はじめに
画像引用元:チャーム charm PayPayモール店
皆様は「熱帯魚の○○グラミー」と聞いて、どのような種類や特徴を思い起こすでしょうか?
ピグミーグラミーやサンセットグラミー、ハニードワーフグラミー等、小さくて愛らしく丈夫で飼いやすいイメージがあると思います。
今回ご紹介するチョコレートグラミーもその例外ではなく、とても愛らしく人慣れする魚です。
「チョコグラ」の愛称がある程です。
ただ、一つ違う点は「飼育難易度が高い」という事です。
他のグラミーと違いエロモナス病等にかかりやすいのです。
それはこの魚の特徴に由来するものなのですが、それさえ理解してあげられれば、他のグラミーとは一味違った仕草や愛らしさを楽しむ事が出来ます。
また本記事では
- 繁殖方法
- 稚魚の育て方
- 餌となるブラインシュリンプの孵化方法
- 水質の重要性
などを記事に盛り込みました!
是非、泳ぐ一口チョコレートの繁殖に挑戦していただけたらと思います。
チョコレートグラミーの特徴について
チョコレートグラミーは最大5cm程の小さな魚です。
その体色は入荷直後等は焦げ茶色に白いラインが入った地味な印象を与えますが、
環境に慣れてくると、焦げ茶色の体色は暖かみのあるレンガ色、白いラインも黄色がかってとてもキレイになります。
また、光の反射によっては鱗がグリーンの輝きを放ちます。
口は少し尖ったおちょぼ口で餌をついばむようにして食べます。
生息地は東南アジアのマレーシア、スマトラ島の湿地帯や河川であるとされています。
ラビリンス器官という特殊な器官があるため、酸素の少ない水中でも、空気から酸素を得る事が出来ます。
生息地の水の秘密
チョコレートグラミー(以下チョコグラ)の生息環境は少々特殊な環境で、
流れの緩やかな水に沈んだ枝や落ち葉からタンニン等の有機酸が大量に溶け出しており、水の色を黒褐色に変えています。
この水を「ブラックウォーター」と言います。アマゾン川のネグロ川も同じです。
この水は豊富な有機酸によって弱酸性となっていますがその数値はなんとph5.5!かなり酸性よりの水質となっています。
これ程となると微生物の活動はかなり鈍くなり、有機物の分解も進みません。
さらにはタンニン等の成分には強い抗菌、抗ウイルス作用があるため病原菌すらいません。
そんな特殊な環境にいたチョコグラは普通の弱酸性の水で飼育するとたちまち病気になりやすくなってしまうのです。
この特徴を踏まえて、ブラックウォーターを用いたチョコグラの飼育方法を紹介していきたいと思います。
チョコグラの飼育方法
画像引用元:チャーム charm PayPayモール店
購入、導入時のポイント
アクアショップで実物の生体を見て購入する場合、ヒレをたたんで元気がなさそうな個体や体表に薄い膜や白、黄色っぽい点や粉の様な物がついている個体は避けます。
鱗が開いて膨らんでいたり、充血している個体も選んではいけません。
元気良く泳ぎ、指の動きにすぐ反応する様な個体を選びましょう。
水槽に入れる時は一度バケツに出し、エアチューブを使ってゆっくりと水合わせをしていきます。
私は一気に水が入らないようにエアチューブを軽く結んでいました。
水槽、フィルター、水温
チョコグラは2〜4匹程なら45cm水槽で飼う事が出来ます。水温は24〜28℃が適温です。
使うフィルターは投げ込み式やパワーフィルターを使う事が出来ます。
せっかくのブラックウォーターの恩恵を吸着してしまう麦飯石や炭等の吸着系濾過材は使わず、
ウールマットをフィルターのサイズに合わせてカットした物を使うと良いでしょう。
強い水流を嫌うため、エアチューブに空気量調節弁をつけて調節したり、
商品によっては調節が出来る物もあるので、そちらもオススメです。
エサ
熱帯魚用の人工フードも食べますが、冷凍アカムシやブラインシュリンプのベビーを好んで食べます。
水質悪化を避けるため、1〜2分で食べきる量を与えます。
水換え、掃除について
1、2週間に1/3〜1/2の量の水を交換します。
水道水は必ずカルキ抜きをしてから使います。
チョコグラは水質の変化に敏感なため、ゆっくりと時間をかけて水を入れていきます。
ガラス面の汚れはスポンジで落とします。
ウールマットはしっかり洗ってゴミを落とします。あまりにも汚れている場合は新しい物に交換します。
底砂、水草について
底砂は使うとすれば、吸着系ではないソイルを1cm程の厚さで敷きます。
ブラックウォーターを利用する飼育方法では水草は殆ど育たないため、今回は割愛させていただきます。
流木やマジックリーフを入れる事で野生的なレイアウトが完成します。
ブラックウォーターの使い方
製品化されている物を使う方法とマジックリーフやピートモスを水に浸けたり煮出したりして自分で作る方法があります。
どちらも少し入れるだけで水質を酸性に傾けるため、日を置いて少しずつ添加していきます。
水の色がうっすらと茶色くなる位で留めてphテスターを使ってphを把握しましょう。
ブラックウォーターの素となるマジックリーフ等を水槽にそのまま入れる方法もありますが、
規定の枚数より少なめに入れてゆっくりと調節していった方がチョコグラへの負担が少なくなります。
チョコレートグラミーの繁殖について
どんな繁殖の方法なの?
チョコレートグラミー等のグラミー達は、ベタという魚と同じ「アナバス」の仲間に含まれています。
アナバスの仲間の繁殖方法は2種類あり、
特殊な器官を使って割れにくい丈夫な泡を水面に作り、「泡巣」を作るタイプと、
オスが口の中で卵を保護する「マウスブルーディング(口内保育)」を行うタイプです。
多くのグラミー達は泡巣を作り子育てをするのに対し、チョコレートグラミーはマウスブルーディングを行います。
ちなみにマウスブルーディングは口の中で卵を保護、世話をする事で天敵に卵が狙われなくなり、生存率を上げる事ができるという狙いがあります。
他にもアロワナや一部のワイルドベタ等がこの繁殖方法をとる事が知られています。
繁殖成功のために!
餌でしっかり体力を付けよう
繁殖はオスメスどちらも体力を使います。
特にオスはマウスブルーディングを始めると約2週間は餌を食べなくなるため、栄養たっぷりの餌を与えます。
冷凍アカムシやブラインシュリンプは特に食い付きが良い餌です。
また人工飼料も食べるようなら与えていきます。
餌の与え過ぎで肥満にならないようにするため、1日に2〜3回、3分程で食べきれる量を与えます。
そもそもオスとメスの違いは?
チョコレートグラミーは雌雄判別が難しい部類に入ります。
特徴として
オス
明るいレンガ色の体色に白いラインが黄色っぽくなります。
また、卵を咥えるために口からお腹にかけてのボディーラインが緩やかなカーブを描いています。メスより若干小さめです。
メス
体色は暗い茶色で白っぽいライン。
その上にうっすらと緑色の輝きがあります。口からお腹にかけてのボディーラインは直線的です。
卵を産むからか、体が大きい個体が多いです。
が挙げられますが、やはりよく観察しないと気付きづらいため、複数飼育をすると良いでしょう。
しばらくすると互いに相性の良い雌雄がペアになります。
状態良く飼育し、少しの変化に気付きやすくするために
チョコレートグラミーはph5.5というかなり酸性よりの水質を好んでいる事は上記で紹介しました。
上記はブラックウォーターを用いた方法でしたが、
繁殖を視野に入れている方向けにはソイルを用いた方法をご紹介したいと思います。
その理由は、ブラックウォーターと違ってこの方法は「水が透明」なため、産卵行動やマウスブルーディングしたオスを観察しやすく対処がしやすいためです。
ソイルにも色々種類がありますが、プロジェクトソイルのプレミア5.2という商品を使うと簡単にph5.2〜5.5まで落とし、保つ事ができます。
酸性ではありますが、ブラックウォーターのようにタンニン等の殺菌成分が溶け込んでいるわけではないので、病気にならないように水の汚れには充分に注意が必要です。
ブラックウォーターでも繁殖は可能ですが、こではは「観察のしやすさ」に重きを置いてみました。
また、繁殖を促し、必要な成分やミネラルを補うためのウォーターコンディショナーも販売されているため、こちらも使用するのがオススメです。
隠れ家も大事!
チョコレートグラミーは基本的に臆病なため、人前で産卵をする事は殆どありません。
また、上下関係があり、力の弱い個体がつつかれてしまいます。
そんな彼らのために隠れ家を作ってあげましょう。この隠れ家は避難所であり産屋となります。
土管や人工のシェルター等も良い隠れ家になります。
ペアができると…
複数飼育からしばらくすると、オスはメスに対してフィンスプレッティングを行いアピールします。
ペアになると2匹で寄り添うように泳ぎ、餌を食べる時も隠れ家に行く時も一緒に行動するようになります。
また、オスはつがいのメスに近付こうとする他のオスを追い払う行動をとるようになります。
産卵は基本的に見えない所で…
やがてペアはお気に入りの隠れ家の中で産卵行動を開始します。
メスが産んだ卵にオスは放精をし、受精させるとすぐに口の中に含め保護します。
産卵後のメスは膨らんだお腹が大分スッキリしますが、オスはアゴが咥えた卵でふっくらとしており、新鮮な水を送るために口をモゴモゴと動かしたりしています。
この時、運が良いと口の隙間から白っぽい色をした卵を見る事ができます。
卵を咥えたら…
卵を咥えたオスを別水槽か、隔離ネットや隔離ケースを水槽内に設置してその中に移します。
オスを移動させる時は必要以上の不可をかけないようにしなければなりません。というのも、チョコレートグラミーは「臆病」です。
あまり追い回したりビックリさせてしまうと、オスは咥えていた卵を吐き出してしまう可能性があります。
時間をかけて、プラケースや目の細かい網で一気に捕獲し隔離します。
オス親隔離用のネットやケースは後々の事を考えて大きめのサイズを用意した方が無難です。
別水槽に隔離した場合
水槽は20cmくらいの大きさで管理する事ができます。
フィルターはスポンジフィルターを使い、かなり緩やかな水流にします。
底砂は元いた水槽に使っていた物と同じ物を敷きます。
水質の浄化の意味も込めてアマゾンフロッグピットという水草の仲間を浮かせたり、アヌビアスの小さい物を植えると良いでしょう。
隔離ネット、隔離ケースの場合
水槽内に取り付けるタイプの場合、ネットは飛び出して水槽内に隠れるのを防止するため、フロッグピット等の水草を浮かせると落ち着いてくれます。
隔離ケースの場合は、付属しているグッピーの稚魚と親魚を分けるための仕切りを外して使います。
フタがあってもなくても、落ち着かせるために小さな隠れ家や水草を少し入れてあげます。
外掛け式隔離ケースの場合も隔離ケースと同じようにするのですが、水槽に水が流れ出る箇所は一番目の細かい仕切りをつけ、エアレーションもかなり弱めにします。
仕切りとエアレーションのエアストーンは専用のグレードアップバージョンがあるため、そちらを購入して使うのもオススメです。
オスが卵を吐き出してしまったら…
隔離スペースで吐き出した場合は少し様子を見ます。
しばらくして落ち着いたオスが再び咥える事があるためです。
もし隔離スペース外で吐き出したり、しばらくしてもオスが咥えようとしない場合はスポイトで取り出し、小さなプラケース等に入れて人工孵卵をします。
極力水流を抑えたエアレーションを施して様子をみます。
孵化率は低いですが、上手くいけば徐々に細胞分裂をして成長していく様子を見る事ができます。
大体どのくらいで口から出てくるの?
産卵し、マウスブルーディングを始めてから約2週間、14〜18日程で稚魚が口から出て来ます。
ヨークサックは完全に吸収されているため、すぐに餌を求めて泳ぎます。
卵を保護していたオスも長い断食生活の末、かなり弱っています。
稚魚のいるスペースからすぐに元の水槽へと返し、餌を与えましょう。
ここからは、稚魚の餌となる「ブラインシュリンプ」の孵化方法をご紹介したいと思います。
稚魚の餌に最適! ブラインシュリンプの孵化方法
ブラインシュリンプを孵化させる方法が分かれば、大抵の稚魚を育てる事ができるようになります。
冷凍の物は動きがないため稚魚が餌と認識しない事があったり、底に溜まって腐敗し、水質を悪化させる事があります。
生きたブラインシュリンプだと動きもあり、死ぬまでは底に溜まる事は殆どないため良い餌となります。
まずは塩水を作る
ブラインシュリンプは塩湖が原産地と言われており、孵化のために塩分濃度が2〜3%の塩水を作ります。
けっこうな量のブラインシュリンプが必要なため、2Lペットボトルを使った方法をご紹介します。
水2Lに対し、塩50gで作る事ができます。
卵を入れてエアレーション
ブラインシュリンプの乾燥卵はショップで販売されています。
ティースプーン1〜2杯程を塩水の中に入れたらエアレーションをかけて丸1日置いておきます。
こうする事で翌日ぐらいには孵化を始めるはずです。
維持の仕方
ブラインシュリンプを生かすため、市販のメダカの稚魚用のパウダー餌を少量与えます。
一度孵化したら別の容器に移して管理するとお世話が楽になります。
稚魚に与える時は
ブラインシュリンプは光に集まる習性があるため、ライトで照らして集まったところをスポイトで吸い取って与えます。
ブラインシュリンプの孵化が成功したら稚魚に与えていきます。
1日に2〜3回、少量ずつ与えていきます。
ちなみに親魚も好んで食べるのでたまに与えてあげましょう。
詳しくはこちらの記事で解説しております。
チョコレートグラミーの稚魚について
稚魚の見た目は?
親魚と違い、ほっそりとした体型をしています。
パッと見は枯れ葉の破片に見えるため、自然下でも擬態能力は高いと思われます。
体長は5mm程で、黒褐色の体色に白い帯状の模様が体の中央、尾ビレの付け根、アゴ下にあり、頭部の先は黄色っぽい色をしています。
稚魚誕生初日〜
既にヨークサックを吸収し終わっているため、餌を求めて泳ぎ回ります。
咥えていた卵の数にもよりますが、40〜50匹前後が産まれて来ます。
親魚と離し、湧かしたブラインシュリンプを少しずつ与えましょう。
死んで沈んでしまったブラインシュリンプはスポイトで取り除きます。
また、稚魚は断食に弱く、餌を食べれないとすぐに死んでしまいます。
見辛いかも知れませんが、稚魚のお腹をよく観察して足りなさそうと感じたならすぐにブラインシュリンプを与えます。
隔離スペース内に泳ぐブラインシュリンプが多少確認できるくらいは入れても大丈夫です
餌をくれる人が留守の時に、お腹が減れば泳いでいるブラインシュリンプを食べてくれます。
外掛け式隔離ケースの場合は水槽に流れ込む水量を最小限にして与えます。
そうしないと、せっかくの餌が親水槽に流れ込み、稚魚が餌にありつけなくなってしまいます。
稚魚誕生7日目〜
まだこの段階では稚魚の成長にあまり差はありません。
ちゃんと餌をしっかり食べているか、よく観察しましょう。
中には死んでしまった稚魚もいるかも知れません。その場合はスポイト等を使って取り出します。
稚魚誕生15日目〜
しっかり餌を食べ、順調に育っていれば7〜8mm程の大きさに成長します。
水換えができますが、水槽内に隔離スペースを設置した場合はその水槽の水換えをすれば良いです。
ただし、隔離スペース内にフンや残り餌がある場合はスポイトで取り出します。
別水槽で育てている場合は、1/3程の量を少しずつゆっくりと換えていきます。
強い水流に弱いため、水を入れる時もゆっくりと入れていきます。
外掛け式の隔離ケースの場合も水槽内設置タイプと同じように水槽の水を換えれば良いのですが、茶ゴケ等が目立つ場合はスポンジをピンセットや割りばしで挟み、優しくゆっくり擦り落とした後にスポイトで汚れごと水を1/3程吸い出します。
水槽の水換えが終わり、外掛け式隔離ケースの機能を起動すれば、少しずつ水が満ちていき、最終的にはケース内の水全体が新しくなります。
稚魚誕生28日目〜
順調に育っていれば1cm程の大きさに成長します。ですが、まだほっそりとした体型のままです。
このあたりから少々小競り合いが目立つようになってきます。水草の切れ端等を入れて隠れ家を増やしてあげましょう。
水槽で隔離している場合も同じなので、水草の切れ端やアマゾンフロッグピット、小さな土管等の隠れ家を入れてあげます。
稚魚誕生40日目〜
少しずつ体高が出てきて親魚に似てきます。
大きさも1.5〜2cm程に成長します。小競り合いによって、力のある個体はより多くの餌を食べるため大きさに差が出てきます。
成長に伴い、白い帯状の模様は少しずつ幅が細くなって褐色の面積が広くなっていきます。
稚魚誕生55日目〜
大きさは2cm程ですが、見た目は大分チョコレートグラミーらしくなり、黒褐色の体色も少し明るくなってきます。
このくらいまで成長したら生きたブラインシュリンプではなく冷凍タイプの物にも興味を示し食べてくれるようになります。
また、生き残った匹数にもよりますが、隔離スペースが狭い場合は新しく稚魚水槽を立ち上げる必要があります。導入の際は慎重な水合わせを怠ってはいけません。
稚魚誕生70日目〜
大きさは2.5cm程まで成長します。
どこから見てもチョコレートグラミーですが、まだ小さいため体調には注意します。
体力はついているため、わりと活発に泳ぎます。
稚魚誕生85日目〜
大きさは3cm前後くらいまで成長します。
このくらいの大きさまで育ってくれれば、小さくとも体力があり、大分丈夫になっています。難関であるチョコレートグラミーの繁殖も成功したといって良いでしょう。
この頃から餌として、細かい人工飼料も少しずつ与えていけば人工飼料に慣れやすくなります。
チョコレートグラミーの繁殖のお次は、飼育に関するちょっとしたアイデアを紹介したいと思います。
飼育にまつわるちょっとしたアイデア
ブラインシュリンプが余った場合
ブラインシュリンプは孵化したての、まだ体内に卵黄の栄養が残っているものが一番栄養価が高いです。
栄養を使い切ったものは粉末タイプの餌を与えて栄養強化をしますが、余ってしまった場合はジップロック等に入れて冷凍保存ができます。
与える時に使う分だけ取り出し、飼育水で解凍して与えます。
稚魚の大きさに差が出過ぎて小競り合いがある場合
どうしても力の差や飼育環境によっては大きさの差が出てしまうのは仕方のない事です。
隔離ネットの場合は一度別の容器に移して大きさごとに分けるしかありません。
外掛け式の隔離ケースや水槽内設置タイプの隔離ケースはケース内を分けるための仕切り板も梱包されている物があり、それで一度仕切ってから大きさごとに分けます。
水ごと掬える小型の網やエビ用の超小型ネットがオススメです。
仕切り板が無い場合は、市販でも売っているので、ケースの奥行きに合わせてカットして使います。
親魚も稚魚も水合わせが面倒くさい…
正直言ってこれを怠ったら、チョコレートグラミーどころか他の熱帯魚でも相当丈夫じゃない限り飼育は勧めません。
ただし、手間を減らしたいだけなら話は別です。
カメレオン等の動く水しか反応しない生き物のための給水アイテム「ドリップシステム」を利用します。
まず、ドリップシステムを水合わせをしたい魚の入った容器より高い位置に設置します。
次にドリップシステムの容器の中に導入したい水槽の水を入れ、容器に繋がったチューブを軽く結んで魚の入っている容器に向けます。
商品によっては水量を調整するための器具が付いているのでそれを利用します。
手軽に慎重な水合わせができるのでオススメですが、様子くらいは見に行くべきでしょう。
最近は観賞魚用の物も商品化されつつあるので入手しやすいと思います。
稚魚の育成はかなり神経を使いますが、繁殖や育成が成功した時の喜びや感動は大きいものです。
育った魚にも、より愛着が湧く事間違いなしだと私は思っています。
ここからは稚魚がなりやすいある病気について紹介させていただきます。
かかりやすい病気
あからさまに泳ぎ方が変!「ベリースライダー」とは?
ベリースライダーの症状は正常に真っ直ぐ泳いだりする事ができず、頭を下にして這う、あるいは滑るような異常な泳ぎ方をする事です。
水質の変化や悪化が主な原因となっています。
神経疾患に近く、治療が出来ないためその稚魚は残念ながら諦めるしかありません。
しかし、この病気にかかった稚魚が出るという事は他の稚魚も危ないという事です。一度稚魚を別容器に移し、水槽の水換えしたり隔離スペースを掃除する必要があります。
セットし直したら時間をかけて様子を見ながら水合わせを隔離スペースに戻します。
水槽に隔離している場合は単純に水質の悪化等が考えられるため、様子を見ながらゆっくりと水換えをします。
ヒレが白くてボロボロのような…尾腐れ病
小競り合い等によってダメージを受けた尾ビレにカラムナリスという細菌が感染する事によって起こります。
感染した部位によって名称が変わり、「口腐れ病」「エラ腐れ病」等があります。
特徴は感染部位が白く溶けたようにボロボロになる事で、感染力や致死率が高いため、早めの対処が必要です。
治療にはグリーンF系の薬かエルバージュ系の薬による薬浴を行います。
稚魚の場合は体力も耐性も低いため規定量より少なめにして薬浴をします。
原因は水質の悪化や急変、過密飼育によるストレスが原因のため、普段から注意して管理をする事が最大の予防策です。
チョコレートグラミーに限った事ではありませんが、
飼育環境が悪いと体調を崩す理由を解説します。
水質や水温の急変で体調を崩す理由と水合わせの重要性について
常に体温を一定に保つ事ができる恒温動物である人間と違い、魚は周りの温度の影響を受ける変温動物です。
そのため、人にとって1〜2℃の温度変化は大した事でなくても魚にとってはかなりの負担になります。
極端な例ですが、源流のように冷たい川にいる魚を、急に15℃超えの水に移したら恐らく水温の差が大きすぎて死んでしまいます。
また、魚は水の影響をかなり受けます。
熱帯魚達は現地でも、そうそう水質の急変というものを経験していません。
そのため、水槽という限定された世界で急に水質が悪くなったりするとすぐに調子を崩してしまいます。
ちなみにこれを人間に例えますと、今まで普通に空気を吸っていたのに突然その空気が毒ガスになったら苦しいでしょう。
さっきまで快適な室温の部屋にいたのに、急に床が開いて凍える寒さの川に落とされたら人間でも温度差でショックを起こします。
雨に長時間打たれたら風邪をひく方もいるでしょう。
水質の急変や悪化は魚にとってそれ程のダメージがあるという事です。
だからこそ、水質の管理はとても大事ですし、水合わせも重要なのです。
これは余談でありますが、筆者の恩師はかつて24時間体制で2日もかけて水合わせをした魚の話をしてくれた事がありました。
とても大きなナマズなのに、たったコップ1杯の水が入っただけでショック症状を起こすため、1時間に数滴レベルでの水合わせを行い、目が離せなかったという想像を絶するものでした。
紹介している魚はここまで神経質な種類ではありませんが、彼らと楽しく健康的に暮らすために必要なのだと理解していただければ幸いです。
まとめ
ブラックウォーターを利用したチョコレートグラミーの飼育方法では彼らの生息地を模した方法のため、かなり野性的な姿を見る事が出来ます。
水が茶色っぽくはなりますが、病気対策も出来て人慣れする前のビビりな彼らにとっては落ち着く環境でもあります。
慣れてくると、人を見るたびに流木の陰から出て来て餌をねだったり指を追いかけたりと愛らしい行動を見せてくれます。
繁殖に成功させた方は、元々飼育難易度の高いチョコレートグラミーの繁殖ができるということなので大抵の魚の繁殖も可能だと思います。
※この繁殖方法は、チョコレートグラミーの仲間である、「スファエリクティス・バイランティ(メスの派手な赤い模様が特徴)」や「スファエリクティス・セラタネンシス(チョコグラよりさらに小型種)」にも応用が可能です。
また、水質に敏感な種類に対しても応用が利くと思います。
チョコレートグラミーは飼育、繁殖難易度は高くても、有り余る程の愛らしい仕草や姿をしています。
今回のこの記事が、彼らの繁殖や飼育の手助けとなり、体調を崩す原因についてもご理解いただけたのなら、私もとても嬉しく思います。
皆様の水槽で命が宿ったチョコレート達がいつまでも元気でありますように。