当ブログでは、度々透明な体を持つ魚達についてご紹介してきました。
「ペルーグラステトラ」や「アジアクリスタルキャット」「トランスルーセントグラスキャット」など、その涼しげな体色は見る者の心を惹き付け、清涼感とシンプル故の美しさで日々の疲れを癒してくれます。
そんな透明系の熱帯魚の中から今回皆様にご紹介させていただくのが「インディアングラスフィッシュ」です。
インディアングラスフィッシュは透明系熱帯魚の中でも古くから親しまれており、透明で繊細な体は大切に飼育する事で驚きの変化をする事でも知られています。
1,見た目は超繊細!?インディアングラスフィッシュとは?特徴について
画像出典元:チャーム様
①分類は?
インディアングラスフィッシュとは、2001年ほどまでは「スズキ目カンダ科」に分類されており、学名も「Chanda ranga」でした。
②どんな所に生息しているの?
彼らは東南アジア原産の熱帯魚であり、分布している国として主にミャンマー、タイ、インド、ネパール、パキスタン、バングラデシュが挙げられます。
インディアングラスフィッシュはその中でも比較的浅く、流れが緩やかな川の中〜下流や湿地に群れを作って生息している種類の1つです。
生息地となっている水域は泥によって濁っているため、透明な体色は効率良く姿を眩ませられる保護色となり身を守っているのです。
③大体の大きさは?
インディアングラスフィッシュはこの仲間の中でも小型種で、成長しても4〜5cmほどの大きさしかありません。
④どんな見た目をしているの?
彼らの見た目は体色も相まってかなり繊細かつ、どこかマリンアクアリウムの雰囲気も感じさせてくれます。
体型は縦に扁平で口もやや大きめとなっています。
背ビレは第一背ビレと第二背ビレに分かれており、第一背ビレは高さがあってヒレ先も鋭角でカッコ良さがあります。
第二背ビレの方は、第一背ビレより高さはありませんが幅広く丸みがあり、ヒレの外側を青白いラインが縁取っています。
この青白くいラインは尻ビレにも見られ、同じようにヒレの外側を縁取っています。
また、体色は若い頃や調子が乗れていない時などは透明で、うっすらと黒い横縞模様が幾つか入ります。
しっかり大切に飼育する事で本来の調子を取り戻して色が揚がったインディアングラスフィッシュは、全身が透明感のある蜂蜜〜飴色になり、各ヒレの付け根や尾ビレはもう少し強く発色するようになります。
⭐魚のシマシマの謎について!
アクアリウムだけでなく、お魚界隈では魚の縞模様の表記が特徴的だと言われています。
例えば、タタキで賞味される「カツオ」の縞模様。縦縞でしょうか、横縞でしょうか?
正解は「縦縞」です。
納得いかない方もいらっしゃると思いますので解説させていただきますが、生物学上魚の模様を見る時は「釣り上げた状態」つまり「頭部が上向きの状態」で観察する事になっています。
この状態で見ると、カツオの縞模様は縦方向となるため「縦縞」になるのです。
また、アクアリウムの大型種の中でも人気が高い「ダトニオ」も同じように見ると「横縞」となります。
⑤どんな物を食べているの?
野生下のインディアングラスフィッシュは落下してきた蚊などの昆虫やミジンコ、稚エビなどの小型甲殻類、イトミミズやアカムシ、ボウフラなどの水生生物などを捕食しています。
この特徴は飼育下でも色濃く、人工飼料への食い付きが良くない間は冷凍アカムシやイトミミズ、ホワイトシュリンプやブラインシュリンプなどを与える必要があります。
⑥どんな性格をしているの?
彼らはとても穏やかな性格をしており、気の荒い種類でなければ特に問題なく混泳させる事ができます。
⑦どこでお迎えできるの?大体のお値段は?
見た目の繊細さから高級な種類と思われる方もいらっしゃると思いますが、インディアングラスフィッシュは比較的安価な熱帯魚としても知られています。
1匹あたりの大体のお値段は200〜500円ほどですが、ショップによってはある程度の匹数をセットで販売している事もあるのでお迎えの際は是非活用してみてください。
また、インディアングラスフィッシュはアクアリウムに力を入れている総合ペットショップやアクアショップであれば扱われている事も多く、目にする機会も比較的多い種類なのでお迎えの難易度は低めです。
2,インディアングラスフィッシュの仲間達について
ガラス細工のような繊細な見た目が人気の彼らですが、現在日本に入荷している種類は昔より少し増えています。
①ラージグラスフィッシュ
インディアングラスフィッシュと共にグラスフィッシュとして日本に輸入され、古くから親しまれている種類です。
全長は約7cmで体高が少し高く、体側には薄墨色の横縞が何本か筋のように入っています。
②スレンダーグラスフィッシュ
「ロングボディーグラスフィッシュ」「ブラックチップグラスフィッシュ」という別名もある種類です。
輸入されたのは比較的最近ですが、生息地は西インド洋沿岸に繋がる河川の下流〜汽水域とされており、飼育には塩分を少し含んだ水を使うと調子が良くなりやすいようです。
全長は約9cm。名前にスレンダーとあるように、体高が低いのが特徴で、色が揚がると体色が黄色みを帯び、第一背ビレと尾ビレはさらに強く発色します。
③ロングフィングラスエンゼル
インドネシア原産のグラスフィッシュの仲間で、全長は約5〜6cm。
ブラックウォーターが流れる河川に生息しているためか、体色が揚がると口から背中、各ヒレの付け根が鮮やかな赤色に染まります。
また、オスの個体は成長すると第二背ビレと尻ビレの軟条が長く伸びてより美しい姿になります。
④ローズフレームグラスエンゼル
インドネシアのカリマンタン島北西部に位置する「ナトゥーナ諸島」原産のグラスフィッシュの仲間であり、2011年8月に紹介されました。
その見た目は体高があり、オス個体は尻ビレと第二背ビレは枝分かれせず大きく後方に伸びます。
この尻ビレと第二背ビレが先の方から深紅に染まり、体色も透明感を保ちながらうっすらとライムイエローを発色するため非常に美しく、長きに渡って入荷が待たれた種類となっています。
一方でメス個体はヒレが伸びず、成長しても体色がうっすらとライムイエローに染まるくらいなので雌雄判別もしやすいです。
入荷が稀な事と飼育データが乏しい事もあり、未だに多くの謎が残る種類ではありますが、全長は3〜5cmほどと言われています。
■蛍光色のグラスフィッシュがいる!?
大分前に遺伝子組み換えによって誕生したメダカの取り引きが事件となり、ニュースに取り上げられましたが、一昔前にもグラスフィッシュに蛍光色の個体がいました。
それは遺伝子組み換えをしたのではなく、ラージグラスの背中と尻ビレあたりに蛍光色のインクを人工的に注入して色付けされた個体で「カラーラージグラス」として販売されていた事があります。
透明な体にカラフルな蛍光色が美しいとして当時は人気がありましたが、人工的に注入された色素は徐々に抜けていってしまい、最終的にはラージグラスフィッシュに戻ってしまうため人気は徐々に下がっていったと言われています。
Q,どうして「グラスフィッシュ」と「グラスエンゼル」に分けられているの?
A,流通の事情と見た目で分けていると考えられます。
グラスフィッシュもグラスエンゼルも同じ仲間ではありますが、流通の事情で呼び名が分けられたと考えられます。
流通名というのはインパクトを与えてくれる物でもあり注目度に関わってくる訳なので、名付け親はかなり気にしている場合もあります。
例として、世界最小のフグである「アベニーパファー」も日本独自の流通名だったりします。
そのためグラスフィッシュとグラスエンゼルが分けられているのは、こうした流通の事情と成長したオスの姿の違いから呼び分けていると考えられるのです。
3,インディアングラスフィッシュを飼育する上で気をつけるべきポイントについて
画像出典元:チャーム様
透明な体とどこかマリンアクアリウムを彷彿とさせる姿が人気の本種ですが、飼育環境が崩れると体が白濁して一気に死んでしまう事も少なくありません。
〜グラスフィッシュの注意すべきポイント〜
- 水質や水温の急変に弱いので、水合わせなどは慎重に行う事。
- 口は大きく見えるものの、捕食の際はそんなに開かないため餌の大きさに注意する事。
- 痩せやすい面があるため、給餌の際はしっかり食べているのを確認する事。メニューも豊富にする事。
- 混泳させる際は大人しい性格の種類と一緒にし、給餌の際は餌を取られ過ぎないように工夫する事。
- 強すぎる水流は苦手なので、様子を見ながら調節弁で水流を調節する事。
これらが主に挙げられます。
4,インディアングラスフィッシュの飼育方法について
画像出典元:チャーム様
①お迎えについて
ラージグラスフィッシュやスレンダーグラスフィッシュなどは入荷が珍しい事も多いので、すぐにお迎えは難しいですが、インディアングラスフィッシュは比較的取り扱っているショップも多いため、見かける機会は多い種類となっています。
ショップで彼らを見つけたら、まずは恒例の「健康チェック」です。
水槽の彼らを観察して、体表が荒れていたりヒレなどに付着物がないか、ヒレが不自然に裂けていないか、キビキビと元気良く泳いでいるか、極端に痩せていないかなどをチェックしましょう。
特に問題がなければ店員さんにお願いして、インディアングラスフィッシュを梱包してもらい、購入します。
②水合わせについて
水合わせは必ず必要な行程であり、今後のアクアリウムを楽しめるかを左右してきます。
今回ご紹介させていただいているインディアングラスフィッシュは丈夫な種類ではありますが、水質や温度の急変に敏感なため水合わせをしないとphショックで体が白濁してしまったり、体がくねったまま硬直してしまったりと弊害が出やすいです。
魚達を健康に飼育するためにも水合わせは必ずするようにしましょう。
最初は水槽に袋ごと浮かべて水温を合わせます。早ければ30分、遅ければ50分ほど水槽に浮かべます。
水温を合わせ終わったら、袋を開けて中の水を1/5ほど捨て、水槽内の水を同じくらいの量を足して20〜30分ほど様子を見ます。
特に問題がなければ、袋の中の水がほぼ水槽内の水になるまで同じ行程を繰り返し、最後の水合わせ後も異常がなければ水槽に解き放ってあげましょう。
たくさんグラスフィッシュを泳がせたいという場合は、水温を合わせ終わった後にバケツや衣装ケースに1度グラスフィッシュ達を放ちます。
その後、水槽にエアチューブの片方の端に重りを着けて沈め、もう片方の端から軽く吸って「呼び水」をし、グラスフィッシュがいる容器に水槽の水を足します。
この時、エアチューブを軽く結んで水の流入量を調節して一気に水が入らないように注意が必要です。
大体1〜2時間かけて水合わせが終わったら、グラスフィッシュ達を水槽に放ちましょう。
導入初日は環境が変わった事もあり、彼らも物陰に隠れてしまいます。
③水槽について
インディアングラスフィッシュは小型種であり、ゼブラダニオのように活発に泳ぎ回る種類でもないので、30cmキューブ水槽や45cm水槽といった小型水槽でも3〜5匹ほどであれば飼育する事ができます。
また、インディアングラスフィッシュではなくラージグラスフィッシュの場合は、全長が2倍近く大きいため、5匹ほど飼育するのであれば60cm水槽がオススメです。
④水温、水質について
インディアングラスフィッシュは水温が24〜27℃あれば問題なく飼育できますが、水温を一定に保つためにヒーターを使い、水温の変化がすぐに分かるように「水温計」も設置しておくと良いでしょう。
純淡水で飼育でき、好む水質は弱酸性〜中性ですが、極端に酸性に傾かないように注意が必要です。
⑤底砂について
水質を極端な酸性やアルカリ性に傾ける作用がなければ問題なく飼育に使う事ができます。
⑥フィルターについて
基本的にどのフィルターでも使う事ができるので、水槽の広さや飼育している匹数に合わせて使うフィルターを選んでください。
キレイな水質の維持は大切なので、小型水槽の場合はパワーフィルターや外掛け式フィルター、60cmまたはそれ以上の場合は上部式フィルター+投げ込み式フィルター、外部式フィルターがオススメです。
⑦隠れ家について
環境に慣れるまでは石や流木などの物陰に隠れる事が多いですが、慣れてくると前面に出てくるようになります。
そのため隠れ家を意図して用意する必要はありません。隠れたい時はレイアウトした物に勝手に隠れてくれます。
⑧水草について
インディアングラスフィッシュは水草にイタズラをしないため相性が良く、水草レイアウト水槽の熱帯魚として選ばれる事もあります。
入手しやすく育てやすい水草として「アマゾンソード」や「バリスネリア」「アヌビアス」「ヘアーグラス」などがあります。
また、グラスフィッシュ達は東南アジア原産の熱帯魚という事で、東南アジア原産の「ミクロソリウム」や「クリプトコリネ」「タイ・ニムファ」なども個人的にはオススメの水草です。
水草がふんだんに使われた水槽は確かに美しいのですが、ライトを消している間は植物も呼吸をし、水中の二酸化炭素濃度が上がってしまいます。
⑨混泳について
インディアングラスフィッシュは温和な性格をしているため、気が荒い種類を除き、水質が合う種類であれば混泳させる事ができます。
同属であればラージグラスフィッシュやロングフィングラスエンゼルとも混泳でき、他種であればデルモゲニーやスカーレットジェム、バタフライレインボーなどの小型のレインボーフィッシュやピグミーグラミー、ゴールデンハニードワーフグラミーなどの小型グラミーの仲間とも混泳が楽しめます。
ナマズの仲間の場合はプレコやオトシンクルス、コリドラス、トランスルーセントグラスキャット、アジアクリスタルキャットなども良いタンクメイトになってくれます。
東南アジア感が欲しいという方は、前述したグラミーの仲間やトランスルーセントグラスキャットのような温和で小型のナマズの仲間、小型のプンティウスやラスボラ、オリジアス系のメダカの仲間がオススメです。
また、稚エビが食べられてしまう事もありますが、インディアングラスフィッシュはチェリーレッドシュリンプやルリーシュリンプなどの小型のエビの仲間との混泳も可能です。
⑩給餌について
本種は生き餌や冷凍飼料を好むため、稀に人工飼料に餌付きにくい個体がいる事もあります。
また、生き餌好きな種類はメニューに変化がないと飽きてしまう事もあるので餌の種類は幾つか用意するようにしましょう。
最初から人工飼料に慣れている場合はショップで与えている物をあらかじめ聞いて用意しておくとすんなり食べてくれます。
人工飼料に慣れていない場合は、食べないまま痩せられると戻すのが大変なので冷凍飼料に混ぜて与え、比率を調節しながら少しずつ慣らしてあげると食べてくれるようになります。
与える餌ですが、慣れていれば人工飼料は顆粒タイプ、フレークタイプどちらも良く食べ、乾燥飼料であればミジンコやイトミミズ、アカムシも食べてくれます。
冷凍飼料を与える場合はアカムシやイトミミズ、ブラインシュリンプベビーやコペポーダ、ホワイトシュリンプの食い付きが良いのですが、幼魚のうちは上手く飲み込めない事もあるので、ハサミで食べやすい大きさにカットしてから与えると効果的です。
また、可能な方はミジンコやブラインシュリンプを育てて与えてみてください。生き餌好きとあって、食い付きが違います。
給餌の頻度ですが、目安として1日2回、お腹が軽くふっくらするくらい与えます。
グラスフィッシュだけなら食べている様子を観察しやすいですが、混泳させている場合は餌をタンクメイトに取られてしまう事が多いのでスポイトで近くに餌を落としてあげたり、最初にタンクメイトに餌を食べさせてからグラスフィッシュにゆっくり与えるようにすると餌が食べれないという事態をある程度抑制できます。
⑪水換え、水槽掃除について
水槽のサイズや汚れ具合、飼育している匹数にもよりますが、大体の目安として1週間〜10日に1度、1/5〜1/2の量の水換えと掃除を行います。
魚達は水槽内という限られた空間が生活場所になっているため、健康に飼育するためには必須の行程です。
まずは飼育器具の電源を落とし、水槽のフタと水温計を外して移動させます。
次に、メラミンスポンジやスクレイパー、コケクロスなどで水槽内面のコケやヌメリなどの汚れを落とします。
水槽のコーナーに汚れが溜まっている場合は無理にスクレイパーやメラミンスポンジで取ろうとせず、先が尖ったタイプの綿棒で擦ると汚れを落としやすいのでオススメです。
水槽内面の汚れを落としたら、レイアウトに使っている石などに着いた汚れを落とします。
⭐「あの魚」がいれば茶ゴケも良い餌に!
水槽面だけでなく、レイアウトに使っている石や流木に生えてくる「茶ゴケ」。
生える速度も早く、目立ちやすいのでお困りの方も多いと思います。
しかし、ご自宅に複数水槽があって「ある魚」を飼育していると厄介な茶ゴケも好きになってしまうかも知れません。
その魚とは「ボルケーノオトシン」や「タイガーオトシン」といった食が細めの草食性が強い種類です。
このタイプは人工飼料に餌付きづらいものの茶ゴケが大好物で、愛好家の中にはわざと茶ゴケを増やして餌として与える方もいます。
石などの掃除が終わったらフィルターの揚水パイプを取り外し、中に溜まった汚れを専用ブラシで擦り落とします。
ストレーナースポンジも1度取り外し、流水にさらしながらもみ洗いして詰まっていた汚れを落としましょう。
水草が伸びすぎていたり、葉がコケだらけになって枯れていた場合はトリミングを行いますが、グラスフィッシュ達は透明で、上から見ると分かりにくいため一緒に切らないように注意が必要です。
時々水槽を横から見て、水草の長さや不要な葉を確認しつつ、彼らが今どこに隠れているのか把握する必要があります。
トリミングによって出た不要な水草は素手やネットで掬いますが、この時もグラスフィッシュ達を巻き込まないように注意しましょう。
基本的に彼らからネットや素手に近付くような事はありませんが、こちら側の不注意で掬ってしまう可能性があります。
不要な水草を集めたら、必ず燃えるゴミとして処分してください。
水槽内の大体の掃除が終わったら、クリーナーポンプで底から水ごと汚れを排出します。
この時吸い込み口が底に近いため、隠れているグラスフィッシュを吸い込んだり、驚かせないように慎重に行うようにしましょう。
ある程度の水を抜き終わったら、あらかじめ用意しておいた新しい水を水槽に足していきます。もちろんカルキ抜き済みで水温も合わせた状態にします。
水を足す時も水面を波立たせて魚達を驚かせないように、優しく足すようにしましょう。
不安な方は、水を足す前に水槽の底にお皿を設置したり、水面にビニールシートを浮かべてから足すと水面に波が立ちにくくなります。
また、ビニールシートやお皿が使えない場合は水槽壁面に水を伝わせるようにゆっくりと入れると魚達も驚きづらくなります。
新しい水を足し終わったらフィルターに揚水パイプやストレーナーを戻し、水温計などの飼育器具も設置して電源を入れれば水槽掃除と水換えは完了です。
フィルター掃除に関してですが、外掛け式フィルターやパワーフィルターなどの濾過材が一体型の場合は目詰まり改善のために水換えのタイミングで軽く洗っておきます。
上部式フィルターや外部式フィルターの場合は物理濾過担当のウールマットだけ目詰まり改善のために洗う必要があります。
この時、汚れや濾過材の傷みが酷い場合は新しい物と交換します。
生物濾過材の部分は水槽掃除とは別の日で、2〜3週間に1度、飼育水で軽くすすいで汚れを落とします。
商品によって交換時期があるので把握するようにしましょう。
5,インディアングラスフィッシュがかかりやすい病気と治療方法について
グラスフィッシュの中では丈夫で飼育しやすい種類でもある本種ですが、飼育環境が崩れてしまったり水槽掃除を怠ったりすると体調を崩して病気になってしまいます。
①痩せすぎ
インディアングラスフィッシュは代謝が良いのか痩せやすく、ショップで見かけた段階で痩せている事があります。
特に体力もない幼魚の場合はプレパラートに乗せるカバーガラスに似た繊細さを誇るため、太らせるのも大変です。
痩せすぎの原因として代謝の高さもあるかも知れませんが、単純に輸入状態が悪かった事、人工飼料を受け付けない個体だった事など様々挙げられるため、原因の特定よりも如何にして太らせてあげるかを考えた方が良いと思います。
治療方法は、痩せすぎている個体を餌を取りやすいトリートメント水槽でしばらく飼育する事です。
トリートメント水槽には隠れ家としてログポット水草やウィローモスを入れておきますが、餌を食べるためのスペースを確保するため、水槽の1/3〜1/2の範囲に止める必要があります。
与える餌は栄養価が高い冷凍ホワイトシュリンプやイトミミズ、アカムシ、ブラインシュリンプなどを与えますが、幼魚の場合は成魚よりさらに口が小さいため冷凍のブラインシュリンプベビーか卵から孵化させた物を与えましょう。
②白点病
魚病と言えば必ず出てくると言っても過言ではない病気の1つで、体表やヒレに「白点虫」という原虫の仲間が寄生して起こる病気です。
最初は数個ほどの白い粒々したものが現れる程度ですが、放置すると数を増やしながら全身に広がり、エラなどを塞いで病魚を死に至らしめます。
また、この病気にかかると体が痒くなるのか、病魚は石や流木などに体を擦り付けるようになってしまい、それでできた傷口が細菌感染症の原因になる事もあります。
発生の原因としては、水質悪化や水温の急変、病気の魚を導入してしまった事が主に挙げられます。
インディアングラスフィッシュの場合は環境の変化に不馴れな幼魚の時に発生しやすいため注意が必要です。
治療方法ですが、魚病薬を使った薬浴を行います。使う薬品はメチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF、アグテンなどです。
病魚を治療用水槽に移したら魚病薬を規定量入れて治療を始めます。
グリーンF、メチレンブルー、マラカイトグリーンの場合は1週間に1度、アグテンの場合は3日に1度、半分の量水換えをしてから再び投薬します。
③コショウ病
「ウーディニウム症」「ベルベット病」などの呼び名がある病気です。
体表やヒレに付着物が現れますが、白点病とは違い、白〜淡黄色の粉状となっています。
この付着物の正体は「ウーディニウム」という寄生虫です。
コショウ病にかかると体を細かくプルプルと震わせたり、食欲がなくなってあまり泳がなくなったりする他、体を流木や石に擦り付けてしまい、それでできた傷口が細菌感染症の原因になるという厄介な病気です。
もちろん、放置していると粉状の付着物が増えていき、死に至ります。
発生の原因は水質の悪化や水温の急変、病気の魚を導入してしまった事などが主に挙げられますが、コショウ病は水槽掃除や水換え、フィルター掃除を怠っているとかなり発生しやすい事でも知られています。
治療方法ですが、白点病と同じように薬浴を行います。使う魚病薬はメチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンFです。
病魚を治療用水槽に移したら魚病薬を規定量投薬して治療します。
1週間に1度半分の量の水換えをしてから再び投薬しますが、この間にメイン水槽の飼育環境をしっかり改善する必要があります。
場合によってはメイン水槽をリセットする事も視野に入れなくてはなりません。
④エロモナス病
症状によってポップアイや松かさ病などの名前がある病気であり、致死率、感染力も最悪な病気として知られています。
この病気の原因となる「エロモナス菌」は水槽内の常在菌の1種で、飼育環境が崩れ、魚達の免疫機能が低下した時に猛威を奮ってしまうのです。
インディアングラスフィッシュの場合は体色が白濁してきたり、充血や体表が荒れてくるため比較的発見しやすいです。
発生の原因として、水質の悪化や古い餌を魚達が食べた事で免疫機能が崩れてしまった事などが挙げられます。
また、過密飼育により濾過力や水量が追い付いていないと発生しやすいとも言われています。
治療方法は薬浴で、治療に使う魚病薬はエルバージュ、グリーンFゴールド、パラザンDなどです。
治療用水槽に病魚を移動させたら、規定量の魚病薬を投薬して治療します。
1週間に1度半分の量の水換えをして再び投薬します。
この間も発生させてしまったメイン水槽の水槽掃除や水換えをしたり、過密状態であれば新しい水槽を用意して分けて飼育するなどして飼育環境の改善に努めましょう。
6,インディアングラスフィッシュの繁殖について
本種を始めとしたグラスフィッシュやグラスエンゼルの仲間は繁殖例がほとんど無く、未だに繁殖形態も謎に包まれています。
①繁殖させるために!
繁殖には健康かつしっかり育ったペアが必要不可欠となります。
グラスフィッシュはグラスエンゼルと違って雌雄の差が少ないため、まずはある程度の群れで飼育しなければなりません。
②繁殖形態は産卵!
グラスフィッシュ達は和名では「タカサゴイシモチ」の仲間に分類されています。
このタカサゴイシモチは名前に「イシモチ」と付いてはいますが、マリンアクアリウムで人気が高い「テンジクダイ」や「マンジュウイシモチ」などとは少し違う種類となっており、テンジクダイ系の繁殖形態である「マウスブリーディング」は行わないようです。
また、過去にラージグラスフィッシュの繁殖にチャレンジした方がいたようですが、産卵は水草にバラ撒くように行われ、孵化した仔魚はあまりにも小さく育てるのは非常に難しかったそうです。
⭐仮にマウスブリーダーだった場合はある意味ラッキー!
タカサゴイシモチはマウスブリーディングをしないとされていますが、もしインディアングラスフィッシュが奇跡的にマウスブリーディングをするタイプだった場合は繁殖に希望が持てます。
何故なら「卵のお世話」という最初の難関をオス親がこなしてくれるからです。
テンジクダイの仲間はマウスブリーディングをする事で知られていますが、その間オスは一切食事も摂らずに卵のお世話を続けます。
そして孵化して泳ぎ回れるようになるまで稚魚を守り続けるのです。
また、「プテラポゴン・カウデルニー」という種類は卵は大粒で数が少ないものの、親と同じ形に育つまで口の中で保護するという特徴があります。
③孵化したばかりの稚魚の餌対策について
インディアングラスフィッシュの稚魚が降海するという話は聞いた事がないため、少なくともマリンスノーを食べて育つという可能性は消えました。
しかし、ネックとなるのはやはり「稚魚の餌」です。
対策としては、ミカヅキモやミドリムシ、ゾウリムシといった極小の微生物(インフゾリア)を培養するか通販などで取り寄せる必要があります。
■栄養たっぷりのゆで卵の黄身!与えすぎには注意が必要!?
「完全栄養食」とも言われる卵ですが、その中でも黄身の部分には栄養がたっぷり詰まっています。
そんな卵の黄身は、かつて稚魚用パウダーフードがなかった時代に生まれて間もない稚魚用の餌として活用されていました。
もちろん栄養価は高いので食べた稚魚の育ちは良いのですが、ゆで卵の黄身にはデメリットがあります。
1つは「腐りやすい事」です。
加熱していても卵の黄身は腐りやすいため保存が効かず、与える度に新しく卵を茹でる必要があり、残った卵は飼い主側が食べたりして処理しなくてはいけません。
2つ目は「水質を悪化させやすい事」です。
ゆで卵の黄身は使う分を飼育水で溶いてから与えるのですが、水中に散った黄身はさらに悪くなりやすいため、こまめな水換えをしないと水質を急激に悪化させてしまうデメリットがあります。
④水換え対策について
視認が難しい大きさとなると、水換えにも気を遣いたいところです。
別水槽で孵化が上手くいき、餌も食べるようであれば細いエアチューブかクリーナースポイトを使って稚魚を吸い込まないように少しずつ水を抜く必要があります。
この時水は一気に抜かず、1/10〜1/8くらいにとどめながらこまめに行った方が、食べ残しなどによる水質悪化を抑制できると思います。
まとめ
今回は古くから親しまれている透明な熱帯魚・インディアングラスフィッシュについて皆様にご紹介させていただきました。
未だに繁殖成功例が無いという謎めいた部分はありますが、その見た目はガラス細工でできたテンジクダイのようで、マリンアクアリウムの雰囲気を放ちながら純淡水で飼育できるという素晴らしい特徴があります。
また、大切に飼い込んだ時の成魚の体色は、お迎え当初の繊細で透明な魚といった雰囲気とは違い、ガラス細工どころか飴細工のような色味と美しさを放つようになります。