「ナマズって本当に家で飼えるの?」「大きくなりすぎて手に負えないって聞いたけど……」
そんな不安を抱えたまま、ガサガサ中に偶然捕まえたナマズを持ち帰ってしまった方も多いのではないでしょうか。私も最初はそうでした。
ナマズは日本の河川に昔から暮らしている「顔なじみ」の魚です。夜行性で昼間はじっとしていますが、ひとたび夜になると水槽の中を縦横無尽に動き回り、その迫力と愛嬌は他の魚では味わえません。
ただし、ナマズ飼育には独特のコツがあります。脱走対策、強力なろ過、人工飼料への餌付け、大型化への備え──これらをきちんと理解して準備すれば、10年以上も共に暮らせる素晴らしいパートナーになってくれます。
この記事では、生態・飼育環境・餌付けステップ・混泳・繁殖まで、ナマズ飼育のすべてを網羅しました。初めてナマズを迎える方から、うまく餌付けできずに悩んでいる方まで、きっとお役に立てる内容になっています。

- ナマズの正確な分類・学名・国内外の分布と生態
- ナマズ飼育に必要な水槽サイズ・フィルター・レイアウトの選び方
- 適正水温・pH・水換え頻度など水質管理の具体的な数値
- 活き餌→冷凍餌→人工飼料への餌付け5ステップ
- 混泳できる魚・できない魚と判断基準
- 繁殖の条件・産卵から孵化・稚魚育成の流れ
- かかりやすい病気と薬浴時の注意点(薬物感受性が高い!)
- よくある失敗(脱走・急激な大型化・餌付け失敗)と対策
- 大型化した時のトロ舟飼育への移行タイミングと方法
- ナマズと地震予知の伝説(安政の大地震・ナマズ絵)
- 15問のFAQ(寿命・一人暮らし・金魚との混泳……)
ナマズの基本情報

分類・学名
ナマズ(学名:Silurus asotus)は、条鰭綱(じょうきこう)ナマズ目ナマズ科ナマズ属に分類される淡水魚です。「マナマズ」とも呼ばれ、日本産のナマズ類の中でも最も広く知られた種類です。
コイと同じ「コイ目」と間違われることがありますが、正しくはナマズ目(Siluriformes)。コイとナマズは同じ硬骨魚類ながら、目のレベルで大きく異なるグループです。
国内外の分布
マナマズは現在、南西諸島を除く日本全国の淡水・汽水域に広く分布しています。ただし、もともとの生息域は西日本に限定されていたとみられており、東日本への分布拡大は人為的な移入によるものです。
- 江戸時代中期:関東地方に移入
- 江戸時代後期:東北地方に分布を拡大
- 大正時代:北海道にも移入
国外では中国・朝鮮半島・シベリア南部などの東アジア一帯に分布しており、アジアを代表するナマズ科魚類のひとつです。
仲間の種類(日本産ナマズ4種の比較)
日本にはナマズの仲間が4種類知られています。飼育対象となるのは主にマナマズですが、それぞれの違いを知っておきましょう。
| 種名 | 学名 | 最大体長 | 分布 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| マナマズ(ナマズ) | Silurus asotus | 約60cm | 日本全国(移入含む) | 最も一般的。飼育可能 |
| ビワコオオナマズ | Silurus biwaensis | 約120cm | 琵琶湖・余呉湖のみ | 国内最大種。飼育は難難 |
| イワトコナマズ | Silurus lithophilus | 約60cm | 琵琶湖北部・余呉湖 | 岩礁域に生息。黄褐色の斑紋 |
| ネコギギ | Pseudobagrus ichikawai | 約13cm | 愛知・岐阜・三重の一部 | 国の天然記念物。絶滅危惧種 |
注意:ネコギギは国の天然記念物・絶滅危惧種に指定されており、採集・飼育は法律で厳しく制限されています。また、ビワコオオナマズも琵琶湖固有種として保護が必要です。飼育できるのは基本的にマナマズのみと理解しておきましょう。
体の特徴・外見
マナマズの体は頭部が大きく扁平(へんぺい)で、体は細長く、背部から体側にかけて暗褐色ないし緑がかった黄褐色をしています。体側には不規則な雲状の斑紋があり、腹部は灰白色です。
- 最大体長:通常40〜60cm。稀に1m近くになる個体も記録されています。
- ヒゲの本数:成魚は4本(上顎2本、下顎2本)。幼魚期は6本ですが、体長5〜6cm以降に下顎の一対が退化します。
- 目の位置:頭部の両側上方に位置し、かなり小さい。視力よりも側線感覚・ヒゲによる感覚に頼っています。
- うろこ:ナマズはうろこを持たず、全身がぬるぬるした粘液で覆われています。
食性・活動性
ナマズは完全な肉食性(carnivore)です。自然下では以下のものを捕食します:
- 小魚(ドジョウ・タナゴ・メダカなど)
- 甲殻類(エビ・ザリガニ)
- 両生類(カエル・オタマジャクシ)
- 水生昆虫・ミミズ
活動は主に夜間で、昼間は流れの緩やかな場所の岩陰・倒木の下などに身を潜めています。嗅覚と側線感覚が極めて発達しており、暗闇の中でも正確に獲物を捉えます。水槽でも昼間はじっとシェルターの中に潜み、消灯後から活発に動き始めます。
寿命
野生下では10年以上生きることが知られており、大型個体は20年を超えるものもあると言われています。飼育下でも適切な管理を続ければ10〜15年は十分に期待できます。長く付き合える魚だからこそ、最初の設備選びがとても重要です。
ナマズと地震予知の伝説
日本では古くから「ナマズが暴れると地震が来る」という言い伝えがあります。この伝説の背景には、江戸時代の信仰がありました。
江戸時代には「地底に潜む大きなナマズが地面を揺らして地震を起こす」という考えがあり、茨城県の鹿島神社の「要石(かなめいし)」がそのナマズを押さえつけているという伝説が生まれました。
安政2年(1855年)の安政江戸地震の直後には「ナマズ絵」と呼ばれる諷刺画が大流行。地震を起こすナマズを絵に描くことで地震除けのお守りとし、同時に震災の辛さをユーモアで癒やすという江戸っ子らしい文化が生まれました。
ナマズの飼育データ(一覧表)

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Silurus asotus |
| 分類 | ナマズ目ナマズ科ナマズ属 |
| 分布 | 日本全国(南西諸島除く)・東アジア |
| 最大体長 | 60cm(通常)、稀に1m超え |
| 適正水温 | 15〜28℃(最適18〜25℃) |
| 適正pH | 6.5〜7.5(中性付近) |
| 硬度 | 軟水〜中程度(日本の水道水でOK) |
| 推奨水槽 | 90〜120cm(成魚) |
| フィルター | 上部フィルター(強力ろ過推奨) |
| 混泳 | 基本的に単独飼育 |
| 食性 | 肉食性(魚類・甲殻類・両生類) |
| 活動時間 | 主に夜行性 |
| 繁殖期 | 5〜6月 |
| 寿命(飼育下) | 10〜15年 |
| 飼育難易度 | 中級〜上級(餌付けに慣れが必要) |
ナマズの飼育に必要な機材と設備
水槽サイズの選び方
ナマズは成長すると体長40〜60cmに達するため、長期飼育を前提とした水槽選びが重要です。
- 稚魚〜体長20cm程度まで:60cm水槽(水量60L程度)でも可能
- 体長20〜35cm程度:90cm水槽(水量約200L)に移行
- 体長35cm以上・成魚:90〜120cm水槽が理想。120cmならより余裕があります
重要:「小さい水槽で育てれば大きくならない」は間違いです。ナマズは環境に関わらず成長し続けます。狭い環境での飼育はナマズにとって大きなストレスとなり、短命につながります。最初から将来を見越したサイズを選びましょう。
フィルターの選び方
ナマズは大型の肉食魚であるため、排泄量が非常に多く、水を著しく汚します。フィルターは強力なろ過能力を持つ上部フィルターが最も適しています。
上部フィルターをおすすめする理由:
- ろ材を大量に入れられるため生物ろ過能力が高い
- メンテナンスが容易
- 酸素を豊富に取り込める
- 大型魚の飼育実績が豊富
外部フィルターも使用可能ですが、ろ過能力が同等の上部フィルターに比べてメンテナンスがやや手間です。大型魚飼育では上部フィルターに軍配が上がります。
底砂の選び方
ナマズは底砂を強く気にする魚ではありませんが、以下の点を意識すると快適な環境が作れます。
- 粒の細かい砂系底砂:田砂・川砂など。ナマズが体を底砂に押し付ける行動をするため、角のない砂素材が体を傷つけません。
- 大磯砂:定番の選択肢。管理しやすく水質への影響も少ない。
- 厚さ:底砂は2〜3cm程度でOK。厚すぎると嫌気性菌が発生しやすくなります。
底砂・底床材の詳しい比較は底砂・底床材おすすめ比較ガイドも参考にしてください。
隠れ家(シェルター)の重要性
ナマズ飼育で絶対に欠かせないのが隠れ家です。昼間は体をすっぽり収めて休む習性があるため、シェルターがないと強いストレスを受け、食欲不振・病気・短命の原因になります。
おすすめのシェルター:
- 塩ビ管:ホームセンターで安価に購入可能。直径はナマズの体よりやや大きめに。長さは体長の1〜1.5倍。
- 大型土管(素焼き土管):アクアリウムショップで販売。自然に馴染むデザイン。
- 大型流木:洞のある流木を使えばレイアウトとしても機能。ただし水質が変化する可能性があるのでアク抜きを徹底。
塩ビ管のサイズ目安:体長20cmのナマズなら内径6〜8cm・長さ30cm程度。成長に合わせて交換しましょう。ホームセンターで100〜300円程度で購入できます。
水草・レイアウト
ナマズは水草を引き抜いたり、夜間の活発な活動中に倒したりすることがよくあります。水草レイアウトにこだわるよりも、石組みや塩ビ管・土管を中心とした機能的なレイアウトが長続きします。
水草を入れる場合は、
- アナカリス(水草の中で最も丈夫)
- マツモ(浮かせておく形でOK)
- バリスネリア(根がしっかりして引き抜かれにくい)
などの強健な種が向いています。
照明
ナマズは夜行性のため、強い光を好みません。通常の観賞魚用LED照明で問題ありませんが、明暗サイクルをきっちりつけることが大切です。照明がついている時間帯はシェルターから出てこない場合が多いので、夜間にナマズの活動を観察したい場合は赤色光(LEDの赤モード)を使うと良いです。
ヒーターと冷却ファン
マナマズは日本産なので低水温への耐性は高いですが、急激な温度変化は白点病などの原因になります。
- 冬場:室内飼育であれば通常は必要ありませんが、15℃以下になるようであれば小型のヒーターを用意。
- 夏場:28℃を超えると活動が鈍り、30℃以上は危険です。冷却ファンを用意しておきましょう。
フタ(蓋)の必要性
脱走注意!ナマズは非常にジャンプ力が強く、夜間の活動中に驚いた瞬間に水槽の外へ飛び出すことがあります。ほんのわずかな隙間でも脱走します。水槽のフタはすき間なく必ず設置し、コード穴なども目の細かいネットで塞ぎましょう。脱走した場合は乾燥による死亡リスクが高いため、発見が遅れると致命的です。
水槽立ち上げから飼育開始までの詳しい手順は日淡水槽の立ち上げ方完全マニュアルも参考にしてください。
水質・水温の管理

適正水温
マナマズは日本産の魚なので、15〜28℃の幅広い水温に対応できます。ただし快適な水温は18〜25℃で、この範囲を維持するのが理想的です。
- 15℃以下:活動が著しく低下し、ほとんど餌を食べなくなります。冬眠に近い状態。
- 18〜25℃:最も活発で食欲旺盛。飼育に最適な範囲。
- 28℃以上:活動が鈍化、食欲低下。長時間続くと体調を崩します。
- 30℃以上:危険域。緊急の冷却対応が必要。
pH・硬度の管理
ナマズの適正pHは6.5〜7.5(中性付近)です。日本の水道水は多くの地域でこの範囲に収まっているため、特別なpH調整は基本的に不要です。
硬度については軟水〜中程度の硬水まで幅広く対応できます。日本の水道水はほとんどの地域で軟水〜中硬水の範囲なので、そのままカルキを抜いて使えます。
水換え頻度
ナマズは大食いで排泄量が多いため、水換えの頻度は週1回・全水量の1/3程度が基本です。水槽が大きいほど水質の安定が良くなりますが、サボると水が急激に汚れます。
- 餌を多く与えた日の翌日は特に水換えを検討する
- 食べ残しはその都度スポイトで除去する
- 水換え時は新水と水槽水の温度差を1〜2℃以内に抑える
水質パラメータ一覧
| パラメータ | 適正値 | 注意点 |
|---|---|---|
| 水温 | 18〜25℃ | 急変は厳禁。変化は1日1℃以内に |
| pH | 6.5〜7.5 | 日本の水道水で通常OK |
| アンモニア | 0 mg/L | 検出されたら即大量水換え |
| 亜硝酸 | 0 mg/L | 立ち上げ直後は特に注意 |
| 硝酸塩 | 50 mg/L以下 | 定期的な水換えで維持 |
| 溶存酸素 | 6 mg/L以上 | 上部フィルターで確保 |
ナマズの餌の与え方【人工飼料への餌付け5ステップ】

自然下での食性
野生のナマズは動くものに反応して捕食します。視覚よりもヒゲに備わった感覚器官と側線で水の振動を感じ取り、暗闇の中でも正確に獲物を捉えます。この「動きへの反応」が、人工飼料への餌付けを難しくする最大の理由です。
STEP1:活き餌からスタート
採集・購入直後は、まず活き餌で食欲を確認します。
- 活きドジョウ:最も反応が良い。ペットショップで購入可能。
- 活き金魚(小赤):ペットショップで「小赤」として安価に購入できます。
- 活きエビ:ガサガサで採集したテナガエビやスジエビでも可。
消灯後30分〜1時間経ってから餌を入れます。ナマズが夜間に活動し始めたタイミングが最も食いつきが良いです。
STEP2:冷凍餌に慣れさせる
活き餌をよく食べるようになったら、冷凍餌に移行します。
- 冷凍アカムシ:小型・稚魚期のナマズに最適。
- 冷凍スジエビ・冷凍川エビ:嗜好性が高い。
- 冷凍ワカサギ・冷凍メダカ:ある程度大きくなった個体向け。
解凍した冷凍餌を水面近くでピンセットで少し動かしながら与えます。「動き」を演出することが重要です。
STEP3:冷凍餌+人工飼料を混ぜる
冷凍餌を喜んで食べるようになったら、冷凍餌の横に人工飼料を1粒〜2粒忍ばせます。ナマズが冷凍餌ごと人工飼料を飲み込むことを狙います。
STEP4:人工飼料メインに切り替える
人工飼料も一緒に食べるようになったら、冷凍餌の量を徐々に減らし、人工飼料の割合を増やしていきます。この移行期は2〜4週間程度かけてゆっくり進めましょう。焦って一気に切り替えると拒食することがあります。
STEP5:人工飼料のみで安定
最終的には人工飼料のみでの飼育が理想的です。人工飼料は栄養バランスが計算されており、長期飼育において健康維持に非常に有効です。
おすすめの人工飼料
ナマズには沈下性(底に沈むタイプ)の肉食魚用飼料を選びます。浮上性(フロートタイプ)は食べにくいので避けましょう。
餌の量と頻度
- 頻度:1日1回(夕方〜消灯前が理想)
- 量:5〜10分で食べきる量。食べ残しは必ずスポイトで除去します。
- 冬場(20℃以下):食欲が低下するため2〜3日に1回程度に減らしましょう。
ナマズの混泳について

基本は単独飼育
ナマズの混泳は、基本的には単独飼育が推奨されます。その主な理由は以下の通りです:
- 肉食性が強い:口に入るサイズの生き物はすべて食べてしまいます。
- 夜行性のため昼間は気づきにくい:昼に仲良くしていても夜に食べてしまうケースが頻発します。
- 縄張り意識がある:同種・近縁種の底棲魚とは喧嘩をすることがあります。
混泳できる可能性がある魚種
以下の条件を満たす魚であれば、混泳できる可能性があります:
- ナマズの口に絶対に入らないサイズ(体長30cm超の大型魚)
- 底層で生活しない(表層・中層を泳ぐ魚)
- ナマズが活動する夜間に眠る習性の魚
たとえばコイ科の大型魚(大型のフナ・コイなど)は体が大きく、底層よりも中〜上層を泳ぐため比較的混泳しやすいとされています。ただし、保証はできません。
混泳できない魚種
以下の魚は絶対に混泳させないでください:
- 小型魚(メダカ・タナゴ・ドジョウなど):ナマズの格好の餌食です。
- エビ類(ミナミヌマエビ・ヤマトヌマエビなど):即座に食べられます。
- 貝類:口に入るサイズであれば食べられます。
- 同種のナマズ:縄張り争いと共食いのリスクがあります。
- 金魚:体格差があっても、夜間に食べられてしまいます。
混泳相性表
| 魚種 | 混泳の可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 小型メダカ・タナゴ | ✕ 不可 | 捕食されます |
| 金魚(小〜中型) | ✕ 不可 | 夜間に食べられます |
| ドジョウ・ホトケドジョウ | ✕ 不可 | ナマズの大好物です |
| エビ類全般 | ✕ 不可 | 即座に食べられます |
| 同種(ナマズ) | ✕ 不可 | 縄張り争い・共食いのリスク |
| オイカワ・カワムツ(成魚) | △ 要注意 | 一時的には混泳可能なケースも。夜間の捕食に注意 |
| 大型のフナ・コイ(成魚) | △ 条件付き可 | 体が大きければ食べられにくいが水質管理が大変 |
| ウグイ(大型成魚) | △ 条件付き可 | ウグイが十分大きければ共存できる場合も |
混泳について詳しくは日本淡水魚の混泳ガイドもあわせてご覧ください。
ナマズの大型化への備え〜トロ舟飼育への移行〜

大型化のスピード
マナマズの成長は思った以上に早いです。孵化後:
- 1年目:体長10〜15cm
- 2年目:20〜30cm
- 5年目以降:40〜60cm(個体差あり)
順調に育てれば3〜5年で水槽がかなり窮屈に感じてきます。
水槽からトロ舟へ
体長40cmを超え始めたらトロ舟飼育への移行を検討しましょう。
トロ舟(コンクリート用プラスチック容器)のメリット:
- 水量が大きい(120〜200L)ため水質が安定する
- 安価(ホームセンターで5,000〜10,000円程度)
- 日本産魚との相性が良い
- 屋外・ガレージなど広い場所で設置できる
トロ舟飼育の注意点:屋外設置の場合は夏の直射日光による水温上昇(35℃超)と冬の凍結に注意が必要です。夏は日除けネットや遮光シートを設置し、冬はエアレーションと断熱材で水面の凍結を防ぎましょう。マナマズは日本産なので水温が10℃以下でも死ぬことはありませんが、凍結は危険です。
ナマズの繁殖方法

雌雄の見分け方
ナマズの雌雄は、普段はなかなか見分けが難しいですが、以下の点で判断できます。
- 尾ビレの形:オスは尾ビレの後縁の切れ込みがやや深く、メスはほとんど切れ込みがありません。
- 体サイズ:メスはオスより大型になる傾向があります。野外の産卵ペアは「大きなメス×小さなオス」の組み合わせが多いです。
- 繁殖期の腹部:産卵期前のメスは腹部が丸く膨らんでいます。ただし、よく食べたオスも似た体形になることがあるので要注意。
繁殖の条件
- 産卵期:5〜6月(水温20〜25℃の時期)
- 成熟年齢:オスは2年、メスは約3年で性成熟します。
- 必要な環境:水草が生える浅場・泥底環境を再現するか、産卵床(水草の束など)を設置します。
産卵〜孵化の流れ
- 求愛行動:オスがメスの体に巻きつく独特の行動(タイヤ巻き)が見られます。
- 産卵:水草・水底・産卵床に卵を産みつけます。産卵数は体長30cmで約1万〜1.5万粒、体長60cmでは約10万粒にもなります。
- 孵化:水温22℃で2〜3日で孵化します。孵化した稚魚は体長約4mmです。
- 稚魚の成長:1年で10〜15cmに達します。
稚魚の育て方
稚魚は孵化直後はヨークサック(卵黄)で栄養を補いますが、2〜3日後から餌が必要です。
- 孵化後2〜3日:ブラインシュリンプ(孵化させた活きエビの幼生)
- 1〜2週間後:冷凍アカムシ(細かく砕いて)
- 1ヶ月後:細かくした人工飼料・冷凍アカムシ
注意:稚魚は共食いをするため、サイズ差が出てきたら早めに選別・別水槽へ移してください。また産卵数が非常に多いため、里親を見つけるか、地域の日淡愛好家グループに相談するとよいでしょう。
かかりやすい病気と対処法

重要:ナマズ類への薬浴の注意点
ナマズは他の魚に比べて薬物への感受性が著しく高い(薬物耐性が低い)魚種です。魚病薬のパッケージに記載されている規定量をそのまま使用すると、病気よりも薬で死んでしまうケースがあります。必ず規定量の1/3〜1/2の濃度から始め、様子を見ながら徐々に調整してください。まずは塩水浴(塩分濃度0.3〜0.5%)での自然治癒を試みることを強く推奨します。
白点病
症状:体表に白い点々(直径0.5〜1mm程度)が無数に現れます。感染力が強く、放置すると全身に広がり衰弱します。
原因:水温の急激な変化によって免疫が低下した際にウォンキン虫(Ichthyophthirius multifiliis)が寄生します。新しい魚を導入した時にも感染することがあります。
対処法:水温を25〜27℃に上げ、塩水浴(0.3〜0.5%)を試みます。改善しない場合はアグテン(マラカイトグリーン系)を規定量の1/3で薬浴します。
尾ぐされ病(カラムナリス病)
症状:ヒレの端が白くボロボロに溶けてきます。進行すると筋肉まで侵されます。
原因:フレキシバクター・カラムナリス菌による細菌感染。水質悪化・傷・ストレスが引き金になります。
対処法:塩水浴(0.3〜0.5%)を優先。改善しない場合はグリーンFゴールドリキッドを規定量の1/3〜1/2で薬浴。ただしナマズへの使用には十分注意してください。
エロモナス感染症(赤斑病・穴あき病)
症状:体表に赤い出血斑が現れたり(赤斑病)、体表が穴あき状にただれたりします(穴あき病)。
原因:エロモナス菌による細菌感染。水質悪化が大きな誘因です。
対処法:まず水換えで水質改善。その後、観パラD(オキソリン酸系)を規定量の1/2で薬浴。エルバージュエースはナマズ類への使用が禁忌とされているため絶対に使用しないでください。
外傷・スレ傷
原因:シェルターの縁や装飾品の角に体をこすりつけてできる傷。また脱走時の乾燥ダメージ。
対処法:傷口からの二次感染(細菌・カビ)を防ぐため、塩水浴(0.3%)を行います。シェルターは角のないものに変更してください。
野生採集個体の寄生虫
ガサガサや釣りで採集したナマズには、線虫・吸虫・イカリムシなどの外部寄生虫が付いていることがあります。採集個体を導入する際は1〜2週間トリートメントタンクで隔離し、様子を観察してから本水槽に入れましょう。
病気の詳しい治療方法は日本淡水魚の病気・治療ガイドもあわせてご確認ください。
病気一覧表
| 病名 | 症状 | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 白点病 | 体表の白い点々 | 水温急変・免疫低下 | 水温UP・塩水浴・アグテン(規定量1/3) |
| 尾ぐされ病 | ヒレがボロボロ | 細菌感染・水質悪化 | 塩水浴・グリーンFゴールド(規定量1/3) |
| 赤斑病 | 体表の赤い出血 | エロモナス菌・水質悪化 | 水換え・観パラD(規定量1/2) |
| 穴あき病 | 体表が穴あき状に | エロモナス菌 | 観パラD(規定量1/2) |
| イカリムシ | 体表に糸状の虫 | 野生採集個体からの寄生 | リフィッシュ(規定量1/3〜1/2) |
| 外傷・スレ傷 | 体表の傷 | 設備・脱走・他魚との摩擦 | 塩水浴・二次感染予防 |
飼育のよくある失敗と対策

失敗1:脱走させてしまった
原因:フタの隙間、コード穴、フタのない状態での放置。ナマズは夜間に活発に跳ねるため、思わぬ隙間から脱走します。
対策:フタは専用のアクリル板を使い、コード穴はネットで塞ぎます。脱走を発見したらすぐに水槽に戻し、エラが動いていれば助かる可能性があります。
失敗2:餌付けに失敗して拒食が続く
原因:人工飼料に急に切り替えた、与える時間帯が悪い(昼間)、水温が低すぎる。
対策:活き餌→冷凍餌→人工飼料の段階的移行を焦らず実施。餌は必ず消灯後に与えましょう。水温が20℃以下の場合は食欲が落ちますので、春〜秋の水温が高い時期に餌付けを始めるのがベストです。
失敗3:急激な大型化で水槽が手狭に
原因:成長速度を見誤って、水槽を小さいまま維持してしまう。
対策:体長が水槽の全長の1/2を超えたら次の水槽を検討。あらかじめ将来の最大サイズ(60cm)を想定した設備計画を立てておきましょう。
失敗4:水質悪化に気づかず病気に
原因:フィルターが小型すぎる、水換えの頻度が少なすぎる、食べ残しの放置。
対策:週1回の水換えを徹底。月1回はフィルターのスポンジを洗浄。水換え前にアンモニア・亜硝酸テストキットで定期チェックしましょう。
長期飼育のコツ
- 水温変化を最小限に(1日1℃以内)
- 隠れ家は常に設置し、ナマズが安心できる環境を維持
- 年1回は健康チェック(体表の傷・色合い・食欲)
- 換水時は水温・カルキ抜きを必ず確認
- 成長に合わせて水槽・シェルターをサイズアップ
ナマズの採集・入手方法
ガサガサでの採集
ナマズは日本全国の水路・川・池に生息しているため、ガサガサでの採集が可能です。特に夜間のガサガサでは活発に活動しているため捕まえやすいです。
採集のポイント:
- 流れの緩やかな淀み・水路の底
- 岩・倒木・土管の下(昼間はここに潜む)
- 水田用水路(5〜6月の繁殖期は特に見つかりやすい)
釣りでの採集
ナマズ釣りは「ナマズング」とも呼ばれ、ルアーで夜間に狙うのが一般的です。ワーム系ルアーを底近くに流すと反応が良いです。
通販・ショップでの購入
アクアリウムショップや通販でも稀に販売されています。購入する場合は体表の傷・ヒゲの折れ・動きの鈍さがないかを確認しましょう。
採集・購入後の水合わせ手順
ナマズは水質の急変にそれほど敏感ではありませんが、採集直後や購入直後は体力が落ちているため、丁寧な水合わせが大切です。
水合わせの基本手順
- 袋のまま30分水槽に浮かべる:水温を合わせる(特に夏冬は重要)
- 袋の水に水槽の水を少しずつ追加:10分おきに100ml程度を3〜4回。コップや小型スポイトで行う
- 魚だけをすくって水槽へ:袋の水は水槽に入れない(病原体持ち込み防止)
- 導入後は照明を消して暗くする:2〜3時間は静かに様子を見る
採集個体の場合は、まず別水槽で0.3〜0.5%の塩浴を3〜5日行い、寄生虫チェックを済ませてから本水槽に移すとより安心です。
導入後1〜2週間は餌を食べないことが多いですが、焦って無理に与えるとかえって水質を悪化させます。隠れ家に引きこもっているナマズをそっと見守ってあげましょう。
よくある質問(FAQ)
Q, ナマズは何年生きますか?
A, 飼育下では10〜15年が期待できます。野生では20年以上生きる個体も記録されています。適切な環境と管理があれば長寿な魚です。
Q, 一人暮らしでもナマズは飼えますか?
A, 飼えます。ただし90cm以上の大型水槽が必要なため、置き場所の確保が重要です。また旅行などで数日家を空ける場合は給餌装置の設置や友人に頼むなどの対応が必要です。成魚なら2〜3日の絶食は問題ありません。
Q, 金魚と一緒に飼えますか?
A, 飼えません。金魚はナマズの好む魚ですので、夜間に食べられてしまいます。金魚がナマズと同じサイズ以上に見えても、夜行性のナマズに狙われます。必ず別々の水槽で飼育してください。
Q, ナマズは人に懐きますか?
A, 個体差はありますが、長期飼育するうちに人の気配を感じると水面に近づいてくる個体もいます。ただしコイや金魚のように手から餌を食べるほど懐くのは稀です。「存在を認識されている」程度の関係が一般的です。
Q, オスとメスの見分け方を教えてください。
A, 最もわかりやすいのは尾ビレの形です。オスは尾ビレの後縁に深めの切れ込みがあり、メスはほとんど切れ込みがありません。繁殖期(5〜6月)にはメスのお腹が丸く膨らむため判別しやすくなります。
Q, ナマズの最大サイズはどのくらいですか?
A, マナマズの通常の最大体長は約60cmです。ただし野外では稀に1m近い記録もあります。飼育下では餌の量や水槽サイズによりますが、40〜60cmに達する個体が多いです。
Q, ナマズはうろこがないって本当ですか?
A, はい、ナマズはうろこを持たない「無鱗魚(むりんぎょ)」です。全身がぬるぬるした粘液で覆われており、この粘液が体を守っています。素手で持つとかなりぬるぬるします。
Q, ナマズは泳ぐのが下手ですか?
A, いいえ。ナマズは見た目と異なり、水の中では非常に素早く動きます。特に夜間の活動中は水槽内を縦横無尽に泳ぎ回ります。昼間のじっとした様子から動けないと誤解する方もいますが、完全に覚醒している場合はかなりのスピードが出ます。
Q, ナマズは地震を本当に予知できるのですか?
A, 科学的にはまだ証明されていません。地震前の地面の電気変化や微動をヒゲの感覚器で感じ取っているという仮説はありますが、根拠のある実証研究は現時点ではありません。ただし「ナマズが急に暴れ出した」という観察報告が地震前後に多く報告されているのは事実です。
Q, ナマズの水槽に水草は必要ですか?
A, 必須ではありません。ナマズは夜行性で光合成に依存しませんし、活発に動いて水草を倒すことも多いです。シェルター(塩ビ管・土管)を中心としたレイアウトの方がナマズにとっては快適です。水草を入れたい場合は丈夫なアナカリスやマツモが向いています。
Q, ナマズの飼育に必要な初期費用はいくらくらいですか?
A, 目安として、90cm水槽セット(水槽+台)約15,000〜30,000円、上部フィルター約5,000〜10,000円、底砂・シェルター・その他小物約5,000円前後で、合計おおよそ25,000〜50,000円程度かかります。長期間飼うので、最初にしっかり投資する方が長い目で見てお得です。
Q, ナマズを複数飼育することはできますか?
A, 非常に難しいです。ナマズは縄張り意識が強く、同種を同一水槽に入れると激しく争い、共食いが起きることもあります。よほど大きな水槽(180cm以上)に十分な隠れ家を用意した場合でも、安全な保証はありません。基本的には1匹の単独飼育を強く推奨します。
Q, ナマズが餌を食べません。どうすればいいですか?
A, 考えられる原因は①昼間に給餌している(夜に与えましょう)②水温が低すぎる(20℃以下では食欲が低下します)③ストレス(隠れ家がない・水質悪化)④導入直後の拒食(1〜2週間は様子を見ましょう)です。まずは環境を整え、消灯後に活き餌から与えてみてください。
Q, ナマズの飼育に許可は必要ですか?
A, マナマズの飼育自体に特別な許可は必要ありません。ただし、お住まいの都道府県によっては移入規制がある場合がありますので、採集した地域以外に持ち出す際は各都道府県の条例を確認してください。なお、ビワコオオナマズ・イワトコナマズは琵琶湖固有種であり、ネコギギは国の天然記念物なので採集・飼育は原則禁止です。
Q, ナマズが白点病になりました。どんな薬を使えばいいですか?
A, まず塩水浴(塩分濃度0.3〜0.5%)を試みてください。改善しない場合はアグテン(マラカイトグリーン系)を規定量の1/3から始めます。エルバージュエースはナマズへの使用が禁忌とされているため使用しないでください。薬浴中は24時間エアレーションを強化してください。
まとめ
ナマズは日本の川や池に息づく、力強くて個性的な魚です。初見では「でかい・ぬるぬる・夜しか出てこない」と思われがちですが、長く付き合えば付き合うほどその魅力に気づかされます。
この記事で解説したポイントをまとめます:
- 水槽サイズ:成魚は90〜120cm水槽が必須。将来を見越して最初から大きめに準備する。
- フィルター:大型上部フィルター(GEXグランデ900など)で強力ろ過を確保。
- 餌付け:活き餌→冷凍餌→人工飼料の5ステップで焦らず進める。必ず夜間に給餌する。
- 混泳:基本は単独飼育。どんな小さな魚も一緒にしない。
- 病気治療:薬浴は規定量の1/3〜1/2から。エルバージュエースは使用禁止。
- 大型化への備え:体長40cmを超えたらトロ舟飼育も検討する。
- 脱走対策:フタの隙間をゼロにする。
ナマズの飼育は決して難しくありません。必要なのは「適切なサイズの水槽」「夜間給餌の習慣」「脱走を防ぐしっかりしたフタ」の3つだけ。この3点さえ守れば、10年以上の長期飼育も十分に実現できます。最初はじっと動かずシェルターに引きこもっている姿を見て「大丈夫かな?」と不安になるかもしれませんが、環境に慣れたナマズが夜間に元気よく泳ぎ回る姿を見たとき、きっと飼ってよかったと思えるはずです。日本に古くから生きる「ナマズ」という生き物と、ぜひ長い時間をともにしてみてください。
日本の淡水魚の採集方法についてはガサガサ完全入門ガイドを、フィルター選びの詳細はフィルター完全比較ガイドを、他の日本産淡水魚の飼育についてはウグイの飼育方法完全ガイドもあわせてご覧ください。






