「産卵床に産みつけられた卵が、数日後に稚魚になって泳ぎだした瞬間……あの感動は、何度経験しても胸が震えます。」
私がコイとフナの繁殖に初めて挑戦したのは、自宅の小さなビオトープを立ち上げて2年目のことでした。正直、「勝手に産んでくれるだろう」と気楽に考えていたのですが、初年度は卵が全て食べられてしまい大失敗。そこから真剣に繁殖を勉強するようになり、今では毎年春になると稚魚がわんさか生まれる池になっています。
コイ(Cyprinus carpio)とフナ(Carassius 属)は日本の池や川に昔から親しまれてきた魚で、家庭の庭池やビオトープでも繁殖を楽しめる数少ない淡水魚です。しかし、繁殖を成功させるには「適切な時期」「産卵床の準備」「稚魚の保護」という3つのポイントを押さえることが欠かせません。
この記事では、コイとフナの繁殖方法を「産卵床の作り方」から「稚魚が独り立ちするまで」の全過程にわたって徹底解説します。初めて挑戦する方でも実践できるよう、私自身の失敗談も交えながら丁寧にお伝えしていきます。
- コイとフナの繁殖の違いと特徴(ギンブナの雌性発生も解説)
- 繁殖に最適な季節・水温・環境条件
- 産卵床の種類と作り方(水草・ヤシャブシ・人工産卵床)
- コイの雌雄判別と産卵を促すための管理方法
- フナの繁殖と独特な「雌性発生」のしくみ
- 卵の管理・孵化率を上げる方法
- 稚魚期の初期飼料・水換え・天敵対策
- 成長に合わせた餌の切り替えタイミング
- 繁殖失敗の主な原因と具体的な対策
- 繁殖に役立つおすすめグッズ(産卵床・稚魚用フード)
コイとフナの繁殖の違いを知ろう
コイとフナはどちらもコイ科の魚ですが、繁殖の仕組みや難しさには大きな違いがあります。まずはそれぞれの特徴を整理しておきましょう。
コイの繁殖の特徴
コイは雌雄がそろっていれば比較的スムーズに繁殖します。成熟するまでに3〜5年かかりますが、一度成熟すれば毎年春に産卵します。産卵数は体の大きな雌ほど多く、大型個体では数十万粒に達することもあります。水温が15〜20℃になる5〜6月頃に産卵のピークを迎えます。
産卵行動は活発で、複数の雄が1匹の雌を追い回す「追い星(おいぼし)行動」が見られます。この激しい産卵行動が原因で、雌が体を傷つけてしまうこともあるため、産卵後の個体管理も大切です。
フナの繁殖の特徴(ギンブナは雌性発生)
フナの仲間の中でも特に面白いのがギンブナの雌性発生(ぎせいはっせい)です。ギンブナは自然界ではほぼすべてが雌で、雄のコイや他のフナ類の精子を刺激として使い、受精することなく卵を発生させるという驚くべき繁殖方法をとります。
一方、キンブナやゲンゴロウブナ(ヘラブナ)は雌雄が存在し、通常の有性生殖で繁殖します。家庭の池でフナを繁殖させる場合は、飼育しているフナの種類をまず確認することが重要です。
コイとフナの繁殖比較表
| 項目 | コイ | フナ(キンブナ・ゲンゴロウブナ) | ギンブナ |
|---|---|---|---|
| 繁殖方法 | 有性生殖 | 有性生殖 | 雌性発生(単為生殖) |
| 産卵時期 | 5〜6月 | 4〜6月 | 4〜6月 |
| 適正水温 | 16〜20℃ | 14〜18℃ | 12〜18℃ |
| 成熟年齢 | 3〜5年 | 2〜3年 | 2〜3年 |
| 産卵数 | 数万〜数十万粒 | 数千〜数万粒 | 数千〜数万粒 |
| 雄の必要性 | 必要 | 必要 | 不要(刺激のみ) |
| 繁殖難易度 | 中程度 | 中程度 | 比較的容易 |
| 孵化日数 | 3〜5日(20℃時) | 3〜5日 | 3〜5日 |
繁殖に適した時期と水温の管理
コイとフナの繁殖は、水温と日長(昼の長さ)に強く影響されます。この2つの条件が整ったとき、魚の体内で産卵ホルモンが分泌され、繁殖行動が始まります。
産卵シーズンの目安
日本の本州では、おおよそ4月下旬〜6月上旬が産卵シーズンのピークです。地域によって差があり、温暖な九州・四国では3月末から始まることもあります。逆に東北・北海道では5月下旬〜6月になることが多いです。
水温の目安は以下の通りです:
- コイ:15〜20℃で産卵行動開始。18℃前後が最も活発
- キンブナ・ゲンゴロウブナ:14〜18℃で産卵。コイよりやや低い水温を好む
- ギンブナ:12〜18℃と幅広い。低水温でも産卵することがある
水温変化のパターンと産卵のタイミング
産卵は多くの場合、水温が急上昇したあとに起こります。春先に暖かい雨が降った翌朝、水面が騒がしくなっていたら産卵が近いサインです。私の庭池でも、4月下旬〜5月初旬の「暖かい雨の翌朝」に産卵していることがほとんどです。
室内水槽や小型ビオトープで繁殖を促したい場合は、ヒーターを使って徐々に水温を上げることで産卵を誘発できます。1日1〜2℃ずつゆっくり上げるのがポイントです。急激な水温変化は魚にストレスを与えるので禁物です。
日長の影響と遮光管理
日長(昼の長さ)も産卵のトリガーになります。自然の日照時間が長くなる春〜初夏と重なるのはそのためです。室内飼育では照明タイマーを使って「1日14〜16時間の点灯」にすると産卵を促しやすくなります。
繁殖に最適な環境条件まとめ
- 水温:15〜20℃(コイ)、12〜18℃(フナ)
- 照明:1日14〜16時間(春の日照時間を再現)
- 水質:pH 6.5〜8.0、硬度は中硬水が理想
- 産卵前の水換え:大量換水(1/3〜1/2)で産卵を刺激
産卵床の準備と設置方法
産卵床(さんらんしょう)は、卵を産みつけるための足場となる素材です。適切な産卵床を用意することで、卵の回収がしやすくなり、孵化率も大幅にアップします。
水草を使った産卵床
最も自然に近いのが水草を使った産卵床です。コイとフナは水草の葉や茎に卵を産みつける習性があります。おすすめの水草は以下の通りです:
- カボンバ(カナダモ):細かい葉が卵を絡めとりやすい。最もポピュラーな産卵床用水草
- マツモ:根がなく浮かせて使える。安価で入手しやすい
- オオカナダモ(アナカリス):丈夫で管理が楽。大型水槽・池に向く
- セキショウモ(バリスネリア):細長い葉が絡みやすく産卵しやすい
水草は産卵前日〜2日前に池や水槽に入れておきましょう。入れすぎると水を汚す原因になるので、適量(池の面積の1/4程度)を目安にします。
ヤシャブシを使った産卵床
近年、日本の淡水魚飼育ではヤシャブシ(夜叉五倍子)の実を産卵床として使う方法が注目されています。ヤシャブシはハンノキ科の落葉樹で、小さな松ぼっくりのような実を結びます。
ヤシャブシの実を水に沈めると、タンニンや有機酸が溶け出して水質をわずかに酸性に傾け、抗菌・抗カビ効果をもたらします。産卵床として使うと卵のカビ発生を抑える効果が期待でき、孵化率アップにつながります。使い方は、ヤシャブシの実を5〜10個ほど産卵床の近くに沈めるだけです。
人工産卵床(産卵マット)
ホームセンターや熱帯魚ショップでは、人工産卵床(産卵ブラシ・産卵マット)が販売されています。プラスチック製の毛束や繊維マットで、水草と同様に卵を絡めとる構造です。
人工産卵床のメリットは「耐久性が高い」「清潔に保ちやすい」「産卵後に卵ごと回収しやすい」点です。天然素材に比べて親魚への馴染みが少し劣りますが、初心者にはむしろ扱いやすい選択肢です。
産卵床の設置場所と深さ
産卵床の設置は水深30〜60cmの浅い場所が基本です。コイとフナは浅場の水草地帯で産卵する習性があります。池の縁部分や水草エリアの近くに設置しましょう。設置のポイントは以下の通りです:
- 水面から10〜50cmの深さに設置
- 直射日光が当たりすぎない場所(卵が高温にさらされないよう)
- フィルターやポンプの水流が直接当たらない場所
- 親魚が入りやすい広いスペースに配置
コイの繁殖方法(雌雄判別から産卵促進まで)
コイの繁殖を成功させるには、まず雌雄をしっかり見分け、産卵に適した環境を整えることが大切です。
コイの雌雄判別方法
コイの雌雄判別は、繁殖シーズン前後が最も分かりやすい時期です。見分け方のポイントを以下にまとめます:
| 特徴 | 雄(オス) | 雌(メス) |
|---|---|---|
| 体型 | 細くシャープ | 腹部がふっくら丸い |
| 追い星 | 産卵期にエラや頭部に白い星状のブツブツが出る | ほぼ出ない |
| お腹の硬さ | 硬め | 産卵前は柔らかくふっくら |
| 肛門付近 | 細く締まっている | 産卵前は赤みを帯びて膨らむ |
| 行動 | 雌を積極的に追い回す | 追われる側 |
特に追い星(おいぼし)はコイの雄を見分ける最も確実なサインです。産卵シーズンになるとエラ蓋や頭部に白い粒状の突起が現れます。これが出ていれば確実に雄です。
コイの産卵に必要な雌雄比
コイの繁殖では、雌1匹に対して雄2〜3匹の割合が理想とされています。雄が少なすぎると受精率が下がり、多すぎると産卵時の激しい追い行動で雌が傷つくリスクが高まります。
ただし家庭の池やビオトープでは、雌雄1:1でも問題なく繁殖します。私の庭池では雌2匹・雄2匹の計4匹から始めましたが、毎年安定して産卵しています。
産卵を促すための管理(刺激法)
水温条件が整っているのに産卵しない場合は、以下の方法で産卵を刺激できます:
- 大量換水:池の水を1/3〜1/2換水する。水温差や水質変化が刺激になる
- 新鮮な水の注水:雨のような感覚で上から水を注ぐ(池の水面に細かい波紋)
- 産卵床の追加:新しい水草を入れる
- 水温の調整:15〜20℃の範囲で1〜2℃上げる
コイの産卵行動と産卵後の管理
コイの産卵は早朝から午前中にかけて活発に行われます。複数の雄が1匹の雌を追い回し、水面が激しく波立ちます。この産卵行動(追い産み)は数時間続くことがあります。
産卵が終わったら、必ず親魚を産卵床から離すか、卵のついた産卵床を別の容器に移してください。コイは自分の卵でも構わず食べてしまいます。産卵直後に親を分離することが孵化率を上げる最大のポイントです。
フナの繁殖方法(ギンブナの雌性発生を含む)
フナの繁殖はコイに比べると穏やかで、初心者にも取り組みやすい魚です。ただし、飼育しているフナの種類によって繁殖方法が大きく異なります。
フナの種類と繁殖の違い
日本に生息するフナの主な種類と繁殖特性は次の通りです:
- ギンブナ(Carassius auratus langsdorfii):自然界ではほぼ全個体が雌。雌性発生(単為生殖)で繁殖。コイや他のフナの精子が刺激となり受精なしに発生が始まる
- キンブナ(Carassius auratus buergeri):雌雄が存在。通常の有性生殖で繁殖する
- ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri):ヘラブナの原種。雌雄が存在。琵琶湖固有種に近い系統
- ナガブナ・ニゴロブナ:琵琶湖固有種。地域によって繁殖特性が異なる
ギンブナの雌性発生(単為生殖)のしくみ
ギンブナの雌性発生は、科学的に非常に興味深い繁殖システムです。ギンブナの卵子は3倍体(染色体が3セット)が多く、通常の二倍体の精子が受精しても精子の遺伝情報は引き継がれません。精子は卵発生の「スタートボタン」を押す刺激になるだけで、生まれてくる子はすべて母親のクローンに近い個体になります。
家庭でギンブナを繁殖させる場合は、同じ池にコイや他のフナ類(キンブナなど)の雄を混泳させておけば、自然と産卵・孵化が起こります。ギンブナだけの単独飼育でも稀に産卵することがありますが、孵化率は下がります。
フナの雌雄判別方法
フナの雌雄判別はコイと同様に、産卵期の追い星と腹部の状態で確認します:
- 雄の特徴:産卵期に頭部・エラ蓋に追い星が出る。体が細くスリム
- 雌の特徴:産卵前に腹部が大きくふくらむ。泳ぎが重そうになる
ギンブナは雌しかいないため、判別の必要はありません。池の底を突くように行動し始めたら産卵のサインです。
フナの産卵床と産卵後の対応
フナはコイよりも繊細な産卵行動をとります。激しく追い回すことはなく、雌が水草に寄り添いながら静かに産卵します。産卵床はコイと同じくカボンバやマツモが適しています。
産卵後はコイと同様に、親魚を別の容器に移すか、卵のついた産卵床を取り出して孵化用の容器に移します。フナの稚魚はコイの稚魚より小さく、同じ池に親を残すと食べられてしまうリスクが高いです。
卵の管理と孵化率を上げる方法
産卵床に産みつけられた卵を無事に孵化させるには、適切な管理が必要です。特に「カビ対策」と「酸素供給」が孵化率を左右します。
卵の外見と有精卵・無精卵の見分け方
産みたての卵は直径1〜2mm程度の半透明の球体です。有精卵と無精卵は以下の特徴で見分けられます:
- 有精卵:透明感があり、内部に小さな核が見える。時間が経つにつれ胚(はい)の発生が観察できる
- 無精卵:白濁(はくだく)している。時間が経つとカビが生えやすい
産卵から12〜24時間経過すると、有精卵ではわずかに胚の形成が始まり、水温が高いほど発生が早く進みます。
孵化用容器の準備
孵化させるための容器は、卵の密度を低く保てるものが理想です。推奨する容器と管理方法は以下の通りです:
- 容量:30〜60Lのプラスチック製バケツ、トロ船、または水槽
- エアレーション:弱めのエアストーンを設置。酸素不足は孵化率低下の主原因
- 水温管理:18〜22℃を維持。急激な温度変化を避ける
- 遮光:直射日光を避ける。半日陰の環境が理想
- 密度:1Lあたり100〜200粒を目安に。過密は酸欠・カビの原因
カビ対策(メチレンブルー・ヤシャブシ)
孵化を妨げる最大の敵は水カビ(ミズカビ病)です。無精卵にカビが生えると、隣の有精卵にも広がり一気に全滅することがあります。カビ対策の方法をいくつか紹介します:
- メチレンブルーの添加:孵化用水槽に規定量のメチレンブルーを添加する。水が青くなるが孵化後は不要。孵化率が大きく向上する
- ヤシャブシの使用:産卵床の周囲にヤシャブシの実を数個置く。タンニン効果で天然の抗菌作用が期待できる
- 無精卵の除去:スポイトで白濁した卵を丁寧に除去する。有精卵に触れないよう注意
- 十分なエアレーション:水流によって卵周りの水を循環させカビの付着を防ぐ
孵化までの日数と水温の関係
孵化にかかる日数は水温に反比例します。低すぎても高すぎても孵化率が下がるため、適温管理が重要です:
| 水温 | 孵化までの目安日数 | 備考 |
|---|---|---|
| 15℃ | 6〜8日 | 低温すぎるとカビリスク上昇 |
| 18℃ | 4〜6日 | 安全な孵化温度帯 |
| 20℃ | 3〜5日 | 最もバランスが良い |
| 22℃ | 2〜4日 | 発生が速い。管理に注意 |
| 25℃以上 | 1〜3日 | 高温すぎると奇形・死卵が増える |
孵化直後の稚魚の状態
孵化した稚魚(ふ化仔魚・ふかそぎょ)は最初、産卵床や容器の底・壁に張り付いてじっとしています。これはヨークサック(卵黄囊)の栄養を吸収しているためで、この期間(2〜3日間)は餌を与える必要はありません。ヨークサックが消えて活発に泳ぎ始めたら、初めての餌やりのタイミングです。
稚魚の育て方(初期飼料・水換え・天敵対策)
孵化した稚魚をすくすく育てるには、最初の1ヶ月間の管理が特に重要です。この時期は稚魚が非常に小さく繊細なため、丁寧なケアが求められます。
孵化後の稚魚の管理環境
孵化直後の稚魚は体長4〜8mm程度で、非常に小さいです。この段階での管理環境は次の通りです:
- 容器:孵化に使ったトロ船やバケツをそのまま使用可能。急に大きな水槽や池に移すと天敵・水質変化のリスクが上がる
- エアレーション:弱めに継続。稚魚が吸い込まれないよう、エアストーンに細かいスポンジをかぶせる
- 水温:18〜24℃を維持。急激な変動を避ける
- 密度:1Lあたり10〜20匹以下を目安に。過密は水質悪化の原因
- 照明:1日12〜14時間程度の明るさ。暗すぎると摂餌行動が鈍くなる
最初の餌(初期飼料)の選び方と与え方
ヨークサックが吸収されて泳ぎ回るようになったら(孵化後2〜3日目)、いよいよ初めての餌やりです。稚魚の口は非常に小さく、最初は極微細な餌しか食べられません。
第1段階(孵化後2日〜2週間):極微細な餌
- インフゾリア(繊毛虫類):最も小さな生き餌。枯れ草や青水の中に自然発生する
- ワムシ:インフゾリアより少し大きい。市販の培養キットがある
- 稚魚用粉末フード:市販の稚魚専用パウダーフード(粒径0.1mm以下)
- グリーンウォーター:植物プランクトンを豊富に含む緑色の水。稚魚の餌と隠れ家を兼ねる
第2段階(2週間〜1ヶ月):少し大きな餌に移行
- ブラインシュリンプ(アルテミア)の幼生:栄養価が高く稚魚の成長を促進する最高の生き餌
- 稚魚用フレークフード:粉末よりやや粒が大きいタイプ
- ミジンコ:天然の生き餌として最適。野外で採集または培養可能
餌の量と頻度
稚魚期の餌やりは少量を多頻度で行います。1回の量は「3〜5分で食べきれる量」が目安です。残餌は水質悪化の原因になるので、食べ残しは毎回スポイトで除去しましょう。
- 生後2週間まで:1日4〜6回、少量ずつ
- 2週間〜1ヶ月:1日3〜4回
- 1ヶ月以降:1日2〜3回(成魚と同様のリズムへ移行)
稚魚期の水換えの注意点
稚魚の水換えは「急激な水質変化を与えない」ことが最重要です。成魚と同じように1/3換水しても問題ありませんが、次の点に注意してください:
- 換える水は必ず同じ水温に合わせる(1℃以内の差に収める)
- カルキ(塩素)は必ず中和してから使用
- 水換えは2〜3日に1回が目安。水が汚れやすい高密度飼育では毎日でも可
- 水換えにはスポイトやサイフォンを使い、稚魚を吸い込まないよう注意
- バケツから容器に注ぐときは、ゆっくり注いで水流を最小限に
天敵から稚魚を守る
稚魚の天敵は池・屋外環境では特に多く、油断すると一晩で全滅することもあります。主な天敵と対策は以下の通りです:
- 親魚・成魚:同じ池に入れない。完全に隔離する
- ヤゴ(トンボの幼虫):網で池を覆う。屋外飼育では5〜6月に特に注意
- アメンボ・水生昆虫:小型の稚魚を捕食する。網や蓋で侵入を防ぐ
- 野鳥(サギ・カワセミ):ネットや釣り糸を張って侵入防止
- カエル・イモリ:稚魚を捕食する。網で防除
成長段階に合わせた餌の切り替え
コイとフナの稚魚は成長が早く、環境が良ければ1ヶ月で体長2〜3cm、3ヶ月で5〜8cmに成長します。成長に合わせて餌を切り替えることで、健康的な個体に育てられます。
稚魚期〜幼魚期の成長目安
飼育環境と水温によって成長速度は異なりますが、おおよその目安は以下の通りです:
| 時期 | 体長の目安 | おすすめの餌 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 孵化直後 | 4〜8mm | ヨークサック(自己栄養) | 餌不要 |
| 孵化後2〜14日 | 5〜12mm | インフゾリア・粉末フード・グリーンウォーター | 1日4〜6回 |
| 2週間〜1ヶ月 | 1〜2cm | ブラインシュリンプ・ミジンコ・稚魚用フレーク | 1日3〜4回 |
| 1〜3ヶ月 | 2〜5cm | 小粒の沈下性フード・冷凍赤虫(小さいもの) | 1日2〜3回 |
| 3〜6ヶ月 | 5〜10cm | 通常の粒餌・乾燥赤虫・冷凍赤虫 | 成魚と同等の管理へ |
| 6ヶ月以降 | 10cm〜 | コイ用フード・金魚の餌・冷凍赤虫 | 池への移動も可能 |
グリーンウォーターの活用
グリーンウォーター(植物プランクトンが繁殖した緑色の水)は、稚魚飼育において非常に優れた環境です。稚魚はグリーンウォーターの中に自然発生するインフゾリアやクロレラを食べ、常に餌がある状態をキープできます。
グリーンウォーターの作り方は簡単です。バケツに水道水(カルキ抜き済み)を入れ、日当たりの良い場所に1〜2週間放置するだけです。青水(あおみず)と呼ぶこともあります。初心者にも扱いやすく、稚魚の生存率を大きく改善してくれます。
ブラインシュリンプの孵化と給餌方法
ブラインシュリンプ(アルテミア)は稚魚にとっての高タンパク質・高栄養の生き餌です。市販の「ブラインシュリンプエッグ(乾燥卵)」を食塩水で孵化させて使います:
- 500mlのペットボトルに食塩水(水1Lに食塩20〜30g)を作る
- ブラインシュリンプエッグを耳かき1杯程度加える
- エアレーションをして25〜28℃に保つ
- 24〜48時間でオレンジ色のノープリウス幼生が孵化する
- スポイトで吸い取り、稚魚に与える(食塩水が入りすぎないよう少量ずつ)
餌の切り替え時の注意点
餌の種類を切り替えるときは、いきなり変えず「以前の餌5割:新しい餌5割」という形で1週間程度かけて徐々に移行します。急な切り替えは稚魚が新しい餌を認識できず、拒食の原因になります。
繁殖失敗の原因と対策
コイとフナの繁殖に挑戦したものの、思うような結果が出なかったという方も多いと思います。よくある失敗パターンと、その解決策を解説します。
失敗①:産卵しない
原因:水温が低すぎる・高すぎる、成熟個体がいない、雌雄の比率が偏っている、環境ストレス(水質悪化・過密飼育)
対策:水温計で毎日水温を確認し15〜20℃の範囲に収める。飼育している個体が繁殖可能な年齢(コイなら3年以上)か確認する。産卵床を入れてみる。大量換水で刺激を与える。
失敗②:卵がカビだらけになる
原因:無精卵の混入、過密、酸欠、水温が高すぎる・低すぎる
対策:メチレンブルーを使用する。卵を入れた容器のエアレーションを強化する。無精卵(白濁した卵)をスポイトで丁寧に除去する。密度を下げる(卵の入れ過ぎ注意)。
失敗③:孵化したのに稚魚が消える
原因:親魚に食べられた、ヤゴや水生昆虫に捕食された、餓死した
対策:産卵後すぐに親魚を別の容器に移す。屋外では網で覆ってヤゴの侵入を防ぐ。孵化後2〜3日でヨークサックが尽きるので、適切なタイミングで餌やりを開始する。
失敗④:稚魚が大きくならない・死んでしまう
原因:餌が適切でない(口のサイズに合っていない)、水質悪化、過密飼育
対策:最初の2週間は必ずインフゾリアや粉末フードなど極微細な餌を使う。水換えを定期的に行い、アンモニア濃度を上げない。密度を1Lあたり20匹以下に保つ。
繁殖失敗を防ぐためのチェックリスト
繁殖成功のためのチェックリスト
- 繁殖可能な年齢の雌雄が揃っているか
- 水温が適切な範囲(コイ15〜20℃、フナ12〜18℃)か
- 産卵床が設置されているか
- 産卵後、親魚を隔離したか
- 孵化用容器にエアレーションがあるか
- メチレンブルーまたはヤシャブシでカビ対策をしたか
- 稚魚のサイズに合った餌を用意したか
- 天敵(ヤゴ・野鳥)の対策をしたか
- 水換えを定期的に行っているか
繁殖に役立つおすすめ商品
コイとフナの繁殖をより成功させるための道具や餌を紹介します。「産卵床」「初期飼料」「孵化用品」の3カテゴリに分けてご案内します。
産卵床・孵化用品
産卵床は天然水草が理想ですが、入手しやすい人工産卵床(産卵ブラシ・産卵マット)も十分効果的です。孵化にはメチレンブルーが特におすすめです。カビを抑えて孵化率を大幅に上げる効果があります。
稚魚用初期飼料
稚魚の初期飼料は、口のサイズに合ったものを選ぶことが最重要です。最初の2週間は粒径0.1mm以下の粉末フードまたは生き餌(インフゾリア・ブラインシュリンプ)が必須です。成長に合わせて徐々に粒の大きいフードに移行しましょう。





