はじめに
5月6月に入ってくると暖かくなってきて、まさに「アウトドア日和」と言った日も増えてまいります。
そこで今回ご紹介させていただく危険生物が「ダツ」です。
ナイトダイビング中の方や漁師さんが襲われる事もあり、ニュースやバラエティー番組で取り上げられた事もある危険な魚です。
1,危険生物・ダツとは何者なのか?
ダツは「ダツ目ダツ科」に分類されている魚で、日本では沿岸等の浅い海の表層を泳いでおり、群れを成す事もあります。
種類によって大きさは変わりますが、
ダツは1m、ハマダツで1.2m、オキザヨリで1.3mものサイズが確認されています。
背中側は濃い青色をしており、腹側は白銀色をしています。水の抵抗を受けにくい細長い体をしており、その口は鋭く尖っています。しかも口の中には肉食魚らしく鋭い牙がいくつも並んでおり、獰猛さが垣間見えます。
初夏に繁殖期を迎え、産卵のために群れで藻場に現れて産卵を行います。
2,ダツが危険生物と言われる理由とは?
ダツが危険生物とされる理由はいくつかあり、
その中でもダツの「習性」と「突進力」が恐れられています。
ダツはイワシやアジ等の小魚を主に捕食しており、その際獲物である小魚の鱗による光の反射に敏感に反応して猛スピードで突撃します。
その速度は時速70kmを超えると言われており、車と殆ど変わらない速度です。
しかも体は細長く、両端の先が鋭く尖った口を持っています。
ダツの被害に遭いやすいのはナイトダイビングや夜間の漁の最中です。視界を確保するためのライトの光やアクセサリーの光の反射に反応して突撃し、その威力たるや人体を容易く貫通してしまいます。この高い殺傷能力から「殺人魚」「危険生物」として恐れられているのです。
と言う声も聞こえて来そうですが、
ダツの突進以外の身体能力と性質、牙の威力も侮れません。
ダツは身体能力もかなり優れた魚であり、
釣りの際には海面から勢い良く飛び出して空中で回転する事もあります。
また、性質は獰猛さと臆病さを兼ね備えているため、夜間に海面をライトでイタズラに照らして遊んでいると光にパニック状態になって海面から飛び出して来る事すらあります。
さらに、口に生えている鋭い牙は切れ味抜群であり、ダツが釣れた際に無用心に針を外そうとすると噛まれてケガをしてしまったり、牙がかすっただけでも皮膚を切られて流血沙汰になる事もあります。
ダツは海釣りでは「外道」としても有名であり、仮に釣り上げたりバラシたとしてもラインやルアーをボロボロにする事も少なくないため非常に嫌われています。
3,ダツによる被害について
ダツは危険生物ではありますが、普段は人間を襲うような魚ではありません。
前述した性質により、人間が身に付けているライトや時計、ブレスレット等のアクセサリーによる光の反射に反応して突撃してくるのです。
日本でも九州や沖縄県の漁師にとってはかなり忌むべき魚のようで、網や釣具にかかれば暴れてボロボロにしたり、漁具から外すのにも気を遣う上、人体に向かって突撃し、喉や胸を貫いて死傷者を出すため、サメと同等に恐れられています。
また、ダツは海外でも死傷者を出しており、有名な話ではアメリカのハワイ州で起きた死亡事故があります。
その悲劇は、ある父子が海で夜釣りを楽しんでいた時に起こりました。子どもがヘッドライトの明かりをつけると突然海中からダツが飛び出してきたそうです。ダツはそのまま子どもの頭部を無惨にも貫き、その子どもは亡くなってしまいました。
他にもネックレスを着けたまま海水浴をしていた女性の頚椎にダツが刺さったという事故もあります。その際はかなり長時間の手術によって何とかダツを摘出できたものの、女性は一時下半身麻痺となってしまい、麻痺の回復にはリハビリと手術以上の時間がかかってしまったそうです。
4,ダツによる被害を避けるための対処方法は?
ダツは普段人を襲う事はありません。
ダツが人に突進してしまうのは、身に付けているライトや時計、ネックレス等のアクセサリーによる光の反射に反応してしまっているからです。
ダツによる被害を避けるためにはダツが反応しないように、アクセサリーを外してから海に入るようにしましょう。また、水中ゴーグル等の光の反射に反応する事もあるため、ダイビング中に水面に何やら細長い体でしなやかに泳ぐ魚が見えたらダイビングを中止して陸に戻った方が無難です。
夜釣りの場合は海を照らさず釣りの拠点だけ明るくしておくと大分突撃の被害を減らす事ができます。海に対してライトを当ててしまうと驚いたダツが海面から飛び出して来る可能性が高まります。
参考までにですが、ダツの突進力は水中ゴーグルやライトすら破壊する程の威力を持っていますので、「刺激しないように」心掛けるのが1番の対策となります。
5,もしダツに突撃されてしまったら…!
「海中の凶槍」と言っても過言ではないダツに突撃されてしまい、しかも体に刺さってしまった場合に「絶対にやってはいけない事」はダツを無理矢理体から引き抜いてしまう事です。
無理矢理体から引き抜こうとすると、ダツは激しく暴れまわり、傷口が悪化してしまったり出血量が増える他、刺された側も地獄のような苦しみを味わう事になってしまいます。
助けたい気持ちは分かりますが、ダツの突撃を受けた人を助けたいのなら、まずは救急車に連絡し、次に刺さっているダツを締めなければなりません。ダツの頭を落としたり、神経締めをします。
ダツを締めたら体から引き抜かず、救急車の到着を待ちましょう。
何故締めたダツも引き抜いてはいけないかと言うと、体に刺さったダツを引き抜くと一気に傷口が開いてしまい、出血量が増えてしまうからです。
6,もしダツを釣り上げてしまったら…
ダツは主に「外道」として知られており、狙っていないのにヒットしてくる厄介な魚です。
釣り上げたら一旦そのまま陸に上げ、網の柄の部分や足、木の棒等でダツの体を押さえ付けます。
この際にナイフがあればダツが身動きを取れない隙に頚椎や喉、エラを切って絞めてしまいます。
生かして海にリリースしたい場合はダツの体を押さえたままラインを上に引っ張り、口を開けたらペンチを突っ込んで針を取ります。より安全に針を外す場合は丈夫な革手袋を装着して行うとケガをする可能性を減らせます。
針を外したら網の柄や木の棒等で距離を取りながらつついて海に落とすか、針を外してからダツの首と体を強く持ってそのまま海へリリースします。
ダツは力が強いので、押さえ付けられる自信がない方は前者の方法でリリースした方が無難かと思います。
ダツの危険以外の意外な一面とは!?
①実は食べられる魚♪
外道として嫌われ者のダツですが、実は食用魚だったりします。
「特別美味しい」という訳ではありませんが、その身はキレイな白身で脂は少なくサッパリとした味わいなのだそうです。
②あの魚もダツの仲間!?
ダツが含まれる「ダツ目」にはたくさんの魚達が分類されています。
あご出汁で有名なトビウオや秋の味覚でお馴染みのサンマ、淡水魚として古くから愛されるメダカもダツ目に分類されています。また、寿司ネタとして有名なサヨリもダツ目の魚です。
この魚達はダツと同じく表層を泳いでおり、目も大きめです。
③ダツの仲間の「ある魚」にまつわる言葉
先ほどダツの仲間には「サヨリ」も含まれるとご紹介しましたが、この魚のある特徴から「サヨリのような○○」という言葉があります。
サヨリは見た目も美しく、大きく潤んだ瞳、美しい白身の美味しい魚です。
そのため、主に女性に対して「サヨリのような女」と言う場合があります。
しかし、言われた側は前述のサヨリの特徴を全て鵜呑みにして
と思ってはいけません。
この言葉、実は超遠回しの「嫌味」です。
サヨリは確かに素晴らしい魚ですが、腹を割くと中は何と「真っ黒」な魚なのです。
使い方や捉え方を間違う人も多い言葉ではありますが、良い意味ではないので注意しましょう。
④小型種はペットとして輸入されることも!
さすがにダツそのものをペットにするという話は聞いた事ありませんが、海外の淡水〜汽水域に生息している小型種はペットとして輸入される事があります。
その際は「ハイドロナシスガー」や「ニードルガー」という流通名で販売されており、大きくなっても30cm前後しかありません。
まとめ
今回は海中の凶槍・ダツについてご紹介させていただきました。
ダツは狩りの時は獰猛、普段は臆病という強烈な二面性のある魚です。
そして、光の反射を見ると「獲物が来た」と勘違いして猛スピードで突撃してしまう性質があり、その性質と人を簡単に貫く突進力によって危険生物となっています。
アウトドアが注目されている今、釣りやダイビングを楽しむ方も増えてきています。しかし、そこに生息している危険生物への対策方法が分かっていないと、せっかくの楽しい時間も阿鼻叫喚の最悪な思い出に変わってしまいます。
死傷者を出してしまっているダツもわざと人を襲っている訳ではないため、無対策は彼らにとっても悲しい結果となってしまいます。
アウトドアを楽しむために、そして自分や大切な人を守るためにも知識や対策、対処方法を身に付ける事は大事な事だと思いますので危険生物についても執筆させていただいております。