「ドジョウってどれも同じじゃないの?」と思っていたら、日本にはなんと10種以上のドジョウ類が生息していることをご存じですか?
私がアクアリウムを始めた頃、ドジョウといえば「泥の中にいるあの茶色い魚」というイメージしかありませんでした。ところがフィールドに出るたびに、縞模様のきれいなシマドジョウや、清流にしか棲めないホトケドジョウ、スリムな体型のスジシマドジョウなどに出会うようになり、気づけばドジョウ科の魅力にすっかりはまってしまいました。
この記事では、日本に生息するドジョウ科の魚を全種まとめて解説します。ドジョウ・シマドジョウ・ヤマトシマドジョウ・スジシマドジョウ各種・ニシキドジョウ・ホトケドジョウなど、それぞれの特徴・分布・飼育ポイントをわかりやすく説明していきます。
採集好きの方も水槽飼育派の方も、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
この記事でわかること
- 日本産ドジョウ科の全種一覧と分類
- ドジョウ・シマドジョウ・スジシマドジョウなど各種の形態的特徴と見分け方
- ホトケドジョウなど希少種・絶滅危惧種の現状
- ニシキドジョウなど改良品種の概要
- 種ごとの飼育難度と初心者におすすめの種
- ドジョウ飼育に共通する水槽・底砂・水質の選び方
- 脱走防止・混泳・採集のコツ
- 保全状況と採集時のマナー
日本産ドジョウ類の概要
ドジョウ科(Cobitidae)とは
ドジョウ科(Cobitidae)は、コイ目に属する淡水魚のグループです。世界的には東・東南アジアを中心に200種以上が知られており、日本にもその一部が生息しています。細長い体、口の周りに複数対のひげ、底砂に潜る習性が特徴的です。
腸で呼吸する「腸呼吸」も有名です。水面に顔を出して空気を吸い込み、腸の毛細血管から酸素を取り込むこの行動は、酸欠になりがちな田んぼや沼でも生き残れる適応のひとつです。水槽でもよく見られる行動なので、初めて見た方は驚くかもしれません。
形態的には、上顎と下顎に複数対のひげを持つことが共通した特徴です。目の下に「眼下棘(がんかとげ)」と呼ばれる小棘を持つ種(Cobitis属)もおり、これは天敵に飲み込まれたときに引っかかって脱出するための武器とも言われています。底砂への潜行は外敵から身を隠すための習性で、砂の中にすっぽりと体を埋める様子は水槽観察の醍醐味のひとつです。
繁殖様式はほとんどの種が春〜初夏に産卵する季節産卵型です。水温が15〜20℃になると産卵行動が始まり、浅場の水草の根元や砂底に産卵します。卵は粘着性があり、基質に付着して孵化します。稚魚は孵化後すぐに底砂に潜る行動を見せます。
日本における分布と生息環境
日本産のドジョウ科魚類は、大きく分けてドジョウ属(Misgurnus)、シマドジョウ属(Cobitis)、ホトケドジョウ属(Lefua)の3グループに整理されます。北海道から九州まで広く分布していますが、種によって生息できる水系・環境が大きく異なります。
水田・ため池・小川・河川中流域・清流など、生息環境の幅も広いのがドジョウ類の特徴です。農薬や圃場整備の影響を強く受けやすく、特に清流性の種は各地で個体数が減少しています。
同一県内でも水系によって異なる種が生息している点が、ドジョウ類の分布の面白さです。例えば、ある河川の上流部にはホトケドジョウが生息し、中流域にはシマドジョウ、下流部の水田にはドジョウ、という具合に垂直分布が見られることもあります。これは水温・水質・底質・流速などの環境条件が種ごとに異なるためです。
ドジョウ類の分類学的な変遷
日本産ドジョウ科の分類は、近年のDNA解析技術の普及により大きく塗り替えられています。かつて「シマドジョウ」「スジシマドジョウ」として一括りにされていたグループが、分子系統学的研究によって複数の独立した種・系統群として認識されるようになりました。
特にスジシマドジョウ類は、形態的には非常によく似ているにも関わらず、遺伝的には大きく異なる系統が複数存在することが明らかになってきています。研究者によって見解が異なる部分も多く、「現在も分類が進行中」のグループと理解しておくことが重要です。
図鑑や文献によって学名・和名の扱いが異なることがあるのも、こうした分類の変動が背景にあります。最新の情報を把握するには、環境省の生態系サービスや専門学術論文を参照することをおすすめします。
日本産ドジョウ全種比較表
まず全体像をつかめるよう、主な日本産ドジョウ類を一覧表にまとめました。
| 種名(和名) | 学名 | 主な分布 | 全長 | 生息環境 | 飼育難度 | 保全状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ドジョウ | Misgurnus anguillicaudatus | 全国(北海道〜九州) | 10〜20cm | 水田・ため池・小川 | ★☆☆☆☆(易) | - |
| シマドジョウ | Cobitis biwae | 本州・四国・九州 | 8〜12cm | 砂礫底の川・用水路 | ★★☆☆☆ | - |
| ヤマトシマドジョウ | Cobitis matsubarae | 近畿〜九州の一部 | 8〜12cm | 砂礫底の清流 | ★★★☆☆ | 準絶滅危惧 |
| スジシマドジョウ小型種 | Cobitis sp. | 東海・近畿・中国地方など | 6〜9cm | 細砂底の河川中下流 | ★★☆☆☆ | 絶滅危惧II類(地域変異あり) |
| スジシマドジョウ大型種 | Cobitis sp. | 東北・関東・近畿など | 9〜14cm | 砂礫底の河川中流 | ★★☆☆☆ | 地域により絶滅危惧 |
| オオシマドジョウ | Cobitis magnostriata | 九州(筑後川水系など) | 10〜14cm | 砂礫底の河川 | ★★★☆☆ | 絶滅危惧IB類 |
| トウカイコガタスジシマドジョウ | Cobitis minamorii | 東海地方固有 | 5〜7cm | 細砂底の平野部河川 | ★★★☆☆ | 絶滅危惧IA類 |
| ホトケドジョウ | Lefua echigonia | 本州中部以北 | 5〜8cm | 湧水・清流の細流 | ★★★★☆ | 絶滅危惧IB類 |
| ニシキドジョウ | (ドジョウの改良品種) | 養殖のみ | 10〜20cm | 水槽飼育向け | ★☆☆☆☆(易) | - |
注意:スジシマドジョウは近年の分類研究により多くの「種」または「系統」に細分されており、水系ごとに異なる種・亜種として扱われることがあります。採集・飼育の際は地域の規制を必ず確認してください。
各種の詳細解説
ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)
日本で最もなじみ深いドジョウです。体色は黄褐色〜暗褐色で、体側に暗褐色の不規則な斑紋が入ります。吻(ふん)端には上下合わせて10本のひげがあり、口ひげが多いのが本種の特徴です。全長は成魚で10〜20cmになり、ドジョウ科の中では比較的大型になる種です。
北海道から九州まで全国的に分布し、水田・ため池・小川・農業用水路など、水質が良くない環境でも生息できます。腸呼吸能力が高く、泥中での越冬も可能です。丈夫で飼育しやすく、アクアリウム入門者にも強くおすすめできる種です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Misgurnus anguillicaudatus |
| 全長 | 10〜20cm(最大約25cm) |
| 適水温 | 5〜28℃(最適15〜23℃) |
| pH | 6.0〜8.0 |
| 底砂 | 細かい砂・泥(潜れるもの) |
| 推奨水槽 | 45cm以上(複数飼育は60cm〜) |
| 混泳 | 温和。ほとんどの日淡と相性良好 |
| 食性 | 雑食(底砂の有機物・人工飼料・赤虫など) |
シマドジョウ(Cobitis biwae)
体側に1列の黒い斑点列が連なる縞模様が特徴的な、スレンダーなドジョウです。ひげは3対6本で、ドジョウより少ない。全長は8〜12cm程度とドジョウより小型で、動きも活発です。眼下棘(がんかとげ)を持ち、外敵から身を守る機能があります。体側の斑点は個体によって1列のものや2列のものがあり、水域によってもパターンが異なります。
本州・四国・九州に広く分布しますが、砂礫底の清潔な川や用水路を好みます。水質の変化には比較的強いですが、泥っぽい環境よりも砂底の環境を好む傾向があります。水槽でも砂に潜る姿が観察でき、観賞価値が高い種です。
かつては日本の「シマドジョウ」として一括りにされていましたが、現在は地域変異や近縁種との関係が研究されており、分類が整理されつつあります。琵琶湖周辺に多い系統を基準とした学名 Cobitis biwae(「biwae」は琵琶湖の意)が広く用いられています。
飼育下では、砂に潜ったり砂を口に含んで有機物を濾し取る行動がよく観察されます。田砂や川砂を3〜5cm程度敷いた水槽に入れると、しばらくして砂中に潜り込み、頭だけ出している姿が観察できます。水温は10〜25℃が適温で、夏の高温(28℃以上)には弱い面があります。複数飼育もできますが、縄張り争いが起きることがあるため、隠れ場所を多めに用意すると安心です。
ヤマトシマドジョウ(Cobitis matsubarae)
シマドジョウに非常によく似ていますが、体側の斑紋パターンや眼下棘の形態が異なります。特に体側の斑点が連続的な線状になりやすい点や、個体によってはやや体高が高い印象があります。近年になってシマドジョウから別種として整理された種で、近畿地方から九州にかけての一部水系に分布します。
環境省レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に指定されており、生息域は限られています。清潔な砂礫底の河川や用水路に生息し、水質の悪化に対してシマドジョウよりも敏感な傾向があります。
飼育下ではシマドジョウに準じた管理で対応できますが、野外採集個体の持ち出しには地域の規制を確認する必要があります。アクアリウムショップでの流通量は多くなく、採集または一部の専門店からの入手が主な経路となります。水槽では砂底に潜る習性が強く、十分な深さの細砂を用意してあげることが飼育の基本です。
スジシマドジョウ小型種(Cobitis sp.)
スジシマドジョウは日本のドジョウ科の中でも分類が非常に複雑なグループです。従来「スジシマドジョウ」とされていたものが、分子系統学的研究によって複数の種・系統群に細分されつつあります。学名も Cobitis taenia から各地域の固有系統ごとに整理されており、現在も研究が進行中です。
小型種は全長6〜9cmほどで、体側に1〜2列の小斑点が並ぶのが特徴です。体の細さはシマドジョウ以上で、非常にスリムな体型をしています。細砂底の河川中下流域〜平野部に生息し、東海・近畿・中国地方などに分布する系統が知られています。地域によっては絶滅危惧II類に指定されており、採集には十分な注意が必要です。
飼育下では、水流が比較的穏やかで細砂底の環境を好みます。底砂の粒径は1mm以下の細目砂を使用すると自然に近い行動が観察できます。水温は10〜25℃が適温で、シマドジョウよりも水質に対してやや敏感な印象があります。複数個体の飼育では、縄張り争いが起きることがあるため、隠れ家を多めに設置してください。人工飼料(コリドラス用タブレット等)をよく食べます。
スジシマドジョウ大型種(Cobitis sp.)
小型種に比べて体がやや大きく(9〜14cm)、斑紋が明瞭で太い傾向があります。東北・関東・近畿など幅広い地域に分布しますが、水系ごとに遺伝的な差異があり、それぞれ独立した種として扱われることもあります。
砂礫底の河川中流域を好み、適度な流れのある環境に生息します。小型種よりも礫(れき)まじりの底質を好む傾向があり、石の隙間に隠れる様子も観察されます。
飼育下では適度な水流と清潔な水質が求められます。上部フィルターを使用する場合は、落水の水流が適度な流れを生み出してくれるのでおすすめです。餌はコリドラス用タブレット・冷凍アカムシをよく食べます。やや活発な泳ぎをするため、60cm以上の水槽で飼育するとのびのびと泳ぐ姿が楽しめます。
オオシマドジョウ(Cobitis magnostriata)
九州北部・筑後川水系・矢部川水系などに分布する大型のシマドジョウ類です。体側の斑紋が大きくはっきりしていることが名前の由来(「大斑」=magnostriata)で、全長10〜14cmに達します。環境省レッドリスト絶滅危惧IB類(EN)に指定された希少種で、九州固有の種として保全上の価値が高いです。
清潔な砂礫底の河川に生息し、河床が自然な砂礫で構成されている場所を好みます。水質の悪化や河川改修による生息地の消失・分断が個体数減少の主要因とされています。一般的なアクアリウム流通にはほとんど乗っておらず、飼育する場合は合法的に入手できるルートを確認することが重要です。
本種を飼育できる機会があるとすれば、展示・保全目的の水族館・研究機関・行政の許可を受けた保全活動からの譲受けなどに限られます。体色・斑紋の大きさが美しく、シマドジョウ類の中でも際立った存在感があります。
トウカイコガタスジシマドジョウ(Cobitis minamorii)
東海地方(静岡県・愛知県・岐阜県・三重県など)固有種で、全長5〜7cmと日本産ドジョウ類の中でも最小クラスの体型を持ちます。環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)という最も深刻なカテゴリに指定されており、主要な生息地は非常に限られています。
平野部の小河川・細流の細砂底に生息しますが、農業用水路のコンクリート化・外来魚の侵入・水質悪化によって個体数が急減しています。この種の採集・飼育には特別な注意と法的確認が必要です。生息地の保全活動が各地で進められており、市民参加型の保全活動に関心がある方は、地元の自然保護団体や行政機関に問い合わせてみることをおすすめします。
ホトケドジョウ(Lefua echigonia)
ホトケドジョウは他のドジョウ類とは別属(Lefua属)に分類される独自性の高い種です。体はずんぐりとした小型(5〜8cm)で、ひげは3対6本、眼下のとげを持ちません。体色は薄茶色〜黄緑色系で、体側に不規則な暗褐色の斑紋が入ります。丸みを帯びた顔つきがとても愛らしく、「仏様のような穏やかな顔」に見えるのが名前の由来とも言われます。
本州中部以北(長野・新潟・岐阜・石川・福井など)に分布し、湧水地・清流の細流・水田の水路など、清潔で冷涼な水環境を好みます。夏の高水温(28℃以上)に弱く、水温管理が飼育上の最大の課題です。環境省レッドリスト絶滅危惧IB類(EN)に指定されており、採集には十分な注意が必要です。
Lefua属にはホトケドジョウの他にも近縁種が存在し、分布域の東西でやや形態が異なる集団があることが知られています。また、湧水環境への依存度が高く、水温が安定した場所でしか生存できません。これがホトケドジョウの飼育を難しくしている最大の理由でもあります。
ホトケドジョウ飼育の重要ポイント:水温は夏でも23℃以下を維持してください。冷却ファンまたは水槽用クーラーが必須です。清潔な湧水・軟水系の水質を好むため、水換えには軟水(TDS低め)を使用するとより良い結果が得られます。
ニシキドジョウ(改良品種)
ニシキドジョウはドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)の改良品種で、体色に赤・白・黄・黒などのカラフルな模様が入るのが特徴です。錦鯉のような派手な配色のものもあり、観賞用として人気があります。一般のアクアリウムショップでも流通しており、比較的手に入れやすい種です。
改良品種ですが、原種のドジョウと同じく腸呼吸をする習性を持ち、底砂に潜る行動も見られます。体色がカラフルなため、水槽の中でも目を引く存在になります。白地に赤や黒の模様が入る個体(「紅白ニシキ」などと呼ばれる)は特に人気があります。
基本的な飼育方法は原種のドジョウと全く同じで、丈夫で飼育しやすいです。水温5〜28℃・pH6〜8程度の幅広い環境に対応できます。ただし体色が目立つため、鳥などの天敵に狙われやすく屋外での飼育には向きません。また、万が一逃げ出したり不要になっても、自然河川に放流することは絶対に禁止です。原種との交雑や生態系への影響が懸念されます。
飼育容器は60cm以上の水槽がおすすめです。底砂は田砂や川砂など細粒のものを使用し、潜れる深さ(3cm以上)を確保してください。フィルターの吸込み口にはスポンジを取り付けて吸い込み事故を防ぎましょう。ニシキドジョウは初心者が日本産淡水魚の魅力に触れるための格好の入門種といえます。
ドジョウ類の飼育共通ポイント
底砂の選び方
ドジョウ類は底砂に潜る習性があるため、底砂選びは非常に重要です。粒子が細かく柔らかい砂(川砂・細目砂利)が最適で、角が鋭い底砂はひげや体を傷つける原因になります。
具体的には「田砂」「川砂」「ボトムサンド」などが人気です。厚さは3〜5cm程度が目安で、潜れるだけの深さを確保しましょう。大磯砂を使用する場合は、粒が大きすぎると潜れないので細目(2mm以下)を選んでください。
ソイル(粒状の土系底砂)は弱酸性に傾ける効果がありますが、粒が崩れやすく泥状になると底砂が汚れやすくなるためドジョウ向きとはいえません。長期管理のしやすさから、田砂または川砂が最もおすすめです。底砂を敷いた後は水で数回すすいでから水槽に入れると、白濁を防げます。
水槽・フィルターの選び方
ドジョウ類は比較的活発に動き回るため、水槽は余裕のあるサイズを選びましょう。ドジョウ(単独)なら45cm水槽からでも飼育可能ですが、混泳や複数飼育の場合は60cm以上がおすすめです。ホトケドジョウなど小型種・複数種混泳の場合は60cm水槽が最低ラインと考えてください。
フィルターは上部フィルター・外部フィルターが扱いやすいです。上部フィルターは酸素の供給効率が高く、ドジョウが腸呼吸をする機会が減るほど水中に酸素が溶け込むのでおすすめです。外部フィルターは見た目がすっきりしますが、酸欠になりやすいためエアレーションを追加してください。
吸込み口の問題について:フィルターの吸込み口の隙間が大きいと小型種が吸い込まれる事故が起きるため、スポンジフィルターを別途取り付けるか、スポンジ式フィルターを使用することをおすすめします。特にスジシマドジョウ・ホトケドジョウなど6〜8cmの小型種を飼育する場合は必ず対策をしてください。
水槽の設置場所も重要です。直射日光の当たる場所は夏場に水温が急上昇するため避けましょう。また、エアコンの風が直接当たる場所も水温変化が激しくなるため好ましくありません。水温計を常設して毎日確認する習慣をつけると、異変に早く気づけます。
脱走防止の対策
ドジョウ類は脱走の名人と言っても過言ではありません。水槽の蓋は隙間なくしっかり閉めることが絶対条件です。市販の水槽セットに付属する蓋では、フィルターの配管や電源コードが通る隙間から脱走する事例が非常に多いです。
隙間をスポンジやテープで塞ぐか、専用の脱走防止蓋を自作する方もいます。特にシマドジョウ類は活発で細身のため、わずかな隙間でも逃げ出します。夜間に脱走して朝発見するというケースが多いので、特に注意してください。
混泳について
ドジョウ類は基本的に温和で、多くの日本産淡水魚と混泳できます。特にドジョウは底層を泳ぎ、他の魚のフードロスを拾ってくれる「水槽の掃除屋」的な役割も果たしてくれます。
相性が良い魚種はタナゴ類・オイカワ・カワムツ・モツゴ・フナ類など。同じドジョウ科同士の混泳も可能ですが、大型種(ドジョウ)が小型種(スジシマドジョウ・ホトケドジョウ)を追い回すことがあるため、サイズ差のある種同士の混泳は注意が必要です。
注意が必要なのは、大型の肉食魚(ナマズ・コイの大型個体など)との混泳です。これらの魚はドジョウを捕食する危険があります。また、スジシマドジョウなど神経質な種は過密飼育でストレスを感じやすいため、余裕のある環境を用意してあげましょう。
ミナミヌマエビ・ヤマトヌマエビなどの淡水エビとの混泳は一般的に問題ありません。ただし大型のドジョウが小型のエビを食べることがあるため、エビが十分に隠れられる環境を整えておくと安心です。ウナギ・ドンコなど底層に生息する肉食魚とは混泳しないようにしましょう。
水質・水温管理
ドジョウ類の多くは幅広い水質・水温に耐えられますが、種によって最適な条件が異なります。ドジョウは最も適応範囲が広く、5〜28℃・pH6〜8程度であれば問題なく飼育できます。一方、ホトケドジョウは23℃以下の低水温を好み、夏の高温は命取りになります。
水換えは週1回・1/3程度が目安。底砂に潜る習性があるため、底砂の汚れが溜まりやすく、プロホースなどで底砂内の汚れも適宜取り除くことが長期飼育のコツです。
水換え時に使用する水は、カルキ抜き(塩素中和剤)を入れた水道水でOKです。ただし、水温差が大きいと体にダメージを与えることがあるため、水槽の水と同じ温度(±2℃以内)の水を使用してください。特に冬場の冷たい水道水をそのまま入れるのは危険です。必ずバケツにためてから温度を合わせましょう。
水質維持のためにはフィルターの定期メンテナンスも重要です。上部フィルターであれば月1〜2回、外部フィルターであれば2〜3ヶ月に1回程度のスポンジ・ウールマット交換をおすすめします。底砂内に汚れが蓄積するとアンモニア・硫化水素が発生してドジョウに悪影響を与えるため、底砂クリーナー(プロホース等)での底砂内清掃も月1回程度行いましょう。
餌の与え方
ドジョウ類は雑食性で、市販の沈下性配合飼料をよく食べます。タブレット状やペレット状の沈下性フードが使いやすく、底砂の上に落とすだけで食べてくれます。生き餌(赤虫・ミミズ・イトメなど)も大好物で、食欲を引き出したいときに与えると喜びます。
注意点は、浮上性フードは食べられないことが多い点です。必ず沈下性フードを選びましょう。また、他の魚と混泳している場合、上層の魚にフードが取られてしまうことがあるので、消灯後に与えるとドジョウが確実に食べやすくなります。
餌の量は1日1〜2回、3〜5分で食べきれる量が目安です。過剰な給餌は水質悪化の原因になるので注意してください。採集したばかりの個体は最初の数日間、餌を食べないことがあります。無理に与えずに1週間程度様子を見て、環境に慣れてきたら少量から与えてみましょう。
ドジョウは温度が低い冬季には食欲が落ちます。5℃以下では活動量が著しく低下し、ほとんど餌を食べなくなることもあります。この時期は給餌量を減らし、残餌が底砂に蓄積しないよう注意してください。春になって水温が10℃を超えてくると再び食欲が戻ってきます。
日本産ドジョウ類の保全状況
環境省レッドリストの状況
日本産ドジョウ科の多くの種が、環境省レッドリストに掲載されています。特に清流性・限定分布の種は深刻な状況にあります。
| カテゴリ | 該当種(主なもの) | 主な脅威 |
|---|---|---|
| 絶滅危惧IA類(CR) | トウカイコガタスジシマドジョウ | 生息地の消失、外来種 |
| 絶滅危惧IB類(EN) | ホトケドジョウ、オオシマドジョウ | 河川改修、農薬、水質悪化 |
| 絶滅危惧II類(VU) | スジシマドジョウ各種(地域個体群) | 護岸工事、砂採取 |
| 準絶滅危惧(NT) | ヤマトシマドジョウ | 生息地の断片化 |
減少の主な原因
日本産ドジョウ類が減少している主な原因は以下のとおりです。
圃場整備・農業用水路のコンクリート化:水田とつながる細流がコンクリート三面張りになることで、産卵場所・隠れ家となる自然護岸が失われます。特にホトケドジョウや小型のスジシマドジョウ類に影響が大きいです。コンクリート水路では底砂がなく、ドジョウが潜れる場所がなくなってしまいます。
農薬・生活排水:田んぼや用水路への農薬流入は底生生物に深刻なダメージを与えます。殺虫剤・除草剤が直接魚に影響するだけでなく、ドジョウの餌となる底生無脊椎動物(ミミズ・イトミミズ等)も減少します。有機農業・農薬低減の取り組みが生息地回復につながります。
外来種の侵入:オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルなどの外来魚がドジョウ類を捕食します。また、食用として輸入・養殖された中国産ドジョウが逃げ出し、在来種との交雑が確認されている地域もあります。外来ドジョウとの交雑は在来種の遺伝的な純粋性を損ない、保全上の深刻な問題となっています。
河川改修:砂礫底の護岸工事や河床コンクリート化により、ドジョウ類が潜れる砂底環境が失われています。また、河川の直線化による流速増加も生息環境の悪化につながります。
水量の減少:農業用水や生活用水のための取水増加、地下水の過剰採取などにより、湧水量が減少している地域があります。ホトケドジョウのような湧水依存型の種には特に深刻です。
飼育者として意識したいこと
希少種を飼育・採集する場合は、以下の点を必ず守ってください。
希少種に関する重要事項:
1. 採集する場合は地域の条例・漁業権・各都道府県の指定種を事前に確認する
2. 採集個体を他の水系に放流しない(遺伝的かく乱の防止)
3. 外来ドジョウ(食用として流通している中国産など)と交雑させない
4. 不要になっても自然河川に放流しない
採集・フィールド情報
ドジョウを採集できる場所
ドジョウ(普通種)は水田周辺の用水路・ため池の流入部・小川などで見つかります。特に春〜夏にかけて、水田に水が入ったころに行動が活発になります。タモ網や筒状の仕掛け(ドジョウ捕り)が使いやすいです。
シマドジョウ類は砂礫底の小〜中規模河川を探しましょう。底砂の上をすいすい泳いでいることもありますが、砂に隠れていることも多いため、タモ網でガサガサしながら砂をかき上げるように探すのが効果的です。
ドジョウの採集のコツとしては、水路の「よどみ」になっている場所が特に狙い目です。流れが緩やかで泥が堆積しているような場所にドジョウは集まりやすいです。また、春先に水田に水が引き始めるタイミングで、用水路から水田への取水口付近に多く集まることがあります。
採集道具は目の細かいタモ網(目合い1〜2mm程度)があれば十分です。ドジョウは動きが素早いので、砂を手前に追い込みながら一気にすくい上げるのがコツです。バケツには少量の水を入れ、採集後はすぐに移してやると安心です。長距離移動の場合はエアーポンプ付きのクーラーボックスを使うと酸欠を防げます。
シマドジョウを採集する方法
シマドジョウは砂礫底の小〜中規模の河川に生息しています。水深10〜30cm程度の浅場で、砂底が広がっているような場所が狙い目です。石が多い場所よりも砂が多い場所を探しましょう。
採集方法は「ガサガサ」が基本です。タモ網を水中に立てて、その手前の砂を足で掻き上げると、驚いて泳ぎ出したシマドジョウがタモ網に入ります。慣れるまでは空振りが多いですが、砂を巻き上げながら網を素早く引き上げるのがコツです。
一か所でうまくいかなくても、場所を変えながら探してみてください。日当たりのよい浅瀬の砂底は特に生産性が高いです。シマドジョウは採集後もかなり元気なので、ビニール袋に水と一緒に入れて酸素を補充すれば持ち帰りも楽です。
ホトケドジョウを探す場所
ホトケドジョウは湧水地・小川の源流部・水田に隣接する細流に生息しています。夏でも水温が低く(15〜18℃程度)、きれいな水が湧き出るような場所が狙い目です。見通しのよい細い水路の砂底をタモ網でゆっくり探ると見つかることがあります。
見分け方のポイントは、体がずんぐりしていてシマドジョウよりも丸みがある点、眼下棘を持たない点などです。動きもシマドジョウほど俊敏ではなく、底砂の上でじっとしていることも多いです。
ただし前述のとおり絶滅危惧種ですので、採集の可否は事前に地域の条例を確認してください。観察だけして逃がすというスタンスも大切です。生息地を確認したら、その情報を地域の自然保護団体や環境省の生物情報データベースに提供することで、保全活動に貢献することもできます。
採集時の注意点・マナー
淡水魚の採集には様々なルールがあります。
- 漁業権の確認:内水面漁業協同組合が管理する河川では、組合員でない人が採集する場合に遊漁料が必要なことがあります。
- 都道府県条例:指定の希少野生動植物種については採集が禁じられている場合があります。
- 他の人の迷惑にならない:農業用水路での採集は農家の方の迷惑にならないよう注意し、必要であれば許可を得ましょう。
- 持ち帰りは必要な分だけ:飼育できる数だけを持ち帰り、乱獲しないようにしましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q, ドジョウとシマドジョウはどうやって見分ければいいですか?
A, 最も分かりやすい違いは体側の模様と体型です。ドジョウは体色が茶褐色〜黄褐色で不規則な斑紋があり、体がやや太めです。シマドジョウは体側に一列の黒斑点(縞模様)が並び、体型がスリムでシャープな印象があります。また、ドジョウは口ひげが5対10本あるのに対し、シマドジョウは3対6本です。
Q, ドジョウは水温が高くても大丈夫ですか?
A, ドジョウ(普通種)は比較的水温に強く、28℃程度までは耐えられます。ただし30℃を超えると体力が落ちてくるので、夏場は水槽用ファンや部屋のエアコンで水温管理をしてください。一方、ホトケドジョウは高温に弱く、23℃以下を保つ必要があります。水槽用クーラーが必要になる場合があります。
Q, ドジョウが水面に顔を出して空気を吸うのはなぜですか?
A, これはドジョウ特有の「腸呼吸(ちょうこきゅう)」という行動です。空気を口から吸い込み、腸の壁面の毛細血管から酸素を取り込むことができます。酸欠状態のときに特によく見られますが、水質が良好な水槽でも定期的に行います。正常な行動なので心配しなくて大丈夫です。ただし、頻繁にパクパクしている場合は酸欠のサインかもしれないので、エアレーションを増やしてみてください。
Q, ドジョウは金魚と一緒に飼えますか?
A, 基本的には混泳可能です。ドジョウは温和で底層を泳ぐため、中〜上層を泳ぐ金魚とは生活スペースが被りにくいです。ただし、金魚の排泄量は多いため水質が悪化しやすく、フィルターを強化して清潔な水質を保つことが重要です。また、大型の金魚がドジョウをつついてストレスを与えることがあるため、個体の相性を見ながら飼育してください。
Q, ニシキドジョウと普通のドジョウを混泳させても問題ありませんか?
A, 混泳は可能です。ニシキドジョウはドジョウの改良品種なので、飼育条件も同じです。ただし、ニシキドジョウは体色が目立つため他の魚につつかれやすい場合があります。混泳する場合は飼育密度を低めにして、隠れ場所(石・流木・水草)を多めに用意してあげると安心です。
Q, ドジョウ水槽に水草は入れられますか?
A, 入れられますが、ドジョウが底砂を掘り返すと根が張れない水草が抜けてしまうことがあります。丈夫で根が深く張るアナカリス・ウィローモス・カボンバなどが比較的向いています。流木や石に活着させたウィローモスはドジョウに掘られる心配が少なく、おすすめです。
Q, 採集したドジョウが餌を食べません。どうすればいいですか?
A, 採集直後は環境変化のストレスで数日〜1週間程度餌を食べないことがよくあります。まず静かな環境で落ち着かせることが最優先です。その後、アカムシ(冷凍または生き餌)を少量与えてみてください。自然のエサに近いため食いつきやすいです。それでも食べない場合は水質・水温を確認し、病気でないかチェックしてください。
Q, ドジョウはどれくらい長生きしますか?
A, 適切な環境で飼育すると、ドジョウは5〜10年生きると言われています。私が飼育している個体も3年以上元気に過ごしています。水質・水温の管理を怠らず、ストレスのない環境を整えることが長寿の秘訣です。
Q, スジシマドジョウを採集したいのですが、何が必要ですか?
A, 基本的な採集道具はタモ網(目の細かい魚捕り用)とバケツです。スジシマドジョウは砂底に隠れていることが多いので、川底の砂を少し掻き上げながらタモ網を使う「ガサガサ」が効果的です。ただし採集前に漁業権の確認、都道府県のレッドリスト・指定種の確認が必須です。地域によっては採集が禁じられている場合があります。
Q, ホトケドジョウを飼育するのに特別な設備は必要ですか?
A, ホトケドジョウ飼育で最も重要なのは水温管理です。夏場に28℃以上になると体調を崩しやすく、最悪の場合死亡します。水槽用クーラーまたは大型の冷却ファン+エアコン管理が必要です。水質は清潔で軟水系を好むため、週1回以上の水換えと活性炭入りフィルター使用をおすすめします。水槽の蓋は脱走防止のため必ず閉めておいてください。
Q, ドジョウが地震前に活発になるという話は本当ですか?
A, 古くから「ドジョウが暴れると地震が来る」という言い伝えがあります。ドジョウは水圧や地磁気の変化を感知する能力があるとする研究もありますが、科学的な証明はまだ十分ではありません。ただし、普段大人しいドジョウが急に活発になったり、水面近くでパクパクしている場合は、水質悪化・水温変化など環境的なストレスのサインであることも多いので、まず飼育環境を確認することをおすすめします。
Q, 日本産ドジョウの中で初心者が最も飼いやすい種はどれですか?
A, 断トツで普通の「ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)」またはその改良品種「ニシキドジョウ」がおすすめです。水質・水温への適応範囲が広く、丈夫で人工飼料もよく食べます。ショップでも入手しやすく、価格も手頃です。シマドジョウも比較的飼育しやすいですが、砂底と清潔な水質が必要です。ホトケドジョウは水温管理が必要なため、中〜上級者向けといえます。
まとめ:日本産ドジョウの多様性を楽しもう
日本に生息するドジョウ科の魚は、一括りに「ドジョウ」と呼ばれることが多いですが、実は分布・形態・生態・保全状況がそれぞれ異なる多様なグループです。今回ご紹介した主な種をまとめます。
- ドジョウ:最も丈夫で飼育しやすい。全国の水田・小川に分布。初心者に最適。
- シマドジョウ:縞模様が美しく観賞価値高い。砂底の川に生息。
- ヤマトシマドジョウ:シマドジョウの近縁種。準絶滅危惧。
- スジシマドジョウ各種:水系ごとに異なる種・系統。分類が複雑で研究が続いている。
- オオシマドジョウ:九州固有の大型種。絶滅危惧IB類。
- トウカイコガタスジシマドジョウ:東海固有の最小種。絶滅危惧IA類。
- ホトケドジョウ:清流性の別属種。夏の水温管理が必須。絶滅危惧IB類。
- ニシキドジョウ:ドジョウの改良品種。カラフルで観賞向け。飼育容易。
ドジョウ類はその愛嬌ある動きと日本的な雰囲気で、日本産淡水魚水槽の名脇役になってくれます。一方で、多くの種が絶滅の危機に瀕しており、採集・飼育には責任が伴います。
飼育を通じてドジョウの魅力を知り、保全への関心を高めていただけたら、それが最も素晴らしいことだと私は思っています。
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