アクアリウムを始める時、与えた餌の食べ残しを食べてくれる生き物を飼育する事で水質の悪化速度を緩和する事ができます。
もちろん彼ら用にもしっかりと餌を与えなければなりませんが、コリドラスやロリカリア、ヌマエビなどが食べ残しの掃除係に当たります。
その中でも今回は「スジエビ」にスポットライトを当てていきます。
スジエビは淡水エビの中ではコケ掃除よりは食べ残し処理が得意な種類である他に、オヤニラミやカワアナゴ、ドンコなどの肉食魚の良い餌となるエビです。
しかし、エビという生態上飼育管理が良くないと掃除や生き餌としての役割を果たす前に死んでしまう事も少なくありません。
1,細かな筋模様が特徴的!スジエビの特徴や生態について
①分類
スジエビは生物学上「十脚目テナガエビ科テナガエビ亜科スジエビ属」に分類されており、テナガエビに近い仲間です。
②どのくらいの大きさなの?
テナガエビとは違い、オスよりメスの方が大型化する傾向にあります。
③生息分布について
南東シベリアやサハリン、日本、朝鮮半島などに分布しています。
日本では北海道や樺太から九州は屋久島まで幅広く生息しており、国内に生息している淡水性のエビとしては最も地理的分布が広い種類とされています。
⭐移入して分布が広がった!?
スジエビは釣り餌としてもよく使われる事から、本来生息していなかった地域に持ち込まれる形で定着、生息分布が広がったと言われています。
また、沖縄には本来生息していなかったとも言われており、テナガエビの仲間が生息していたそうです。
④どんな見た目をしているの?
スジエビは透明感のある紡錘形の体に7条の黒〜褐色の筋模様が入っています。
この筋模様の入り方や色合い、太さなどには個体差があり、生息地によっても違いが見られるとされています。
また、頭胸甲と腹部の境目、腹部中央は曲がっており、頭部は上向き尾部は下向きというのも特徴の1つです。
頭部にある額角は柳の葉のように細く、触角や歩脚、眼柄が細長いため繊細な印象を受けます。
⭐透明な体の宿命はスジエビにも!
本ブログでは今まで様々な透明系熱帯魚を紹介してきました。
アジアクリスタルキャットやペルーグラステトラなどは体調が良いと内臓や向こう側が透けて見えるほどの透明度を誇り、人気があります。
しかし、透明系の生き物には「ある宿命」があり、それはスジエビにも適用されています。
その宿命とは「体調が悪化すると体が白濁する事」で、スジエビも体調が悪くなったり命が尽きてしまうと体が白く白濁してしまいます。
⑤どんな物を食べているの?
スジエビは肉食性が強い種類であり、水草やコケを多少食べる事はあるものの、基本的には獲物を捕食しています。
自然下ではミジンコや小さなヌマエビなどの小型甲殻類やミミズ、貝類、ボウフラやヤゴなどの水生昆虫、水面に落下した小型の昆虫などを捕食しています。
■むしろ餌の量に気を付けよう!
餌の食べ残しを食べてくれるスジエビですが、彼らにもちゃんと餌を与える必要があります。
何故なら食べ残しだけでは餌が足りず、同居魚やエビを襲ってしまう他、共食いに発展してしまうからです。
⑥気になる性格は?
テナガエビに近い仲間という事もあり、スジエビはミナミヌマエビなどとは違い、少々気が強い面があります。
特に成熟したオスは鋏脚を使ってケンカをする事もありますし、スジエビ自体も肉食性が強いため小型のエビやメダカなどの小魚を捕食してしまう事があるため注意が必要です。
⑦どこでお迎えできる?大体のお値段は?
スジエビは飼育する以外にも釣り餌や生き餌としても需要があるため、アクアリウムにも力を入れている総合ペットショップやアクアショップ、通販などでお迎えする事ができます。
また、スジエビが生息している河川であればガサガサで採集できるのでスジエビをお探しの方にオススメです。
⭐よく見たらひっそりと…
ヌマエビとは全く違う見た目をしているスジエビですが、稀にミナミヌマエビやヤマトヌマエビに混じって入荷する事があります。
ライトの下でミナミヌマエビ達がコケや餌をツマツマしている間、水槽内をよく見てみると、水草やフィルターのストレーナーの影でひっそりとしている姿を観察できる事があります。
⑧繁殖はできるの?
テナガエビに近い仲間の中では珍しく、スジエビは水槽内で繁殖させる事ができます。
⑨別名は?
スジエビは地方によって「川エビ」や「シラサ」、「藻エビ」という呼び名があります。
⑩寿命はどのくらいなの?
スジエビの寿命は2〜3年と言われており、淡水性のエビの中ではザリガニなどを除けば長い方です。
2,スジエビを飼育する時の注意点について
餌は何でもよく食べ、涼しげな体が美しいスジエビですが、飼育環境が良くなかったり同居させる相手が悪いと捕食や突然死をしてしまい長生きさせるのが難しくなってしまう事があります。
〜🦐スジエビ飼育の注意すべきポイント🦐〜
- 水質悪化や水温の急変に弱いので環境を整えてあげる事。
- 高水温に弱いのでヒーターの設定温度に気を付ける事。
- 餌の食べ残しだけでなく、ちゃんと餌を与える事。
- 隠れ家を複数用意する事。
- スジエビより小さく力が弱い種類とは混泳を避ける事。
- 水槽から飛び出す事があるので水槽に必ずフタをする事。
- 酸欠に弱いのでエアレーションなどで溶存酸素量を増やす事。
これらが挙げられます。
3,スジエビの飼育方法について
①お迎え
スジエビのお迎え方法は主にこの2つになります。1つはショップで購入してくる方法。もう1つは、河川でガサガサをして採取する方法です。
ショップで購入する場合は、見つけてもすぐに購入はせずに健康チェックをしてください。とは言っても、魚達にする時より難しくはありません。
ライトの下ではあまり動き回らないかも知れませんが、キビキビと脚を動かしているか、体に透明感はあるか、白濁している箇所がないかをチェックします。
触角や脚が欠けている個体がいても、あまり気にする必要はありません。脱皮を何度かする事で再生するからです。
健康チェックが終わったら、店員さんにお願いしてお迎えしたい匹数をパッキングしてもらいましょう。
野外採集の場合は、時期や場所によっては欲しい匹数が捕れない事も少なくありません。たくさん捕れた場合は必要な匹数だけを持ち帰り、多い分は自然に返すようにしましょう。
スジエビは小さな捕食者なだけでなく、他の生物に食べられる事によって自然の需要な役割を担っているのです。
②水合わせ、導入
スジエビ達を自宅に持ち帰ったらすぐにでも水槽に放ちたい気持ちを抑え、水合わせをしましょう。
まずは水槽に入れ物を浮かべ、水温を合わせます。目安は30〜45分ほどですが、水温計で計りながら水温を合わせていきます。
水温を合わせ終わったら、いよいよ水合わせです。
パッキングされている場合は開封し、約1/5〜1/6の水を捨てて、水槽から同量の水を袋に入れて30分ほど様子を見ます。
異常がなければこの作業を繰り返し、袋の中の水がほぼ水槽の水になり、最後の水合わせが終わった時も異常がなければ水槽に放ちます。
野外採集でバケツや衣装ケースなどにスジエビが入っている場合は、水温合わせはヒーターを使って行います。
水温が合わせ終わったら、エアチューブと重り、調節弁などを使って水合わせを行います。この時エアチューブから呼び水をする際に強く吸いすぎて水を飲まないように注意しましょう。
呼び水ができたら流入量を調節弁を使ったり、エアチューブを結んで調節します。
水合わせの目安は大体60〜90分で、入れ物の中の水がほとんど水槽の水になり、動きや体に異常が見られなければ水槽に放ちます。
■水合わせが雑だとショック死する事も!
スジエビに限った事ではありませんが、水合わせに失敗すると大体の魚や無脊椎動物はショック死してしまいます。
高級熱帯魚であるアジアアロワナやドラードキャットなどはさらにシビアで水合わせが少しでも雑だと暴れながら痙攣し、ショック死してしまう事も少なくありません。
スジエビやミナミヌマエビなどの場合は水質の変化に敏感なため、水合わせをせずに水槽に投入してしまうと一瞬で体が白濁してしまったり、横倒しになったまま死んでしまう個体や水質の変化に驚いて脱皮して死んでしまう事もあります。
③水槽について
スジエビは主に3〜5cmほどの小さな個体がほとんどなので、45cm水槽であれば4〜5匹飼育する事ができます。
たくさん飼育管理する場合は、管理がしやすい60cm水槽や衣装ケースがオススメです。
④水質、水温、フタについて
極端に酸性、またはアルカリ性に傾いた水質でなければ広い範囲に適応してくれます。
phの目安として6.5〜7.5くらいの範囲であれば特に問題はありません。
水温に関してですが、スジエビは低水温に強く高水温に弱いという特徴があります。
そのため10℃〜25℃を目安にし、最高でも26℃を超えないように注意が必要です。
⑤底砂について
極端に酸性またはアルカリ性に傾ける作用がある物以外はスジエビの飼育に使う事ができます。
底砂を使わなくても飼育はできますが、その場合は彼らの足場になる水草や石などを入れて仲間同士の掴み合いをさせないようにしましょう。
⑥フィルターについて
どのフィルターもスジエビの飼育に使う事ができます。
どちらかと言うと水質悪化に弱い種類なので、飼育する場合はフィルターの種類よりも濾過力で選んだ方が無難です。
⑦隠れ家(シェルター)について
スジエビを飼育するのになくてはならない存在です。
隠れ家が複数あると、スジエビが脱皮する時や休みたい時の憩いの場になります。
⑧水草について
ほぼ肉食性の種類ではありますが、スジエビは水草や藻を食べる事があります。
ですが、しっかりと餌を食べさせている飼育環境であれば食害はそこまで酷くはなりにくいため、水草を植える事ができます。
本ブログでお馴染みの「アヌビアス・ナナ」や「バリスネリア」「ミクロソリウム」も育てやすい水草ですが、「ウィローモス」や「マツモ」「クロモ」「セキショウモ」なども育てやすくオススメです。
特にマツモは水質浄化能力が高く、調子が良いとどんどん伸びていきます。この伸びた部分がスジエビの足場にもなるため彼らの行動範囲を広げる事ができます。
水草をたくさんレイアウトしたい場合は注意が必要で、夜間に水草が呼吸をした際に水中の酸素濃度が低くなってしまう場合があります。
⑨混泳について
スジエビは肉食性が強いため、混泳させる種類は厳選した方が無難です。
メダカやアカヒレの稚魚などの小さな魚は夜間にスジエビが襲って食べてしまう可能性が高いため混泳に向いていません。
また、ミナミヌマエビはちゃんとスジエビが餌を食べれている環境であれば、ある程度の大きさがある個体は混泳が可能です。
しかし、稚エビは食べられてしまうので繁殖を望まないのであればヤマトヌマエビの方がスジエビとの混泳に向いています。
スジエビは水温と水質が合い、ある程度の大きさがある魚であれば混泳する事もできます。
⑩給餌について
スジエビは基本的に好き嫌いなく食べてくれるので餌のメニューで困る事はほとんどないと思います。
そんなスジエビの餌は、ヌマエビやテナガエビ用人工飼料、魚用人工飼料、乾燥クリルやアカムシ、イトミミズなどの乾燥飼料、ホワイトシュリンプやブラインシュリンプ、アカムシなどの冷凍飼料です。
彼らは鋏脚でしっかり掴んで食べますが、たまにそのまま口に入れて食べている事もあります。
与える餌の量ですが、1日1〜2回、頭胸甲の内部に見える「中腸腺」が膨らむくらいの量を与えます。
スジエビはミナミヌマエビやヤマトヌマエビより体の透明感が強いため、胃腸とも言える臓器が透けて見えます。
この部分は餌がないと膨らみも小さいですが、餌を食べると少しずつ膨らんでいき、食べた餌の色も見えるため空腹具合が分かりやすいです。
⭐スジエビのモグモグツマツマ!
ヌマエビ達より脚が長く、鋏脚が発達しているスジエビは餌を食べる時、その鋏脚で餌を挟んだり細かいしてから口に運びます。
中には餌を奪われまいと、そのまま口に餌の塊を突っ込んで移動する個体もいます。
そんなスジエビの食事の様子は意外と面白いものがあり、エビの体内の様子が分かりやすいためじっくり観察していると時間が想像以上に過ぎてしまう事もしばしばです。
彼らの食事は鋏脚で細かくした餌を口に運んでいくのですが、食べた餌の色が頭胸甲から透けて見えます。
Q,生き餌として使いたいけど、どんな餌を与えたら良い?
A,人工飼料などのバランスが取れた餌を与え、餌を食べ終わった後の個体を餌にするのがオススメです。
スジエビはアクアリウムでペットとして飼育する以外に肉食性の魚の餌として与えるために飼育管理する場合があります。
この時「ガットローディング」という、生き餌に栄養をつけさせる行程が必要なのです。
人工飼料は栄養バランスが取れており、不足しがちなビタミンやカルシウム、食物繊維などが含まれています。
まだまだ人工飼料に慣れていない肉食魚だと、これらの栄養を摂取させる事は難しいものです。
しかし、餌となるスジエビに人工飼料をしばらく与えて栄養をつける事によって、その栄養素をスジエビを食べた個体に摂取させやすくなります。
⑪水換え、水槽掃除について
飼育している匹数や水槽のサイズ、汚れ具合にもよりますが、大体1週間〜10日に一度、1/4〜1/2の量の水換えと水槽掃除を行います。
まずは飼育器具の電源を切り、水槽のフタと水温計を外します。外したフタと水温計は安全な場所に移動させ、タオルなどの上に置きます。
次に、水槽の壁面に付いたヌメリやコケなどの汚れを落とします。スクレイパーやコケクロス、メラミンスポンジで擦ると簡単に落とせますので、どれか1つはお手元に置いておくのがオススメです。
水槽の角の部分の汚れが落としにくい場合は、先が尖った綿棒を使うと掃除が楽になります。
壁面の掃除が終わったら、流木や石などの汚れを歯ブラシを使って擦り落とします。レイアウトの変更をしたい場合は、一度流木や石を水槽から取り出してからタワシなどで汚れを落としましょう。
レイアウトしている水草が伸びすぎてしまっていたり、コケが生えたり枯れてしまっている場合はトリミングを行います。
トリミングの時は、水草の影に隠れているスジエビや同居魚などを傷付けないように注意しましょう。
一般的なハサミでもトリミングはできますが、高さの微調整や水槽内の生物の位置を把握しながら作業を進めたい方は、アクアリウム専用のトリミングハサミがオススメです。
トリミングが終わったら、素手やネットで不要な葉を回収します。この時も、スジエビや同居魚達を間違って捕まえないように注意が必要です。
また、回収した不要な葉は、必ず燃えるゴミとして処分しましょう。決して野外に捨ててはいけません。
水槽内の大体の掃除が終わったら、クリーナーポンプで水ごと汚れを除去していきます。この時吸い込み口を近付かせ過ぎてスジエビなどを吸い込まないように注意が必要です。
水抜きが終わったら、あらかじめ用意していた新しい水を水槽に足していきます。この水は、水温合わせやカルキ抜きを済ませ、スジエビ達に安全な水にしておかなければいけません。
水の足し方ですが、カップなどを使い、水槽の壁面に伝わせて水流を和らげる方法や底砂にお皿を設置してそこにめがけて水を足す方法、水面にビニールシートなどを浮かべその上から水を足す方法などがあります。
どれもが水流を起こすのを防ぐためで、水足しの際に巻き起こる水流を抑制し、水槽内の生物を驚かせないための方法です。スジエビは水流に驚くと跳ね回り、水槽から飛び出してしまう事もあります。
新しい水を足し終わったら、水温計とフタを設置して飼育器具の電源を入れれば水槽掃除と水換えは完了です。
フィルターの掃除に関してですが、濾過材が一体型のフィルターや上部式フィルター、外部式フィルターのウールマットの場合は目詰まりを解消するために飼育水で軽く洗うようにします。
汚れや傷みが酷かったり、濾過力の低下を感じるようであれば新しい物と交換します。
また、揚水パイプとストレーナーも水槽掃除の際に掃除をします。揚水パイプとストレーナーは意外と汚れが溜まりやすく、目詰まりの原因になる事も少なくありません。
専用のパイプブラシで汚れを擦り落として目詰まりを回収するようにしましょう。
外部式フィルター、上部式フィルター内部の生物濾過槽は、2〜3週間に一度、様子を見ながら飼育水で軽く濯いで汚れを落とします。
商品によりますが、生物濾過材にも交換目安があるため、濾過力が落ちて交換日が来たら新しい物と交換するようにしましょう。
4,スジエビがかかりやすい病気や危険な状態について
水質や水温の急変、餌の量に気を付ければスジエビは比較的飼育しやすい肉食性淡水エビと言えます。
しかし、飼育環境によっては上手く育たなかったり仲間同士でケンカしてしまって短命に終わってしまう事もあります。
①脱皮不全
スジエビだけでなく、バンパイアクラブやビーシュリンプなどの甲殻類にも起きる病気です。カニやエビなどの甲殻類は、成長のために自らの外骨格を脱ぎ捨てます。
これは爬虫類のものとは少々異なっており、内臓やエラなども脱皮する事で成長と清潔な状態にする役割があります。
そんな彼らの脱皮ですが、水質や水温が急変してしまったり、カルシウムなどの栄養素が不足した状態だと殻を上手く脱げない「脱皮不全」を起こしてしまいます。
バンパイアクラブやサワガニの場合は水に入ってすぐに脱皮してしまう事は少ないですが、スジエビやミナミヌマエビなどのエビの仲間は驚いて脱皮してしまう事が少なくありません。
また、エビの仲間はイセエビやセミエビのような大型で硬い甲殻を持つ種類でない限り、脱皮の回数は多いという特徴があります。
この脱皮不全を予防するためには、栄養バランスが取れている人工飼料などをしっかり食べさせてあげる事や、水質水温の急変をさせない事、水合わせを時間をかけて行う事、脱皮のための隠れ家や足場を作る事が挙げられます。
スジエビは脚が細長いため、しっかりとした足場がないと上手く体を固定できず、脱皮途中で転がり落ちてしまい甲殻が曲がってしまったり、脚が変形する他、最悪の場合はそのまま上手く脱げずに死んでしまう事があります。
②共食い
ミナミヌマエビやヤマトヌマエビが死んでしまった名前を食べてしまう事はよくあります。
しかし、スジエビやテナガエビの場合は生きている仲間や脱皮直後の仲間を襲って食べてしまう事は少なくありません。
共食いが起こる理由ですが、餌の量や栄養が足りなかった事や脱皮のための隠れ家や足場がなかった事などが主に挙げられます。
スジエビはテナガエビに近い仲間とあって、仲間同士で小競り合いする事がヌマエビより多いです。
また、肉食性が強く、餌の量や栄養が足りていないと空腹を満たすために仲間を襲ってしまいます。
特に脱皮直後の個体は身が柔らかいだけでなく、栄養素が体内に残っていて狩りやすくて栄養豊富な餌と認識してしまう事があります。
5,スジエビの繁殖方法について
ビーシュリンプやミナミヌマエビの繁殖はよく耳にするかも知れませんが、「スジエビって繁殖できるの!?」と思った方もいらっしゃると思います。
実はスジエビ、生活史がほぼ淡水で完結しているため、幼生の餌さえ用意ができれば水槽内で繁殖させる事ができます。
①雌雄判別の方法について
スジエビは慣れればヌマエビより雌雄判別がしやすい種類です。
〜♠️オスの特徴♠️〜
- メスより体が小さい。
- 体型がスマートで腹甲の幅が狭い。
- 卵を抱える必要がないため腹甲にしまわれている腹脚が短い。
〜♥️メスの特徴♥️〜
- オスより大型化する。
- 体型がふっくらしており腹甲の幅が広い。
- 卵を抱えるために腹脚が長い。
- 成熟したメスの頭胸甲から卵が透けて見える。
②繁殖形態について
繁殖形態は産卵で、テナガエビやヤマトヌマエビより大きな1〜2mmほどの緑褐色の卵を産み、腹脚につけて育てます。
スジエビの繁殖期は春〜秋と長く、水温が高くなる初夏が繁殖のピークとなり、繁殖期が終わるまで複数回産卵します。
③繁殖のための環境作りについて
スジエビを繁殖させたい場合ですが、卵を持ったメスを専用水槽に移して飼育するのが最も無難です。
繁殖用飼育水槽は、45cm水槽や衣装ケースなどがオススメです。
使うフィルターはスポンジフィルターや底面式フィルターが幼生を巻き込みにくいため重宝します。
特に底面式フィルターはフィルターの上に濾過材となる底砂を敷くため、より吸い込み事故の緩和に繋がります。
スジエビの産卵は日照時間はあまり関係がなく水温で左右される部分が多いので、ヒーターを入れて水温を保ってあげると安定して繁殖を狙えます。
繁殖用水槽には水質浄化も兼ねてウィローモスやマツモを入れておきます。水草を入れる事によってゾエア幼生や稚エビの餌となる微生物も発生するため生存率も上がりやすくなります。
ゾエア幼生をメスが放ったら、メスは元いた水槽に戻してあげましょう。理由は、せっかく誕生したゾエア幼生をメスが食べてしまうからです。
④スジエビ繁殖の難しいところについて
スジエビの繁殖で難しいところは抱卵中のメスのお世話でもなければ孵化したゾエア幼生のお世話でもありません。
では何なのかと言いますと、「淡水だと生存率が大きく下がる個体群がいる事」です。
スジエビは淡水で繁殖できる個体もいれば、多少塩分が入っていても繁殖できる個体もいます。基本的にスジエビは産地を分けず、ごちゃ混ぜで販売されている事がほとんどなので、こればかりは繁殖させてからでなければ分からない部分でもあります。
スジエビは汽水に生息する個体もいるため、それが淡水で繁殖させづらい個体と思われます。
⭐汽水域の個体かも知れない証がある!?
メスが抱卵し、興味深い繁殖に挑戦できると思っていたのに淡水なのか汽水なのかが分かりにくいのはあまり良い事ではありません。
淡水で繁殖できるのにゾエアが大量死してしまったらショックは大きいと思います。
そんなスジエビですが、恐らく汽水域の個体ではないかと言われているポイントがあります。
それは、汽水域で育ったスジエビのメスの体はかなり大きいというものです。
スジエビは河川や湖などで生活している個体は大体4〜5cmである事に対し、汽水域で生活している個体は10cm近くの大きさにまで成長する事があり、淡水域のスジエビよりずっと大型化する事が挙げられます。
⭐簡単!汽水の作り方について
先ほどスジエビを繁殖させる時に汽水が必要となる可能性を説明いたしましたが、そのための汽水の作り方があります。
粗塩を使った作り方もありますが、計量や計算が必要なので面倒になる事も少なくないと思います。
ここで筆者がオススメしたいのが「人工海水の素」です。
主にマリンアクアリウムで使われている物ですが、商品によっては10Lごとに袋分けされているため、簡単に汽水を作る事ができます。
⑤ゾエア幼生のお世話について
孵化したばかりのゾエア幼生は大きさが2mmほどしかなく体も繊細です。泳ぐ力もほとんどないため、水中にフワフワと漂う「プランクトン生活」をします。
この間のゾエア幼生は微生物を食べながら成長、脱皮を繰り返し、少しずつ大きくなっていきます。
プランクトン生活は水温にもよりますが、約1ヶ月ほど続き、約0.5〜1cmほどの稚エビになって初めて着底し生活するようになります。
着底した後はヌマエビやテナガエビ用の人工飼料や冷凍ブラインシュリンプベビーなども食べるようになるので飼育はグッと楽になります。
ゾエア幼生の間は水換えはあまりしないようにした方が個人的には無難です。
彼らは水中を浮遊しているだけでなく、小さすぎてエアチューブやクリーナースポイトで吸い込みやすいからです。
ですが、死んで底に溜まってしまったゾエア幼生は水質に悪影響を及ぼしてしまうため、クリーナースポイトで少しずつ取り除くようにし、その際に吸い出してしまった分だけ水を足すようにしましょう。
また、餌についてですがインフゾリアやPSB、パウダーフードを与えます。
⑥稚エビのお世話について
約1ヶ月に渡るプランクトン生活を終えて着底した稚エビは小さくてとても可愛らしく繊細です。
スジエビらしい筋模様は薄いものの、見た目は大分親エビに近いものとなっています。
そんな稚エビのお世話はゾエア幼生の時よりかなり楽になります。
まず、水換えと水槽掃除ですが、ちゃんとエビの体になっているため壁面の掃除や水の排出、水足しがしやすくなっています。
この時注意すべき点として、水質の変化には親エビより弱い面があるため、水流を起こさないようにゆっくり時間をかけて水を足すようにしましょう。
続いて餌ですが、エビらしい体となり小さな鋏脚で餌を摘まめるようになったため、ヌマエビやテナガエビ用人工飼料や冷凍ブラインシュリンプベビー、魚用の沈下性人工飼料などを与えます。
与える量は彼らの頭胸甲を見ながら調節し、水質悪化の抑制と共食い防止に努めましょう。
最後に隠れ家と足場をプレゼントします。
ゾエア幼生の間は水中を漂いながら脱皮していましたが、稚エビになってからは隠れ家の中に避難したり、足場にしがみつきながら脱皮をしなくてはならないのです。
6,スジエビの活用方法について
アクアリウムでペットとして育てる方や、飼育している肉食魚のための餌としてストックしている方もいらっしゃるスジエビですが、活用方法が多い淡水エビとして重宝されている事もあります。
①シンプルにペットの餌に!
スジエビはテナガエビより殻が柔らかく消化しやすいため、あらゆる肉食魚やカメの餌などに向いています。
アロワナの幼魚やレッドテールキャット、ダトニオ、テトラオドンなどの熱帯魚の餌の他、人工飼料や乾燥飼料に慣れていないオヤニラミやカワアナゴ、ドンコ、カジカ、アカメの幼魚などの良い餌となります。
②釣り餌にも!
スジエビは釣り餌としても優秀で、イカやタコ、ブダイ、クロダイ、タイ、スズキ、ガザミなどの大好物です。
海水中では長く生きられませんが、エビが大好物の魚介類にとっては堪らない一品なのです。
③飼育難易度が高い魚の初期飼料として!
ヨウジウオやタツノオトシゴの仲間は人気が高い魚であり、特にヨウジウオは汽水種、淡水種もいるため注目度が高いです。
ですが、彼らは性質上なかなか餌を食べず、餌をしっかり食べさせなくてはすぐに痩せて死んでしまいます。
そんなヨウジウオの仲間は主に孵化したてのブラインシュリンプベビーを与える事で長期飼育がしやすくなっていますが、スジエビのゾエア幼生も彼らの餌として使う事ができます。
④食用としても重宝されている!
釣り餌や飼育している生き物の餌というイメージが強いスジエビですが、実は食用として流通している事もあります。
タモ網などで漁獲されたスジエビは佃煮や唐揚げ、お菓子として加工されており、柔らかい殻は丸ごと食べられるため、大体丸ごと調理されています。
スジエビを使った郷土料理としては滋賀県にある「えび豆」が有名です。
琵琶湖産のスジエビを大豆と共に煮込んだ料理で、素朴な味わいはご飯にも良く合います。
⑤光輝くスジエビ!?
これは1994年、滋賀県琵琶湖でのお話です。
何と設置した生け簀の中に発光するスジエビが発見されました。
その儚げな光から、発光するスジエビは「ホタルエビ」と呼ばれ、マスコミを賑わしたそうです。
しかし、ホタルエビの研究が進んでいくと、その発光の原因も解明されるようになります。
まとめ
今回は水槽の掃除屋だったり餌としても使える淡水性のエビ・スジエビについて皆様にご紹介させていただきました。
スジエビは水質の急変や高水温に弱いため、大量にストックしていたり水合わせの仕方が悪いと短命に終わる事もあったり、混泳させる場合も種類をある程度選ばなければならない一面があります。
しかし、それさえ乗り越えてしまえば水槽内の食べ残しを食べてくれたり、スジエビが持つシンプルな体色がレイアウトや混泳魚達の魅力を引き立ててくれます。
また、元気なスジエビを飼育管理できれば、それを食べる魚やカメ達も健康に過ごす事ができます。
また、しっかりと育てる事ができれば、なかなか見る事も体験する事もできないゾエア幼生の姿やエビになるまでの成長過程という貴重なシーンを見る事ができるため、意外と魅力に溢れているエビでもあるのです。