はじめに
皆様は「コイの仲間」と聞くと熱帯魚に限らず日淡でも様々な種類が思い浮かぶのではないでしょうか?
美しい体色とゆったりとした泳ぎの「錦鯉」や川釣りで釣り人を驚かせる大きさになる事もある「ウグイ」、熱帯魚であれば「ゼブラダニオ」やブログでも紹介している「ミクロラスボラ・エリスロミクロン」も姿形や色彩に違いがあれども小型ながら立派なコイの仲間です。
ハスはそのまま聞くと、よく池で花を咲かせる「ハス(睡蓮)」を連想されると思いますが、スピード感溢れる泳ぎと成魚の体色の美しさ、そしてコイの仲間にしては珍しい特徴から根強いファンがいる魚でもあります。
1,「ハス」ってどんな魚なの?
①どんな見た目をしている?
ハスはオイカワやカワムツに似た姿をしています。流線型のボディの持ち主で、各ヒレの形や付いている位置もソックリです。
尻ビレは成魚になると大きく三角形に張り出し、かなり目立つようになります。
体色は背中側が緑がかった青〜青灰色をしていますが、腹側は銀白です。
☆頭部はかなり特徴的!
前述の解説から「オイカワとかカワムツと変わらないじゃないか!」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、ハスの見た目の特徴として頭部こそ最大の違いとなります。
ハスの頭部はオイカワやカワムツより大きく、下顎が上顎より少し突出した「シャクレ顎」になっています。
しかもこの口は上向きに大きく裂けており、形も横から見ると「へ」の字に見えるほどです。
また、眼は頭部に対して少し小さめですが、やや背面寄りに位置しています。
☆幼魚は涼しげな雰囲気
一方でハスの幼魚はというと、成魚の持つ特徴がほとんど出ないためよく似た他種の幼魚と間違われる事も少なくありません。
体色も特徴がなく、透明感のある灰色っぽい体色に腹側が白という涼しげな体色をしています。
②大きさは?
大きさの違いはよく似た2種との違いの1つにもなっています。
成魚でオイカワが約15cm、カワムツが約20cmなのに対してハスの成魚は30cmを超え、最大級の個体となると40cmに達する事もあります。
③何を食べているの?
ずっと勿体ぶっていましたが、ハスの身体の特徴は全てこのためと言っても過言ではありません。
この魚を「型破り」と称する理由。
それはコイの仲間でも珍しい「完全魚食性」という食性を持つからです。
コイの仲間は基本的には雑食性であり、積極的に生きた魚を捕食する事はありませんが、ハスは積極的に生きた魚を捕食する肉食ガチ勢となります。
野生下ではハゼやアユだけでなく、オイカワやカワムツ、モツゴ等も捕食し、幼魚の頃からミジンコやボウフラ、生まれて間もない稚魚等を積極的に狙います。
☆ハスの捕食は超アグレッシブ!
日本淡水魚界の中でもハスは上位の捕食者とされており、外来種である「ブルーギル」等と勢力を争う程の実力を持っています。
その狩りの方法はナマズのように獲物を待ち伏せるのではなく、自慢の遊泳力を最大限に活かした「追い込み」です。
ハスは水の抵抗を受けにくい流線型の体型をしており、力も強いため泳ぐスピードが非常に速いです。
また、持久力にも優れているため一度でも狩猟モードに突入すればマックススピードで獲物を追い回し、追い付かれた者から順に強力な顎に捕らえられていくのです。
④生息地は?
ハスは食用としても活用されるため日本各地で放流されており、関東地方や中国地方、九州地方の流れが緩やかな河川にも生息しています。
河川であれば中〜下流に生息し、湖や沼でも生息していますが底が砂地になっている場所を好んでいます。
しかし、元々の生息地は淀川水系の河川や琵琶湖とされており、もう1つの生息地とされていた「三方湖」では外来種の影響の他にも護岸工事等によって産卵場所や生息できる環境を失い絶滅したと考えられています。
福井県ではレッドリストに記載されており、「県域絶滅危惧Ⅰ類」として三方湖産のハスが記載されているので絶滅したかも知れないハスを見つけた方は恐らくヒーローです。
⑤性格は?
ハスは獲物を捕食する時は勇猛果敢なのですが、本来はとても神経質で臆病な性格をしています。
光や音にも敏感なので、カメラのフラッシュやライト点灯時にパニックになって水槽内を暴走し、ガラス面やフタにぶつかって傷付く事もある程です。
⑥ハスの別名は?
ハスはオイカワそっくりなので地域名にもその特徴が表れています。
オイカワは「ヤマベ」と呼ばれる事がありますが、ハスは「オニヤマベ」と呼ばれます。
また、淀川水系の地域ではオイカワの事を「ハス」と呼び、ハスの事は「ケタバス」と呼ぶそうです。
日本は古来から強くて大きいものに「オニ」を付けて呼ぶ事がありますが、「ケタ」はちょっと不明です。「桁が違う」的な意味なのかと邪推してしまいます。
⑦寿命は?
ハスは飼育できる日淡としては寿命が長い種類で、飼育下では7年生きたという記録もあります。
金魚や錦鯉程ではありませんが、意外と長い付き合いができる魚なのです。
⑧ハスの飼育の注意すべきポイントとは?
ハスの特徴をご紹介させていただきましたが、ハスは環境さえ整えてあげれば初心者でも飼育できます。しかし飼育難易度としては少々「コツ」がいる種類です。
- 水質悪化、高水温、酸欠にかなり弱いので必ず対策する事。
- 常に泳ぎ回るため、90cm以上の水槽(できれば120cmクラス)を用意する事。
- ガラス面やレイアウトアイテムへの激突対策として水草を植える事。
- 活き餌を与える時は活き餌に餌を与えて栄養を付けてから与える事。
この4つが大きなポイントとなります。
2,ハスの飼育方法について
①導入、水合わせについて
ハスは常に見られる魚ではありませんが、川魚に強いショップであれば購入する事ができます。
また、ハスの生息分布地域であればタモ等で「ガサガサ」をして捕獲したり、川釣りで釣り上げる事もできます。
ハスはとても神経質な魚なので、水合わせも時間をかけて慎重に行う必要があります。
袋に梱包している場合は水槽に30分程浮かべて水温を合わせてから袋を開け、中の水を1/5〜1/4捨て、水槽の水を捨てた水と同量入れて30〜40分程様子を見ます。
特に異常は見られない場合は同じ行程を4〜3回繰り返し、最後の水合わせの時にも異常が見られなければハスを水槽に放ちます。
バケツ等にハスがいる場合はエアチューブを使います。片方の端に小石等の重りを付けて水槽に沈め、もう片方の端から軽く吸って水を呼び、軽く結んで水の流入量を制限してバケツの方に入れます。
エアチューブを結んで水の量を調節するのが苦手な方は「空気量調節弁」等をエアチューブに取り付けると調節が楽になるのでオススメです。
また、ハスを落ち着かせるためにもバケツには軽く板等を乗せて暗くしておきます。
バケツにある程度水槽の水が入ったらエアチューブを引き上げ、エアレーションをしながら30〜40分程様子を見ます。異常がなければハスを水槽に放ちます。
この時幼魚であれば小さめのプラスチックケースで掬っても良いのですが、20cm近い個体の場合はネットで素早く捕獲して水槽に入れるか、バケツの水をある程度水槽に戻して軽くしてからハスを水槽に放ちます。
新しい環境にハスは怯えているため、初日はライトを点けず、餌も与えないようにします。
②水槽、水質、水温について
ハスは運動量が多く、よく泳ぎ回るため狭い水槽だと泳げないストレスから体調を崩してしまいます。
また、導入したのが5〜8cm程の幼魚だとしても成魚になれば30cm超えの個体になる事も加味して最低でも90cm水槽で飼育する事をオススメします。
これには「水量が多い程水質の悪化が遅い=飼育管理がしやすい」という理由があります。スペースは取りますが、結果的に飼育しやすくなるのです。
続いて水質ですが、ハスを飼育する場合は中性を目安にします。Phでいえば「7〜7.5」くらいで若干アルカリ性に寄ってる感じです。
「6.8」くらいの酸性寄りでも飼育はできますが、中性はハスが好む水質で飼育水としても作りやすい利点があります。
☆有害物質が気になる?ならばコレを設置しよう!
先程アンモニア等の有害成分について触れましたが、実際これらの成分の濃度が高いと飼育している魚達が病気にかかりやすくなったり、ショック状態になってしまう事もあります。
ハスに限らず水質に敏感な種類や水を汚しやすい生き物を飼育している方にとって悩ましい問題ですが、オススメのアイテムがあります。
それは株式会社サンミューズ様が製造販売を手掛ける「水をキレイにする石(ゼオライトの石)」です。
この石はマカロン型や玉型がありますが、水質を安定させる以外にも水槽内に発生したアンモニアや嫌な匂いを吸着して水をキレイにしてくれる効果があります。
飼育環境によって変わる部分はありますが、余程の環境でもない限りは効果は約半年も続くという優れ物なのです。
水温についてですが、ブリードされた個体であれば25〜26℃くらいでも飼育できるようですが、ハスは高水温に弱い面があるため個人的には18〜24℃くらいがオススメです。
ヒーターは水槽の大きさや故障した時に故障部品だけ買い換えるだけで済むヒーターとサーモスタッドの組み合わせが無難です。
ハスは泳ぎ回るタイプの魚で1ヶ所にジッとしている事はほとんど無いためヒーターによる火傷の危険性は低いですが、パニックになった時にヒーターにぶつかる可能性もあるので気になる場合はヒーターカバーも併用するとより安全な飼育環境になります。
③フィルターについて
ハスの飼育にオススメのフィルターは濾過力の高い上部式フィルター、外部式フィルターです。
ハスは水質の悪化に弱い一方で人工飼料に慣れない限りは活き餌、冷凍餌を給餌する事になるため水質悪化は避けられません。
このフィルター以外だと濾過力が足りず、水質悪化のスピードに着いていけない場合もあります。
上部式フィルター、外部式フィルターをメインに投げ込み式フィルター、パワーフィルターを補助+酸素供給用として使用するのもオススメです。
④底砂について
ハスの飼育に使う底砂は極端に水質を傾ける作用がある物やハスの力に負けて崩れてしまいやすいソイル系でなければ飼育に使う事ができます。
入手しやすく扱いやすい「大磯砂」や「川砂」もオススメです。粒が細かい砂系を使う場合は補助で投げ込み式フィルターを使っていると目詰まりの原因になるので、底砂を粒が細かい系にする場合は高めの位置に設置できるパワーフィルターを補助フィルターにすると目詰まりも無く安心です。
⑤レイアウト、水草について
ハスはとても臆病な面があり、パニックに陥りやすい魚です。
飼育のポイントでもありますが、流木や石はレイアウトに取り入れると雰囲気が出るので多様したくなるかも知れません。
しかし、パニックになったハスが硬い石や流木に激突してしまうと最悪の事態に発展してしまう事もあるため、ガラス面の近くに水草を植えて「クッション代わり」にし、少しでも激突のダメージを緩和する対策を取る必要があります。
水槽が広ければその分激突の対策になりますが、水草クッションによってケガやダメージを緩和してあげましょう。
育てやすさや入手のしやすさから「アナカリス」や「マツモ」「カボンバ」はオススメの水草です。
20℃以上で飼育するのであれば茎が太くて上部な「ラージリーフ・ハイグロフィラ」や「ウォーター・ウィステリア」も良い水草です。
水草にはクッション代わりの他にも水質浄化やハスの視界を遮る事でパニックになる頻度を多少抑える効果が期待できます。
飼育する側はちょっと観察がしにくいですが、慣れれば逆に自然で野性的なハスの様子を見る事ができます。
水草をふんだんに使うとライトが消えている夜間等に二酸化炭素濃度が上がって酸欠を起こしやすくなりますが、補助として投げ込み式フィルター、パワーフィルターを使っている場合はあまり気にする必要はありません。
使っていない場合は夜間はエアレーションをして酸素を供給してあげましょう。
☆エアレーションにオススメのアイテム!
酸素供給のために大切なエアレーション。そのために必要なアイテムは大まかに「エアポンプ」「エアチューブ」「エアストーン」の3つに分けられます。
この中で筆者が皆様にオススメしたいのはエアストーンの中でも気泡が細かく音が小さい「マイクロバブルタイプ」です。
一般的なエアストーンは気泡が大きく、その分弾ける時のパチパチ音が大きいため気になる方もいらっしゃると思います。
また、気泡が大きいのでエアストーンが動き、ベアタンクで使おうものならガタガタ音も追加される始末。そして今回は音や光等に敏感な種類です。
少しでも安心安全、静かに酸素を供給したい方は是非マイクロバブルタイプのエアストーンの使用をご検討ください。
気泡が細かいため水中に酸素を溶け込ませやすい他にも弾ける音が小さく静か、エアストーンをそのまま置いて使ってもボコボコという音も少なくストーンが移動する事もなければその時に発する音も無いため神経質な種類への酸素供給にピッタリです。
⑥ライト、フタについて
ハスは野生下では獲物を追い込む時以外にも川を遡ったり驚いた時にもジャンプするため、かなり飛び出しやすい種類です。
飼育する時は必ずフタは必須ですが、可能であればガラス製の硬いフタではなく、柔軟性があるプラスチック製の板や薄いアクリル板等をフタにして激突時のダメージが少しでも軽くなるようにしてあげるとケガの頻度の抑制に繋がります。
ライトに関してはハスが慣れてくれば点灯時のパニックの頻度は下がってくるのであまり気にする必要はありません。
⑦給餌について
飼育のポイントでもある給餌ですが、ハスはなかなか人工飼料に餌付かないため基本的には活き餌か冷凍飼料がメインとなります。
幼魚の時は冷凍アカムシやメダカ、成魚はドジョウやハゼ、オイカワや冷凍ワカサギ等を与えます。
冷凍餌を与える時はスポイトやピンセットを使います。特に冷凍ワカサギを与える場合は先が曲がったピンセットで解凍したワカサギを挟んで細かく動かすと食い付きが良いです。
給餌の間隔の目安は1〜2日に1回、数分で食べきれる量を与えます。幼魚の場合は1日2回与えます。
ただし、ハスは代謝が良いのでお腹の膨らみ具合も観察して餌の量を調節し、痩せないように注意します。
活き餌を与える場合は、ハスが少しでも多く栄養を摂取できるように活き餌となる魚にしっかりと餌を食べさせます。
☆お前も騙されるんかい!人工飼料の意外な餌付け方
カッコ良くてキレイな日淡・ハス。「活き餌じゃなきゃダメなのか…」と絶望した方に、今こそ希望の光を見せたいと思います。
実はハス、人工飼料に「餌付きにくい」だけであって「餌付かせられない」という訳ではないのです。
この記事を読んでくださっている皆様、もう一度思い出してみてください。あるいは読み返してみてください…。
彼らが何に「似ていた」のかを…。自ずと答えが見えてくるハズです。
そう、オイカワです。別に餌でオイカワを与える事を言っているのではありません。
飼育しているハスと同サイズか、それより少し大きめのオイカワを混泳させるのです。これはハスが幼魚に近いほど成功率が上がります。
幼魚の頃のハスは食べる物が動物質なだけでオイカワと大きな差がありません。また、双方見た目がそっくりであるという特徴があります。
ハスとオイカワを混泳させ、給餌の時に人工飼料を与えると、雑食性であり人工飼料にも慣れやすいオイカワはすぐに食い付きます。
神経質なハスも自分そっくりな同居人が美味しそうに人工飼料を食べるのを見て「仲間が食べてる=食べられる物」と認識して少しずつですが人工飼料を食べるようになります。
⑧掃除、水換えについて
水槽の汚れ具合や飼育している匹数にもよりますが、定期的な水槽掃除、水換えはとても大切な事です。
10日に1回、あるいは14日に1回くらいの頻度で1/4〜1/3水換えをします。水質測定をして結果が良ければガラス面のコケや汚れを落とし、1/5の水換えでも問題はほとんどありません。
水換えですが、まずは飼育器具の電源を落とします。この時ハスがパニックになっていたら落ち着くのを待ってから掃除を始めます。
まずはガラス面に着いたコケやヌメリ等の汚れを落とします。スクレイパーやメラミンスポンジ、コケクロス等もオススメですが、水中に手を入れる頻度を減らしたい方はマグネットタイプのコケ取りを使いましょう。
水槽の角に生えたコケや溜まった汚れは取りにくい事この上ありませんが、最近はこの角に付いた汚れを取れるアイテムも販売されるようになったので汚れを一片残らず駆逐したい方は是非使ってみてください。
これは水草が伸びすぎている時や枯れ葉が出ていたりコケが水草に絡み過ぎている時に行い、必要がなければやらなくても特に問題はありません。
トリミング時はハスを驚かせないように手早く行い、トリミングで出た不要な葉や枯れ葉等はネットで集めて燃えるゴミとして処分します。
水槽掃除をする前に水草を見てトリミングしたい部分を決めておくと水槽掃除を始めた時にスムーズに進めやすいです。
水槽の掃除がある程度終わったら、クリーナーポンプを使って汚れを水ごと取り除きます。
汚れを取るためにポンプを動かすとハスが驚く事があるので動かす時はゆっくり動かすように注意しましょう。
水が抜けたら次は新しい水を水槽に足していきます。新しい水は必ず水温を合わせ、カルキ抜きもしましょう。
「粘膜保護剤」を添加すると体をぶつけやすいハスの体表保護にもなるのでこちらもオススメのアイテムです。
フィルター掃除についてですが、上部式フィルターと外部式フィルターは頻繁に掃除する必要が無いため、水換え時に物理濾過担当のウールマットの目詰まりを取るために軽く水洗いするか、揚水パイプのストレーナー内部の汚れを専用のブラシで落とすといった形になります。
補助用に投げ込み式フィルター、パワーフィルターを入れている場合は濾過材の目詰まりを落とします。
上部式フィルター、外部式フィルターの生物濾過材や濾過槽の掃除は1ヶ月に1回しますが、濾過材は飼育水で軽くすすいで濾過バクテリアの減少を抑えるようにします。
生物濾過材の交換は製品によって違いがありますが、半年に1度の場合が多いです。
3,ハスがかかりやすい病気と治療方法について
コイの仲間の中でも神経質な性質が強いハスは、水質の変化等にも敏感で、幼魚の時はかなり顕著です。
また、ガラス面やフタにぶつかりやすいのでケガをしやすく、そこから病気になってしまう事もあります。
①外傷
ハスの飼育では恐らく一番ある事です。
何かに驚いてしまったり、興奮し過ぎて暴走したりジャンプした結果、ガラス面やフタにぶつかってケガをする事があります。
飼育環境が良ければ自然と治る事もありますが、傷口から菌が入って病気になる事もあるため注意が必要です。
治療方法ですが、規定量の1/5〜1/2に使用量を抑えた薬浴を行います。使う魚病薬は「グリーンFゴールド」「エルバージュ」の一方を使います。
私達人間が擦り傷や切り傷に消毒薬を使うのと同じ感じなので何日もかけて薬浴はせず半日程です。
治療用水槽に水を入れ、投薬をしてからハスを水槽に移します。半日たったらハスを元の水槽に戻します。
②白点病
どこにでも現れる病気、それが白点病です。
水質悪化や水温の急変等が主な原因で発生する病気で、体に丸く小さな点々が現れるのが特徴です。
この白点を放っておくと数がどんどん増えていき、体全体に増えた白点は病魚の呼吸や栄養供給を阻害して死に至らしめてしまいます。
ハスの幼魚がこの病気にかかりやすいため水温の急変や水質悪化には注意が必要です。
治療には塩水浴か薬浴を行います。
塩水浴をする場合は10Lに対し50gの塩を溶かした塩水を治療用水槽に作り、そこに病魚を移します。
薬浴の場合は規定量を抑えて投薬をします。使う魚病薬は「グリーンF系」「メチレンブルー」「マラカイトグリーン」「アグテン」いずれか1つを使います。
治療用水槽に水を張り、ハスを移動させてから少しずつ、様子を見ながら投薬します。
塩水浴も薬浴も体表の白点が無くなるまで続けますが、水換えをする時はアグテンは3日に1度、メチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF、塩水浴の場合は1週間に1度、グリーンFクリアーの場合は2週間に1度半分の量の水換えを行い再び投薬します。
③カラムナリス症
「口腐れ病」「尾腐れ病」「エラ腐れ病」とも呼ばれる病気で、水温や水質の急変が主な原因ですが、傷口から感染する事もある病気です。
部位で呼び方が変わりますが、初期症状は体の一部に白〜黄色っぽい付着物があり、充血を伴う事があります。
症状が進行すると患部が徐々に侵食されていき、爛れたようになってしまいます。致死率も高く、早期発見早期治療が必要です。
治療には塩水浴か薬浴を行います。
カラムナリス症の原因は「カラムナリス」という細菌で、塩分に弱い特徴があるため塩水浴も効果があります。
塩水浴をする場合は10Lに対し50gの塩を溶かした塩水を使います。
薬浴の場合は「パラザンD」「観パラD」「グリーンFゴールド」「グリーンF」のどれか1つを使います。
規定量より抑え、様子を見ながら投薬します。
④エロモナス症
水質悪化や水温の急変等が主な原因とされる厄介な病気ですが、ハスの飼育環境上、飼育環境が整っていればそうそうかかる病気ではありません。
しかし、活き餌となるドジョウやオイカワ等がエロモナス症にかかっていると、捕食したハスがエロモナス症にかかってしまうため注意が必要です。
初期症状は体の至るところに充血が見られ、進行していくとウロコが逆立ったり、眼が飛び出してしまったり、ウロコが白くなってボロボロと剥がれ落ちて体に穴が空いたようになってしまう症状が出てしまいます。
治療は難しく、発生させないようにするのが前提の病気ともいえます。
治療には「グリーンFゴールド」「パラザンD」「観パラD」「エルバージュ」の内どれか1つを使います。
投薬する時は規定量より量を抑えて使いますが、投薬する時も様子を見ながらゆっくりと投薬していきます。
治療は充血が治まり、症状が無くなるまで続けますが、3〜5日に1度半分の量の水換えを行い、再び投薬するといった流れになります。
エロモナス症は1度かかると非常にしつこく、治療が終わるまで2ヶ月近くかかる事もあります。
4,ハスと人の関わりについて
このブログでは基本的に飼育方法や特徴等について皆様にご紹介していますが、ハスは他にも人と関わりのある魚なので、そちらもご紹介させていただきます。
①釣り人に人気の魚!
体も大きく遊泳力も強いハスは釣り人に人気のある魚でもあります。
単純に引きが強い、動きが機敏で激しいのでファイトが楽しめるという事もありますが、一番はその「警戒心の強さ」です。
ハスは神経質で警戒心が強いため、余程空腹でもない限りはなかなか食い付こうとしません。
餌釣りや精巧な作りのルアーであっても違和感を見抜いて食い付かないのです。
騒いでしまうと音に驚いてしまい、ハス釣りは絶望的になってしまいます。
そんなハスと釣りの技術力で知恵比べをし、見事に釣り上げる事こそ、太公望冥利に尽きるのかも知れません。
②食用として親しまれている
魚釣りでも人気のあるハスですが、生息分布域では食用魚として親しまれており、生息数の多い琵琶湖周辺では鮮魚店で販売される程ポピュラーな魚となっています。
まとめ
今回は型破りなコイの仲間、日淡のハスについて皆様にご紹介させていただきました。
成長したハスは堂々として見応えがあり、捕食シーンも迫力があるのですが、見た目に反して繊細で臆病な性格というギャップのある種類となっています。
また、飼育したくてもハスの性質でなかなか手が出せなかったり不安になるかも知れませんが、彼らの特徴を理解し、望む環境を提供できるように努めれば、憧れのハスも飼育する事ができるのです。
ハスを飼育するにあたってどうしても広い水槽が必要になりますが、むしろその方が飼育管理もしやすく、ハスの泳ぐ姿を楽しむ事ができます。
また、成長したハスの堂々たる姿や特徴的な口と遊泳力を使った捕食シーン、そして金属光沢を纏う体を見たら、今までの苦労等忘れ去ってしまうでしょう。