「スッポン?あの食べるやつ?飼えるの!?」
そうです、飼えます。そして飼っている人は口を揃えて言います。「ハマると抜け出せない」と。
私なつも最初はそう思っていました。川で初めてスッポンを見かけたとき、その独特の顔——長く伸びた鼻先、ぱっちりした目、素早い動き——に一瞬で心を奪われてしまいました。それからずっと気になっていて、ついに飼育を始めることにしたんです。
でも正直、スッポンの飼育情報って意外と少ない。爬虫類系のサイトには少し載っているけれど、「日淡アクアリウム」の視点から書かれたものはほとんどない。だから今回は、私が実際に調べて・飼育して得たすべての知識を、この1記事に詰め込みました。
スッポンは確かに「噛みつき最強」と言われるほど扱いに注意が必要な生き物です。でも、適切な飼育環境を整えれば、意外なほど飼いやすく、20〜30年もの長きにわたって共に過ごせる最高のパートナーになります。
この記事では、初心者が「知らなかった」では済まされない噛みつきリスクから、長期飼育を成功させるための水質管理・餌・繁殖まで、すべてを網羅しています。ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事でわかること
- スッポンの学名・分類・生態・分布などの基本情報
- スッポン飼育に必要な水槽サイズ・フィルター・底砂の選び方
- 水温・水質・水深の適切な管理方法
- 餌の種類・与え方・人工飼料への移行コツ
- 噛みつき対策と安全な扱い方(絶対に知っておくべき!)
- 脱走・越冬・陸場設置など飼育の注意点
- 繁殖(産卵・孵化・稚亀の育て方)
- かかりやすい病気と対処法
- よくある失敗パターンと長期飼育のコツ
- スッポンに関するよくある質問(FAQ)12問
スッポンの基本情報

分類・学名・英名
スッポンは爬虫綱カメ目スッポン科スッポン属に分類される半水棲の爬虫類です。かつてはニホンスッポン(Pelodiscus sinensis)として一括りにされてきましたが、近年の遺伝的研究により、日本列島に生息する在来個体群はPelodiscus japonicus(テミンク&シュレーゲル、1838)として独立した種とするのが妥当とされています。ただし、養殖や放流によって大陸系のシナスッポン(Pelodiscus sinensis)も各地に広まっており、現在の日本ではこの2系統が混在している状況です。
英名は Chinese Softshell Turtle(チャイニーズ・ソフトシェル・タートル)。その名の通り、通常のカメと違って甲羅が角質化されておらず、皮革のように柔らかいのが最大の特徴です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Pelodiscus japonicus(在来系) / Pelodiscus sinensis(大陸系) |
| 英名 | Chinese Softshell Turtle / Japanese Softshell Turtle |
| 分類 | 爬虫綱 カメ目 スッポン科 スッポン属 |
| 分布 | 本州・四国・九州・東アジア各地(中国・朝鮮半島・台湾・ロシア沿海など) |
| 甲長 | 成体で25〜38cm(まれに60cmに達する大型個体も) |
| 体重 | 成体で1〜4kg(大型個体は5kg超) |
| 寿命 | 飼育下で20〜30年(野生個体は50年以上の記録あり) |
| 食性 | 肉食傾向の強い雑食(魚・エビ・貝・カエル・昆虫など) |
| 活動時期 | 春〜秋(水温20℃以下で活動低下・冬眠傾向) |
体の特徴と仕組み
スッポンの最大の特徴は、何と言っても軟らかい甲羅(軟甲)です。通常のカメの甲羅はウロコが変化した硬いケラチン板で覆われていますが、スッポンの甲羅は革のような皮膚に覆われており、柔らかく弾力があります。このため、水中での遊泳性が高く、驚くほど素早く泳ぐことができます。
また、鼻先が非常に長く突き出ているのも特徴的です。この長い吻(ふん)は一種のシュノーケルとして機能し、水底の砂に潜ったまま鼻先だけを水面に向けて呼吸することができます。さらに、喉にある毛細血管を使って水中の溶存酸素をある程度取り込む「皮膚呼吸」も行えるため、長時間水中に潜っていることができます。
足はかなり発達しており、特に後肢は水掻きが発達した強力なパドルとして機能します。脱走力も非常に高く、垂直に近い壁もよじ登ることがあるので注意が必要です。
分布と生息環境
日本では本州・四国・九州の河川・湖沼・ため池・用水路など、流れの緩やかな水域に広く分布しています。砂や泥の底質を好み、昼間は砂に潜って過ごし、夜間に活発に動き回ります。水温が下がる冬期は水底の砂や泥に潜って冬眠します。環境省の生物多様性データベースでは「要注意外来生物」にも指定されており(大陸系の移入個体群が在来系に遺伝的撹乱を起こす懸念から)、飼育個体の野外放流は絶対に行ってはなりません。
スッポンの仲間(近縁種)
スッポン科には世界中に多くの種類が存在します。日本やアジアで見られる代表的な種を紹介します。
| 種名 | 学名 | 特徴 |
|---|---|---|
| ニホンスッポン(在来系) | Pelodiscus japonicus | 日本在来。甲長25〜35cm |
| シナスッポン(大陸系) | Pelodiscus sinensis | 中国原産。養殖用が多い |
| フロリダスッポン | Apalone ferox | 北米産。甲長60cm超の大型種 |
| トゲスッポン | Apalone spinifera | 北米産。甲羅前縁に棘状突起 |
| スッポンモドキ | Carettochelys insculpta | ニューギニア産・別科。水族館で人気 |
スッポン飼育の前に知っておくべきこと

スッポンは初心者向けではない
正直に言います。スッポンは初心者向けの生き物ではありません。
その理由は主に3つです。
スッポン飼育の3大ハードル
①噛みつきが非常に危険:顎の力は約9kgにも達し、素手で扱うと骨折・重傷のリスクがある
②成体は大型水槽が必須:最終的に120cm以上の設備が必要で、費用もかさむ
③単独飼育が原則:他のカメや魚との混泳はほぼ不可能で、スペース効率が悪い
ただし、この3つのハードルを正しく理解して乗り越えれば、スッポンは驚くほど飼いやすい生き物です。丈夫で病気にも強く(水質管理さえしていれば)、人工飼料にもよく餌付き、20〜30年という長い時間を共に過ごせる、本当に魅力的な生き物なんです。
購入前の確認事項
スッポンを飼い始める前に、以下を必ず確認してください。
- 終生飼育の覚悟:20〜30年生きます。引っ越し・結婚・就職など生活が変わっても飼い続けられるか
- 大型水槽の置き場所:120cmの水槽は重量150kg超。床の耐荷重を確認
- 野外放流は絶対にしない:生態系を壊す違法行為になる場合があります
- 子どもや高齢者がいる家庭は要注意:噛みつきリスクを全員が理解している必要があります
スッポン飼育に必要な機材・設備

水槽サイズの選び方
スッポンの水槽選びは、成長ステージによって大きく変わります。
幼体(甲長5cm以下)の場合
45〜60cm水槽で1〜2年飼育できます。ただし、スッポンは成長が非常に速いため、「どうせすぐ大きくなるから」と最初から90cm以上の水槽を用意する方が長期的にはコスパが良いです。
若亀〜成体(甲長10〜20cm)の場合
90〜120cm水槽が必要です。甲長の3〜4倍の幅がある水槽が理想とされています。
大型成体(甲長25cm以上)の場合
120cm以上の大型水槽、またはトロ舟(農業用のプラスチックコンテナ)が必要です。トロ舟は安価で広いスペースを確保できるため、スッポン飼育では非常に人気があります。
重要:水槽よりトロ舟がおすすめな理由
120cm水槽は60,000〜100,000円以上しますが、農業用トロ舟(80リットル〜200リットル)は3,000〜10,000円程度で入手でき、スッポンが暴れてもガラスが割れる心配がありません。スッポン飼育者の多くはトロ舟をメインの飼育容器として使っています。
水深の設定
スッポン飼育で特に重要なのが水深の設定です。鼻先(吻端)を水面に向けて楽に呼吸できる深さにすることが絶対条件です。
具体的には、底砂を含めた飼育容器の高さの60〜70%程度の水深が目安です。水深が深すぎると呼吸するのに苦労して体力を消耗し、浅すぎると砂に潜れず落ち着かなくなります。
幼体の場合は特に溺死事故に注意が必要で、水深は甲長と同程度か少し深い程度にとどめましょう。
底砂(必須)
スッポンにとって底砂は飼育において最も重要なアイテムのひとつです。スッポンは野生下でも砂や泥に潜る習性があり、身を隠す・体温調節・ストレス解消のために砂に潜ることが欠かせません。
底砂の条件は以下の通りです:
- 粒が細かい(角のない丸い粒形のもの)
- 潜れる厚さ(5〜10cm以上)を確保
- 川砂・田砂など天然砂がベスト
- 大磯砂の粗いものや尖ったものはNG(皮膚を傷つける)
おすすめは水作の川砂です。粒が細かく自然な川床に近い質感で、スッポンが快適に潜れます。
フィルター(ろ過装置)
スッポンは非常に大食いで排泄量も多く、水を汚すスピードが普通の魚の数倍です。そのため、強力なろ過システムは必須と考えてください。
推奨フィルターの種類:
- 外部フィルター(最推奨):ろ過能力が高く静音。エーハイム2215以上が理想
- 上部フィルター:メンテナンスが楽。大型水槽でよく使われる
- 投げ込み式フィルター(トロ舟向け):安価だがろ過能力が低いため、こまめな水換えが必要
注意点:底砂を使う場合、フィルターの吸水口に砂が詰まりやすいため、スポンジフィルターをプレフィルターとして使うことをおすすめします。
ヒーター(水中ヒーター)
スッポンの適正水温は25〜30℃です。室内飼育では通年ヒーターが必要です(冬眠させる場合を除く)。
スッポンはヒーターに直接噛みつくことがあります。ヒーターガード(保護カバー)を必ず取り付けてください。 ヒーターを直接噛むと感電・火傷・ヒーターの破損につながります。また、スッポンの爪でヒーターのコードを傷つけることもあるので、コードの取り回しにも注意が必要です。
陸場(日光浴スポット)
スッポンは日光浴(バスキング)を行う爬虫類です。水面から顔を出して日光浴できる陸場が必要です。ただし、通常のカメほど頻繁に陸場に上がるわけではないため、水中から頭だけ出せる程度のシンプルな陸場でも問題ありません。
陸場の素材はなるべく表面が滑らかなもの(砂利・レンガ・コルクボードなど)を使用してください。尖った石や粗いコンクリートブロックは、軟らかい甲羅や皮膚を傷つけるリスクがあります。
フタ(脱走防止)
これは非常に重要です。スッポンの脱走力は異常です。 垂直な壁をよじ登り、わずかな隙間から脱出し、気がついたら部屋の中を歩き回っていた…という事例は数え切れません。必ずフタをして、かつ重石を乗せてください。
特にトロ舟の場合は、市販の防虫ネットや木枠にネットを張ったものをフタとして使うと良いでしょう。通気性も確保できて一石二鳥です。
| 機材 | 推奨スペック | 費用目安 |
|---|---|---|
| 飼育容器 | 120cm水槽またはトロ舟(100L以上) | 3,000〜100,000円 |
| 底砂 | 川砂・田砂(5〜10cm敷く) | 1,000〜3,000円 |
| フィルター | 外部フィルター(エーハイム2215以上) | 15,000〜30,000円 |
| 水中ヒーター | 200W以上(ヒーターガード必須) | 3,000〜8,000円 |
| 陸場 | レンガ・スロープ・コルクボード | 500〜2,000円 |
| フタ(脱走防止) | 重石付き・通気性あり | 500〜3,000円 |
| 温度計 | デジタル水温計 | 500〜1,500円 |
| 水換え用バケツ・ホース | 20〜30L用 | 1,000〜2,000円 |
水質・水温の管理方法

適正水温
スッポンの適正水温は25〜30℃です。この範囲内であれば活発に活動し、食欲も旺盛です。
水温が20℃を下回ると活動が急激に低下し、餌食いが悪くなります。15℃以下になると冬眠状態に入り、呼吸回数も減少します。逆に31℃以上になると水質の悪化が加速し、スッポンにとってもストレスになります。特に夏場の温度上昇には注意が必要です。
pH・硬度
スッポンはpHの許容範囲が比較的広く、pH 6.5〜8.0の範囲であれば問題なく飼育できます。硬度についても厳密に管理する必要はありませんが、軟水〜中硬水(GH 5〜15程度)が理想的です。カルシウム不足は甲羅の軟化につながるため、適度なミネラル分がある水が望ましいです。
水換えの頻度と方法
スッポンは前述の通り水を非常に汚します。排泄量が多く、残餌も出やすいため、水換えは欠かせません。
推奨水換え頻度:
- 外部フィルター使用:週1回、全水量の1/3程度
- 投げ込みフィルター使用:週2〜3回、全水量の1/3程度
- フィルターなし:毎日全換水(非推奨・かなりの手間)
水換え時の注意点として、水道水には塩素(カルキ)が含まれているため、カルキ抜きを使用するか、24時間以上汲み置きした水を使いましょう。また、水温の急激な変化(5℃以上の差)はスッポンにとってショックになるため、必ず温度を合わせてから水換えしてください。
| 水質パラメータ | 適正値 | 注意点 |
|---|---|---|
| 水温 | 25〜30℃ | 20℃以下で食欲低下・15℃以下で冬眠 |
| pH | 6.5〜8.0 | 急激な変化に注意 |
| アンモニア | 0mg/L | 検出されたら即水換え |
| 亜硝酸 | 0mg/L | 検出されたら水換え頻度を上げる |
| 硝酸塩 | 50mg/L以下 | 定期的な水換えで管理 |
| 硬度(GH) | 5〜15 | カルシウム不足に注意 |
冬眠させるか、通年加温するか
スッポン飼育において、冬眠させるかどうかは重要な選択です。
室内飼育の場合:ヒーターで通年25〜28℃を維持することをおすすめします。冬眠は繁殖を考える場合に有効ですが、管理が難しく初心者には不向きです。通年加温することで成長速度も上がります。
屋外飼育(池やトロ舟)の場合:自然の水温変化に任せ、冬眠させることも可能です。ただし、冬眠中も定期的に状態を確認し、氷が張るほどの低温は避けるよう工夫が必要です。十分な深さの砂(体の厚みの2〜3倍)を敷いて、潜れるようにしておきましょう。
スッポンの餌の与え方

スッポンが食べるもの
スッポンは肉食性が強い雑食性の爬虫類です。野生では魚・エビ・カニ・貝・カエル・水生昆虫などを捕食しています。飼育下では以下のようなものを与えられます。
- 人工飼料(テトラ レプトミン等):栄養バランスに優れ、水を汚しにくい。慣れれば最もおすすめ
- 冷凍赤虫:嗜好性が高く、拒食個体の食欲改善に効果的
- 冷凍エビ(ブラインシュリンプ等):幼体の主食として最適
- 生き餌(小魚・メダカ・金魚):捕食本能を刺激するが、寄生虫リスクあり
- 魚の切り身(鶏肉・レバー):嗜好性は高いが水を汚しやすい。おやつ程度に
- 冷凍ホタテ・アサリ:ミネラル補給にも有効
与えてはいけないもの
・ネギ・タマネギ・ニンニク(消化不良・中毒の恐れ)
・加工食品・調味料入り食品(塩分過多)
・生の牛肉・豚肉(脂肪分が多く消化不良の原因)
・川で採った生き餌(寄生虫・病原菌のリスクが高い)
人工飼料への移行方法
野外から入手したスッポンや活き餌に慣れた個体は、最初は人工飼料を拒否することがあります。以下の手順でゆっくり移行しましょう。
- 最初は冷凍赤虫や冷凍エビなど嗜好性の高い餌で信頼関係を作る
- 次第に人工飼料を少量混ぜ、比率を徐々に上げていく
- 人工飼料だけで食べるようになったら完了
移行には数週間〜1ヶ月かかることもありますが、焦らず根気強く続けることが大切です。
餌の量と頻度
スッポンへの給餌は以下を基準にしてください。
- 幼体(甲長5cm以下):1日2回、3〜5分で食べ切れる量
- 若亀(甲長10〜15cm):1日1回、5〜10分で食べ切れる量
- 成体(甲長20cm以上):2〜3日に1回、10〜15分で食べ切れる量
残餌は必ずすぐに取り除いてください。残餌は水質悪化の最大の原因となります。スッポンは食欲旺盛で「もっとくれ」と首をのばしてくることがありますが、与えすぎは内臓疾患や肥満の原因になります。
噛みつき対策と安全な取り扱い方

スッポンの噛みつきがなぜ危険か
スッポンの噛みつきは、爬虫類の中でもトップクラスの危険性を誇ります。その理由を正確に理解しておきましょう。
顎の力が約9kgに達する:これは人間が親指と人差し指で思い切りつまむ力の何倍にも相当します。細い骨なら簡単に骨折します。
鼻先のクチバシが鋭利:スッポンのクチバシはキチン質でできており、先端が非常にシャープです。一点に力が集中するため、皮膚に深い傷がつきます。
噛んだら離さない:「雷が鳴るまで離さない」という俗説があるほど、噛みついたら離さない頑固さがあります。これは実際には水に浸けることで解決できますが、噛まれた状態でパニックになると傷が広がります。
長い首で予想外の角度から噛む:スッポンの首は甲長と同程度まで伸びることがあります。「甲羅を持てば安全」という思い込みは危険です。後方から甲羅を持っても、器用に首を回転させて噛みつくことがあります。
安全な取り扱い方(絶対厳守)
スッポンを扱う際の絶対ルール
① 素手で触らない。厚手のグローブを着用する
② どうしても持つ必要がある場合は長いトングで甲羅の端を挟む
③ 尾や足を持たない(噛みつく・骨折の原因)
④ 顔の正面に自分の手を置かない
⑤ 水換えなど日常作業はスッポンを容器から出さずに行う
⑥ 子どもだけでスッポンに触れさせない
噛まれてしまったときの対処法
もし万が一噛まれてしまった場合、絶対に無理に引き離そうとしないでください。 引きはがそうとすると傷が広がり、スッポンの歯(クチバシ)も折れることがあります。
正しい対処法はスッポンごと水に浸けることです。水の中に戻すとスッポンがリラックスして自然に口を離します。噛まれた後は傷口を流水でよく洗い、消毒してください。深い傷の場合は必ず医療機関を受診しましょう。



