ニホンイシガメは、日本にしか生息しない固有種のカメです。幼いころから川や池で見かけ、その愛らしい姿に魅了されてきた方も多いのではないでしょうか。しかし近年は生息数が減少し、準絶滅危惧種に指定されるなど、将来が心配される存在になっています。
私が初めてニホンイシガメと出会ったのは、実家近くの小川でした。石の上で日光浴をしているその姿に「こんなにかわいいカメがいるんだ!」と感動して、それから飼育を始めました。長年飼育を続けてきた経験をもとに、この記事ではニホンイシガメの飼育方法を徹底的に解説します。
この記事でわかること
- ニホンイシガメの基本情報(形態・分布・保全状況)
- 水槽・陸地・日光浴スペースの作り方
- 屋外飼育と室内飼育の違いとメリット・デメリット
- 適切な水質・水温の管理方法
- 餌の種類・与え方・頻度
- 冬眠のさせ方と注意点
- 繁殖方法(産卵・孵化・稚ガメの育て方)
- かかりやすい病気と対処法
- ミシシッピアカミミガメとの見分け方
- よくある質問10問以上
ニホンイシガメの基本情報
分類・学名・英名
ニホンイシガメの学名は Mauremys japonica(モーレミス・ヤポニカ)です。カメ目(Testudines)イシガメ科(Geoemydidae)イシガメ属(Mauremys)に分類されます。英名は「Japanese Pond Turtle」と呼ばれ、まさに「日本の池のカメ」を意味します。
かつてはChinemys japonicaという学名が使われていましたが、分子系統解析の研究が進むにつれてMauremys属に統合されました。イシガメ属には東アジアに広く分布する近縁種がいますが、ニホンイシガメは日本だけに生息する固有種であり、他のイシガメ属の種とは独自の進化を遂げてきた特別な存在です。
形態・外見の特徴
ニホンイシガメの体の特徴を以下にまとめます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 甲長(オス) | 10〜14cm程度 |
| 甲長(メス) | 13〜20cm程度(メスが大きい) |
| 体重 | 成体で150〜800g程度 |
| 甲羅の形 | 背甲(背面の甲羅)中央に縦のキール(隆起)あり |
| 甲羅の色 | 暗褐色〜黒褐色、老個体はほぼ黒くなることも |
| 腹甲(腹面) | 黄色〜橙褐色、黒い模様が入る個体も |
| 頭部・四肢 | 灰褐色〜黄褐色、細かい黄色または白色の線模様 |
| 尾 | 比較的長め(イシガメ属の特徴) |
| 寿命 | 野生・飼育ともに20〜30年以上 |
背甲の中央に走るキール(稜線)は、特に幼体・若齢個体で明瞭です。成長とともに甲羅が丸みを帯び、キールが目立たなくなる個体もいます。頭部には黄色や白色の細い線模様が入っており、これがニホンイシガメを見分けるポイントの一つです。
分布・生息環境
ニホンイシガメは日本の本州・四国・九州に分布する固有種です。北海道には自然分布していませんが、人為的な放流による定着が一部で報告されています。また、種子島・屋久島・対馬などの離島にも分布が確認されています。
生息環境は主に清流・里山の小川・池・水田地帯です。流れが緩やかで水が清澄な環境を好み、砂礫底や岩盤が露出した場所に多く見られます。特に春〜秋にかけて、岩や倒木の上で日光浴をしている姿が観察されます。完全な水棲ではなく半水棲のため、陸地にも頻繁に上がります。
保全状況・現状
ニホンイシガメは環境省レッドリストで準絶滅危惧種(NT)に指定されています。かつては里山の水辺に普通に見られる身近なカメでしたが、近年は個体数が著しく減少しています。主な減少要因は以下の通りです。
ニホンイシガメ減少の主な原因
- 生息地(里山・小川・水田地帯)の開発・改変による消失
- 外来種ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)との競合・交雑
- ペット用採集の過剰
- 農薬・水質汚染の影響
- タヌキ・カラス・アライグマなどの天敵による捕食
特に深刻なのがミシシッピアカミミガメとの交雑問題です。両種が同じ水域に生息すると自然交雑が起き、ニホンイシガメの遺伝的純粋性が失われていきます。飼育下で両種を混泳させると繁殖してしまう可能性があるため、絶対に避けなければなりません。
ニホンイシガメの飼育環境の作り方
水槽サイズの選び方
ニホンイシガメは成体で甲長13〜20cmになるため、十分な広さの飼育スペースが必要です。水槽の目安は以下の通りです。
| 飼育段階 | 推奨水槽サイズ | 備考 |
|---|---|---|
| 幼体(甲長3〜5cm) | 30〜45cm水槽 | 小型でも泳ぎ回れる広さ |
| 若亀(甲長5〜10cm) | 60cm水槽 | 陸地スペースも確保 |
| 成体(甲長10cm以上) | 90〜120cm水槽 | メスはとくに大型になるため広めに |
| 複数飼育(成体2匹) | 120cm以上または屋外プール | 縄張り争いを減らすため広さが重要 |
一般的に「甲長×5〜6倍以上の横幅」が理想とされています。例えば甲長15cmの個体なら75〜90cm以上の横幅が必要です。水槽は横長のタイプが泳ぐスペースを確保しやすくおすすめです。
陸地(バスキングスポット)の作り方
半水棲のニホンイシガメには必ず陸地(バスキングスポット)が必要です。カメは日光浴(バスキング)によって体温を上げ、消化促進や代謝維持を行います。適切な陸地設計のポイントは以下の通りです。
- 陸地の面積:水槽全体の1/3〜1/2程度が目安
- 高さ:水面から5〜10cm程度の段差があると理想的
- 傾斜:緩やかな傾斜があると自力でよじ登りやすい
- 素材:天然石・レンガ・専用フロートなどがおすすめ
- 安定性:カメが乗ってもぐらつかないようにしっかり固定する
市販の「亀の陸地」「浮島」なども活用できますが、大型の成体には耐荷重が足りないことがあるので注意が必要です。石やレンガを積み上げて自作するのもよい方法です。シリコンで固定すると安定します。
バスキングライト・UVBライトの設置
室内飼育では自然の日光が当たらないため、バスキングライトとUVBライトが必須です。
- バスキングライト:陸地の一部を照らし、32〜35℃程度のホットスポットを作る
- UVBライト(紫外線ライト):ビタミンD3の合成を促し、甲羅の成長・健康維持に必要
- 点灯時間:1日10〜12時間程度(タイマーを使うと便利)
- 交換時期:UVBライトは見た目が点灯していても紫外線量が低下するため、半年〜1年で交換
ライトなしはNG!UVBライトが不足すると「くる病(代謝性骨疾患)」になり、甲羅や骨が変形します。室内飼育では必ずUVBライトを用意してください。屋外飼育なら自然の太陽光でOKです。
フィルターの選び方
カメはフンの量が魚と比べて非常に多く、水がすぐ汚れます。水質維持のためにフィルターは必須です。カメ飼育に適したフィルターは以下の通りです。
- 外部フィルター:ろ過能力が高く、大型個体の飼育に最適。水換え頻度を減らせる
- 上部フィルター:メンテナンスしやすく、強いろ過力がある。60〜90cm水槽向け
- 投げ込みフィルター:小型水槽(幼体期)に使用可能だが、単独では力不足になることも
カメは水を汚す生き物なので、魚用の2倍程度のろ過能力を持つフィルターを選ぶのが基本です。それでも週1〜2回の部分換水は必要です。
底砂・底床
底砂は必須ではありませんが、入れることで水質安定・見た目の向上・カメのストレス軽減につながります。おすすめの底砂は以下の通りです。
- 川砂・砂利(粒径5〜10mm程度):自然な環境に近く、誤飲しにくい
- 大磯砂:定番。アルカリ性に傾くため、水質確認しながら使用
- 赤玉土(硬質):弱酸性に傾く。ニホンイシガメの自然環境に近い
底砂を細かくしすぎると誤飲のリスクがあるため、5mm以上の粒径のものを選びましょう。また、底砂を入れると掃除が大変になるため、底なし(ベアタンク)で飼育する方も多いです。
屋外飼育 vs 室内飼育
屋外飼育のメリット・デメリット
ニホンイシガメは日本固有種なので、日本の気候に適応しています。屋外飼育は本来の生活環境に近く、多くのメリットがあります。
| 項目 | 屋外飼育 | 室内飼育 |
|---|---|---|
| 自然の日光 | ◎ 十分な紫外線・バスキングが可能 | △ 人工ライトが必要 |
| 広さ | ◎ 大型のプールや池が設置可能 | △ 水槽サイズに限界あり |
| 水質管理 | ○ 自然のろ過が働く場合も | △ フィルター必須・換水が大変 |
| 冬眠 | ◎ 自然に冬眠させやすい | △ 温度管理が複雑 |
| 観察・鑑賞 | △ 観察しにくいこともある | ◎ 毎日間近で観察可能 |
| 天敵対策 | △ カラス・タヌキ等への対策が必要 | ◎ 天敵の心配なし |
| 脱走リスク | △ 高い。壁・フェンスの強化が必須 | ○ 低い(フタ必要) |
| 初期費用 | △ プール・柵の設置コストあり | ○ 水槽セットで始められる |
屋外飼育の設備づくり
屋外飼育ではプール(トロ舟・衣装ケース・専用池)を使うのが一般的です。
- トロ舟(工事用の長方形プール):60〜120L程度のものが入手しやすく、掃除もしやすい
- FRP池・プール:本格的な屋外飼育に最適。複数飼育にも対応
- 防脱走フェンス:高さ40cm以上のプラスチック板または金属フェンス。外側に返しをつけると確実
- 天敵対策:金属製のネット・フタで上部を覆う(カラス・アライグマ・ネコ対策)
- 日陰の確保:夏場に水温が上がりすぎないよう、半日陰の場所を確保する
室内飼育のポイント
室内飼育では前述の水槽・ライト設備に加え、以下の点に注意してください。
- フタの設置:カメは意外と力が強く、壁を登って脱走することがある。必ずフタをする
- 換気:水槽の湿気がカビや臭いの原因になるため、室内の換気も重要
- 水深:幼体の水深は甲長と同じくらい(溺れ防止)。成体は泳げる深さ(10〜30cm程度)でOK
- 水温計の設置:季節によって水温が大きく変動するため、常に確認できる状態にしておく
水質・温度管理(冬眠について)
適正水温と水質
ニホンイシガメが活発に活動する温度帯は20〜28℃です。日本の四季に対応できるため、冬眠を除けば日本国内の気候で問題なく飼育できます。
ニホンイシガメの適正水質パラメータ
- 水温:20〜28℃(活動期)/10℃以下(冬眠期)
- pH:6.5〜7.5(弱酸性〜中性)
- アンモニア・亜硝酸:できるだけ0に近い状態を維持
- 水換え頻度:週1〜2回、1/3〜1/2の量を換水
夏場の水温対策
夏場は水温が30℃を超えると危険です。高水温は体力を消耗させ、免疫低下・食欲不振の原因になります。以下の対策を行いましょう。
- 水槽を直射日光が当たらない場所に置く
- 水槽用クーラーまたは保冷剤で水温を下げる
- 扇風機で水面に風を当てて気化冷却させる(水温を2〜3℃下げられる)
- 屋外飼育では日陰を作り、水深を深くして温度変化を緩やかにする
冬場のヒーター(越冬 vs 冬眠)
冬眠させる場合はヒーターは不要ですが、冬眠させずに通年活動させる場合はヒーターで水温を22〜26℃に保ちます。幼体の場合、初めての冬は冬眠させずに室内で越冬させる方が安全です(体力が十分でないため)。
餌の与え方(配合飼料・生き餌・野菜)
ニホンイシガメの食性
ニホンイシガメは肉食傾向の強い雑食性です。野生では水生昆虫・小魚・エビ・ミミズ・カエルなどを捕食しますが、水草・果実・コケ類なども食べます。飼育下でも動物性の餌を好む傾向があります。
配合飼料(人工フード)
飼育下では亀専用の配合飼料(カメのエサ)が最も手軽で栄養バランスも優れています。市販のカメ用フードにはビタミン・ミネラルが配合されており、主食として十分使えます。
- 浮上性フード(水面に浮く):給餌の確認がしやすい
- 沈降性フード:水中で食べる場合に適している
- 大粒・小粒サイズ:体のサイズに合わせて選ぶ
生き餌・生餌
配合飼料に慣れていないカメや、食欲増進のために生き餌を与えることも有効です。
- 冷凍赤虫・冷凍エビ:嗜好性が高く、食い付きが良い
- 小魚(メダカ・金魚):生き餌として使用可能。動くものを追いかける本能を刺激
- ミミズ・コオロギ:野生に近い餌。カルシウム補給にも
- エビ(手長エビ・ヌマエビ):殻ごと食べることでカルシウム摂取
野菜・植物性の餌
野菜は補助的に与える程度でOKです。葉野菜(小松菜・チンゲンサイ・サニーレタス)やカボチャ、ニンジンなどを細かく刻んで与えます。ほうれん草はシュウ酸を多く含むため避けましょう。
給餌の頻度と量
- 幼体・若亀:毎日または1日2回(成長期のため)
- 成体:週3〜5回程度(食べ過ぎ防止)
- 量の目安:5〜10分で食べきれる量。食べ残しは水質悪化の原因になるため取り除く
- 冬眠前(秋):越冬・冬眠のために少し多めに与えて体力をつける
冬眠のさせ方・注意点
冬眠の必要性
ニホンイシガメは変温動物であり、秋になると気温・水温の低下とともに活動量が落ち始め、水温が10℃以下になると冬眠に入ります。冬眠は生理的に必要なプロセスと考えられており、適切に冬眠させると健康維持・長寿・繁殖促進につながるとされています。
ただし、冬眠中に死亡するリスクもあるため、適切な管理が必要です。以下の条件を満たさない個体は冬眠させないほうが安全です。
冬眠させないほうが良いケース
- 孵化後1年目の幼体(体力が十分でない)
- 病気・怪我の個体
- 秋に十分に食べられなかった痩せた個体(肋骨が浮き出て見える状態)
- 冬眠管理の経験がない初心者(まず室内越冬から始める)
冬眠前の準備
冬眠を成功させるためには秋からの準備が重要です。
- 9〜10月:しっかり食べさせる ― 栄養を蓄えさせる。特に高タンパクの餌を多めに与える
- 10月下旬〜:給餌を徐々に減らす ― 水温15℃以下になったら給餌を控え、消化管を空にする(未消化物があると冬眠中に腐敗して死亡する原因になる)
- 水温10℃以下になったら冬眠開始 ― 無理に起こさず、静かに見守る
冬眠中の管理
冬眠中の管理は以下の点に注意してください。
- 水を切らさない:水中冬眠の場合、水が干上がると死亡する。水量を定期的に確認
- 水温0℃以下にしない:凍結すると死亡する。屋外飼育では断熱材で保護
- 陸上冬眠:落ち葉・腐葉土の中に潜らせる方法もある。乾燥しないよう湿度管理が必要
- 冬眠中は絶対に起こさない:中途半端に目覚めさせると体力を消耗して死亡する場合がある
- 春の覚醒:水温15〜18℃以上になると自然に目覚める。目覚めたら少量から給餌を再開
繁殖方法(産卵・孵化)
雌雄の見分け方
ニホンイシガメの性別は外見でほぼ見分けられます。
| 特徴 | オス | メス |
|---|---|---|
| 体サイズ | 小さい(10〜14cm程度) | 大きい(13〜20cm程度) |
| 尾 | 太くて長い | 細くて短い |
| 総排泄孔の位置 | 甲羅の縁より外側に出る | 甲羅の縁の近く(内側) |
| 腹甲(腹側) | くぼんでいる(凹型) | 平らまたはやや膨らむ |
| 前爪 | 長め | 短め |
最も確実な見分け方は尾の太さと総排泄孔の位置です。甲長5cm以上になれば概ね判別できますが、幼体期は難しいことも多いです。
繁殖の条件・交尾
繁殖には成熟した成体のオスとメスのペアが必要です。ニホンイシガメが性成熟するのはオスで3〜5年目、メスで5〜7年目と比較的遅めです。
交尾は主に春(4〜5月)と秋(9〜10月)に行われます。オスがメスの前で鼻先を振ったり首をのばしたりする求愛行動が見られます。強引な交尾でメスが傷ついてしまう場合があるため、メスの状態を観察しながら管理してください。
産卵・孵化
交尾後、メスは5〜8月に産卵します。一回に3〜8個程度の卵を産みます。陸地に十分な産卵場所(やや湿った土や砂)を確保しておきましょう。
採卵後の孵卵管理:
- 卵を回収する際は向きを変えないように注意(上下が決まっている)
- 湿らせたバーミキュライトに半埋め状態にする
- 温度30℃・湿度80%程度で管理すると60〜70日で孵化
- 孵化後の稚ガメはすぐには食べないこともある(卵黄を吸収中)。2〜3日後から少量の赤虫や配合飼料を与え始める
稚ガメの育て方
孵化直後の稚ガメは甲長2〜3cm程度。非常に小さいため、以下の点に注意します。
- 溺れないよう水深は甲長と同程度(2〜3cm)にする
- 陸地は必ず確保し、いつでも陸上に上がれるようにする
- UVBライトは成体と同様に必要
- 天敵(他の個体からの攻撃)に注意。親や他の個体とは別飼育が安全
かかりやすい病気と対処法
主な病気一覧
| 病気名 | 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 代謝性骨疾患(くる病) | 甲羅が柔らかい・変形、四肢の骨格異常 | UVB不足・カルシウム不足・ビタミンD3不足 | UVBライト導入、カルシウムサプリ添加、獣医診断 |
| 肺炎・呼吸器感染症 | 口から泡、異常音(ヒューヒュー)、水中で傾く | 低温・水質悪化・細菌感染 | 保温(28〜30℃)、獣医に相談・抗生物質 |
| 腸炎・下痢 | 軟便・白い便・異臭、食欲低下 | 食べ過ぎ・水質悪化・不衛生な餌 | 断食(1〜2日)・換水、改善なければ獣医へ |
| 皮膚・甲羅の感染症 | 甲羅が白くなる、ぬるぬる、赤みがある | 細菌感染・水質悪化・傷 | 換水・塩水浴(薄い塩水1〜2%)、重症は獣医へ |
| 目の異常 | 目が腫れる・白く濁る・開かない | ビタミンA不足・細菌感染・水質悪化 | ビタミンA含む餌(レバー・かぼちゃ)、獣医へ |
| 甲羅腐れ(シェルロット) | 甲羅が黒く変色・ボコボコと欠ける | 細菌・真菌感染、傷、水質悪化 | 乾燥・消毒(ベタジン等)、清潔な環境整備、獣医へ |
| 卵塞(卵詰まり) | 食欲低下、後ろ足の動きがおかしい(メスのみ) | 産卵場所の不足・カルシウム不足 | 産卵場所の設置、改善なければ速やかに獣医へ |
病気予防の基本
カメの病気の多くは、適切な飼育環境を整えることで予防できます。以下の基本を守りましょう。
- 週1〜2回の定期的な換水を欠かさない
- UVBライトを適切に使用する(室内飼育の場合)
- 食べ残しは速やかに取り除く
- 水温の急変を避ける(急激な温度変化はストレスになる)
- 定期的に体重を測定し、急激な変化がないか確認する
- カメを診られる爬虫類専門医を事前に探しておく
ミシシッピアカミミガメとの違い・見分け方
見分け方のポイント
| 特徴 | ニホンイシガメ | ミシシッピアカミミガメ |
|---|---|---|
| 耳の赤い模様 | なし | あり(赤いラインが目立つ) |
| 甲羅の色 | 暗褐色〜黒褐色 | 緑色〜オリーブ色(黄色の線模様) |
| 頭部・皮膚 | 灰褐色、細い黄白色の線模様 | 緑色、黄色の太い縞模様 |
| 甲羅の形 | 背甲中央にキール(隆起)あり | 比較的平ら・滑らか |
| 大きさ(成体) | 13〜20cm | 15〜30cm(より大型になる) |
| 原産地 | 日本固有種 | 北アメリカ原産の外来種 |
| 保全状況 | 準絶滅危惧種(NT) | 特定外来生物(2023年指定) |
交雑個体(ハイブリッド)への注意
自然界では、ニホンイシガメとミシシッピアカミミガメが交雑した「ハイブリッド個体」も確認されています。外見がどちらにも似た中間的な特徴を持つため、見分けが難しいことがあります。
飼育においては両種を同じ水槽・屋外スペースで飼育することは絶対に避けてください。意図せず繁殖してしまうリスクがあり、ニホンイシガメの遺伝的純粋性を守る観点からも重要なルールです。
ミシシッピアカミミガメの法的立場(2023年以降)
2023年6月、ミシシッピアカミミガメは特定外来生物に指定されました。これにより、新たに野外への放流は禁止されていますが、すでに飼育している個体はそのまま飼い続けることができます。ただし、飼育個体の野外放流・売買・譲渡は原則禁止です。知らずに川や池に放してしまうことは法律違反になりますので注意してください。
ニホンイシガメ飼育におすすめの商品
亀用 UVBライト・バスキングライト
約2,000〜6,000円
室内飼育に必須。紫外線でくる病を予防し、健康な甲羅を作る
亀専用 配合飼料(カメのエサ)
約500〜2,000円
栄養バランス抜群。浮上性タイプは食べ残しの確認もしやすい
亀用 水槽セット・亀の島
約3,000〜15,000円
陸地付き水槽セット。幼体からの飼育スタートに最適
※ 価格は変動します。最新価格はリンク先でご確認ください
よくある質問(FAQ)
Q, ニホンイシガメはどこで購入できますか?
A, 爬虫類専門店・ペットショップ・爬虫類即売会(レプタイルズショー等)で購入できます。通販サイトでも販売されています。なお、野外採集については地域によっては規制がある場合もあるため、事前に確認してください。
Q, ニホンイシガメを飼うのに許可は必要ですか?
A, ニホンイシガメは種の保存法による国内希少野生動植物種には指定されていないため、個人で飼育・購入すること自体に特別な許可は不要です。ただし、野外での採集については地域の条例や採集場所の規制を確認してください。
Q, 1匹でも飼えますか?複数飼育は可能ですか?
A, 1匹から飼育可能です。複数飼育も可能ですが、オス同士は縄張り争いをすることがあるため、広いスペースが必要です。また、ニホンイシガメとミシシッピアカミミガメを混泳させると交雑するリスクがあるため、必ず別々に飼育してください。
Q, 水換えはどれくらいの頻度で行えばいいですか?
A, フィルターを使用している場合でも週1〜2回、1/3〜1/2の水量を換水するのが目安です。カメはフンの量が多く水が汚れやすいため、こまめな換水が健康維持につながります。臭いが強くなってきたら早めに換水してください。
Q, ニホンイシガメは人に慣れますか?
A, 個体差はありますが、長期間丁寧に飼育すると人に慣れ、餌をもらいに近づいてくるようになります。幼体から飼育すると比較的慣れやすいです。ただし、カメは基本的に「慣れる」生き物であり、犬や猫のように「懐く」とは少し異なります。無理にハンドリングを続けるとストレスになるので注意してください。
Q, ニホンイシガメの寿命はどれくらいですか?
A, 野生・飼育ともに20〜30年以上生きる個体が確認されています。適切な環境で飼育すれば非常に長寿な生き物です。飼育を始める際は、長期的に世話できるかどうかをよく考えましょう。
Q, 冬眠中に動かなくなった。死んでしまったのでしょうか?
A, 冬眠中はほとんど動かなくなるため、一見死んでいるように見えることがあります。軽く水を手でかけてみたり、温かい場所に移して様子を見ると反応する場合があります。ただし、強引に起こすのは危険なので注意してください。春になっても全く動かない、体が腐敗臭がする場合は残念ながら死亡している可能性があります。
Q, 甲羅が白くなっています。病気ですか?
A, 甲羅の白化には複数の原因が考えられます。水質の問題(硬度・pH異常)やカルシウム不足、細菌・真菌感染(シェルロット)の初期症状の可能性があります。水質を改善し、UVBライトが適切に使えているか確認してください。改善しない場合は爬虫類を診られる動物病院へ相談してください。
Q, ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)を飼っていますが、ニホンイシガメと一緒に飼えますか?
A, 絶対にやめてください。両種を同じ環境で飼育すると交雑(ハイブリッド個体が生まれる)する可能性があります。ニホンイシガメは日本固有の貴重な種であり、交雑によって遺伝的純粋性が失われることは保全上の大きな問題です。必ず別々に飼育してください。
Q, ニホンイシガメは水の外に出たがります。これは正常ですか?
A, 正常な行動です。半水棲のカメは陸地に上がることが本来の行動であり、日光浴・体温調節のために陸上に出ます。陸地スペースが十分でないと状況によってはストレスになります。水槽全体の1/3〜1/2程度の陸地を確保してあげましょう。また、産卵前のメスは産卵場所を求めて陸上を歩き回ることがあります。
Q, ニホンイシガメの幼体(赤ちゃん)の育て方で特に注意することは?
A, 幼体期に特に注意したいのは「溺れ防止」「UVBライト」「保温」の3点です。水深は甲長と同じくらいの浅さにして、いつでも陸地に上がれるようにしてください。UVBライトをしっかり当てないとくる病になりやすいです。また初冬は冬眠させず、ヒーターで22〜26℃を維持して2年目以降に冬眠を検討してください。
Q, 屋外で飼育しています。脱走対策はどうすればいいですか?
A, カメは意外に高い壁を登ることができ、隙間からも脱出します。高さ40cm以上のプラスチックまたは金属製の壁を設置し、上端を外側に折り返す(返し)と効果的です。地面に穴を掘って脱出する可能性もあるため、底面も金属メッシュなどで覆う対策が必要です。また、天敵(カラス・アライグマ等)対策として上部もネットで覆うことをおすすめします。
まとめ
ニホンイシガメは日本固有の半水棲カメで、準絶滅危惧種という貴重な存在です。適切な飼育環境を整え、正しい知識のもとで育てることで20年以上の長い付き合いができる素晴らしいパートナーになってくれます。
飼育のポイントをおさらいすると:
- 成体は90cm以上の広い水槽、または屋外プールで飼育する
- 陸地(バスキングスポット)と室内飼育ではUVBライトが必須
- 水質管理(週1〜2回の換水)をしっかり行う
- 冬眠は十分な体力がついた成体から行い、幼体は室内で越冬させる
- ミシシッピアカミミガメとは絶対に一緒に飼育しない
- 病気の早期発見のために日頃の観察を欠かさない
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