今回皆様にご紹介させていただくのが「バタフライレインボー」です。
バタフライレインボーとは、「レインボーフィッシュ」という仲間に分類されている熱帯魚で、その見た目や愛らしい仕草から人気のある種類でもあります。
1,バタフライレインボーの特徴について
①何の仲間なの?
先ほどバタフライレインボーはレインボーフィッシュというグループに分類されている事をお伝えしましたが、その中でも「シュードムギル属」の仲間となっています。
②どんな見た目をしているの?
バタフライレインボーは水草にも良く映える美しい熱帯魚としてアクアリウムの世界では古くから親しまれています。
体型はメダカのように見えますが、頭部に対して目が大きく、メタリックブルーに輝き美しいです。
胸ビレは大きく上に向かってついており、背ビレは2枚あります。第一背ビレは小さめですが先の部分が尖っており、第二背ビレは大きく丸みを帯びた形をしています。
腹ビレは一部が長く伸びており、オスだと伸びた部分が黄色や白に染まって美しくなります。
尻ビレは第二背ビレのように丸みを帯びていますが、尾ビレと同じくらい大きく目立つ部分です。
尾ビレは二又になってはいますが切れ込みはかなり浅くなっています。
これらの大きなヒレがバタフライレインボーの名前の由来になっているのです。
体色は黄色が基調のタイプと白が基調なタイプの2タイプがおり、ペットショップやアクアショップで見かけやすいのは黄色いタイプです。
一方で白いタイプは「アルー産」などと呼ばれる事もあり、一般的な黄色いタイプより珍しいです。
そんなバタフライレインボーの体は一般的なタイプだと鮮やかな黄色に染まり、体側の尾ビレから体の中央辺りまで黒のラインが入り、ウロコの縁が黒く縁取られてとてもオシャレです。
また、胸ビレの前縁は濃い黄色、腹ビレの前縁はレモン色に染まり、第一背ビレの尖っている部分は白〜淡い黄色に染まります。
③生息地は?
パプアニューギニアの南部やオーストラリアの北部を流れる河川に生息しているとされています。
④大きさは?
バタフライレインボーはレインボーフィッシュの中でも最小クラスの大きさであり、成長しても3〜4cmほどしかありません。
⑤気になる性格は?
飼育する時に気になるのが性格ではないでしょうか?
バタフライレインボーの性格はとても穏やかなので、彼らをいじめるような性格の種類でなければ混泳させる事もできます。
また、バタフライレインボーは群れを作るため1匹だけよりは3〜5匹といったまとまった数で飼育すると落ち着きやすくなります。
そんな彼らを大切にお世話すると、オスはとても立派なヒレを広げて「フィンスプレッド」を行うようになります。
⑥何を食べているの?
野生下では主に小さな落下昆虫やミジンコ、稚エビのような微細な甲殻類、イトミミズやアカムシ、ボウフラなどの水生生物を捕食しているとされています。
⑦どこでお迎えできるの?大体のお値段は?
バタフライレインボーは比較的見かけやすい種類なので、アクアリウムにも力を入れている総合ペットショップやアクアショップであればかなり見つけやすくお迎えしやすいです。
また、お近くのショップで見つからなかった場合は通販を使うとバタフライレインボーを購入する事ができます。
大体のお値段ですが、1匹あたり約200〜400円くらいです。
ショップによっては数匹をまとめ売りしている事もあり、群泳が見たい方はそちらを利用するのがオススメです。
また、体色が白いタイプは入荷頻度や産地的に珍しいという事もあってお値段が1匹あたり500〜1000円くらいだったりします。
2,バタフライレインボーの仲間について
数は少ないですが、バタフライレインボーが含まれているシュードムギルの仲間は何種類か日本に輸入される事があります。
①サザンブルーアイレインボー
大きさは3〜4cmほどのバタフライレインボーの仲間です。
メタリックブルーに輝く目に淡い黄色の体色、オスはヒレが白、黒、濃黄〜橙色に染まり、爽やかさと上品さを兼ね備えた種類です。
②シュードムギルsp「ティミカ」
「ファイヤーレッドレインボー」という流通名もある種類で、大きさは4〜5cmほどです。
目だけではなく背中もメタリックブルーに輝き、体色は濃橙色、オスはヒレが橙〜朱色に染まります。
③シュードムギル・シアノドーサリス
しばらく入荷が無かった珍しい種類で、つい最近少数ながら入荷があった事が話題になりました。
大きさは3〜4cmほどで、他の仲間達と比較して目は白銀色、透明感のある体に爽やかなメタリックブルーの体色、オスはヒレが黒、白、淡黄色に染まる爽やかな種類です。
④シュードムギル・メリス
暖かみのある飴色の体色に各ヒレを縁取る白と黒のコントラストが美しいバタフライレインボーの仲間です。
大きさは3〜4cmほどで、現在は輸入されていない種類でもあります。
この仲間の中では飼育環境さえ整っていれば繁殖しやすい種類だったようで、一昔前は少ないながら国内繁殖個体が出回っていた事もあったそうです。
⑤シュードムギル・パスカイ
幻のバタフライレインボーの仲間です。明確に輸入が止まっている種類でもあり、大きさは3〜4cmほどです。
前述したシュードムギルsp「ティミカ」がパスカイと思われてしまうケースがありますが、全く違います。
パスカイは暗めの飴色の体色に、お腹側がうっすらと紫色に染まり、背中のウロコは金色に縁取られています。
また、目だけではなく、頬の一部もメタリックブルーに輝いています。
オスのヒレは黄色に縁取られ、内側には細かい黒のドット模様に薄い飴色という落ち着いた色彩が魅力的です。
⑥ポポンデッタレインボー
この仲間の中では最も大きく、古くから親しまれている種類です。
大きさは5〜6cmほどで、以前は「ポポンデッタ属」があり、そこに分類されていたためこの名前が定着しました。
メタリックブルーの目に喉〜尾の付け根、腹ビレ、胸ビレの先が鮮やかな黄〜橙色に染まり、透明感のある体のウロコはうっすらと黒く縁取られています。
3,バタフライレインボーの飼育の注意点について
バタフライレインボーは鮮やかな体色に大きなヒレ、餌も特に選り好みする事もないのでとても飼育しやすい種類として知られています。
しかし、そんな彼らも飼育管理の仕方や環境が悪くなると体調を崩してしまい短命に終わってしまう事も少なくありません。
🦋バタフライレインボー飼育の注意すべきポイント🦋
- 代謝が良く痩せやすい面があるので餌はしっかり食べさせる事。
- 水質悪化に弱いので定期的に水換え、水槽掃除をしてキレイな水を保つ事。
- 口が小さいので与える餌のサイズに気を付ける事。
- けっこう泳ぎ回るので遊泳スペースをしっかり取る事。
4,バタフライレインボーの飼育方法について
①お迎え
バタフライレインボーは入荷していれば通販を使ったり、総合ペットショップやアクアショップでお迎えする事ができます。
通販を使った場合は届く時間帯には必ず在宅して受け取れるようにしましょう。
再配達をしてしまうと魚への負担が大きくなってしまい届いた頃には死んでしまったという事態に繋がってしまう事もあります。
こうなってしまうと死着保証の代償から外されてしまうのでちゃんと受け取るようにしましょう。
ペットショップやアクアショップで実際に見つけた場合はすぐに購入する前に「健康チェック」をします。
これは元気な魚を長く飼育するためでもありますし、病気を持ち込まないためにも必要な事です。
バタフライレインボーは小さく、場合によっては2cmほどの幼魚が入荷してくる事もありますのでゆっくり観察します。
泳ぎ方はキビキビとしていて元気があるか、体表に付着物や充血はないか、ウロコが膨らんでいたりしていないか、ヒレがボロボロに裂けていたり不自然に溶けていないかなど細かくチェックしましょう。
②水合わせ、導入
ご自宅に着いたら、まずは早く水槽に泳がせたいという気持ちを落ち着かせバタフライレインボー達の「水合わせ」を行います。
水槽に袋ごと彼らを浮かべたら30〜40分ほど置いておきます。
水温を合わせ終わったら開封し、中の水を1/4〜1/5捨てて水槽の水を捨てた水と同じくらい入れて20分ほど様子を見ます。
異常が見られなかった場合はこの作業を袋の中の水がほとんど水槽の水と同じになるまで行い、最後の様子見も特に問題がなければ水槽に放ってあげましょう。
もしバタフライレインボー達を大型水槽で数十匹単位で泳がせたい場合は、衣裳ケースや特大バケツに開封してからエアチューブを使った水合わせ方法が個人的にオススメです。
水槽に来たばかりのバタフライレインボーは環境省慣れていないので水草や流木の影に隠れてしまいます。
③水槽について
バタフライレインボーは大きくなっても3〜4cmほどしかないため、30〜45cm水槽でも飼育する事ができます。
この場合は3〜6匹程度の小さな群れであれば群泳も楽しめます。
④水温、水質、フタについて
バタフライレインボーの飼育の水温ですが、23〜27℃くらいであれば特に問題はありません。
水温の急変対策のためにヒーターを入れて水温を一定に保ってあげましょう。
また、水温が分かりやすいように「水温計」を設置すると変化も一目で分かるのでオススメです。
水質は中性のキレイな水を好んでいるため、濾過力の高いフィルターを使ったり定期的な水換えや水槽掃除をして良い環境に整えていきます。
⑤フィルターについて
基本的にはどのタイプのフィルターでも飼育に使う事ができます。飼育している匹数や水槽のサイズに合わせてフィルターのサイズや種類を決めましょう。
また、濾過力を高めるために濾過材を炭系や吸着系に換えたり「麦飯石」などのコンディショナーやアイテムを使うと水質を保ちやすくなるのでオススメです。
Q,ストレーナースポンジが無い!代用品はあるの?
A,ウールマットや薬を染み込ませていない大判ガーゼなどで代用できます。
そしてストレーナースポンジが無くて慌てるパターンもよく聞きます。
そんな時はフィルターの調節弁を操作して揚水量を減らしたり、ストレーナー部分に代用としてウールマットや薬が染みていない大判ガーゼなどを巻き付けておきましょう。
コツとして、あまり厚く巻かないようにして水は吸えるけど魚は吸えないという感じにします。巻いたら刺繍糸でもモス巻き用糸でも良いので外れないように縛ります。
⑥底砂について
水質を極端に酸性やアルカリ性に傾ける作用がある底砂でなければ飼育に使っても特に問題はありません。
⑦水草について
バタフライレインボーは水草にイタズラする事が無く、体色が水草の緑に良く映えるため水草メイン水槽でも人気の高い熱帯魚となっています。
「バリスネリア」や「アヌビアス」「ロタラ」「パールグラス」も入手しやすく育てやすい水草です。
⑧遊泳スペースについて
小さなバタフライレインボーにとって、水草や流木などのレイアウトは全て隠れ家になります。
むしろ気を付けたいのが「遊泳スペース」で、彼らは繊細そうな見た目をしているものの、けっこう活発に泳ぎ回ります。
⑨混泳について
バタフライレインボーはとても穏やかな性格なので、タンクメイトをいじめるような事はほとんどありません。
むしろ、彼らの方がいじめられやすいので、水質も問題無く、性格の大人しい小型種などとの混泳に向いています。
⑩給餌について
基本的には人工飼料だけでも飼育できます。
しかし、彼らは口が小さいく大きい餌は食べづらいので小型熱帯魚用の顆粒タイプやフレークタイプが使いやすく、彼らにとっても食べやすいのでオススメです。
普通のサイズの場合は指で細かくすりつぶして与えましょう。
また、乾燥飼料だとミジンコやイトミミズをよく食べますが、イトミミズは脂肪分が多く水を汚しやすいので与えすぎには十分な注意が必要です。
冷凍飼料も与えると喜びます。冷凍コペポーダやブラインシュリンプベビーは小さくて食べやすいので特にオススメです。
冷凍アカムシやホワイトシュリンプを与える場合は餌を上手く飲み込めない事もあるので解凍してからハサミで細かく切ってから与えると食いつきも大分変わりますので是非参考にしてみてください。
給餌の頻度ですが、1日2回、数分で食べきれる量を与えましょう。満腹の目安として、バタフライレインボーの胸下部分がポッコリと膨らんでいれば大丈夫です。
特に人工飼料の場合は食べた後水分を吸ってお腹で膨らむため、軽く膨らんだくらいで止めておくと餌の吐き戻しも少なくて済みます。
⑪水換え、水槽掃除について
飼育している匹数や水槽の大きさ、汚れ具合にもよりますが、大体1週間〜10日に一度、1/4〜1/2の量の水換えと掃除を行います。
特に小型水槽で飼育する場合は、元々水量が少ないので定期的にしっかり水換えや掃除をする必要があり、これを怠ると病気が出やすくなってしまうので注意が必要です。
水換えと掃除の前に、まずは飼育器具の電源を切ります。
フタと水温計を外し、ガラス面に付いたコケやヌメリなどの汚れをコケクロスやメラミンスポンジ、スクレイパーなどで落としていきます。
石や流木も汚れている場合は一度取り出してから洗うか、そこまで酷くない場合は歯ブラシや専用ブラシなどで汚れを落としましょう。
水草が殖えたり伸びすぎている場合はトリミングをして長さを調節したり、不要な葉や子株を取り除きます。
この時、バタフライレインボーが水草の影に隠れている事があるので注意しながらトリミングしなければいけません。
また、ハサミの動きや水面の揺れに驚いて飛び出してしまう事もあるので飛び出しにも気を付けてください。
トリミングが終わったら不要な葉や子株はネットや手で集めます。
この時バタフライレインボーが紛れている事があるので一緒に取り出さないように注意しましょう。
回収した不要な葉や子株は燃えるゴミとして処分します。
フィルターの揚水パイプも汚れが溜まりやすいので掃除します。フィルター本体から揚水パイプとストレーナーを取り出し、専用のブラシで汚れを落とします。
水換えの度に揚水パイプ内の掃除をしておくと目詰まりの防止や濾過力の回復に繋がるのでオススメです。
ストレーナースポンジを使っていた場合は取り外してからストレーナースポンジをもみ洗いして溜まっている汚れを落とします。
水槽内の大体の掃除が終わったらクリーナーポンプを使って水ごと汚れを排出します。
この時バタフライレインボーが吸い込まれやすいので吸わないように気を付けながら作業を進めましょう。
また、底砂が目の細かいタイプでクリーナーポンプの揚水口が近いと吸われてしまいポンプが目詰まりしやすくなってしまうため距離にも十分注意が必要です。
水槽掃除が終わったら、あらかじめ用意しておいた新しい水を水槽に足していきます。
この新しい水は、必ずカルキ抜きと水温合わせを済ませておきます。カルキ抜きは固形タイプと液体タイプがあるので是非使いやすい方を選んでください。
新しい水を足す時はバシャバシャと入れるのではなく、ガラス面などに水を当ててゆっくり静かに足していきます。
こうする事で水槽内の魚やエビ達を驚かしづらくなり、飛び出しやパニックによる衝突の抑制にも繋がるので是非参考にしてみてください。
水を足して飼育器具を元に戻して電源を入れたら水換えと水槽掃除は終了です。
フィルター内部の掃除は1〜2ヶ月に一度くらいの頻度で行いますが、物理濾過を担うウールマットや一体型タイプの濾過材は目詰まり解消のために水槽掃除の時に軽く洗います。
繊維の傷みや内部の濾過材の効果が明らかに劣化している場合は新しい物と交換しましょう。
上部式フィルター、外部式フィルターの場合は生物濾過材は飼育水で軽くすすぐようにして洗います。
意外と汚れや砕けた濾過材が出てくるので初めて見るとビックリするかも知れません。
5,バタフライレインボーがかかりやすい病気と治療方法について
バタフライレインボーは小さくて華奢な見た目なのでひ弱な熱帯魚に見えるかも知れませんが、意外と丈夫で初心者にもオススメの種類です。
しかし、そんな彼らも飼育環境が悪化してしまうと体調を崩して病気になってしまいます。
①白点病
やっぱり出ました白点病です。
症状は体表に粒々とした小さな白い点々が現れます。
初期段回では体表やヒレなどに数個の白点が見られますが、症状の進行と共に徐々に数が増えていき、エラや目を塞いでしまうほど体表を覆ってしまいます。
また、白点は痒いらしく、病魚は白点を取ろうと石や流木、底砂に体を擦り付けるようになります。
この行動は体表に傷を作ってしまう事があり、その傷が新たな病気の原因となってしまうため油断できない病気です。
この病気の原因として、水温の急変や水質の悪化、病気の魚を迎えてしまった事などが主に挙げられます。
この治療方法として薬浴を行います。使う薬ですが、アグテン、マラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF系の薬品を使います。
まずは病魚を治療用水槽に隔離し、そこに分類規定量の薬を混ぜて薬浴します。
治療中は3〜5日に一度水換えをして新しく投薬し、体表やヒレに付いた白点が無くなるまで続けます。
バタフライレインボーは体が小さいのとヒレの白っぽい部分に白点が付く場合があるので観察する時は注意が必要です。
②コショウ病
「ウーディニウム症」とも呼ばれる病気です。主な症状として体表やヒレに白〜淡黄色の粉状の付着物が現れます。
コショウ病になった魚はヒレをたたんで力無く泳いだり、体をプルプルと震わせる事があります。
発症の原因ですが、水質の悪化や病気の魚を迎えてしまった事などが主に挙げられます。
治療には薬浴を行い、使う薬はマラカイトグリーンやメチレンブルー、グリーンF系の薬品です。
まずは病魚を治療用水槽に隔離し、規定量を投薬します。治療中は5〜7日に一度水換えをして新たに投薬します。
これを体表やヒレの粉状の付着物がなくなり体をプルプルしなくなるまで続けます。
③カラムナリス症
患部によって「尾腐れ病」「エラ腐れ病」「口腐れ病」と呼ばれる病気であり、感染力も強く病気の進行も早い事から非常に厄介な病気です。
初期段階では体表やヒレなどの体の一部に白〜黄色の付着物のような物が見られるようになります。
また、同時期には充血も見られる場合があります。
症状が進行すると、ヒレの場合は次第に裂けて溶けたようにボロボロになっていきます。
口腐れ、エラ腐れの場合は患部が爛れたようになり、病魚は餌を食べれなくなったり泳げなくなって次第に衰弱して死んでしまいます。
主な発生原因として、水温の急変や水質の悪化、病気の魚を迎えてしまったなどが挙げられます。
治療方法ですが、薬浴を行います。使う薬はグリーンFゴールド、観パラD、パラザンD、エルバージュ、グリーンFなどの薬品です。
病魚を治療用水槽に隔離したら、規定量を投薬して治療します。治療中は5〜7日に一度半分の量の水換えをして新たに投薬します。
④エロモナス症
感染力、進行速度、致死率どれを取っても非常に厄介な病気であり、原因となるエロモナス菌は常在菌として知られています。
症状によって呼び方が変わり、全身のウロコが逆立つ「松かさ病」、目が飛び出してしまう「ポップアイ」、体の一部が爛れていき、ウロコや皮膚組織などが欠落する「穴あき病」などがあります。
初期症状は体表に充血が見られるようになり、次第に充血だけでなくウロコが逆立ち始めたり目が浮いてきたように見えたりするようになります。
特に穴あき病の場合は、ウロコが白っぽく濁って次第にポロポロと剥がれ落ちていきます。
ここからさらに症状が進行すると皮膚組織まで剥がれ落ちて筋肉組織が剥き出しの状態になってしまうのです。
発症の主な原因は、食べ残しや与えすぎた餌が腐敗して水質が悪化してしまった事や水温が安定せず免疫が弱ってしまったりかなりのストレスがかかってしまった事などが挙げられます。
また、健康チェックをせずに迎えた魚が実はエロモナス症だったというパターンもあるため注意が必要です。
治療には薬浴を行い、使う薬はエルバージュやグリーンFゴールド、観パラD、パラザンDなどを使います。
治療ですが、病魚を治療用水槽に隔離し、規定量を投薬します。治療中は3〜5日に一度、半分の量の水換えをしてから新たに投薬します。
ウロコや目が収まったり、体表の穴がしっかり再生したら治療は終了です。
6,バタフライレインボーの繁殖方法について
意外かも知れませんが、小さなバタフライレインボーも大切に飼育してあげれば水槽内で産卵、繁殖をしてくれます。
①繁殖のために必要な事は?
ただペアを揃えただけでは繁殖は上手くいかないものです。
バタフライレインボーの繁殖には、状態の良いペアと彼らが「繁殖したい!」と思うような飼育環境が必要となります。
②バタフライレインボーの雌雄判別について
ネオンテトラやボララスと比較してバタフライレインボーはかなり雌雄判別しやすい種類です。
♠️バタフライレインボーのオスの特徴♠️
- 成魚になると各ヒレが大きくなる。
- ヒレにもしっかり色が乗る。
- 体色もメスより濃くなる。
- 成熟するとフィンスプレッティングを行うようになる。
♥️バタフライレインボーのメスの特徴♥️
- 成魚になってもヒレが大きくならない。
- 各ヒレにあまり色が乗らず透明感が強い。
- お腹がオスよりふっくらしている。
- ヒレの形がオスと違い、台形や三角形に近い形をしている。
- 成熟してもフィンスプレッティングをしない。
③バタフライレインボーの繁殖行動について
成熟したオスのバタフライレインボーは別のオスを見つけると自慢のヒレをいっぱいに広げてフィンスプレッティングをするようになります。
ヒレを大きく広げて並走したり、互いにクルクルと回って優劣を決めます。
噛みつくなどの攻撃はほとんど無いため、ヒレが大きく裂けるようなアクシデントは起きにくいのが特徴です。
成熟したオスはお腹が卵でふっくらしたメスの傍に近寄ると、各ヒレをいっぱいに広げて求愛します。
オス同士の小競り合いとは違い、サッとヒレを広げたり体を斜めに倒してヒレが良く見えるようにしたりなどで激しさはありません。
メスがオスを気に入ると、オスの傍を泳ぐようになります。そしてオスは他のオスからメスを守りながら水草が繁った場所にエスコートし産卵します。
オスの大きなヒレでメスを優しくハグしながら産卵は行われるため、大体近い場所で卵は見つかりやすいです。
④バタフライレインボーの卵について
小型熱帯魚らしく卵は小さめですが、一粒一粒がメダカの卵より若干小さいくらいでまだ確認しやすいです。
イメージとしてはバラバラに分離した数の子や子持ちシシャモの卵に近い感じです。
卵には粘着性があり、水草やウィローモスに絡み付きます。
水槽内がバタフライレインボーのみで水草が豊富に植えられている場合は自然繁殖させる事もできますが、良いペアが何組かいる場合は繁殖用水槽を立ち上げて移動させ、繁殖を狙う事もできます。
バタフライレインボーの卵はとても繊細で汚れにも弱いため、回収して別容器で育てたいという方は潰さないように優しく卵を取り出して容器に移したらほんの少しメチレンブルーを入れておくのがオススメです。
メチレンブルーは卵の大敵である水カビに効果があり、卵が僅かに着色される事で有精卵と無精卵が見分けやすくなります。
⭐外掛け式隔離ケース「サテライト」は繁殖にも使える!
これは「サテライト」のサイズにもよりますが、隔離ケースとだけあってかなり汎用性が高いです。
弱った個体を隔離して育てたり、メイン水槽では泳がせられないエビや魚を飼育する事もできます。
また、水草を入れて良いペアを入れておくと産卵する事があり、産卵が終わったペアを水槽に戻せばそのまま孵卵させられます。
⑤バタフライレインボーを狙って繁殖させる方法
まずは繁殖用の水槽を立ち上げるか、サテライトなどの隔離ケースを設置します。
この繁殖用容器の中には産卵床となるマツモやウィローモスを入れ、状態の良いペアを移動させます。
この時1組のペアでも良いですが、スペースに余裕があったりバタフライレインボーを複数匹飼育していて他にもペアが成立している場合はそちらも移しておくと繁殖活動が観察しやすく卵も回収しやすいです。
また、繁殖用水槽を立ち上げた場合はマイクロバブルのエアレーションか稚魚用フィルターがオススメです。
繁殖用容器に移ってから繁殖行動が確認できたらメスのお腹を確認します。
お腹の後半部分の膨らみが無くなっていれば産卵後のサインです。
⑥ 卵と稚魚のお世話について(参考水温24〜27℃)
・産卵初日
卵のほとんどは水草に産み付けられているので見つけるのが難しいです。
・産卵後1〜3日目
この頃になると、卵にも変化が現れます。無精卵と有精卵の違いがハッキリとしてくるのです。
卵の中が白く濁っていたり、全体的に白っぽくなっていりカビが生えている卵は全て無精卵なのでスポイトやピンセットで取り除きます。
・産卵後4〜7日目
お世話の内容は変わらず、途中で死んで白くなってしまったりカビてしまった卵をスポイトなどで取り除いていきます。
元気な卵は体が形成されていき、成長が早い卵はうっすらと目や心臓が見えてきます。
繁殖用容器の水が蒸発して減ってきている場合は新しい水を作ってゆっくり優しく足していきます。
サテライトを使っている場合は親魚水槽に水を足せば、サテライト内の水かさも増えます。
間違ってもサテライト本体に水を足すのは避けるようにしてください。
・産卵後10〜16日目
この頃になると、元気に成長した卵の中には稚魚のキラキラとした目が見えるようになります。体もしっかり形成され、薄墨色の背中も確認できます。
また、孵化も近いので成長が早い個体は卵の中でしきりに回転して孵化の時を待ちます。
お世話の内容は変わりませんが、ダメになってしまった卵を取り除いたり蒸発して減った分の水を足していきます。
産卵から大体2週間ほど経つと孵化が始まり、卵から稚魚が勢い良く飛び出してきます。
・孵化初日
いよいよ孵化の時を迎え、稚魚達は勢い良く卵から飛び出してきます。
最初は卵から出て疲れていたり、お腹のヨークサックが重くて底の方でジッとしている事がありますが、しばらくすると小さな尾をピコピコと小刻みに震わせて泳ぎます。
生まれたての稚魚にはヨークサックがあるのでしばらく餌は必要ありません。
・孵化後2〜3日目
お腹のヨークサックも小さくなり、餌を食べ始めるようになります。体も軽くなっているので、稚魚達はピョンピョンと跳ねるように泳ぐ様子も見られます。
お世話として、死んでしまった稚魚や卵をスポイトなどで取り除き、稚魚達に餌を与えます。
バタフライレインボーの稚魚はかなり小さいので餌にはPSBやゾウリムシやミドリムシなどのインフゾリアを与えます。
インフゾリアはキャベツなどを水に浮かべて放置する事で殖やす事もできますが、匂いも出てしまうので通販などで取り寄せるのが個人的にはオススメです。
また、ゆで卵(完熟)の黄身を飼育水で溶いた物も稚魚の餌になります。
ゆで卵の黄身は腐りやすく、鶏卵だと飼い主側が食べない限り余らせてしまう場合もあるので、お嫌いでなければウズラの卵で作るのもオススメです。
ウズラの卵は小さいので、飼育者側が食べるのも、そこまで苦ではないと思います。
これらの餌はスポイトや容器から直接垂らすようにして与えます。
餌に気付くと稚魚達は小さな口でついばんだり、パクパクと口を動かして食べてくれます。
後はちゃんと食べれているか、稚魚のお腹を観察しましょう。
・孵化後4〜7日目
元気な稚魚達はしっかりと餌を食べ、スクスクと成長していきます。
しかし、中には死んでしまう稚魚もいます。死んでしまった稚魚は底に溜まったフンや食べ残しと一緒にスポイトで取り除きます。
また、水が減ってきた場合は新しく作った水を静かにゆっくりと足していきます。
この時期の稚魚はまだまだ繊細なので、なるべく水流を起こさないように注意が必要です。
餌はインフゾリアやPSB、ゆで卵の黄身を飼育水で溶いた物、稚魚用パウダーフードです。
この稚魚用パウダーフードは様々な種類が販売されているのですが、その中でも微細なタイプがオススメです。栄養バランスに優れているので稚魚の良い餌になります。
バタフライレインボーの稚魚は餌を求めて上層から底層まで満遍なく泳ぎ回るので、ちゃんと食べられるように与えます。
・孵化後8〜11日目
順調に成長した稚魚は大きさも5〜6mm前後になって視認しやすくなります。
また、各ヒレの少しずつ伸びてきて、孵化直後のひ弱な感じは少し無くなってきます。
お世話として、死んでしまった稚魚や食べ残し、フンなどをスポイトで取り除きます。
また、クリーナースポイトやエアチューブを使って底から全体の水量の1/6ほど抜いて水換えをする事もできます。
水換え後は新しい水を優しくゆっくり足してあげましょう。
稚魚用フィルターを使っている場合はフィルターを取り出して目詰まりを取ったりスポンジ部分を軽くもみ洗いして溜まった汚れを落とします。
餌はPSBとインフゾリア、ゆで卵の黄身を飼育水で溶いた物、稚魚用パウダーフードです。
・孵化後12〜15日目
しっかり餌を食べて元気に成長できていれば、大きさも6〜7mm前後になっています。ようやくメダカの稚魚サイズです。
この頃の稚魚は活発に泳ぎ回るようになり、目もうっすらとブルーの輝きが見えるようになります。
また、体色は背中の薄墨色はまだ無くなりませんが少し黄色みが出てきます。
各ヒレも以前より伸びているので胸ビレや尾ビレ、腹ビレも観察しやすくなります。
それでもまだまだ小さいので、餌にはPSB、飼育水で溶いたゆで卵の黄身、インフゾリア、稚魚用パウダーフードを与えます。
死んでしまった稚魚がいる場合はスポイトやエアチューブでフンや食べ残しと一緒に水ごと取り除き、減った分新しい水を足しましょう。
・孵化後16〜20日目
順調に成長できていれば、小さなバタフライレインボーの稚魚も8〜9mm近い大きさに成長します。
この頃には体つきもちゃんと魚っぽくなってきますし、各ヒレも小さいながら観察できるようになります。また、体色もうっすらですが黄色っぽくなってきます。
餌はインフゾリア、PSB、パウダーフードにして、水を汚しやすいゆで卵の黄身を卒業させましょう。
死んでしまった稚魚が見つかった場合はスポイトやエアチューブで水ごと取り除き、新しい水を足していきます。
稚魚達は活発に泳ぎ回るようになり、中にはあくびをする様子も観察できます。
・孵化後21〜25日目
しっかり餌を食べている稚魚は1cm近い大きさに成長しています。
この頃には見た目もメスのバタフライレインボーに似てきて、各ヒレもさらに見やすくなります。
また、体色も黄色みが強くなり、うっすらとウロコの縁取りが見え始めます。
目のブルーも以前と比べて濃くなり、確かな成長を感じられるはずです。
この大きさになったら餌をPSBと稚魚用パウダーフードにします。
稚魚用パウダーフードは以前使っていた物より少し粒子が大きい物に変えます。
個人的には「メダカベビー ハイパー育成」のような栄養強化タイプがオススメです。
これを1日2回、少しずつ与えます。与えたらちゃんと食べている様子を確認し、お腹が膨らんでいるかもチェックしましょう。
この頃には死んでしまう稚魚も大分少なくなってきますが、死んでしまった稚魚を見つけたり、食べ残しやフンが底に溜まっていたらエアチューブやクリーナースポイトを使って水ごと取り除き、減った分新しい水を足していきます。
・孵化後26〜30日目
見た目も大分親魚に近付いてきますが、まだまだヒレも小さく、体色は薄めです。大きさも1cmを超えてきます。
また、泳ぎ方は孵化直後のような弱々しさが無くなり、堂々と泳ぎ回るようになります。
中にはちょっと小競り合いする事もありますが激しくないので特に問題はありません。
餌は引き続きPSBと稚魚用パウダーフードを与えます。
この頃には水換えも問題なくできるようになるため、親魚水槽と同じように水換えをします。
また、稚魚用フィルターからスポンジフィルターなどに換えても問題ありません。
遊泳力が想像以上にあるので水換え中に飛び出されないように注意しましょう。
・孵化後31〜36日目
稚魚の大きさは大体1.2cmほどになり、見た目もさらに親魚に近くなります。
また、ショップによりますがこのサイズのバタフライレインボーが流通する事もあるため、ここまでくればバタフライレインボーの繁殖は成功といえます。
・孵化後50〜60日目
大きさは約2cmほどになり、体色やウロコの縁取りもしっかり確認できるようになります。
また、雌雄差が出てくるため、ヒレの形や色で判別もできるようになります。
もう立派はバタフライレインボーですので、餌も小型熱帯魚用のフードやブラインシュリンプベビーを食べられます。
⑦バタフライレインボーの繁殖に使える意外なアイテムについて
今回は水草やウィローモスを産卵床に使った方法をご紹介させていただきましたが、他にも繁殖に役立つアイテムがあります。
・毛糸
手芸店などで購入できる毛糸もバタフライレインボーの産卵床として使う事ができます。
使い方はグルグルと手などに毛糸を数回巻き付けてから手を引き抜き、輪を作ります。
次にその輪を崩さないように真ん中を縛って産卵床完成です。
・麻紐
こちらもホームセンターなどで購入できるアイテムです。
■紐系でも産卵床に不向きなのは?
よく段ボールを束ねる時に使われるビニール紐はあまり産卵床に適していません。
というのもビニール紐は表面がツルツルしているので卵が上手くくっつかず床に落ちてしまいます。
また、細かく裂いて卵をくっつきやすくしても、産卵するペアが絡まって抜け出せなくなってしまう事があるのでできれば使用は避けましょう。
また、工場現場などでよく見かける黄色と黒が目立つ「虎ロープ」もあまりオススメできません。
こちらはビニール紐と違って固く、産卵床のサイズに加工するのが大変です。
・スポンジ
新品未使用のスポンジも産卵床として使う事ができます。
使いたい大きさに切ったスポンジに幾つかの切り込みを入れて沈めて完成です。
・人工芝
ホームセンターで購入できるお手軽アイテムです。
・メッシュ素材の巾着袋
小物店などで見かけるメッシュ生地の巾着袋もアクアリウムの世界で役に立つアイテムになります。
パワーストーンショップでは、さざれ石を入れるためのメッシュ生地の巾着袋がかなりお手頃価格で購入できるのでオススメです。
このアイテムは砕いた竹炭や備長炭を入れて水槽内に設置し、水質改善をするのに役立ちます。
まとめ
今回は皆様に水中の蝶々・バタフライレインボーについて盛りだくさんにご紹介させていただきました。
バタフライレインボーはその美しさや可愛らしい泳ぎ方から人気が高く、今でもネオンテトラやラスボラ達に負けず劣らずの人気を誇っています。
また、フィンスプレッティングをするのにあまり大事に至らない点や、成長したオス同士のフィンスプレッティングは非常美しいのも高い評価を得ています。
そんなバタフライレインボーは大切に飼育する事でヒレや体色はさらに美しくなり、ペアを作って繁殖もしてくれるため累代飼育もできる素晴らしい小型美魚です。
狙って繁殖させる場合は孵化した稚魚の大きさや水質悪化に弱いなどの特徴から難易度は高いですが、それらを乗り越えて立派な水中の蝶に育った子を見れば感動も愛着も一際大きいものでしょう。
もし、小型水槽を始めたいという方、美しくも気品と違いがある種類をお探しという方はバタフライレインボーを是非迎え入れて見てはいかがでしょうか。