‐ピラニアとは‐
皆さんピラニアというとどのような魚を想像しますか。
おそらく一番有名なシーンは川に入った牛が獰猛で鋭い牙を持つピラニアの群れに襲われ、あっという間に骨だけになってしまう絵面ではないでしょうか。
ただそんな世間一般の実情とは裏腹に、ピラニア達の本質的な性格は非常に憶病で繊細です。実際に飼育してみるとよく分かるのですがすぐにパニックになり、人の影に怯えがちな魚です。
単独を好まず自然界では常に群れを形成して生活しますし、他の大型魚やワニ・亀などの水生爬虫類、鷺など魚食性の鳥類にいともたやすく捕食されてしまいます。
凶暴性が見られるのは血液の匂いなどが水中に漂い、そして彼らが群れを成している時くらいです。つまりはケガなどをして弱っている動物を見つけた時や、群れの集団心理で獲物に対して過剰に攻撃心がそそられている時くらいなんです。
- ピラニア最大種で50~60cmほどになる「ピラニア・ピラヤ」
- これまた大型種で黒褐色の渋さが昔からマニアの間で人気な「ブラックピラニア」
- 小型ですが他魚のうろこしか食べない「ウィンプルピラニヤ」「エロンガータピラニア」
など実に多くの種がショップに行くと目につくことでしょう。
あの凶暴で悪名高い(と植え付けられてしまっている)ピラニアが自分の家、しかも水槽で飼えるということでワクワクする心を抑えきれない方が多いと思います。
ただ上記に述べたピラニアは当時高校生だった私にはとても高価で到底手が出るものではありませんでした。そんな時出会ったのが、表題にある「ピラニアナッテリー」でした。
熱帯魚に興味がない方でもピラニアは大抵の方が想像できると思います。そのピラニアのステレオ像が正に「ピラニアナッテリー」なんです。
ピラニアナッテリーは安定して流通しておりしかも3~4㎝ほどの稚魚が売られていることが殆どです。しかも安価で30年ほど前でも300~400円ほどで購入できました。
今現在もこの価格帯で安定しており、しかも水質や飼育環境に非常にタフでピラニア入門種としては実にとっつきやすい魚です。
そして成魚になると腹部にオレンジ色がかかり、体つきもボリュームが出て、何とも言えない魅力的な魚になります。個人的には高価なピラニアよりナッテリーが個人的には一番綺麗に感じます。
‐ピラニア・ナッテリーの注意点‐
私の飼育経験談から言うと感情の上がり下がりに非常に振れ幅がある魚です。
慣れるまでは水槽を覗き込んだだけでも滅茶苦茶に泳ぎだし、酷いときには水面からジャンプもしてしまいます。
そして餌に関しては「これを食べるぞ」と決めた瞬間は躊躇なく凶暴になります。
もともとピラニアの源流は古くさかのぼると草食魚です。これは近縁種のコロソマやメチニスという魚を見るとよく分かります。ですのでピラニアは自然界では多少なりとも草食傾向がありこれは胃の内容物などの調査からも確定はしているのですが、それは本当に微々たるもので基本的に完全な肉食魚と捉えて間違いはありません。草食傾向も実は誤嚥の範疇なのではと真っ向から否定する研究者もいるほどです。
飛び出し
基本的にすべての魚に言えますが特にピラニアナッテリーはパニックを起こしやすく(その割には基本的に図太い)飛び出してそのまま落ちてしまうことがあります。
ですので必ず蓋をして飼育をしてください。
噛みつき
噛みつきは、まだ3㎝ほどの幼魚だったころ網ですくい傷をつけたくなかったので(幼い魚はこのようなことですぐ感染症にかかり死んでしまいます)うかつにも素手で掬ってしまいました。
別水槽に移す際口を開けたその瞬間、掌にすっぱりと傷がつき血が出ていました。幸いにも幼魚でしたので傷は浅く大事には至りませんでしたが、少年の頃の自分にとってはショックと同時に発見でしたね。
これ以降初めて飼う魚を素手で触ることはありません。
共食い
そして最後に共食い。私は幼魚を二匹購入しましたがどうしても成長差が出てきます。
口述しますが同一種・同じピラニアだから大丈夫とタカをくくっていたのです。飼い始めてから3年ほどたったある朝起きると成長の遅い個体の背びれから下、下半身がなくなっていました。
その時は飼育の都合で45㎝水槽を半分セパレーターで区切り、狭い空間に二匹同居させていました。これが三匹・四匹でしたら群れとして成立していたかもしれません。憶測ですが狭い空間に二匹、しかも体調差がある状態は片方が片方を餌として認識させるのに十分な条件だったと飼育キャリアを積むにつれ気づかされました。
以上が注意点と言いますか、私が飼育上犯した失敗です。
‐ピラニア・ナッテリーの飼育方法‐
繰り返しますがほぼ完全な肉食魚です。
とあるショップで大型ピラニアの水槽に掃除役としてサッカープレコを混泳させているのを見かけたことがあります。ですが全くお勧めしません。そのショップの雰囲気からもサッカープレコの「死」を前提として入れている感じが伝わり非常に嫌な思いをしました。
水槽サイズ・飼育可能個体数
そして「群れ」を認識させるために最低限3匹で飼いましょう。いわゆる「三すくみ」になるからです。
目安としては60㎝水槽で4~5匹ほど、90㎝水槽ならば容積の単純計算ではその2~3倍飼育できます。成魚のサイズは20~30㎝ほどになるので最低限60㎝標準規格の水槽は必ず必要になると考えて下さい。
エサについて
餌は完全な肉食と書きましたがテトラミンなども確実に食べました。私は試していませんがクリルなどの感想オキアミ、アロワナ・大型キャットフィッシュ用の飼料にも餌付くと思います。要は「匂い」です。
ただ本種はその食性が一番の魅力と言っても過言ではありません。ダイナミックに餌に食らいつくその姿に惹かれます。お気づきの方もいると思いますが餌キン(餌用金魚)やヒメダカ、アロワナ用の餌のウキガエルなどもいい餌になります。
どうしても生きているものに抵抗がある方は、鳥のささ身やマグロの刺身の切れ端などもいいでしょう。
冷凍餌でも十分です。私の時代は冷凍餌と言えば「冷凍赤虫」くらいしかありませんでしたが、今は淡水エイによく使われる「冷凍ワカサギ」そして「冷凍コオロギ」「冷凍川エビ」「冷凍フナ」など専門店ではなくともホームセンターなどでもびっくりすることに取り扱われる時代になりました。
掃除の頻度はこまめに
肉食なので総じて水は汚れやすいです。
最低でも週1/2の換水は心がけフィルターは予算・スペースが許す限り最大限性能の良いものを使用しましょう。さすがに海水魚でよく使われる「オーバーフロー」まで用意する必要はありませんが、エーハイム社に代表される「パワーフィルター」が最も理想です。
「上部式フィルター」までが譲れないラインだと思います。成魚を飼う前提であれば、例えば「壁掛け式フィルター」「底面ろ過」「落とし込みフィルター」のみでは心もとないでしょう。むしろこれらは補助的に入れるものと考えて下さい。
水温は25~27℃
水温は融通が利く魚です。一般的な電子式サーモスタットの初期設定付近の25~27℃で問題はありません。
水質は弱酸性を好みます。
‐繁殖について‐
難しい、ですが家庭でもできます。自然化ではいわゆる放置卵、メスが流木の根元などにバラマキ方式で産み自然ふ化で稚魚は育ちます。
稚魚の餌は孵化したての栄養価の高いブラインシュリンプが最適です。成長に合わせイトメ・赤虫に切り替えて下さい。
稚魚のうちは共食いなどは少ないので、運よく水槽内に卵を見つけたら先をライター等であぶって丸みを持たせたスポイトなどで丁寧に吸い、産卵ケースや別の小型水槽に隔離しよくエアレーションして下さい。吸い込みを防ぐためスポンジフィルターを用いるのがベストです。
‐最後に‐
飼うのが怖いと聞こえてきそうですが、飼育下での重大な事故はあまり聞きません。
熱帯魚の事故は淡水には少ないですが「毒魚」によるものと「咬合力の強い魚の噛みつき」です。例えば肺魚に噛まれ10針縫う羽目になった仲間もいます。幼いころの刷り込みが功を奏しているのか「ピラニア」と聞くとどんなに飼育熟練者でも慎重に慎重を重ね事故につながらないようです。世界的に見ても取り返しのつかないような重大な事故というのは耳にしませんね。
ピラニアは単純にその知名度・食性以外にも種類の多さ・意外な華美な魚であることで非常に人気のある魚です。