚を弱らせないよう気をつけましょう。炎天下での長時間の移動は水温上昇で死亡リスクが高まります。
絶対にしてはいけないこと
以下は絶対に行わないでください
- 採集した魚を別の水系に放流すること(遺伝子汚染・外来種化のリスク)
- 一度に大量採集すること(個体群への悪影響)
- 繁殖期(春〜初夏)に産卵場所を荒らすこと
- 絶滅危惧種(ホトケドジョウ・アジメドジョウ等)の採集(法律により採集が禁止または規制されているケースがある)
- 外来種(チャネルキャットフィッシュ・ブラックバスなど)を採集水域に持ち込むこと
購入という選択肢
希少種や大量採集を避けたい場合は、アクアリウムショップからの購入が最もリスクが低い選択です。マドジョウは量販店やホームセンターでも取り扱いがあります。シマドジョウ・ホトケドジョウはアクアリウム専門店や通販で購入できることがあります。
購入時は産地情報(可能であれば)を確認し、在来の地域集団を乱さないよう心がけましょう。
水槽設置のポイント(底砂・レイアウト)
ドジョウが快適に暮らせる水槽を作るには、まず「底砂に潜れる環境」を整えることが最優先です。ここでは水槽の基本設置から、レイアウトのコツまで詳しく解説します。
底砂の選び方と厚さ
ドジョウ水槽で最も重要なのが底砂です。以下のポイントを参考に選んでください。
| 底砂の種類 | 粒の大きさ | 特徴 | ドジョウ向き |
|---|---|---|---|
| 田砂(たさ) | 0.2〜0.5mm | 非常に細かく潜りやすい。舞い上がりに注意 | ◎ 最高 |
| 川砂(かわすな) | 0.3〜1mm | 自然素材で水質への影響が少ない | ◎ 最高 |
| ボトムサンド | 0.3〜0.8mm | 管理しやすく人気。ドジョウにも適合 | ○ 良い |
| 大磯砂(細目) | 1〜3mm | 歴史ある定番底砂。少し大きめ | △ まあまあ |
| 溶岩石砂利 | 3〜5mm | バクテリアは定着しやすいが粒が大きい | ✕ 不向き |
| 砂利(大粒) | 5mm以上 | 潜れないためドジョウには不適 | ✕ 不向き |
底砂の厚さは最低5cm、できれば7〜10cmが理想です。薄すぎると潜りきれずにドジョウが落ち着けません。
フィルターと水流の設定
ドジョウ水槽のフィルターは外部フィルターまたは上部フィルターがおすすめです。ポイントは以下の通りです。
- 吸水口はスポンジフィルターで保護(砂ごとドジョウを吸い込むリスク防止)
- 水流は穏やか〜中程度に設定(マドジョウは弱めでOK、シマドジョウは少し強め)
- エアレーションも必ず設置(溶存酸素不足に敏感な種のため)
- 底面フィルターは底砂の掃除が困難になるため不推奨
水草とレイアウトのコツ
ドジョウ水槽のレイアウトでは、以下の点を意識すると住み心地がよくなります。
- 隠れ家を作る:石組み・流木・塩ビ管など、ドジョウが隠れられるスペースを複数作る
- 水草は根を張るタイプを選ぶ:ドジョウが砂を掘り返すため、根がしっかりした水草(アヌビアス・ミクロソリウム・ウィローモス)を選ぶ
- 水草をポットのまま使う:軟質のポットを底砂に埋めるか、流木・石に活着させると掘り返されにくい
- 蓋(ふた)は必須:ドジョウは非常に飛び跳ね(脱走)やすい。隙間のない蓋を必ず設置
混泳相性と注意点
ドジョウは基本的に穏和な性格で、他の魚との混泳が可能です。ただし、相手の魚の習性・サイズ・水質の好みによっては相性が悪いケースもあります。種類ごとの傾向も含めて解説します。
マドジョウの混泳相性表
| 魚種 | 相性 | コメント |
|---|---|---|
| メダカ | ○ | 温度・水質が合えば問題なし。稚魚は食べられる可能性あり |
| タナゴ類 | ○ | 同じ水域出身で相性良好 |
| フナ | ○ | 大型フナはドジョウを傷つけることがあるので注意 |
| オイカワ・カワムツ | ○ | 水質・温度帯が合えば共存できる |
| ヨシノボリ | △ | テリトリー意識が強いヨシノボリはドジョウを攻撃することがある |
| 大型コイ・ソウギョ | ✕ | ドジョウを丸飲みする恐れがある |
| 肉食魚(ナマズ等) | ✕ | 捕食されるリスクが高い |
| エビ類(ミナミヌマエビ等) | △ | ドジョウが砂を掘り返し、エビの生活を乱すことがある |
| 石巻貝・タニシ | ○ | 底のコケを掃除してくれる良いパートナー |
シマドジョウの混泳注意点
シマドジョウは同種内でのテリトリー争いが起きることがあります。同じ種を複数飼育する場合は水槽を十分に広くし、隠れ家を多めに設置してください。
また、シマドジョウはマドジョウより清水を好むため、汚染・高水温に弱い点に注意。温帯性の川魚(オイカワ・アブラハヤ・カワムツ)との混泳は比較的うまくいく組み合わせです。
ドジョウ同士の混泳について
異なる種のドジョウを同一水槽で飼育する際は注意が必要です。大型種と小型種の組み合わせでは、大型のマドジョウが小型のシマドジョウやホトケドジョウを追い回すことがあります。また、水温・水質の好みが異なる種を混泳させると、どちらかに合わせた管理ではもう一方が弱ることになります。可能な限り同種・同サイズの個体を揃えた飼育が理想です。
繁殖について
ドジョウの繁殖は、種類によって難易度が大きく異なります。マドジョウは比較的繁殖させやすい一方、ホトケドジョウ・アジメドジョウなどは飼育下での繁殖が非常に難しいとされています。
マドジョウの繁殖方法
マドジョウの繁殖期は4〜7月(水温上昇とともに)です。オスとメスの見分けは、胸鰭の形で判別できます。オスの胸鰭は細長くとがっており、繁殖期には1枚目の鰭条が太く発達します。メスは胸鰭が丸みを帯びており、腹部が産卵前に大きく膨らみます。
産卵を促すには以下の環境を整えましょう。
- 水温を17〜22℃程度に維持
- 水換えの量を少し増やして刺激を与える(新鮮な水が産卵行動のトリガーになる)
- 水草(マツモ・ウィローモス)を産卵床として用意
- 飼育密度を上げすぎないよう注意
産卵後は親魚が卵・稚魚を食べてしまうことがあるため、卵や稚魚は別水槽で管理するのが安全です。稚魚には孵化後2〜3日はヨークサック(卵黄)から栄養を摂り、その後はインフゾリア(微小生物)やブラインシュリンプ(アルテミア)の幼生を与えます。
シマドジョウの繁殖
シマドジョウの繁殖期も春〜初夏(4〜6月)です。流水性が高いため、産卵には水流や低水温が刺激になります。繁殖期のオスは腹鰭が色づき、メスを追い回す行動が見られます。
水草の間や砂底に産卵しますが、卵の数はマドジョウより少ない傾向があります。稚魚の育て方はマドジョウに準じますが、より清潔な水質が必要です。
ホトケドジョウの繁殖
ホトケドジョウの繁殖期は3〜5月と比較的早く、低水温(12〜16℃)が繁殖のトリガーになります。繁殖期のオスは背鰭に黒い縁取りが現れ、独特の婚姻色になります。
産卵には水草のじゅうたんや流木の下のような隠れた産卵場所が必要です。卵は粘着性で、水草や砂底に産み付けられます。孵化率・生存率を上げるには、卵を採取して専用の孵化ボックスで管理するのが有効です。
かかりやすい病気と対処法
ドジョウは比較的丈夫な魚ですが、水質悪化や急激な環境変化によって病気になることがあります。早期発見・早期治療が回復の鍵です。
白点病(ウオノカイセンチュウ感染)
白点病は体表に白い点(直径0.5〜1mm)が現れる病気で、寄生虫(ウオノカイセンチュウ)によって引き起こされます。水温の急変・輸送ストレス・免疫低下時に発症しやすいです。
治療法:グリーンF(メチレンブルー系)または市販の白点病治療薬を規定量使用。水温を25〜28℃に上げることで寄生虫の生活サイクルを早め、薬の効果を高めます。ただし、低水温を好む種(ホトケドジョウなど)への高水温治療は副作用があるため注意。
尾ぐされ病・ひれぐされ病
カラムナリス菌(細菌)による感染症で、ヒレの縁がボロボロに溶けていく病気です。水質悪化・過密飼育・スレ傷からの二次感染で起こりやすいです。
治療法:グリーンFゴールド顆粒(フラン剤系)またはパラザンD(ニトロフラゾン系)を使用。患部が広がっている場合は即座に隔離し、清潔な水での薬浴を行います。
水カビ病(サプロレグニア感染)
傷口や弱った体表に水カビ(綿状の白いもの)が発生する病気です。低水温期・換水後の水温差・怪我をした後に発症しやすいです。
治療法:メチレンブルー浴またはアグテン(マラカイトグリーン系)での薬浴。ドジョウは薬剤に比較的敏感なため、規定量の半量からスタートして様子を見ることをおすすめします。
病気を予防するための日常管理
| 管理項目 | 頻度・基準 | ポイント |
|---|---|---|
| 水換え | 週1〜2回、1/3量 | 底砂のゴミも同時に吸い出す |
| フィルター掃除 | 月1〜2回 | バクテリアを残すため軽くすすぐ程度 |
| 水温チェック | 毎日 | 温度計設置は必須。25℃を超えたら冷却 |
| 水質検査 | 月1〜2回(亜硝酸・アンモニア) | テトラ社の試験紙が手軽 |
| 食べ残し除去 | 給餌後すぐ | 沈んだ餌は底砂の汚染源になる |
| 新魚のトリートメント | 導入前2週間 | 別水槽で隔離・観察して病気を持ち込まない |
飼育の失敗例とその対策
失敗1:底砂が粗くて潜れない
最も多い失敗が、底砂を大磯砂や砂利にしてしまうケースです。潜れないドジョウは慢性的なストレスにさらされ、食欲が落ち、免疫が下がって病気になりやすくなります。必ず田砂または川砂など細かい砂を使用してください。
失敗2:水温上昇に気づくのが遅れた
夏場に水槽温度計を見逃していて、ある日30℃を超えていてドジョウが仮死状態になっていた……というケースは珍しくありません。水温計は目立つ場所に設置し、毎日確認する習慣をつけましょう。水槽用クーラーまたは冷却ファンの設置が安心です。
失敗3:フタを忘れて脱走
ドジョウは水から飛び出す能力が高く、水槽のわずかな隙間からでも脱走します。特に夜間・早朝に多い。水槽の蓋は必ず全面にわたって設置し、コード穴など隙間はスポンジや布で塞いでください。
失敗4:過密飼育による水質悪化
「ドジョウは丈夫だから多少多くても大丈夫」という考えは禁物です。過密飼育は水質悪化を招き、病気の温床になります。60cm水槽で5〜6匹程度を目安に、余裕を持った飼育密度を保ちましょう。
この記事の要点まとめ
- 日本には10種以上のドジョウが生息し、多くが絶滅危惧種に指定されている
- マドジョウは初心者向けで丈夫。細かい砂と沈下性の餌が基本
- シマドジョウは清水・低水温を好み、マドジョウより飼育難易度がやや高い
- ホトケドジョウは20℃以下の水温管理が必須。水槽用クーラーが必要
- 希少種の採集には法律・ルールを必ず確認すること
- 底砂は田砂・川砂などの細かい砂を5cm以上。脱走防止の蓋も必須
- 薬浴時は規定量の半量から始めること(薬剤感受性が高い)
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