アクアリウムの世界は広く、水草だけの世界を作ってみたり、水槽で飼育する生き物も海水魚や熱帯魚、川魚、水生昆虫など多岐に渡ります。
その中でも野性味ある姿と颯爽とした泳ぎ、滲み出る美しさから根強い人気があるのが日本産淡水魚(日淡)です。
日淡にはタナゴやヒガイ、ヒナハゼ、オヤニラミなど様々な種類がおり、それぞれが独特の生態や色彩を放つため需要があり、総合ペットショップやアクアショップでも取り扱われている事が多いです。
今回はそんな日淡の中から「川魚」と聞いたら名前が挙がるであろう魚「オイカワ」について皆様にご紹介させていただきます。
オイカワはタモを使ったガサガサや釣りによって自然採集もできる川魚ですが、流線型の体と婚姻色の美しさが際立つ種類でもあります。
しかし、いざ飼育となると美しい体色を観賞する前に体調や体型を崩してしまい、意外と美しく飼育するのが難しいという声も少なくありません。
1,川魚の代表種!オイカワの特徴について!
①分類
オイカワは生物学上「コイ目コイ科ハス属」に分類されており、以前本ブログで紹介した「ハス」の仲間です。
しかし、ハスとは違い肉食魚ではないため給餌に苦労する事は少ないです。
⭐以前の学名は日本の言葉「雑魚」から!
元々「雑魚」という言葉は「小さな魚」や「利用価値、商品価値が低い魚」の事を指しており、オイカワのかつての属名もこの言葉が由来とされています。
この属名は、医者であり博物学者でもあった「シーボルト」が、オイカワによく似た魚である「カワムツ」をヨーロッパに始めて紹介する時に使われたという説もあります。
今ではカワムツとオイカワはそれぞれ別属に分類されており、カワムツ、ヌマムツは「Nipponocypris」になっています。
②生息地について
日本各地の河川に広く分布しており、信濃川水系、利根川水系、吉野川水系などでは自然分布しているため比較的観察しやすい川魚でもあります。
また、日本を代表とする川魚の一種なので固有種っぽい雰囲気があるかも知れませんが、オイカワは日本意外の国にも生息が確認されており、台湾や中国東部、朝鮮半島の河川でも生息が確認されています。
オイカワの稚魚は他の川魚に似ている事もあり、琵琶湖や徳之島では放流をしたアユの中にオイカワの稚魚が混ざってしまい、移入されたケースもあります。
⭐アユが来ると生息分布に変化が!
清流の女王と名高いアユとオイカワ達の生息分布が被るとちょっとした変化が現れます。
まず、アユはオイカワが好む浅瀬に住み着くようになります。これは成長すると藻を食べるようになるアユが餌が発生しやすい浅瀬を好む事、縄張り意識が強い事が挙げられます。
アユに追い出されたオイカワはカワムツがいた流れが緩く深い河川の淵に移動し、住み始めます。
一方でオイカワに淵を取られてしまったカワムツはどうなってしまったかというと、何故か浅瀬でアユと暮らすようになります。
何故そうなったのかは分かりませんが、アユにとってカワムツは追い出す必要が無かったのかも知れません。
余談ですが、カワムツはオイカワより深い場所を好んでいるため、河川の改修工事が進んで淵が無くなってしまうと姿を消してしまうと考えられています。
③どんな見た目をしているの?
オイカワは「川魚らしい姿」をした魚であり、水の抵抗を受けにくい流線型の体と二又に分かれた尾ビレ、ほぼ三角形のように見える背ビレ、尻ビレ、腹ビレが特徴的です。
胸ビレは方向転換やブレーキ、微調整などの役割があり、時折はためかせる姿を観察する事ができます。
体色は幼魚の時は銀色ですが、成長するとお腹側に不規則な形の桃色の発色が見られるようになり、オスの個体は桃色の発色だけでなく青緑色の発色や各ヒレが伸びるなどの違いも見られます。
また、背ビレの前に黄色い紡錘形の斑点もあり、上見でしか見られないチャームポイントとなっています。
ハス属の魚とあって、幼魚や若魚の頃は完全魚食性である「ハス」によく似ていますが、ハスの場合は口が大きく形も「への字」に曲がるため見分けは簡単です。
⭐ちょっと似てる!?
日淡の中でもオシャレな種類であるオイカワですが、熱帯魚にもオイカワに似た体色をしている種類がいます。
それが本ブログでもご紹介している「ミクロラスボラ・エリスロミクロン」です。
オイカワに比べてずっと小さい熱帯魚ですが、体側には不規則なネオンブルーの模様に白いお腹、ヒレは大きくなったり桃色にはなりませんが、朱色に染まってキレイな種類です。
④大きさはどのくらい?
オイカワは成長すると約12〜18cmほどになります。
⑤どんな物を食べているの?
オイカワはハスとは違い雑食性で、自然下では水面に落ちたハエや蚊などの昆虫やイトミミズなどの水生生物、稚ザリガニやヌマエビなどの小型甲殻類、柔らかい藻や水草などを食べています。
⑥どんな性格をしているの?
オイカワの稚魚は臆病で、隠れる場所がないとビクビクしている事も多く、何かの拍子にパニックになる事もあります。
しかし、飼育下で成魚になると、それなりに落ち着きが出て来てゆったりとした泳ぎを見せてくれます。
⑦寿命はどのくらい?
オイカワの寿命は平均3〜4年ほどと言われており、長生きな個体だと5年生きるとそうです。
⑧どこでお迎えできる?大体のお値段は?
オイカワは改修された川にも適応できるため、生息地であればタモを使ったり川釣りをする事で採集する事ができます。
オイカワの成長とともに変わる姿を楽しみたい方は稚魚を狙うのがオススメです。
また、オイカワは人気の日淡の一種でもあり、場合によっては生き餌としても重宝するためアクアリウムにも力を入れている総合ペットショップや川魚にも強いアクアショップなどでも取り扱われている事があります。
近くにオイカワがいる河川が無い、ショップも無いという場合は通販で探してお迎えすると良いでしょう。
気になるお値段ですが、ショップによってはサイズで値段が違う事もあります。
目安として1匹あたり400〜900円くらいで、成魚の場合はもう少し高くなる可能性もあります。
2,オイカワを飼育する時の注意点について
適応力も高く、見た目も形も美しいオイカワですが、給餌の頻度や水質悪化によっては体型や体調を崩してしまい、成魚になる前に死んでしまう事もあります。
〜🐟オイカワ飼育の注意ポイント🐟〜
- 痩せやすく太りやすい魚なので、餌は栄養バランスを考えながら与える事。
- 定期的に水換えと掃除をする事。
- 稚魚の時は臆病なので水草や石などで隠れ家を作りながらレイアウトする事。
- 大きさに似合わず遊泳力が強いため、広い水槽で飼育する事。
- 酸欠に弱いので、フィルターを使っても鼻上げするようであればエアレーションする事。
- 驚くと水槽から飛び出しやすいので必ず水槽にフタをする事。
3,オイカワの飼育方法について
①お迎え
オイカワをお迎えする方法は大きく分けて2つあります。
1つは生息地に行ってガサガサや釣りで自然採集する方法。
もう1つは、ショップや通販で購入する方法です。
後者の場合は入荷時点で薬浴による「トリートメント」をされている可能性が高く、すぐに病気が発生する可能性は低いです。
しかし、自然採集した場合は体表に何かしらの細菌が付いている可能性があるので水槽に持ち込まないためにも、メチレンブルーやグリーンFゴールドを使ってトリートメントをしておくのが無難です。
通販の場合はショップが元気の良い個体をパッキングしてくれるので、お届け日の時間に確実に受け取れば特に問題ありません。
ショップに行ってオイカワを購入する場合は、見つけたら必ず健康チェックをします。
体表やヒレに付着物がないか、ヒレが不自然に裂けていないか、エラブタが膨らんでいないか、体表に充血や逆立ったウロコはないか、キビキビと元気良く泳いでいるかなどを観察してチェックします。
特に問題がなければ、ショップの店員さんにお願いしてお迎えしたい匹数をパッキングしてもらいましょう。
⭐道具さえあれば自分でパッキングもできる!
ショップで魚やエビなどを購入した時に見る事ができる「パッキング」。
店員さんによってはかなりスピーディーで、真似をしたくてもできないくらいスムーズな技だったりします。
実はパッキング、店員さんほどまでではなくても道具さえあれば個人でできます。しかも道具は売ってます。
必要なのは厚手のビニール袋、輪ゴムや針金、そして酸素スプレーです。
この酸素スプレーは観賞魚専用の細い管付きの商品が販売されており、取り扱われていれば飼育器具コーナーなどで見つける事ができます。
まずは袋に水ごと魚を入れます。水の量は魚の大きさや数にもよりますが、袋の半分から2/3くらいの量あれば特に問題はありません。
次に酸素スプレーの管を袋の口にいれ、酸素を入れます。この時水に管を入れて注入しても良いですが、魚がかなり驚くので種類によっては注意が必要です。
酸素スプレーの管を抜いたら、袋の口を捻って空気が逃げないようにします。
最後に捻った部分に輪ゴムをかけ、何度も縛って固く止めれば完了です。
針金の場合は縛った後にペンチなどで締める必要があります。筆者の場合は太い針金で縛った後、ペンチで潰してパッキングする事もありました。
②トリートメント
自然採集した場合は大きめの衣装ケースや別の水槽に移してから体表に付いた細菌を殺菌するためにトリートメントを行います。メチレンブルー、グリーンFゴールドがポピュラーな薬品です。
規定量と同じ量の薬品を投薬し、2〜3日ほど薬浴をさせ、最後は全水換えをして1日ほど様子を見て、体内に残った薬を抜いていきます。
③水合わせ、導入
トリートメント後、またはショップから購入、通販から受け取りをしたら水槽に導入する前に水合わせを行います。
最近では「水合わせキット」も販売されるようになったので、水合わせが不安な方にオススメです。
袋から水合わせをする場合は、まずは20分ほど水面に浮かべて「水温合わせ」をします。
水温を合わせ終わったら、開封して1/4〜1/5の量の水を捨て、同じくらいの量水槽の水を袋に足して20分ほど様子を見ます。
特に問題が無ければ、袋の中の水がほとんど水槽の水になるまでこの行程を繰り返し、最後の水合わせの時も異常が見られなければ、水槽にオイカワを導入します。
④水槽、フタ
5〜8cmほどの稚魚の場合は60cm水槽でも飼育はできますが、将来的には2倍くらいの大きさに成長し、遊泳力の強さも考えて、最低でも90cm以上の水槽が無難です。
3匹以上飼育または遊泳力のある川魚の混泳水槽をお考えの方には120cm以上の水槽を推奨いたします。
オイカワは驚くと飛び出しやすいので、水槽には必ずフタをするようにしてください。
Q,大型水槽のメリットは?
A,水量が多い分水の悪化が遅い事と、広い遊泳スペースが取れるため魚がのびのびと過ごせる事などがあります。
アカメやアロワナ、ダトニオなどの大型魚の飼育に用いられるイメージが強い大型水槽ですが、オイカワやヤマメのように遊泳力が強い種類の飼育や小型種の大群泳、水草レイアウトにもよく利用されています。
筆者が学生時代はミクロラスボラ・ブルーネオンとカージナルテトラの群泳のために120cm水槽を使っていました。
もちろん大型な分、スペースを取ってしまったり機材や土台もそれに見合った規格の物で無ければ設置もままなりませんが、大型水槽だからこそのメリットもあります。
まず、単純なメリットとして水量が多い事が挙げられます。水量が多いと水質が安定しやすく、悪化も緩やかになります。
また、スペースが広いため、魚やエビ達ものびのびと活動できるようになります。
その他のメリットとして、見た人に対して与えるインパクトの大きさ、レイアウトをダイナミックにしやすい、一般的に飼育しづらいと言われるイワナやフィダルゴ、アジなども飼育できるというのもあり、スペース、費用の問題さえクリアできれば小型水槽より安心安全に飼育できる設備でもあるのです。
むしろ水質悪化スピードが早い小型水槽での飼育は、初心者に向かないと言われる場合もあります。
⑤水質、水温
オイカワは中〜弱アルカリ性の水質であれば飼育する事ができます。
僅かに弱酸性によっても耐える事はありますが、長期間続いたり、それ以上に水質が酸性に傾くと体調を崩しやすくなってしまうので、彼らが好む中〜弱アルカリ性の水質を保つようにしましょう。
水温は普段は15〜26℃くらいで飼育するのが無難です。
低水温高水温にも適応すると言われていますが、5℃になると動きも不活発になり、ほぼ冬眠状態になってしまいます。
また、30℃という高水温が続くと暑さから体力を奪われ弱ってしまう事もあるので、暑すぎず寒すぎない水温をオートヒーターやサーモスタット付きヒーターで一定に保ちながら飼育するようにしましょう。
⑥底砂
水質を酸性に傾ける作用が無い物であれば飼育に使う事ができます。
オイカワやオヤニラミなどの日淡飼育では「大磯砂」がポピュラーな底砂です。
他にも「渓流石」「湧水の砂」「スプリンググリーン」「ピュアブラック」「麦飯ジャリ」「天然川砂利」もオイカワの清楚で爽やかな見た目や体色を際立たせてくれます。
⑦フィルター
どのフィルターも水槽のサイズや水量の規格が合っていれば飼育に使う事ができます。
⑧ライト
昼夜のメリハリをつけたり、水草の成長を促す役割がある飼育道具です。
オイカワは明るい場所を好んでいるため、個人的にはライトを設置して遊泳スペースを明るく照らしたり昼夜のメリハリをつけてあげた方が無難です。
ライトには様々な種類があり、メタルハライドランプやLEDなどがあります。
⑨水草
オイカワは柔らかい水草は食べてしまう可能性が高いので、マヤカやカボンバ、マツモはあまり向きません。
しかし、葉が硬いタイプの水草や、食べても大丈夫という気持ちがあれば水草をレイアウトする事もできます。
育てやすい水草として、「セキショウモ」「クロモ」「ナヤス」「アナカリス」「ウィローモス」が挙げられます。
クロモ、ナヤス、アナカリスは食べられてしまう可能性もありますが、餌のバランスや量が取れていれば食害は多少抑えられます。
また、「アヌビアス・ナナ」や「ミクロソリウム」、「バリスネリア・ナナ」「コウホネ」なども比較的手に入りやすく育てやすいのでオススメです。
⑩レイアウト
オイカワは水草にも映えますが、大きめの岩や流木を大胆に使った野性味溢れるレイアウトもよく似合う魚です。
たくさん枝分かれした流木は、水槽に入れるだけでもオイカワ達の良い隠れ家になります。
⑪混泳
オイカワは種類を選べば混泳させる事もできます。
カワムツやヌマムツ、ウグイ、ソウギョ、ヒガイとも混泳できますし、口に入らなければドジョウやテナガエビとも混泳は可能です。
また、成魚になれば一部の肉食魚とも混泳でき、オヤニラミやギギ、ギバチ、アカザ、小さなイワナ、ヤマメとも混泳させる事ができます。
二枚貝を育てられる状態であれば、バラタナゴやアブラボテなどのタナゴの仲間を混泳相手にして水槽を華やかにする事もできます。
その一方で混泳に向かないのは口に入る大きさのヌマエビやモロコ、ハヤなどです。
オイカワが追い回して食べてしまうという事はないのですが、お腹が空くと口に入る物を食べようとするため混泳を避けるか、オイカワとの関係を注意深く観察する必要があります。
⑫給餌
オイカワは人工飼料にも慣れやすいため、給餌も楽しい川魚です。
人に慣れた個体だと、指を追いかけたりフタを少しずらしただけで水面をパクパクしておねだりをします。
そんな彼らには川魚用人工飼料、金魚用人工飼料、乾燥川エビ、乾燥クリル、乾燥アカムシなどを与えますが、冷凍アカムシやホワイトシュリンプ、ブラインシュリンプなどもよく食べてくれます。
給餌の与え方の目安ですが、1日1〜2回、5分ほどで食べきれるくらいの量を与えます。空腹のオイカワの餌を食べる勢いはかなりありますが、与える時もオイカワのお腹を観察し、ふっくらとしてきたら十分です。
オイカワは痩せやすく太りやすい魚なので、与える餌の量や種類、間隔は様子を見ながら調整する必要があります。
例えば痩せてきた、成長が遅くなったと感じたら栄養価が高い冷凍飼料や乾燥飼料を人工飼料と一緒に与えてみる、太ってきた、背中がガッチリではなくムッチリしてきたと感じたら冷凍飼料や乾燥飼料はしばらくお預けにして、川魚用人工飼料に草食性用人工飼料を混ぜて与える、といった感じです。
⑬水換え、水槽掃除
使っている水槽の大きさや飼育している匹数などにもよりますが、10日に1度は1/4〜1/2の量の水換えと水槽掃除を行います。
120cmや180cm水槽などの大型水槽を使っている場合は、一度テスターを使ってアンモニアや亜硝酸などの濃度を計ってから行うのもオススメです。
それでも気になる場合は1週間〜10日に一度、1/8〜1/5の量をコンスタントに水換えしましょう。
まずはヒーター以外の飼育器具の電源を切り、水温計やフタなどの割れやすい物は取り外して安全な場所に避難させます。
次にガラス面に付いたコケやヌメリなどの汚れを落とします。
コケクロスやメラミンスポンジ、スクレイパーを使うと簡単に落とす事ができるので、どれか1つは用意しておきましょう。水槽の角に付いた汚れは先が尖った綿棒を使うと掃除しやすいです。
この時、水槽内にいるオイカワ達を驚かせないように慎重に作業を進めます。オイカワの幼魚の場合は水槽から飛び出す可能性がありますし、成魚の場合は暴れた時に水飛沫をあげる事もあります。
石や流木が汚れている場合は歯ブラシなどで気になる汚れを落としますが、レイアウトの変更を考えている場合は水槽から取り出してから洗った方が無難です。
フィルターの揚水パイプを外し、専用ブラシで内部に溜まった汚れを取り除いたら、フィルターに再び取り付けます。
また、補助に投げ込み式フィルター、パワーフィルターを使っている場合は一体型の濾過材が目詰まりしている場合もあるので別容器に飼育水を取って、そこで軽く洗います。
水換えのタイミングで上部式フィルター、外部式フィルターのウールマットも洗っておくと目詰まりによる濾過の不具合を解消する事ができます。
ただし、あまりにも繊維の傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換してください。
水槽に水草をレイアウトしていて、葉が枯れたり伸びすぎてしまっている場合はトリミングして不要な部分を切って長さを調整しましょう。
一般的なハサミでもトリミングはできますが、水槽を見ながら細かい調整を入れたり魚達の動静も気になる場合はアクアリウム用のトリミングシザーがオススメです。
特に大型水槽だと深さがある分トリミングはなかなか大変なので、肩まで水に入れたくない方はトリミングシザーはある意味必需品と言えます。
トリミングで出た不要な葉はネットや素手で回収し、燃えるゴミとして処分します。
この時ネットで誤ってオイカワやタンクメイトを掬わないように注意しましょう。稚魚や幼魚の時は目立った体色が無いためウッカリ掬ってしまいやすいです。
水槽内の大体の掃除が終わったら、クリーナーポンプで底に溜まった汚れを吸い取ります。
大型水槽の場合はテスターの結果によってはそこまで水を抜かなくても良いですが、結果があまり良くなかったり、小さめの水槽で飼育している場合は多めに水を抜きます。
水を抜き終わったら、新しい水を水槽に足していきます。新しい水は水温も合わせ、カルキ抜きをした状態にしていなければなりません。
コップやボウルで地道に足したり、水面に厚手のビニールを敷いてその上から水を足すのもアリですが、最近ではスイッチ1つで水を足せるアイテムも販売されるようになったので、大型水槽をお持ちの方にはオススメです。
水を足し終わったら飼育器具を戻し、電源を入れれば水換えと水槽掃除は完了です。
この時も飼育器具の起動音やライトに驚いてパニックになる事があるので、彼らが落ち着くまで少し様子を見てあげてください。
4,オイカワがかかりやすい病気と治療方法について
日淡の中では比較的飼育しやすいと言われているオイカワですが、彼らの適応力や丈夫さに甘えてばかりいると体調を崩してしまう事があります。
①痩せすぎ
群泳させた時などに上手く餌が行き渡っていなかったり、太りすぎを警戒し過ぎて餌がヘルシーなのがずっと続くと背中に肉が落ちたりあばら骨が浮いて見える「痩せすぎ状態」になってしまう事があります。
オイカワは比較的体全体を観察しやすいので発見はしやすいですが、ガリガリに痩せている場合は非常に危険ですし、治療も難しくなります。
治療方法としては栄養価が高い餌を与えます。人工飼料だけでなく乾燥クリルや川エビ、冷凍ホワイトシュリンプやディスカスハンバーグも良い餌になります。
②太りすぎ
背中もお腹も脂が乗ってパンパンになってしまった状態です。可愛がりすぎて餌をいっぱい与えてしまった事が原因として挙げられますが、水槽が狭く、十分に泳げない状態が続いても肥満状態になる事があります。
太りすぎてしまうとオイカワの流線型の体型が酷く崩れてしまうだけでなく、体色も悪くなったり内臓に負担がかかってしまうため繁殖できなくなったり突然死の原因になってしまうため非常に危険です。
治療方法として、広い水槽に移して泳げるスペースを十分確保してあげ、餌を川魚用人工飼料にプラスして草食性用のペレットタイプの人工飼料も与えるようにします。
幸いオイカワは遊泳力の強い種類なので環境に慣れれば泳ぎ回るようになります。
また、ダイエット中は栄養価が高い冷凍飼料や乾燥飼料は控え、与える時も不足しがちなビタミン類を補うために乾燥ミジンコを少し与えるようにします。
③白点病
野生下ではあまり見られないようですが、飼育下だとオイカワもかかりやすい病気です。
体表やヒレに数個の白い粒々した付着物が現れ、放っておくと徐々に数を増やしてエラや眼を覆ってしまいます。
また、ここまで酷くなると病魚が死んでしまったり、比較的症状が軽い時に白点を取ろうと石や流木に体を擦り付けてしまい、スレや新たな病気の原因になってしまう事もあります。
原因として水温の急変や水質は悪化が主に挙げられます。
治療方法は薬浴または塩水浴です。
症状が軽ければ塩水浴の方が体の負担も少なくて済みます。
治療用水槽の中で10Lに対し50gの塩を混ぜて塩水を作り、病魚を移します。白点虫が塩分に弱い事と塩分が新陳代謝を高めるダブルの効果で治療します。1週間に一度、水換えをして新たに塩水を足します。
症状が酷い場合は薬浴を行います。使う薬品はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系です。
治療用水槽に病魚を移したら、規定量投薬します。使う薬品によって水換えの間隔が違い、アグテンは3日に一度、マラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF系は1週間に一度、グリーンF系の中でも「グリーンFクリアー」の場合は2週間に一度、半分の量の水換えをします。
④寄生虫症
チョウ(ウオジラミ)や吸虫などが寄生する事で発生する病気です。
吸虫の場合はエラに寄生し増殖するためエラブタが閉まらなくなって呼吸困難になってしまったり、チョウやイカリムシは体表や体表近くの筋肉組織に寄生して体液を吸います。
それぞれの主な症状ですが、吸虫の場合はエラブタが膨れ、エラを流木や底砂に擦り付ける行動が見られ、チョウの場合は小さくて半透明な円盤形の虫が体表に張り付きます。
体液を吸われてしまっているため、病魚の体表には血が滲んでいる事もあります。
イカリムシの場合は錨型の頭部が体組織に埋められており、ヒモ状の体が飛び出ているといった症状が見られます。
発生原因は寄生された魚を導入してしまった事が挙げられます。
治療方法ですが、イカリムシとチョウの成虫には駆虫薬が効かないため、まずはピンセットなどで取り除きます。
チョウは簡単に剥がれますが、イカリムシの場合は慎重に抜かないと頭が体に残って復活してしまうため注意が必要です。
ピンセットによる駆虫が終わったら、吸虫の治療と一緒です。リフィッシュまたはトロピカルNという駆虫薬で薬浴をします。
駆虫薬は酸欠になりやすいという副作用がある物もあるので、エアレーションはしっかりやる必要があります。
5,オイカワの繁殖について
日淡の水槽内での繁殖は珍しく、オイカワも少数ながら繁殖データがあります。
しかしながら、筆者はオイカワを幼魚まで育てられなかったので、ここでは彼らの雌雄判別や産卵形態についてご紹介させていただきます。
①オイカワの雌雄判別について
稚魚や幼魚の時は雌雄判別は難しいですが、成長した個体、特に成熟した個体は雌雄判別がしやすいです。
〜♠️オスの特徴♠️〜
- 体側の桃色と青緑色の発色が濃い。
- 各ヒレが大きくなり、桃色の発色が見られる。
- 口の周りに「追い星」という白い粒状の突起が現れる。
- 成熟まで時間がかかる。(約2年)
- メスより体やヒレが大きい。
〜♥️メスの特徴♥️〜
- オスより体もヒレも小さい。
- ヒレはほぼ無色。
- 桃色の発色はほとんどないか、凄く薄い。
- 体全体が銀色。
- 追い星が出ない。
- オスより成熟が早い。(約1年)
②繁殖期について
オイカワの繁殖期は5〜8月で、この期間は複数回産卵を行います。
③繁殖形態について
オイカワは産卵によって子孫を残します。成熟したオスが縄張りを作り、メスにアプローチする事でペアを作ります。
オイカワのペアは水がキレイな浅瀬の細かい砂礫の上に産卵し、卵が外敵に見つからないように尾ビレで軽く砂を被せます。
また、産卵したメスは9月になると天寿を全うします。
④卵のお世話について
オイカワの卵はカビやすいため、回収後はメチレンブルーを少量溶かした水に浸けて除菌してから小型水槽で育てます。
フィルターは稚魚用投げ込み式フィルターを使い、エアーはかなり弱めにします。
⑤稚魚の餌について
生まれたばかりの稚魚はお腹にヨークサックがあるので吸収するまでの1〜2日は餌を与える必要はありません。
しかし、成長が早いためヨークサックの吸収を確認できたらPSBの添加とベビー用パウダーフードを与えます。
6,オイカワと人の関係について
オイカワは川魚として古くから親しみのある存在でもあります。
そのため世代によっては川で遊んだ事がある魚のイメージが強い事も珍しくありません。
①釣り魚として人気!
タモを使ったガサガサでも人気ですが、手軽に釣れる魚としてもオイカワは人気があります。
投げ釣りの仕掛けで良く、餌には練り餌やサシ、ミミズ、カワゲラなどの他、ご飯粒やパスタ、マカロニにも反応します。
また、最近では毛バリを使った「フライフィッシング」の対象魚にもなったため、川の遊び相手としての人気は留まる事を知りません。
②美しい姿を眺めたい!
成熟したオイカワが放つ婚姻色と各ヒレが伸びた美しい姿は昔から多くの人々を虜にしてきました。
そんな彼らの姿を自宅で眺めたいという思いはその当時からあったようで、日淡の中では比較的古くから飼育されていた歴史もあります。
酸欠に弱いためエアーを強くしたり、美しいプロポーションを損なわないために広い水槽での飼育もこの頃から行われていました。
③食用としても有名!
「川魚は独特の香りがする」という方もいますが、オイカワはその中でも比較的川魚特有の香りが少ないため食べやすいです。
とはいえ、オイカワ自体が適応力が高いため、生息環境によっては多少香りに違いはありそうです。
淡白な白身で、天ぷらや骨まで食べられる甘露煮や南蛮漬け、唐揚げにして食べられており、滋賀県では「なれ寿司」にするようです。
④餌としても優秀!
遊泳力が強く、水槽内でもグングン泳ぐオイカワは、アクアリウムでも釣りの世界でも観賞だけでなく活き餌としても高いポテンシャルを誇ります。
まとめ
今回は親しみ深い川魚・オイカワについて皆様にご紹介させていただきました。
オイカワは流線型のフォルムにメタリックに輝く体、爽やかさと華やかさを併せ持った婚姻色が美しい種類であり、昔から親しまれてきた存在です。
今でも水質が良ければ橋の下を流れる川を泳ぐ様子も見られますし、姿を消しつつある川魚の中では昔と変わらず身近な魚としてあり続けています。
そんな彼らは酸欠に弱く、広いスペースが必要ではありますが、それさえ解消してしまえばとても丈夫で飼育しやすい種類です。
また、体もある程度大きいので群泳、混泳させると迫力があり、オイカワより大きなウグイやソウギョの若魚がいても抜群の存在感を放ちます。
似ているカワムツ、ヌマムツとの混泳であっても大きなヒレとメリハリのある婚姻色、銀色の輝きから少数であっても全く退けを取りません。