アクアリウムの世界では時々ファンタジー感満載の名前を持つ種類が発見・流通されます。
「フェニックステトラ」「ゴライアスタイガーフィッシュ(ムベンガ)」「ドラゴンフィッシュ」など、どこか優美で強そうな名前が付けられています。
そんなファンタジーな名前を最も多く持っているであろう種類こそ、底モノ系熱帯魚・プレコの仲間達です。
「キング」「クイーン」「ロイヤル」「カイザー」などの身分階級が名前に入っていたり、「ドラゴン」「ギャラクシー」「インペリアル」などいかにもファンタジーな名前も戴いています。
今回はファンタジーな名前とシンプルな体色が美しい種類「マスタードファントムプレコ」について皆様にご紹介させていただきます。
マスタードファントムは既に名前がカッコいいだけでなく、その見た目も厳つさと美しさを兼ね備えた素晴らしいプレコで、飼育もしやすいのが特徴です。
1,シンプルな体色が魅力的!マスタードファントムプレコの特徴について
①分類
プレコの仲間の中では古くから知られていましたが、1999年12月までは学名は確定しておらず、ロリカリア科を示す「Loricariidae sp.」とされて流通していました。
しかし、最近は学名も定まり「Panaqolus albomaculatus」となりました。この「Panaqolus」はタイガープレコ系の新たな属名であり、「エンペラーペコルティア」や「ホワイトタイガープレコ」などが含まれています。
②生息地は?
マスタードファントムは現在ではペルーのウカヤリ川水系原産と言われています。しかし、かつてはブラジルのアマパ州に分布しているとされていました。
⭐プレコの種類が分かる「Lナンバー」!
本種を含めたプレコの仲間達は種類が多いだけでなく同じ種類であっても地域差が激しいため、種類分けや流通させるために「Lナンバー」が振り分けられる事があります。
マスタードファントムの場合は「LDA-031」と付けられるようです。
③どんな見た目をしているの?
体高が低くなったタイガープレコのような体型をしており、ウロコや各ヒレにある細かいトゲは少し粗めです。
尾ビレは上部より下部の方が長くなりますが、個体によっては尾ビレの両端がフィラメント状に伸びたり、上下ともにほぼ同じ長さになる事もあります。
体色は黒地に淡黄〜黄色の細かな水玉模様が入り、シンプルながらメリハリのある美しい体色をしています。
また、マスタードファントムは個体差が激しく、体色の地色が濃い個体もいれば、薄墨色のように見える個体もいます。水玉模様の大きさや数も違うためコレクション性が高いのも魅力の一つです。
口は円盤形をしており、この中には餌を削り取るための細かい歯があります。マスタードファントムはこの口を使って流木や石に吸い付いたり、餌を食べたりして過ごしています。
プレコの仲間は口の横に束になった硬質なヒゲを持ちますが、本種にも備わっています。
⭐別名はキレイな体色が由来!
マスタードファントムは黒地に良く目立つ明るい黄色の水玉模様が美しい種類です。
プレコの仲間の中には同じように水玉模様を持つ種類がおり、「スターダスト」や「ファンシースター」などの流通名があります。
④どのくらいの大きさなの?
一時期は大きくなっても6cmくらいと言われていましたが、成長したマスタードファントムは約12〜13cmほどになります。タイガープレコより大きく、マツブッシープレコよりは若干小さいくらいです。
⑤どんな物を食べているの?
プレコは草食性が強い種類として知られていますが、植物以外の物も割りと口にしています。
野生下では流木や沈んで柔らかくなった枯れ葉、藻類、柔らかい水草などの植物質の他、水底にいるイトミミズなどの水生生物や泥の中の有機物、微生物などを捕食しています。
⑥気になる性格は?
ナマズの仲間らしく夜行性であり、ライトを消すと活発に泳ぐ様子を見る事ができます。また、暗い水中の彼らのΩアイを見てみると、丸くなって可愛らしい目になっています。
マスタードファントムの性格は比較的穏やかで、種類を選べば混泳させる事も可能です。
⭐最初は隠れるが慣れると姿を見せてくれる!
小型プレコの中では隠れる性質が強いマスタードファントムですが、環境に慣れて餌をよく食べるようになると、頻繁に姿を見せてくれるようになります。
⭐肝を冷やす寝方!
魚も生き物ですので時間がくれば泳ぎながら眠ってしまいます。それはマスタードファントムも同じで、眠たくなると隠れ家に入ったり物陰で微動だにせず眠ります。
この時、飼育環境に慣れていてしっかりと飼い込まれた個体だと、人間のように横になったり仰向けになって眠る事があります。
⑦どこでお迎えできるの?大体のお値段は?
マスタードファントムは全てワイルド個体であり、常に見る事ができる種類ではないため底モノにも強いアクアショップや総合ペットショップ、通販を探す必要があります。
また、大体のお値段ですがプレコの仲間は大きさで値段が変わる事が多いため値段の差が大きかったりします。
2,マスタードファントムプレコの飼育で注意すべき事について
黒地に黄色の水玉模様というシンプルな美しさを持つマスタードファントムは根強い人気があり、「小型だけど美しくて厳つい」という特徴的な見た目から初心者の目を惹く熱帯魚でもあります。
〜👻マスタードファントムプレコの注意すべきポイントについて👻〜
- 強めの水流を好み、酸欠に弱いため酸素はしっかりと供給する事。(←超重要!)
- 水質の悪化や急変に弱いため、キレイな水を維持する事。(←超重要!)
- 薬品には弱いので薬浴する時は使用する量を1/5〜1/2に抑える事。(←病気の時は忘れちゃダメ!)
- 痩せているのが分かりにくい種類なのでお腹側も観察して凹んでいないか確認する事。
- 植物質だけでなく動物質の餌も与える事。
- 物陰に隠れる性質が強いので隠れ家を用意する事。
- 歯が強いため、水槽はガラス製の物を使う事。
これらが注意点として挙げられます。
特に薬品関係と水質、酸欠には注意が必要で、水槽の近くで殺虫剤や消臭スプレーを使ったら中にいたプレコやエビが死んでしまったという悲劇も実際に起きています。
また、プレコ達のウロコはカラシンやラスボラなどのように一枚で剥がれる事はなく、以前本ブログでご紹介したコリドラス・ハステータスなどのように鱗板になっているため外見では痩せているかの判断が難しいです。
3,マスタードファントムプレコの飼育方法について
①お迎え
マスタードファントムは常に見られる熱帯魚ではありませんが、プレコなどの底モノにも強いショップであれば見つけられる可能性があります。見つからない場合は通販を利用してお迎えすると良いでしょう。
ショップで見つけたら、まずはじっくりと観察して健康チェックをします。
プレコなどのナマズの仲間は薬品に敏感なので治療が難しく、病気の魚を連れ帰ってしまうと短命に終わってしまう事もあるのでそうならないように事前にチェックが必要なのです。
各ヒレが不自然に裂けたり溶けたりしていないか、体表に付着物や白濁した部分がないか、水流に負けたりしていないかなどを見て、特に問題がなければ店員さんにお願いしてパッキングしてもらいましょう。
マスタードファントムなどは数多く入荷するような種類ではないため、まとめ買いは基本できません。
②水合わせ、導入について
すぐに彼らが自宅の水槽で泳ぎ回る様子が見たいかも知れませんが、ここはグッと堪えてまずは水温合わせをしましょう。
水槽に袋ごと浮かべて30〜45分ほど様子を見ます。パッキングを開封した時に水温形を入れて中の水温が水槽とほぼ同じくらいになっていれば水合わせに移行する事ができます。
水合わせの時は袋の中の水を1/5〜1/4捨てて同量の水を足し、30分ほど様子を見ます。特に異常が見られなければこの行程を、袋の中の水がほぼ水槽の水になるまで繰り返します。
最後の水合わせの時も異常がなければ水槽に解き放ってあげましょう。
マスタードファントムは成魚で入荷するのは珍しく、5〜8cmほどの幼魚や未成魚が主です。
⭐移動させる時はネットはNG!
マスタードファントムやタイガープレコなどはコリドラスと同じくらい硬い鱗板に覆われているだけでなく、ウロコや各ヒレの棘条には細かなトゲが生えているためネットに絡まりやすくなっています。
ネットに絡まるとすぐに繊維がボロボロになってしまうだけでなく、体表のスレの原因になってしまうため使わないようにしましょう。
③水槽について
マスタードファントムは最終的に10cmを超える大きさになるので、1〜3匹を飼育するのであれば60cm水槽で飼育するのが無難です。
また、広い水槽で飼育するのにも理由があり、水の汚れを嫌う種類なので水量が多い水槽で飼育する事で水質悪化の速度を多少緩やかにするためです。
Q,ガラス製以外の水槽で飼うとどうなるの?
A,水槽が傷だらけになって見えにくくなるだけでなく、材質によっては体内を傷付ける可能性があります。
草食性の熱帯魚はたくさんいますが、プレコのように流木すら削って食べてしまう種類はそうはいません。
この口は想像してる以上に強力で、アクリル水槽やプラスチック水槽は簡単に削られてしまい曇りガラスのようになってしまいます。
④水質、水温について
マスタードファントムは中性〜弱酸性のキレイな水質であれば問題なく飼育する事ができます。
水質が弱アルカリ性に傾くと肌荒れを起こしたり、水質が合わずに弱ったりしてしまうので傾けないようにしましょう。
⑤水温計、フタについて
水温の変化を知るためにもできれば水温計を設置したいものです。
サーモスタット付きヒーターであっても交換時期が近付くと設定通りの水温にならない事があり、水温計を設置する事で、その水温急変にすぐに気付く事ができます。
また、フタは必ず設置するようにした方が無難です。
⑥底砂について
水質を弱アルカリ性に傾ける作用がなければ飼育に使う事ができます。ソイルや渓流砂などが敷かれる事もあります。
⑦ライトについて
必ず必要という訳ではありませんが、昼夜のメリハリをつけたり体色を美しく見るためにもライトがあると便利です。
⑧フィルターについて
マスタードファントムは水質の悪化を嫌うため、濾過力が強い上部式フィルター、外部式フィルターがオススメです。
底砂を敷く場合は底面式フィルターを使う事もできます。
また、プレコは腸が長く渦巻き状になっているため、フンも長くなっています。
⑨隠れ家(シェルター)について
タイガープレコやセルフィンプレコとは違い、物陰に隠れる性質が強い種類なので、飼育する時は隠れ家を幾つか設置してあげましょう。
⑩水草について
彼らは草食性が強いため、水草との相性はお世辞にも良いとは言えません。
しかし、水槽に全く水草を入れられないという訳でもありません。
葉に厚みがあって丈夫な種類であれば食害を免れる事もあります。プレコの仲間を飼育する時によく使われる水草は流木や石、素焼きの土管に活着できる種類がほとんどで、「アヌビアス」や「ミクロソリウム」「ボルビディス」などが育てやすくオススメの水草です。
⑪混泳について
プレコの仲間の中には気性が荒く、同種他種問わず威嚇したり争うような種類もいますが、マスタードファントムは性格が穏やかで混泳しやすい種類です。
小型カラシンやラスボラ、グラミーやアピストとの混泳もできる他、同種だけでなくペコルティアの仲間やカイザー系プレコとも混泳させる事ができます。
一方で混泳が不向きな種類もおり、平たい体型をしたディスカスやエンゼルフィッシュはプレコが吸い付きやすいと認識してしまい、体表を齧られてしまいます。
酷い時は穴あき病にでもなったかと思うくらい徹底的にやられてしまう事もあり、混泳には向いていません。
■気が強いプレコとは混泳はさせないようにしよう!
マスタードファントムは穏やかな性格をしているため、仲間同士や他種であっても滅多にケンカをしません。
しかし、ロイヤルプレコやトリムプレコ、イーグルクロウスパングルなどのプレコの仲間は気が強く、幼魚であっても攻撃的なので混泳は避けるようにしましょう。
⑫給餌について
草食性が強い種類ではありますが動物質も食べるため、メニューはある程度種類を揃えておくのがオススメです。
流木やふやかしたマジックリーフはレイアウトだけでなく、彼らの非常食にもなるので入れておくと安心です。
マスタードファントムは少し時間がかかりますが、人工飼料に慣れさせる事ができるため、人工飼料を食べる場合は市販のプレコフードや沈降性の熱帯魚フード、草食性が強い魚用フードを与えます。
また、茹でたホウレン草や小松菜、輪切りにしたキュウリなども植物質の良い餌になります。
動物質の餌として、冷凍イトミミズやアカムシ、コペポーダ、ブラインシュリンプベビーをスポイトで口元に持っていってあげると口をモゴモゴ動かして食べてくれます。
プレコはネオンテトラやゼブラダニオとは違い、餌に吸い付いて削るように食べるため時間がかかります。
そのため給餌の間隔の目安として1日に1〜2回、水槽に入れてから約1〜2時間ほどで食べきれる量を与えます。
⑬水換え、水槽掃除について
飼育している匹数や水槽の大きさ、汚れ具合にもよりますが、大体の目安として1週間〜10日に一度、1/4〜1/2の量の水換えと水槽掃除をします。
マスタードファントムやファロウェラなどの吸い付き系底モノ達は、水槽壁面に付いた茶ゴケなども食べるので見た感じはキレイに見えるのですが意外とヌメリが付いていたりするので過信し過ぎないように注意が必要です。
飼育器具の電源を切ったらフタや水温計を取り外し、安全な場所に移動させます。
準備が整ったら水槽の壁面を掃除します。スクレイパーやコケクロス、メラミンスポンジで擦ると簡単に汚れを落とせるので、どれか1つは持っていると掃除が楽になります。
底砂を敷いていない場合はそのまま底面も掃除します。
■トゲがあるプレコの突進でケガをする事も!
彼らの体は鎧のように硬い鱗板に覆われているだけでなく、その表面や棘条にはさらにトゲが生えている種類もいます。
マスタードファントムも小型ではありますが、その類いのプレコです。水槽掃除の時に驚いてしまうとかなりのスピードで泳ぎ、ぶつかると指の皮膚がちょっとササクレ立ってしまう事もあります。
これが小型種である本種ならまだ良いものの、よりトゲが発達しているトリムプレコやアグアプレコとなると暴れた時に結構なダメージを負わされる事があるので操縦中はあまり驚かせないようにしましょう。
■隠れ家の中におった〜!
ナマズやプレコの仲間は隠れ家を入れておくと結構な頻度で活用してくれます。
その様子はとても微笑ましく可愛らしいものですが、水槽掃除の時に取り出した隠れ家の中に入ったままの事も少なくありません。
もし気付かずそのままにしたり、水道水で洗ってしまうと隠れ家に入ったままのプレコやナマズが死んでしまうため、レイアウト変更で隠れ家を取り出す場合は中に隠れていないか確認が必要です。
レイアウトに使っていた水草が枯れていたり、コケが酷い場合はトリミングをして取り除いてあげましょう。
黒くて硬いヒゲ状のコケはプレコでは対処できないため、水草に生えるとフサフサになってしまい見映えが悪くなってしまいます。
カットして出た不要な葉はなるべく手で集め、燃えるゴミとして処分してください。
フィルターの掃除についてですが、フィルターの揚水パイプとストレーナーを取り外し、中に溜まった汚れを専用のブラシで擦り落とします。
この部分は意外とヌメリの塊やフンが絡まっているため、目詰まり防止のためにも定期的に掃除するのが効果的です。
また、物理濾過を担うウールマットも取り出して飼育水で軽く洗い、ゴミや汚れを落とします。
水槽内の大体の掃除が終わったらクリーナーポンプを使って水ごと汚れを吸い出します。この時も吸水口はゆっくりと動かし、隠れているプレコをあまり驚かせないように注意が必要です。
水が抜けたら新しい水を水槽に足していきます。この水は必ずカルキ抜きと水温合わせを済ませておくようにしましょう。
水の足し方は色々あり、壁面に水を伝わせて静かに入れる方法や水面にビニールを浮かべてその上から水を足す方法、底面にお皿を置いてその上から水を足す方法などがあります。
水を足し終わったら飼育器具やフィルターの揚水パイプなどを戻し、電源を入れれば水槽掃除と水換えは完了です。
フィルター内部の生物濾過槽を掃除する場合は大体2〜3週間に一度行います。濾過バクテリアを激減させないように汲んでおいた飼育水で濾過材を軽く濯ぎます。
濾過材の種類にもよりますが、砂のように砕けた濾過材が出てきたり、黒いゴミがたくさん出てくる事もあります。
生物濾過材は頻繁に交換する必要はありませんが、交換目安というものがあるため、交換時期が近付いて来たら新しい物と交換するようにしましょう。
4,マスタードファントムプレコがかかりやすい病気と治療方法について
マスタードファントムは水質や酸欠などに気を付ければアクアリウム初心者でも飼育する事ができますが、水換えや掃除をサボってしまったり上手く餌が食べれていないと痩せたり病気になってしまい、短命に終わってしまいます。
①ウーディニウム症
コショウ病、ベルベット病などの別名がある病気で、名前の通り「ウーディニウム」という鞭毛虫が寄生する事で病気が発生します。
症状として体表やヒレに淡黄色の粉状の付着物が現れ、病魚は体をプルプルと震わせたりヒレをたたんで力なくジッとしていたりします。
この病気が発生するキッカケとして水質悪化や病気の魚を導入してしまった事が挙げられますが、ウーディニウム症は水換えやフィルター掃除をサボったりすると発生しやすい事でも知られている病気です。
特にマスタードファントムは水質悪化に弱いため、この病気にかかりやすいという特徴があります。
治療には薬浴を行いますが、薬の使用量は本来の量の1/5〜1/2に抑えて使うようにしましょう。
治療薬としてマラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF系を使います。
まずは治療用水槽に病魚を移します。そして様子を見ながら投薬し、治療を開始します。
治療中は5〜7日に一度、半分の量の水換えを行い新たに投薬しますが、ウーディニウム症は伝染力が高い病気なので病魚が出た水槽はきっちり掃除して環境を改善するようにしましょう。
Q,ナマズや古代魚などの薬品に弱い種類はどうやって投薬するの?
A,水で溶いておいた治療薬を少量ずつ投薬します。
マスタードファントムなどのナマズの仲間や古代魚、水質にかなり敏感な種類は病気になった時に薬浴のための治療薬をかなり抑えて使う必要があります。
この時病魚の様子を観察しながら投薬するのですが、いきなり魚病薬を投薬するとショック状態を起こす可能性があるため基本的にはあらかじめ別容器で溶かした薬を少しずつ投薬します。
これはナマズや古代魚に関わらず、ネオンテトラやグラミーなどにも当てはまるので是非参考にしてみてください。
特にアジアアロワナやピラムターバ、フィダルゴなどはかなり薬品に敏感で、少量の薬でも個体によっては暴れまわる事もあります。
②痩せ過ぎ
個人的には鱗板が発達すると種類だと太り過ぎよりよく見られる症状だと思います。
以前ご紹介した「コリドラス・ハステータス」や「ボルケーノ・オトシン」などは給餌が上手くいっていないと発生しやすく非常に厄介な状態です。
何故見落としやすいかと言うと「鱗板」と言う強固な鎧によって外見からの判断が難しく、本体の痩せ具合が分かりにくいです。
これはマリンアクアリウムでも人気が高いハコフグにもよく見られる特徴でもあり、観察力を試される部分でもあります。
痩せ過ぎの状態はマスタードファントムの場合はお腹が鱗板の位置より凹んでいるのは既に危険信号なので、しっかりと餌を食べさせる事が予防となります。
治療方法として治療用水槽に移した後に、栄養価の高い餌を与えます。
慣れれば人工飼料も良く食べますが、慣れていない場合は輪切りにしたキュウリや茹でたホウレン草、小松菜、アオサなども良い餌となります。
また、動物質の餌は水を汚しやすかったり、マスタードファントムの生物上の特徴から胃腸に負担を与えるため与え過ぎは良くないですが、痩せ過ぎと言う危険な状態を回避するためには定期的に活用するようにしましょう。
③白点病
アクアリウムではとにかく有名な病気であり、発見もしやすい病気です。「白点虫」という原虫が体表やヒレに寄生する事で起こる事でも知られています。
マスタードファントムの場合は幼魚の時期や環境にまだ慣れていない時にかかりやすく、個体によっては水玉模様なのか白点病なのか分かりにくい事があるので注意が必要です。
白点病は放置していると最初は数個だけだった白点が数を増やし全身に広がってしまい、最終的に魚が死んでしまいます。
また、白点を落とそうと流木などに体を擦りつけてしまい、それでできた傷が新たな病気の原因になってしまう事もあります。
発生原因は水質の悪化や水温の急変が主に挙げられます。
治療には薬浴を行い、使う薬品はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系です。
まずは病魚を治療用水槽に隔離し、様子を見ながら薬品を投薬して治療を始めます。
治療中の水換えの間隔は使う薬品によって異なり、アグテンの場合は3日、メチレンブルーとマラカイトグリーン、グリーンFの場合は1週間、グリーンFクリアーの場合は2週間に一度、半分の量の水換えをしてから新たに投薬します。
④水カビ病
体に生えた水カビが綿のように見える事から綿かぶり病、綿カビ病とも呼ばれる病気です。
名前の通り体表やヒレに水カビの菌糸が入り込んで繁殖してしまった状態なので、見つけたらすぐに治療する必要があります。
病気のキッカケは、生物濾過が上手く機能していない環境で食べ残した餌を放置した事で水カビを発生させてしまった事が挙げられます。
マスタードファントムの場合は底モノなので、水カビに触れてしまう事が中〜上層を泳ぐ魚より多く、病気にかかりやすいです。
治療方法として薬浴を行いますが、ヒレ先にちょっと付いている場合はピンセットで取り除き、体表にフサフサと生えている場合は白濁している患部を傷付けないようにハサミで水カビを切除してから治療を行います。
もし全身にうっすらと水カビが生えている状態だったりハサミで切除するのが難しい場合は、そのまま治療用水槽に隔離して投薬、治療をしましょう。
使う薬品はマラカイトグリーン、メチレンブルー、アグテン、グリーンF系を使います。
治療中は5〜7日に一度、半分の量の水換えをしてから再び投薬します。これを水カビがなくなり、患部の白濁がなくなるまで続けます。
⑤エロモナス症
感染力、致死率、治療難易度のどれをとってもアウトな病気です。
症状によって呼び名が変わる病気ですが、マスタードファントムなどのプレコの場合は症状が分かりにくいため発見が遅れてしまう事があります。
エロモナス症にかかると体表やヒレに充血が見られたり若干白濁するため、これらの症状が見られたら病気を疑うようにしましょう。
また、眼球が飛び出した状態は「ポップアイ」という病気なので、すぐに隔離して治療を開始しなければなりません。
発生のキッカケは水の腐敗による水質の悪化や、免疫力が低下してしまった事、病気の魚を導入してしまった事などが挙げられます。
治療方法として薬浴を行い、使う薬品は観パラD、パラザンD、エルバージュ、グリーンFゴールドです。
治療用水槽に隔離したら、様子を見ながら少しずつ投薬して治療を開始します。
水換えは3〜5日に一度、半分の量換えてから新たに投薬します。
エロモナス症は発生するとしつこいため、長期の治療を覚悟しなければなりません。
5,マスタードファントムプレコの繁殖について
プレコの世界は奥深く、愛好家の中には複数匹飼育する事で繁殖に成功してらっしゃる方もいます。
中でも「キングロイヤルペコルティア」や「インペリアル・ゼブラプレコ」「クイーンアラベスクタイガープレコ」などは有名です。
しかし、マスタードファントムは古くから存在が知られ、飼育されてきたにも関わらず繁殖データがほとんどないという謎に満ちた生態をしています。
①ブラックウォーター
コーヒービーンテトラなどの繁殖にも使われる事があるアイテムです。マジックリーフ(アンブレラリーフ)やヤシャブシの実、ピートモスなどを煮出して作る事もできますが、濃縮されたブラックウォーターが市販されているのでそちらを使うのもオススメです。
②マジックリーフ(アンブレラリーフ)
水に浸す事で成分が滲み出し、ブラックウォーターを作る事ができるだけでなく、ふやけた葉はそのまま餌になるため常食としても使う事ができます。
③プレコ土管、産卵筒
プレコの繁殖は隠れ家で行われる事が多く、その中に産み出された卵をオス親が守り、孵化してある程度成長するまでお世話します。
④60cm以上の水槽
小型プレコを繁殖させる場合は複数飼育するだけでなく、広い水槽も必要となります。
⑤外部式フィルター
プレコ愛好家の多くはプレコの複数飼育や繁殖を狙う場合は広い水槽だけでなく、濾過力が強い外部式フィルターを使っています。
⭐繁殖を狙うなら複数匹飼育しよう!
マスタードファントムはショップで常に見られる種類ではありませんが、繁殖を狙うのであればペア形成も考慮して3匹以上は飼育したいところです。
⭐雌雄判別は難しい!
マツブッシープレコのように成熟したオスに大量の皮弁が生えるのであれば判別も簡単なのですが、マスタードファントムの場合はそうもいきません。
入荷する数が少ないため、比較も難しいのです。
一般的に小型プレコの仲間はオスの方がメスより大きく頭の横幅も広くなっています。また、顔の横にあるヒゲが長く丈夫に発達するとされています。
他にも見分ける方法として、メスと比較するとオスは全身のトゲが発達しており、特に尾筒周辺と胸ビレのトゲはかなりハッキリしています。
⭐レイアウトは簡潔に!
カメレオンの飼育に通じる部分があるのですが、プレコの繁殖を狙う場合はある程度観察しやすいレイアウトにするのが一般的です。
まとめ
今回は黒地に明るい水玉模様が美しいマスタードファントムプレコについて皆様にご紹介させていただきました。
小型プレコの仲間の中では珍しい種類になり、その落ち着きある体色は多くのアクアリストに愛されています。
そんな彼らは飼育環境に気を付けてあげれば初心者にも飼育する事ができ、慣れればライト点灯時でも隠れ家から出てきて姿を見せてくれるようになります。
マスタードファントムの「ファントム」には「怪人やお化け」の意味がありますが、本来のファントムは姿を見た人に幸せを運ぶ霊と言われています。
このオシャレに着飾った小さなファントムを是非ご自宅の水槽に迎え入れてみてはいかがでしょうか。
画像出典元:charm様