はじめに
アクアリウムを始めると水槽内に必ず現れるのが「コケ」です。
スクレイパーやスポンジで擦り落としても数日後には生えてきたり、ガラスの継ぎ目のシリコン部分にフサフサしたしぶといコケが生えて見た目が気になってしまったりと地味に悩みの種になりやすい物です。
コケの種類やコケの生える原因についてもご紹介しますので、
ご自宅の水槽のコケ問題にお悩みの方は是非参考にしてみてください。
1. コケが生える原因は?
コケ問題を解決するためには、何故ハイペースでコケが生えてしまうのか、その原因を知る必要があります。
・水槽内の環境が富栄養価している
飼育している魚やエビ等の匹数が多かったり餌をたくさん与えていると、排泄物や残餌の栄養分が溶け出して栄養に富んだ水になります。
水草育成には悪い訳ではないのですが、
レイアウトされた水草がその栄養を消費仕切れないとコケが生えやすくなってしまいます。
水草育成のためにソイルや肥料を使っていたりすると同じ事が起きるので、肥料の添加は説明書を鵜呑みにせず、水槽環境に合わせてその都度微調整しながら添加するようにしましょう。
・照明が強いor照明時間が長すぎる
コケも植物の仲間なので、
照明時間が長かったり照明が強すぎたりすると一気に増えてしまう事があります。
照明時間は約8〜10時間が目安とされており、なかなか目安時間に消灯が難しい方は照明用タイマーを併用すると設定時間で消灯、点灯できるのでオススメです。
特に太陽光の場合は水槽内に緑色のコケが出やすくなるどころか、飼育水の栄養状態によってはグリーンウォーターが出来上がってしまう事もあるので注意が必要です。
他にも水槽と照明器具との距離が近すぎてコケが生えやすくなるという場合もあるので、照明器具をアイテムを使って持ち上げる事で改善する事もあります。
・汚れが溜まっている&濾過力が弱い
最初にご説明した状態と少し似ているのですが、底砂の中やフィルターに汚れが溜まっていると水質が悪くなるだけでなく、溶け出した栄養分によってコケが生えやすくなってしまいます。
また、フィルターの濾過材の中にはコケを抑制する効果がある物や栄養となる有機物等を吸着する物もあるのですが、目詰まりしたり濾過材自体が古くなったりしているとそれらの効果も激減してしまうのでフィルター掃除の際は目詰まり等も確認しましょう。
2. コケの種類について
生えてくるコケによって種類や特徴も違います。
・珪藻
水槽のガラス面やフィルター、水草等のあらゆる場所に生えてくる茶色っぽいコケで「茶ゴケ」とも呼ばれています。
水槽の環境が安定していないと生えやすい傾向がありますが、
水換えの頻度を増やしたり水槽内の環境が落ち着いてくるとあまり生えて来なくなります。
・アオミドロ
「緑藻」とも呼ばれており、
理科の授業でも顕微鏡の拡大図で知られているポピュラーな藻類です。
水草の葉や全体に生え、見た目は緑色の糸状です。
放っておくとどんどん増えて伸びてしまい、トロロコンブの塊のようになってしまいます。
飼育水の栄養状態によって色が多少変化する特徴もあり、強い照明と二酸化炭素を添加している環境下で生えやすいので水草レイアウト水槽ではかなりの厄介者です。
・ガラス面に生える緑色のコケ
こちらも珪藻のようにガラス面に生えてきます。
水槽内の栄養分が溜まってくるとガラス面やフィルターの揚水パイプ等にうっすらと生えてきますが、スクレイパーやスポンジで落としやすいコケでもあります。
しかし、コケ掃除が甘いと数日でまたうっすらと生えてくるため侮れない存在です。
・ヒゲ状コケ
濃緑色〜黒色のフサフサした見た目のコケです。
流木や水草だけでなくシリコン部分や石にまで生え、しかも丈夫でしぶといという憎たらしいコケです。栄養分が大分溜まった環境で水換え頻度も少ないと生えやすい傾向にあります。
・糸状コケ
前述したアオミドロと似ていますが、アオミドロより短い特徴があります。
水草の葉の部分に糸クズ状あるいは葉全体にフワフワした感じで生えてきます。
・藍藻類
緑色をしたフィルム状の物体です。
コケというよりは「シアノバクテリア」のバクテリアフィルムです。
底砂や水草の葉等にペッタリと付着しますが、柔らかく千切れやすい特徴があります。
3. コケを撃退してくれる生体について
それぞれにコケの得意分野があるため、水槽に合わせて導入するとコケの抑制に貢献してくれます。ここではいくつかのグループに分けてご紹介させていただきます。
☆日淡水槽にもオススメのコケハンター
基本的に低めの水温と流れの早い環境になりやすい日淡水槽では、入れられるコケハンターの種類が少なく感じる方も多いかと思います。
・イシマキガイ、イガカノコガイ、カバクチカノコガイの仲間
ペットショップでも見かける機会の多い巻き貝の仲間です。
珪藻や藍藻、うっすら生える緑色のコケを食べてくれます。
また、ラムズホーンの仲間のように殖えすぎて困るという心配もありません。
Q.何でラムズホーンのように水槽内で殖えないの?
A.産卵はしますが幼生が育たないからです。
イシマキガイやイガカノコガイはラムズホーンのように増えるということがありません。その理由は産卵の形態の違いや幼生の違いにあります。
ラムズホーンの仲間はゼリー状の物に包まれた状態で産卵され、そのまま純淡水で成長し、稚貝の姿で生まれてきます。
しかし、イシマキガイの仲間は白い楕円形の卵を多数石等に産み付けますが、孵化した稚貝は1度海に下るという生態があるため、水槽内で増える事がないのです。
・アジメドジョウ
草食性の強いドジョウの仲間です。
珪藻や藍藻、緑色のうっすらと生えてくるコケを食べてくれます。
キレイな水と中性の水質を好むため日本淡水魚水槽に向いています。
しかし、体が細長いので大きめの金魚やフナ、カジカ等と混泳させると食べられる可能性があるので注意が必要です。
・ボウズハゼ
最大20cm近く成長し、川の流れが強い場所に生息している草食性の強いハゼの仲間です。吸盤状に発達した口で珪藻や藍藻、うっすらと生えてくる緑色のコケを食べてくれます。
キレイな水質と溶存酸素量の多い環境を好んでいますが、
それさえクリアできれば日本淡水魚水槽にピッタリのコケハンターとなってくれます。
・ヤマトヌマエビ
コケ取り要員として古くから親しまれているエビです。
全長は5cm程で、透明感のある緑がかった黄土色の体に赤い点々模様が美しい種類です。
ヒゲ状コケやアオミドロ、藍藻等をよく食べてくれますが、ガラス面に生えるタイプのコケは食べづらいようです。
・ミナミヌマエビ、ビーシュリンプの仲間
両者共に2〜3cm程の小型種です。
ある程度まとまった匹数を水槽に導入するとアオミドロや糸状コケ、藍藻等をせっせと食べてくれます。
小さく見た目も美しいため小型水槽のタンクメイトとしても優秀で、環境が良ければ繁殖し、さらにコケ取りがはかどります。
・ミゾレヌマエビ
見た目はスジエビに似ていますが、スジ模様も薄く、全身に乳白色の模様が散りばめられています。
全長は5cm程で、コケ取り能力がかなり高いヌマエビです。
アオミドロや糸状コケ、ヒゲ状コケ等もよく食べてくれます。
ショップで見かける機会は少なめですが、通販であれば入手しやすいエビです。
☆熱帯魚、水草レイアウトにもオススメのコケハンター
熱帯魚メインの水槽や水草メインの水槽では多くのコケハンター達がコケ対策に大活躍しています。
・ブラックモーリー
グッピーやプラティと同じ卵胎生のメダカの仲間です。
全長は8cm程と少々大きめですが、ガラス面に生えるタイプのコケや藍藻等の他、水面に張る油膜も食べて水景を維持してくれます。
・ドワーフペンシルフィッシュ
細長い体を持つ小型カラシンの仲間です。
全長は3cm程で同種間だと小競り合いをしますが、糸状のコケを食べてくれます。
体色も美しいので、コケ取り&タンクメイトとして水槽に入れても素晴らしい種類です。少し大きなスリーラインペンシルフィッシュも糸状のコケを食べてくれます。
・サイヤミーズフライングフォックス
成長しても10cm程の大きさで、とても大人しい性格の種類です。
コケをよく食べてくれるため、水草レイアウト水槽でも人気です。
・ホンコンプレコ、ボルネオプレコ
どちらも5cm程の大きさの「タニノボリ」の仲間です。
ホンコンプレコは明るいベージュの体色に褐色の不規則な模様が入り、ボルネオプレコは黒い体色に白〜黄色の細かな水玉模様があります。
特にガラス面や石に付くコケをよく食べてくれます。
・パンダシャークローチ
5cm程の大きさに成長するタニノボリの仲間です。
白黒のパンダ柄が可愛らしく、ガラス面や石に生えるコケをよく食べてくれるため人気があります。
・オトシンクルスの仲間
成長しても4cm程にしかならない小型種が多いグループです。
ガラス面に生えるコケを削り取るようにして食べてくれます。
ショップでもよく取り扱われており、
オトシンクルス以外に「オトシンクルス・ネグロ」等もいます。
ジャイアントオトシンと呼ばれる10cm程に成長する種類もいますが、こちらは45cm以上の水槽のコケハンターとして優秀です。
・タイガープレコやミニブッシー等の小型プレコ
プレコの仲間の中でもタイガープレコやミニブッシーは小型種で、7〜12cm程にしかなりません。
吸盤状の口を使ってガラス面や石、流木に生えるコケを削り取って食べてくれますが、アオミドロのように糸の塊のようになってしまうコケとは相性はあまり良くない面があります。
プレコの育て方については、こちらで詳しく解説しておりますのでご興味あればどうぞ。
☆小型水槽&ちょっとマニアックなコケハンター
30cm水槽等の小型水槽にはコケハンターとしてオトシンクルスやビーシュリンプ等が選ばれていますが、
「どうしても変わった種類を入れたい!」
という方のために
ちょっとマニアックで美しいオススメの種類をピックアップしてみました。
・タイガーオトシン
全長2〜3cm程しかない小型種です。
頭でっかちの見た目から「ピグミープレコ」と呼ばれる事もあります。
体色は白黒の不規則な帯が体全体に入っており、
種類によっては細かいグリーンスポットが全身に散らばり、より美しくなります。
小さな体でよくコケを食べてくれるので人気も高い種類ですが、
餌切れに弱い面があるため飼育難易度は少々高めです。
・ボルケーノオトシン
全長3〜5cm程の大きさで、黒く縁取られたウロコや茶褐色〜白色の体色と頭部のピンクがかった茶色が美しい種類です。
ガラス面や流木に生えたコケをよく食べてくれるので人気がありますが、こちらも餌切れには弱い面があり、人工飼料に餌付きにくいため飼育難易度は高めです。
・アルジーライムシュリンプ
透明感のあるライム色が美しい小型のエビの仲間です。
ミナミヌマエビやインドグリーンシュリンプにもよく似ていますが、特筆すべきはコケ処理能力です。あらゆる種類のコケを食べてくれ、アオミドロだらけの60cm水槽であっても10〜20匹導入すれば、1週間もしないうちにコケを処理してしまう事もあります。
☆大型水槽にオススメのコケハンター
大型水槽でアロワナやポリプテルス等の大型魚が泳ぐ環境では、コケ取り要員としてヤマトヌマエビやタイガープレコ等を入れても食べられてしまいます。
また、餌も栄養価が高い物を食べる大型魚水槽では場合によってはコケが生えるスピードも早く、コケ取りの手間が尋常じゃない事もあります。
・カラープロキロダス
成長すると20〜30cm程になる大型カラシンの仲間です。
体高も高いため、怪物サイズの魚でもない限りは食べられる心配もありません。
開くと吸盤のようになる口で、ガラス面に生える珪藻等のコケを食べてくれます。
体色も銀色の体に黒と朱色の縞模様の尾ビレというシンプルな美しさです。
・セルフィンプレコ、サッカープレコ
どちらも成長すると30cmを超える大型のプレコです。
「アルビノプレコ」はサッカープレコのアルビノ個体を固定化した品種です。
大きな吸盤状の口でガラス面や流木に生えたコケを食べるだけでなく、残った餌も食べてくれます。
また、3cm程の大きさの幼魚が出回っている「レンジャープレコ」も20cm近く成長するため、大型水槽での活躍が期待できます。
4. コケハンター達との向き合い方について
たくさんコケハンター達を紹介させていただきましたが、
水槽に導入したからにはコケを食べてくれる彼らともしっかり向き合っていかなければなりません。
「コケ取りだから」と蔑ろにしてしまうと短命に終わってしまいますし、その死骸が水質の悪化を招いたりコケの栄養分となってしまうからです。
・コケとは別にちゃんと給餌もする事
コケ取りとしての導入だったとしても、彼らにも命があり、生きています。
また、草食性の強い種類は「常に食べている」状態のため、コケだけではお腹を空かせてしまいやがて死んでしまいます。
こうならないためにも、コケとは別に餌を与えましょう。
草食性の強い種類用にタブレットタイプやペレットタイプの人工飼料も販売されています。
Q.人工飼料に餌付きにくい種類はどうすれば良いの?
A.ホウレン草や小松菜を湯がいた物等を与えてみましょう。
先ほど紹介したコケハンターの中でもマニアックな種類であるボルケーノオトシンやタイガーオトシンは人工飼料に餌付きにくい面があり、水槽内のコケが尽きると徐々に弱ってしまう事があります。
そんな彼らにはコケ以外の餌として湯がいたホウレン草や小松菜を与えると食べてくれる事があります。
また、キュウリの輪切りや冷凍のブラインシュリンプベビーも食べてくれるので定期的に与えるようにしましょう。
・成長サイズに気を付けよう!
コケハンターの導入失敗談としてよく聞くのが「成体のサイズ」です。
サッカープレコやセルフィンプレコは成体になると30cm以上に成長する大型種です。
ショップにいる個体は幼魚なので5cm程の可愛らしいサイズですが、コケ取り要員として導入したらみるみるうちに成長して持て余してしまったという方も多いのです。
・水槽の「材質」も気を付けよう!
水槽の材質には主にガラス、アクリル、プラスチックがあります。
ガラスは傷が付きにくいのであまり気にする部分はありませんが、アクリルとプラスチックは少し注意が必要です。
アクリルもプラスチックも傷が付きやすい性質があり、プレコの仲間のように削り取る力が強い種類だと吸い付いた所が傷付いてしまい、曇ったようになってしまう事もあります。
また、プラスチックは削れた細かな破片が体内を傷付けてしまい、突然死の原因になる事もあるためプレコやロリカリア、大型のオトシンクルスの仲間には使わないようにした方が無難です。
・タンクメイトとの相性は大丈夫?
ビーシュリンプやミナミヌマエビ等の小型のエビやパンダシャークローチの幼魚等はかなり小さいため、タンクメイトにイジメられてしまう事があるので注意が必要です。
また、プレコの仲間は円盤状の体を持つディスカスやエンゼルフィッシュの他、流木のような体を持つポリプテルスを流木等と勘違いして吸い付いてしまう事もあるので混泳は避けるようにしましょう。
・成長してからの性質を知ろう!
魚達の中には成長すると性質が荒くなる種類もいます。
アルジーイーターは成長すると性質が荒くなり、タンクメイトに攻撃するようになってしまうので飼育する際には注意が必要です。
・水草の食害について考えよう!
水槽内に発生するコケを食べてくれるコケハンター達ですが、お腹が減ったりするとマヤカやアンブリア等の葉が柔らかい水草を食べてしまう事があります。
これらを抑制、あるいは防ぐためにはアヌビアスやミクロソリウムのように葉が硬い水草を多用するか、コケハンター達に給餌をしてお腹を満たしてあげましょう。
まとめ
今回はアクアリウムの悩みの種であるコケについてと、
そのコケを食べてくれるオススメのコケハンター達を紹介させていただきました。
「コケは予防が大事」とは言われますが、出てしまうのは仕方ないですし根絶はかなり難しいため、水草レイアウト水槽ではこの方法を利用する事も多いです。
この記事で紹介したコケハンターはそのうちの一部でしかありませんが、ショップや通販でも見かけやすく、マニアックな種類でなければ価格も手頃で飼育しやすい種類を個人的にピックアップさせていただきました。