「ツチフキって飼えるの?」と聞かれたら、私は迷わず「飼えます!しかも、すごく面白い魚ですよ!」とお答えします。吻(くちびるの前)がぷっくりと突き出した独特の顔立ち、砂の中に潜り込む不思議な行動、そして春になるとオスが砂に穴を掘って産卵する繁殖行動…。ツチフキは、知れば知るほど魅力が詰まった日本産淡水魚なんです。
ツチフキ(土吹)は、コイ科ヒガイ亜科に属する日本産淡水魚で、体長8〜12cmほどの小型魚です。全国の河川や水田用水路に広く生息し、底砂をモフモフと吸い込んで有機物や微生物を食べるユニークな採食スタイルが特徴です。飼育難易度は低め〜中程度で、適切な環境を整えれば初心者でも十分楽しめます。
この記事では、ツチフキの基本情報から、水槽の立ち上げ方、水質管理、餌の与え方、混泳相性、繁殖方法、病気対策まで、15,000字以上でとことん詳しく解説します。ツチフキ飼育のすべてをここで学んでいただけると嬉しいです。
この記事でわかること
- ツチフキの学名・分類・分布・体の特徴など基本情報
- 飼育に必要な水槽サイズ・フィルター・底砂の選び方
- 適切な水温・pH・水換え頻度などの水質管理
- おすすめの餌と与え方・頻度
- ドジョウ・スナヤツメ・他の日淡魚との混泳相性
- 春の繁殖行動・産卵・稚魚の育て方
- 白点病・尾ぐされ病など病気の予防と対処法
- 初心者がやりがちな失敗と長期飼育のコツ
- 採集方法(タモ網・水田用水路)
- よくある質問10問への回答
ツチフキの基本情報

分類・学名・英名
ツチフキは、コイ目コイ科ヒガイ亜科(Gobioninae)に分類される淡水魚です。学名はAbbottina rivularis(アボッティナ・リブラリス)で、1842年にBasilewski によって記載されました。属名のAbbottinaは魚類学者Charles Conrad Abbottにちなんでいます。英名は「Chinese false gudgeon」とも呼ばれますが、日本では流通名の「ツチフキ」が一般的です。
同じ属にはムギツクやカマツカに近縁な仲間もいますが、ツチフキはその独特の吻の形と砂底への依存度の高さで区別されます。
分布・生息地
ツチフキは日本全国に広く分布しており、北海道を除く本州・四国・九州の河川に生息します。特に水田用水路、小河川、池沼の砂泥底を好み、水深が浅く流れのゆるやかな場所でよく見られます。
分布域は日本だけでなく、中国大陸・朝鮮半島・台湾にも広がる東アジア固有種です。国内では生息域が広く、水辺のある農村地帯ならどこでも採集できるポピュラーな魚です。
体の特徴・大きさ
成魚の体長は8〜12cm程度で、中には14cmに達する個体もいます。体型は円筒形で少し側扁しており、背中はやや盛り上がっています。最大の特徴は「吻(ふん)」が前方に突き出していること。これは砂底の有機物や微生物を吸い込んで食べるための特殊化した口器です。
体色は黄褐色〜灰褐色で、体側に7〜10個の黒褐色の斑点が一列に並びます。ヒレは無色〜淡黄色で透明感があります。繁殖期(4〜6月)のオスは婚姻色が発現し、吻部周辺や体側に追星(白い小突起)が多数現れ、体色が少し鮮やかになります。
性格・行動パターン
ツチフキは温和な性格で、他の魚を攻撃することはほとんどありません。基本的に底層を好み、砂底をモフモフと口で吸い込んでは、砂をエラから排出しながら餌を選別するという独特の採食行動を見せます。この「砂モフ」行動は観察していると本当に面白く、水槽の砂底に鼻先を突っ込んでせっせと掘り続けます。
活動は比較的昼行性ですが、光が強すぎると流木や石の陰に隠れます。泳ぎはそれほど活発でなく、底面でじっとしていることが多い底生魚です。複数匹で飼育すると、同じ場所で塊になって休んでいる姿も見られます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Abbottina rivularis |
| 科・亜科 | コイ科 ヒガイ亜科 |
| 分布 | 日本(北海道除く)・中国・朝鮮半島・台湾 |
| 体長 | 8〜12cm(最大約14cm) |
| 寿命 | 3〜5年 |
| 性格 | 温和・底生・砂モフ行動あり |
| 食性 | 雑食(底の有機物・藻類・小型無脊椎動物) |
| 繁殖期 | 4〜6月(春) |
| 飼育難易度 | 低〜中(初心者でも可) |
ツチフキの飼育に必要なもの

水槽サイズの選び方
ツチフキは体長8〜12cmの小型魚ですが、底面を活発に動き回るため、底面積が広い水槽が適しています。
1〜3匹の少数飼育なら45cm水槽(約35L)でも可能ですが、5匹以上の複数飼育や混泳を考えるなら60cm水槽(約60L)が最低ラインです。底面積が広いほど砂モフ行動を十分に観察でき、魚のストレスも少なくなります。
水深はそれほど必要なく、底面が重要なので、高さより横幅・奥行きを重視して水槽を選びましょう。60cm規格水槽(60×30×36cm)はツチフキ飼育のベストな選択肢のひとつです。
フィルターの選び方
ツチフキは砂を常にかき混ぜる習性があるため、フィルター選びは重要です。
- 投げ込み式フィルター(水作エイトなど): 最もおすすめ。底面の巻き上がり砂に強く、メンテナンスも簡単。小型水槽に最適
- 外掛け式フィルター: 中型水槽に適しているが、砂が入らないよう吸水口にスポンジカバーを付けること
- スポンジフィルター: 砂のリスクが低く、繁殖時の稚魚保護にも使いやすい
- 外部式フィルター: 水量の多い60cm以上の水槽に。吸水口に保護スポンジを必ず装着
底面フィルターは砂が詰まるリスクがあるため非推奨です。砂モフ行動をするツチフキには、細かい砂が底面フィルターに入ってポンプが詰まるトラブルが発生しやすいです。
フィルター選びのポイント: 吸水口に必ずスポンジプレフィルターを装着してください。ツチフキが砂を巻き上げることで、フィルターの吸水口に砂が吸い込まれてポンプ故障の原因になります。水作エイトのような投げ込み式は砂の混入リスクが最も低くおすすめです。
底砂の選び方
ツチフキ飼育で最も重要なのが底砂の選択です。砂に潜る・砂をモフる行動をするツチフキには、粒の細かい砂が必須です。
おすすめ底砂:
- 田砂(GEX田砂): 粒径0.2〜0.5mm程度の細砂。ツチフキが砂に潜りやすく最もおすすめ
- 川砂: 自然砂に近い質感。田砂と同様に細かいものを選ぶ
- ボトムサンド(GEX): 比重が重く舞い上がりにくい
NGな底砂:
- 大磯砂(粒が大きすぎてモフれない・潜れない)
- 砂利全般(同上)
- ソイル(柔らかすぎて崩れる・水質を変えやすい)
厚さの目安は3〜5cm。薄すぎると潜れず、厚すぎると嫌気域ができて水質悪化の原因になります。
水草・レイアウト
ツチフキは砂底を好み、水草の根をかき回す可能性があります。根が細かく浅い水草は抜けてしまうことも。レイアウトには以下の水草・素材が向いています。
- アナカリス: 丈夫で根を張らない。浮かせるか重石付きで使用
- マツモ: 根なし浮草。砂への影響ゼロ
- ウィローモス付き流木・石: 底砂に根を張らないため安心
- 水草ポット使用: ポットに入れた水草は根ごとかき回されにくい
流木や石を複数配置すると、ツチフキが隠れ家として利用し、自然な行動が観察できます。砂が流れ出ないよう、石の配置で底砂をある程度仕切るのもコツです。
照明・ヒーター
ツチフキは日本産の温帯魚なので、基本的にヒーターは不要です。ただし冬場に室温が5℃以下になるような環境では、最低限のヒーターで10〜15℃を維持すると安心です。
照明は必須ではありませんが、水草育成・観察のために1日8〜10時間程度の点灯が理想です。強い光よりも、やや暗めの自然光に近い照明を好みます。
| 必要機材 | 推奨 | 備考 |
|---|---|---|
| 水槽 | 60cm規格(推奨)または45cm | 底面積優先で選ぶ |
| フィルター | 水作エイトコアM(投げ込み式) | 吸水口スポンジ必須 |
| 底砂 | 田砂または川砂(細粒) | 厚さ3〜5cm |
| 照明 | LEDライト(中程度) | 1日8〜10時間 |
| ヒーター | 基本不要(冬季は補助的に) | 10〜15℃維持 |
| 温度計 | あると安心 | 水温チェック用 |
| エアポンプ | 推奨 | 夏の低酸素対策 |
| カルキ抜き | 必須 | 水換え時に使用 |
水質・水温の管理

適正水温
ツチフキは日本産の温帯魚で、適正水温は10〜28℃、最適水温は15〜24℃です。25℃以上の高水温には弱い傾向があり、夏場は水温上昇に注意が必要です。
冬場は水温が下がり、5〜10℃の環境では活動が低下して食欲も落ちますが、これは自然なことで問題ありません。本来は冬に越冬する魚なので、適度な低水温期を経験させることで繁殖を促すことができます。
夏の水温対策:
- 水槽用ファン(冷却ファン)の設置
- フタを外してエアレーション強化
- 直射日光が当たらない場所に水槽を設置
- 28℃を超える場合は水槽クーラーの使用も検討
pH・硬度
ツチフキはpH6.5〜7.5の中性付近を好みます。田砂や川砂を使うと水質はほぼ中性に保たれるので、底砂の選択自体がpH管理の助けになります。
硬度(GH)は5〜15dH°程度の中硬水が適しています。日本の水道水はほぼこの範囲に収まるため、特別な調整は不要なことがほとんどです。
水換え頻度・量
水換えは週1回、全水量の1/3程度が基本です。砂モフ行動でデトリタス(有機物のカス)が底面に溜まりやすいので、水換え時にプロホース(底砂クリーナー)で底砂を軽く掃除するとより清潔に保てます。
ただし、ツチフキは水換えのショックに比較的敏感なので、水換えの際は以下の点に注意してください。
- 新水は必ずカルキ抜きをする
- 水温差は2℃以内に収める
- 一度に半分以上換えない(急激な水質変化は禁物)
- 換水後しばらくは魚の様子を観察する
| 水質パラメータ | 適正範囲 | 最適値 |
|---|---|---|
| 水温 | 10〜28℃ | 15〜24℃ |
| pH | 6.5〜7.5 | 6.8〜7.2 |
| 硬度(GH) | 5〜15dH° | 8〜12dH° |
| アンモニア | 0mg/L | 0mg/L |
| 亜硝酸 | 0mg/L | 0mg/L |
| 硝酸塩 | 50mg/L以下 | 20mg/L以下 |
| 水換え頻度 | 週1回1/3 | 週1回1/3 |
ツチフキの餌の与え方

ツチフキが食べるものと好みの餌
ツチフキは雑食性で、自然界では砂底に積もったデトリタス(腐植有機物)、付着藻類、小型の水生無脊椎動物(ユスリカ幼虫・ミミズ・エビの幼生など)を食べています。
水槽での餌付けは比較的容易ですが、沈下性の底生魚向け人工飼料が最も食いつきが良いです。水面に浮くフレーク状の餌は基本的に食べません(水面まで浮上しない)。沈降性の顆粒または小型ペレットを選びましょう。
おすすめの餌:
- 川魚のエサ(キョーリン): 日本産淡水魚向けの沈下性顆粒。栄養バランスが良く食いつきも良好
- コリドラス用タブレット: 底に沈んで溶けるため、砂モフ行動と連携して食べやすい
- 冷凍赤虫: 嗜好性が非常に高い。週1〜2回のおやつとして最適
- 乾燥赤虫: 保存が効く代替品。食いつきは冷凍に劣るが手軽に使える
- 生きたイトミミズ: 最高嗜好性。砂の中に潜り込むため採食シーンが面白い
餌の量と頻度
餌の与え方の基本は「1日1〜2回、2〜3分で食べ切れる量」です。食べ残しは水質悪化の原因になるため、食べきれなかった分は必ず取り除いてください。
底生魚なので、餌を水槽の底に着底させてから様子を見るようにしましょう。表層を泳ぐ魚に先に食べられてしまう場合は、混泳魚の視線を上に向けてから底に餌を沈める「二段投入」テクニックが有効です。
- 朝:基本的な人工飼料(沈下性顆粒)を少量
- 夕方:人工飼料または週2回は冷凍赤虫に変える
- 水換え翌日:餌を半量に抑えて魚のストレスを軽減
生き餌・冷凍餌について
ツチフキは生き餌・冷凍餌への反応が非常に良いです。
冷凍赤虫(冷凍アカムシ)は市販のキューブタイプが使いやすく、冷凍庫で保存できます。与える際は少量をカップに入れ、水槽の水を加えて解凍してから投与します。解凍した赤虫を水槽に直接入れると、砂面に落ちたものをツチフキが一生懸命拾い食いする様子が観察できます。
生きたイトミミズは最高の嗜好性を誇りますが、病原菌持ち込みのリスクもゼロではありません。水槽に入れる前に流水で洗って与えると安心です。
ツチフキの混泳について

混泳OKな魚種
ツチフキは温和な性格で、基本的に他の魚を攻撃しません。ただし底層を占有する傾向があるため、同じく底層に生息する魚との混泳では底面の占有権をめぐる軽い競合が起きることがあります。
混泳におすすめの魚種:
- オイカワ・カワムツ・アブラハヤ: 中〜上層を泳ぐため棲み分けが自然にできる。日淡水槽の定番混泳相手
- タモロコ・モツゴ: 温和で同じ日淡魚。水質の好みも近い
- ドジョウ類(マドジョウ・シマドジョウ): 相性良好。どちらも底層だが攻撃性がなくうまく住み分ける
- スナヤツメ: 砂に潜る行動が共通。平和に共存できることが多い
- ヤリタナゴ・アブラボテなどタナゴ類: 中層を泳ぐため問題なし
- ミナミヌマエビ・ヤマトヌマエビ: 成体は食べられないが、エビの稚エビは捕食される可能性あり
混泳NGな魚種
以下の魚種との混泳は避けた方が無難です。
- オヤニラミ・ドンコ: 縄張り意識が強く、ツチフキを攻撃する可能性がある
- ナマズ・ギギ: 夜間にツチフキを捕食する恐れ
- 大型コイ・フナ(15cm以上): ツチフキが食われる危険
- カムルチー・ライギョ: 完全に捕食されてしまう
- アカザ: 毒棘がありツチフキが刺さる事故が起きる可能性あり
混泳のコツ
混泳を成功させるポイントは「底面を広く取る」「隠れ家を複数用意する」「餌の競合を避ける」の3点です。
特に餌やりの際、中層を泳ぐ魚が先に食べてしまうとツチフキが食えない状況になりがちです。沈下性の餌を選ぶか、沈みにくいフレーク状の餌で中層魚を引きつけてから底に沈下性餌を入れる「二段投入」を心がけましょう。
| 魚種 | 相性 | コメント |
|---|---|---|
| オイカワ・カワムツ | ◎ | 棲み分けが自然にできる |
| タモロコ・モツゴ | ◎ | 温和で問題なし |
| ドジョウ・シマドジョウ | ○ | 底層で競合するが共存可能 |
| スナヤツメ | ○ | 砂底を共有できる |
| タナゴ類 | ◎ | 中層を泳ぐため問題なし |
| ミナミヌマエビ(成体) | △ | 稚エビは捕食リスクあり |
| オヤニラミ・ドンコ | × | 攻撃される可能性あり |
| ナマズ・ギギ | × | 捕食リスクあり |
| 大型コイ・フナ | × | 食われる危険あり |
ツチフキの繁殖方法

雌雄の見分け方
ツチフキのオスとメスを見分けるポイントを解説します。繁殖期(4〜6月)は特に見分けやすくなります。
オスの特徴:
- 繁殖期に吻(口の周り)と体側に「追星(おいぼし)」と呼ばれる白い小突起が多数現れる
- 体色がやや鮮やかになる
- メスより体が細身になる傾向
- 繁殖行動として砂底に浅い穴(巣穴)を掘る
メスの特徴:
- 繁殖期に腹部が丸みを帯びて膨らむ(卵を持つ)
- 追星が出ない(またはわずか)
- オスより体がやや大きくなる個体が多い
繁殖期以外は判別が難しいですが、体型を見ると体高(体の高さ)がオスよりメスの方がやや高い傾向にあります。
繁殖条件・環境の整え方
ツチフキの繁殖には以下の条件が必要です。
- 水温: 冬に低水温(10℃前後)を経験させ、春に16〜22℃まで上昇させる
- 底砂: オスが巣穴を掘れる細かい砂が必須(厚さ5cm以上推奨)
- 飼育密度: オス1匹に対しメス2〜3匹が理想的
- 隠れ家: 産卵後のメスが身を隠せる流木・石が必要
- 水質: 清潔な水を保つ(繁殖直前に水換えして新鮮な水を入れる)
産卵〜孵化の流れ
ツチフキの産卵は以下の流れで進みます。
- 巣穴作り(オス): 水温が16℃を超えてくると、オスが砂底に直径3〜5cmの浅い窪みを作り始める。これが巣穴
- 求愛行動: オスがメスに寄り添い、体を震わせながら巣穴に誘い込む
- 産卵: メスが巣穴に入り、産卵する。一度に30〜100粒程度の卵を産む
- 受精・護卵: オスが精子をかけて受精。その後オスが巣穴の周りを守る護卵行動を見せる
- 孵化: 水温20℃前後で約3〜5日で孵化する
- 稚魚の遊泳開始: 孵化後2〜3日で卵黄を吸収し、自由に泳ぎ始める
親魚は孵化後の稚魚を食べてしまうことがあるため、孵化を確認したら稚魚を別の水槽(サテライトまたは小型水槽)に移すことを推奨します。
稚魚の育て方
孵化した稚魚は非常に小さく(2〜3mm程度)、最初の1〜2日は卵黄のみで栄養を補います。遊泳を始めたら、インフゾリア(ゾウリムシ)またはブラインシュリンプのノープリウス幼生を与えましょう。
稚魚飼育のポイント:
- 水流は最小限に(強い水流は稚魚を疲弊させる)
- 水換えは少量ずつ慎重に(水質変化に弱い)
- 1〜1.5cmになったら人工飼料(細粒タイプ)に切り替え可能
- 3cmを超えれば親水槽への合流を検討できる
かかりやすい病気と対処法

白点病
白点病は淡水魚に最もよく見られる病気で、ツチフキも例外ではありません。原因は繊毛虫の一種(Ichthyophthirius multifiliis)で、体表に白い小点が多数現れます。
症状: 体表・ヒレに白い粒状の点が出る。かゆがって底砂や石に体を擦り付ける。食欲低下。
対処法:
- 水温を27〜28℃に上げる(寄生虫の生活環を乱す)
- 市販の白点病治療薬(メチレンブルー・マラカイトグリーン系)を規定量投与
- 薬浴は1週間継続し、点が消えてからさらに3日間は続ける
- 底砂のクリーニングで環境内の寄生虫卵を除去
注意: ツチフキは薬品に敏感な場合があります。治療薬は規定量の半量から始め、症状を見ながら増量することをおすすめします。
尾ぐされ病・口ぐされ病
カラムナリス菌(Flavobacterium columnare)による細菌感染症です。水温が高い夏場や、水質が悪化した環境で発生しやすいです。
症状: 尾ビレや口周辺が白く溶けたようになる。進行するとヒレが欠損する。
対処法:
- 即座に水換えして水質改善
- グリーンFゴールド顆粒またはエルバージュエース(フラン剤系)を投薬
- 塩浴(0.5%食塩水)で補助的に対処する場合も
松かさ病・腹水病
エロモナス菌による細菌感染で、ウロコが松かさ状に立つ、腹部が膨らむといった症状が出ます。内部の感染のため治療が難しく、早期発見・早期治療が重要です。
対処法: 観パラD(オキソリン酸系)による薬浴。感染個体は早めに隔離して他の魚への感染を防ぐ。
その他の病気一覧
| 病気名 | 症状 | 対処法 |
|---|---|---|
| 白点病 | 体表に白い小点 | 高水温+白点病治療薬 |
| 尾ぐされ病 | ヒレが白く溶ける | グリーンFゴールド |
| 口ぐされ病 | 口周辺が白く崩れる | グリーンFゴールド |
| 松かさ病 | ウロコが逆立つ | 観パラD・早期隔離 |
| 腹水病 | 腹部の異常な膨張 | 観パラD・塩浴 |
| 水カビ病 | 体表に綿状の白いもの | メチレンブルー薬浴 |
| エラ病 | エラが腫れる・呼吸困難 | グリーンFゴールド |
飼育のよくある失敗と対策

初心者がやりがちなミス
ツチフキ飼育でよくある失敗とその対策をまとめました。これらを事前に把握しておくだけで、飼育の成功率がぐっと上がります。
失敗1: 底砂を粒の大きい砂利にしてしまう
対策: 必ず細粒の田砂または川砂を使用。砂モフ行動ができないと、ツチフキはストレスを感じ拒食になることがあります。
失敗2: 水流が強すぎる
対策: ツチフキは流れの遅い環境を好む底生魚。外部フィルターを使う場合は吐出口を壁面に向けて水流を弱める工夫を。投げ込み式フィルターなら水流が自然に適度になります。
失敗3: 水温を28℃以上に上げてしまう
対策: 夏の室温上昇に伴う水温上昇は命に関わります。冷却ファンの設置や、エアコン管理が困難な場合は水槽クーラーを検討してください。
失敗4: 餌を浮くタイプにしてしまう
対策: ツチフキは水面に浮く餌を食べません。必ず沈下性の底生魚向けフードを使いましょう。
失敗5: 水換え時に温度差を作ってしまう
対策: 新水は必ずバケツに入れて水温を合わせてから投入。温度差2℃以内が目安。冬は特に低温の水道水をそのまま入れないよう注意。
失敗6: 採集してすぐ水槽に入れてしまう
対策: 採集した野生魚は寄生虫・病原菌を持ち込む可能性があります。採集後は1〜2週間のトリートメント(塩0.5%水浴または薬浴)を行ってから本水槽に投入しましょう。
長期飼育のコツ
ツチフキは適切な環境が整えば3〜5年の寿命を全うすることができます。長期飼育のポイントをご紹介します。
- 水換えを欠かさない: 週1回の定期水換えが最も大切な管理項目
- 夏の水温管理を徹底する: 毎年夏の高水温が寿命を縮める最大の原因
- 砂底を定期的にクリーニングする: 砂内部の嫌気化防止に月1回プロホースで底砂を掃除
- 複数匹で飼育する: 単独より複数の方が社会的なストレスが少なく長生きする傾向あり
- 繁殖期の観察を大切にする: 産卵行動は最高の観察機会。水槽環境が整っている証拠でもある
- 追加採集は慎重に: 既存の魚に病気を持ち込まないよう、追加個体は必ずトリートメントを経てから合流させる
ツチフキの購入・入手方法
ショップ・通販での購入
ツチフキは一般的なホームセンターのペットコーナーにはほとんど流通していませんが、日淡・川魚専門のアクアショップやオンライン通販では購入できます。
おすすめの入手先:
- チャーム(charm): 国内最大級のオンラインアクアショップ。「ツチフキ」で検索すると入荷時に購入できる
- 地域の川魚専門店: 地域によって日淡専門店が存在する。店員さんに相談してみよう
- 水族館のショップ: 日本産淡水魚を扱う水族館(霞ヶ浦の歴史館・魚の国のしあわせ等)のショップに並ぶことも
- ヤフオク・メルカリ: 採集者・飼育者が出品していることがある。写真で個体の状態をしっかり確認する
購入時の注意点として、体表に白い点がないか・ヒレが欠けていないか・痩せていないかを必ず確認しましょう。購入後は必ず水合わせ(15〜30分程度)を行ってから水槽に投入してください。
水合わせの手順
購入してきたツチフキを水槽に入れる際は、急激な水温・水質の変化によるショックを防ぐために水合わせが必要です。
- 購入袋ごと水槽に浮かべて15〜20分置き、水温を合わせる
- 袋を開け、袋の水を少量捨て、代わりに水槽の水を少量加える
- 10分おきに同じ操作を3〜4回繰り返す
- 袋の水が水槽の水に十分馴染んだら、魚だけを網で掬って水槽に投入する
- 袋の水は水槽に入れない(店の水が水槽に入ると菌・寄生虫持ち込みリスクがある)
ツチフキの採集方法
採集に向いている場所
ツチフキは日本全国の農村地帯に広く分布しており、以下のような場所で採集できます。
- 水田用水路: 最も採集しやすいポイント。砂底・泥底でゆっくりした流れの用水路を探す
- 小河川の下流域: 水深10〜40cmの浅瀬で、砂泥底になっている場所
- ため池・農業用池の浅瀬: 砂底になっているエリアに生息することがある
砂底の上にじっとしている小さな魚がいたら、それがツチフキの可能性が高いです。動きが少なく、底にへばりついていることが多いので、目視で確認してからタモを近づけると採集成功率が上がります。
採集の方法とコツ
タモ網(ガサガサ)による採集:
- 細かい目のタモ網(2mm目以下)を使用
- 砂底の近くにそっとタモを沈める
- 魚の後方から追い込むように前に進む
- ツチフキは砂に潜って逃げることがあるので、すばやくすくい上げる
採集後の注意点:
- 採集容器(バケツ)にはエアポンプで酸素を供給する
- 輸送時の水温変化を防ぐ(夏はクーラーボックスで)
- 水槽への導入前は1〜2週間のトリートメントを行う
- 採集した魚を他の河川に放流するのは生態系保護の観点から絶対にNG
よくある質問(FAQ)

Q, ツチフキはペットショップで買えますか?
A, 大型アクアショップや日淡専門のネット通販で購入できます。ただし一般的なホームセンターのペットコーナーには置いていないことがほとんどです。「チャーム」などのオンラインショップで「ツチフキ」と検索すると見つかります。採集できる地域なら自分でガサガサするのも一つの方法です。
Q, 何匹から飼育できますか?飼育の最低ラインは?
A, 最小で1匹から飼育できます。ただし、社会性がある魚なので3〜5匹のグループで飼育するとより自然な行動が観察でき、ストレスも少なくなります。1匹だと臆病になり、隠れてばかりになることもあります。
Q, ドジョウと混泳できますか?
A, 相性は良好です。マドジョウ・シマドジョウ・ホトケドジョウなどとは問題なく混泳できます。どちらも底生で温和な性格のため、底面のスペースさえ十分確保できれば平和に共存します。60cm水槽でツチフキ3〜5匹+ドジョウ2〜3匹が無理のない組み合わせです。
Q, スナヤツメとの混泳は可能ですか?
A, 可能です。スナヤツメも砂に潜る底生魚で、ツチフキと生息環境が重なります。どちらも温和で攻撃性がなく、棲み分けながら共存できます。ただし、スナヤツメは体が細長いため逃走力が高く、水槽のフタはしっかり管理してください。
Q, 砂に潜ったまま出てきません。死んでいますか?
A, ご安心ください。ツチフキは底砂の中に体を半分埋めてじっとしていることがよくあります。特に採集・購入直後や環境の変化があったときは、砂の中に隠れて落ち着こうとします。餌の時間に出てきて食べているようなら問題ありません。全く出てこない状態が2〜3日続くようなら、水質を確認してみてください。
Q, 春になると砂を掘り続けています。何をしているのですか?
A, 繁殖行動のひとつ、「巣穴作り」です!水温が16℃前後を超えてオスに追星(体表の白い突起)が出てきたら、産卵の準備が整っているサインです。オスが砂底に小さなくぼみを作り、そこにメスを誘い込んで産卵します。この行動が始まったら、産卵・孵化の観察チャンスですよ。
Q, 餌を食べません。どうすればいいですか?
A, いくつかの原因が考えられます。①餌が浮いている(沈下性の餌を与えてください)、②水温が低すぎる(10℃以下では食欲が落ちます)、③環境変化によるストレス(導入直後は数日〜1週間ほど食べないことがあります)、④混泳魚に餌を横取りされている(底に沈む餌の量を増やす、または混泳魚の数を減らす)。冷凍赤虫は嗜好性が高いので、まず試してみてください。
Q, 飼育水が濁ります。砂が舞い上がっているのが原因でしょうか?
A, その可能性が高いです。ツチフキの砂モフ行動で底砂の細かい粒子が舞い上がることがあります。対策として①田砂・川砂は導入前に十分洗う、②フィルターにウールマットを追加する、③しばらくすると砂が落ち着いて濁りが収まることがほとんど、という3点を試してみてください。
Q, 体に白い点が出ています。白点病ですか?
A, 繁殖期のオスであれば、追星(おいぼし)の可能性があります。追星は白い小突起で、吻周辺・体側・頭部に多数現れ、病気ではなく正常な繁殖サインです。一方、白点病は全身にランダムに散らばる小点で、ヒレにも現れます。かゆがって体を石に擦り付ける行動も白点病のサインです。繁殖期(春)のオスで吻周辺に集中していれば追星と考えて問題ありません。
Q, ツチフキは水草水槽に向いていますか?
A, 相性はあまり良くありません。砂モフ行動で水草の根を掘り起こしてしまうことがあります。水草を楽しむ場合は、根を張らない浮草(マツモ・アナカリス)、または流木・石に活着させたウィローモスを使うといいでしょう。根を張るタイプの水草をポットに入れて使うのも一つの方法です。
Q, 屋外のビオトープでも飼育できますか?
A, できます!ただし、底砂を細かい砂にすること、夏の高水温対策(半日陰にする・水量を多くする)が重要です。屋外では自然のプランクトンや微生物が増えるため、餌の頻度を減らせるメリットもあります。冬は越冬させられますが、凍結には注意が必要です。
ビオトープでのツチフキ飼育
トロ舟・ビオトープでの飼育の魅力
ツチフキは日本の温帯気候に適応した在来種なので、屋外のビオトープ飼育との相性は抜群です。自然光のもとで育てると体色がより鮮やかになり、自然のプランクトンや微生物が繁殖するため、餌の補給頻度を減らせるメリットもあります。
ビオトープで飼育する際のポイントを解説します。
容器の選び方:
- トロ舟60L以上: 最もおすすめ。底面積が広く、ツチフキの砂モフ行動を十分に楽しめる
- 睡蓮鉢(直径50cm以上): 景観性が高い。砂を薄く敷いて水草と組み合わせると美しい
- 大型プランター: 手軽に始められる。ただし容量が小さい場合は水温変化が大きくなるので注意
ビオトープのセットアップ:
- 容器の底に田砂または川砂を3〜4cm敷く
- 赤玉土を一部混ぜると微生物が定着しやすく、水が安定しやすい
- マツモ・アナカリスなど根を張らない浮遊性水草を入れる(日陰と隠れ家になる)
- 石や流木を数か所配置して隠れ家を作る
- カルキを抜いた水を入れ、1〜2週間放置してから魚を導入する
水草との相性と組み合わせ方
ビオトープでのツチフキ飼育では、水草の選択が重要です。砂モフ行動で根ごと引き抜かれることがあるため、根を張らない水草を中心に使いましょう。
- マツモ(金魚藻): 根がなく水中を漂う。光合成で酸素を供給し、水質浄化にも貢献。夏でも旺盛に育つ
- アナカリス(オオカナダモ): 丈夫で繁殖力が強い。鉛の重石で底に固定するかそのまま浮かせて使う
- ホテイアオイ(ホテイ草): 浮草なのでツチフキに根を掘られない。日陰と産卵床を兼ねる
- ウィローモス付き石・流木: 苔が砂に根を張らないので相性良好
ビオトープでは夏の水温上昇が最大の課題です。半日陰になる場所に設置するか、よしずや遮光ネットで直射日光を遮ることで、30℃以上への上昇を防ぎましょう。
水槽レイアウトの具体例
ナチュラル系日淡レイアウトの作り方
ツチフキの生態に合わせた、観賞性も高いレイアウトをご紹介します。私が実際に試行錯誤して辿り着いた「砂底を活かしたナチュラル系日淡レイアウト」です。
底砂の敷き方:
田砂を全体に3〜4cm敷きますが、奥側を少し高く(4〜5cm)、前面を薄め(2〜3cm)にすると奥行き感が出ます。均一に敷くより前後に傾斜を付けた方が自然な川底のように見えて美しいです。ただし、あまり傾斜をつけすぎると砂が前に流れて平らになってしまうので、石で仕切りを作るとキープしやすいです。
石・流木の配置:
- 大きめの平石(溶岩石・青龍石など)を左右どちらかに寄せて配置(黄金比を意識)
- 流木は水平または斜めに置いて、ツチフキが下に潜れるスペースを作る
- 小石を数か所散らして、川底のような自然感を演出
- 石の際に砂がたまりやすいので、定期的に均してあげると清潔に保てる
水草の配置:
ウィローモスは流木や石に活着させて中景〜後景に配置。浮草のマツモを数束水面に浮かせると、光を遮りつつ水質浄化もできます。前景は砂を見せるために水草を置かないのがポイントです。ツチフキが砂の上でモフモフしている様子が前面から観察できます。
照明の当て方:
LED照明は1日8〜10時間点灯が目安。タイマーで管理すると水草の光合成リズムが整い、コケも出にくくなります。ツチフキは強い光を嫌うので、照明を全面に当てるより片側に流木の陰を作ると、魚が好む場所と明るい鑑賞スペースを両立できます。
季節ごとの管理カレンダー
春(3〜5月)の管理
ツチフキ飼育で最も動きの多い季節が春です。水温が15℃を超えると活動が活発になり、食欲も旺盛になります。
- 繁殖期突入: 水温16〜22℃になると産卵が始まる。オスの追星・巣穴作りを観察しよう
- 餌の増量: 冬の絶食明けなので、最初は少量から始めて徐々に増やす
- 底砂のクリーニング強化: 冬の間に溜まったデトリタスをプロホースで念入りに除去
- 水換えペースを戻す: 冬は2週間に1回でも良いが、春から週1回に戻す
夏(6〜8月)の管理
夏は最も注意が必要な季節です。高水温とそれに伴う低酸素・細菌増殖リスクが高まります。
- 水温監視を毎日行う: 28℃を超えそうな日は対策を早めに取る
- 冷却ファン稼働: 水面に風を当てて気化熱で冷やす。2〜3℃の冷却効果がある
- エアレーション強化: 高水温で酸素溶解度が下がるため、エアポンプを追加
- 餌の残りに注意: 夏は食べ残しが腐敗しやすい。与え過ぎないよう意識する
- 直射日光を遮る: カーテンやすだれで水槽への直射日光を防ぐ
秋(9〜11月)の管理
水温が下がり始め、ツチフキの活動が落ち着いてきます。越冬に向けて体力をつける大切な時期です。
- 夏ダメージのチェック: 夏を乗り越えた個体の体重・体色を確認。痩せている場合は栄養価の高い冷凍赤虫を多めに与える
- 水温が下がったら徐々に餌を減らす: 20℃を下回ってきたら1日1回に。15℃以下では消化が遅くなるので給餌を控えめに
- 水換えペースを落とす: 水温が低下したら水換えを2週間に1回に減らしてもOK
冬(12〜2月)の管理
室内飼育なら冬でもそれほど難しくありませんが、水温が10℃を下回ると越冬モードに入ります。
- 給餌頻度を落とす: 水温10℃以下では週1〜2回程度。5℃以下では断食させてもOK
- フィルターの清掃を軽くする: バクテリアを過度に洗い流さないよう、フィルターは軽くすすぐ程度に
- 急激な温度変化に注意: 暖房で室温が急上昇すると水温も急変する。特に部屋を閉め切った際の温度変化に注意
- 春の繁殖に向けた低水温体験: 一定期間低水温(10〜15℃)を経験させると、春の繁殖行動が活発になる
まとめ
ツチフキは、吻が前に突き出た独特の顔立ちと、砂をモフモフと吸い込む愛らしい採食行動が魅力の日本産淡水魚です。飼育は比較的簡単で、底砂を細かい田砂にすること・夏の水温管理を徹底すること、この2点を押さえれば初心者でも長期飼育を楽しめます。
ツチフキ飼育の要点まとめ
- 底砂は必ず細粒の田砂または川砂(厚さ3〜5cm)
- 水温は15〜24℃が最適。夏の28℃超えに注意
- 餌は沈下性の底生魚フードと冷凍赤虫を組み合わせる
- フィルターは吸水口にスポンジを付ける
- 混泳はオイカワ・ドジョウ・タナゴ類が相性良好
- 春の繁殖行動(巣穴作り・産卵)は絶対に見逃せない!
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