タナゴの飼い方!二枚貝とうまく共存する繁殖方法と飼育法もご紹介!
日本に数多く生息する淡水魚の中でも、
タナゴの仲間達はとても色鮮やかで繁殖方法も変わっているユニークな魚です。
繁殖期に入ったタナゴのオス達は、普段はグレーの体色を、カラフルで華やかな体色に変えてメスにアピールします。
そして産卵場所となる二枚貝の元へエスコートするのです。
そのきらびやかな姿と泳ぎは、まるで貴族の舞踏会のようです。
タナゴの特徴は?
パッと見だと分かりづらいですが、実はコイの仲間です。よく見ると、口先に小さなヒゲが生えています。体型はひし形に近く、扁平です。
体色は灰色がかって地味な印象を受けますが、繁殖期となるとオスは婚姻色という派手な体色に変わり、メスにアピールします。
メスは繁殖期に入っても色は変わりませんが、卵を持ち、産卵ができるようになると尻ビレのあたりから「産卵管」という器官が伸びてきます。
二枚貝の中に産卵する事で有名ですが、種類によって産卵する貝の種類も変わります。
二枚貝に産卵するため、タナゴは二枚貝も生息できる水がキレイで流れの緩やかな河川に生息しています。
タナゴの種類
日本では18種類ものタナゴがいます。
その中から、入手しやすい3種類を紹介していきます。
小型種、カゼトゲタナゴ
タナゴ類では最小の大きさで、4〜5cm程しかありません。
婚姻色は体に走るラインが美しい青、お腹は黒、背ビレと尻ビレの縁は赤、顔は柔らかな藤色に染まり、口元は紅をひいたような姿になります。
産卵にはカワシンジュガイを好んでいます。
中型種、タイリクバラタナゴ
6〜8cm程の大きさのポピュラーな外来種のタナゴです。
在来種のニッポンバラタナゴの方がやや小ぶりです。
婚姻色は背面が煌めく緑、体全体は可愛らしいバラ色をしています。
産卵に使う貝に特にこだわりは無いようです。
大型種、カネヒラ
タナゴの最大種と言われており、12〜15cm程に成長します。
婚姻色は、背側が緑がかり腹側は薄紫の体色に鮮やかな桃色の背ビレと尻ビレが目立ちます。
産卵にはイシガイとマツカサガイを好みます。
タナゴの簡単な飼い方
水槽、水温、フィルターについて
小型〜中型種であれば、水槽は45cm以上がオススメです。
大型種のカネヒラ等であれば60cm水槽で3ペア程を飼育できます。
水温は20℃前後が適温ですが、急激な変化さえなければ10〜25℃の範囲で問題ありません。
10℃より水が冷たいと動きが鈍くなってしまいますが、ヒーターを入れて一定の温度に保つと元気に泳ぎ回ってくれます。
底砂について
金魚や川魚飼育用の砂や砂利であれば問題はありませんが、二枚貝も入れるのであれば粒が細かく、貝を傷付けにくい砂がオススメです。
餌について
市販の金魚や川魚用の人工飼料でも充分ですが、たまにアカムシ等をあげると喜んで食べてくれます。
掃除について
水の汚れ具合によりますが、週に一度、1/3〜1/2の量の水を換えます。
水道水は必ずカルキ抜きをしてから使ってください。ガラス面の汚れはスポンジで擦り落とします。
水草やコケ問題について
タナゴ類はカネヒラ以外水草に悪さをする事はないので、水質浄化や隠れ家も兼ねて水草を植える事ができます。
カボンバやアナカリス、マツモが入手しやすいです。
二枚貝の飼育・二枚貝を使った繁殖について
寄生!?いいえ、「共生」です
ここからはタナゴの繁殖について紹介をしていきたいと思います。
タナゴは生きている貝の体内に産卵する個性的な淡水魚です。
その為、貝に寄生しているイメージがあるかも知れませんが、その代わりタナゴも貝に手助けをしています。
二枚貝は産卵しても上手く育たなかったりするのですが、自分の中に産卵させる代わりに、そのヒレに卵を着けさせてもらいます。
二枚貝の飼育は難しい?
タナゴの繁殖には二枚貝が必要不可欠であり、二枚貝の飼育はかなり難しいところでもあります。
二枚貝が上手く育たなければ、タナゴが産卵してくれても、稚魚を見る事は出来ないのです。
それも踏まえて、今回はタナゴの繁殖と二枚貝の飼い方をセットで紹介したいと思います。
二枚貝の飼い方について
飼育準備
まず、タナゴの水槽とは別の容器に二枚貝を入れてお世話をしていきます。
水槽でも良いのですが、発泡スチロールの箱で代用する事ができます。
底に深さ4〜5cm程川砂を敷き、カルキ抜きをした水道水を入れてエアレーションを設置します。
何故タナゴと水槽を別に分けるの?
前述した通り、二枚貝はとても飼育が難しい生き物です。
買ったばかりのイシガイやカラスガイが元気いっぱいとは限りません。
また「飼育が難しい」とは、言い換えれば「死にやすい」という事でもあります。
死んだ二枚貝は瞬く間に水の悪化を招くため、そこにタナゴがいれば水質悪化に耐えられず死んでしまいます。
二枚貝の餌について
二枚貝の多くは植物性プランクトンを餌としていますが、これが飼育下において最大の難所となっています。
これをまかなうために「グリーンウォーター(青水)」を作る必要があります。
これはミドリムシやクロレラが水中に大量発生して緑色に見える物です。
グリーンウォーター(青水)の作り方
グリーンウォーターの作り方
- 短い水草を4〜5本入れておく
※我が家では少量のカボンバとパールグラスが入っています。 - こな餌を毎日少量あげる
- 暑すぎない日は基本的に屋外に出して直接陽に当てる
- フンや水草の枯葉は2日に1回、適度にスポイトで吸い上げて掃除
- カルキした水を2日に1回、同量のスポイトで補充
※水槽の水が直射日光で勢いよく蒸発している場合は、2日に1回だけでなく適宜水を追加してあげる
水を入れたペットボトルにエアレーションをした状態で日向にしばらく放置する事で作る事ができます。
また、通販でもグリーンウォーターの種水が売られているので、そちらを活用出来ればよりスムーズに作る事ができます。
グリーンウォーターが完成したら、二枚貝の容器にたっぷりと入れてあげましょう。
最初は緑色でも、貝達の浄化力によってみるみる透明な水へ変わって行きます。
また、しっかり食べている貝は緑色のフンをするため分かりやすいです。
貝達の状態が良くなったところで、早速タナゴの水槽に入れて見ましょう。
タナゴの繁殖について
タナゴは繁殖期になると、オスは婚姻色で体色が鮮やかな色になり、メスは産卵管という管が下ヒレの後ろ辺りからでてきます。
二枚貝が水槽に入るとオスのタナゴが縄張りを作り、メスを貝の元へ誘います。
メスは伸びた産卵管を貝の中に入れて産卵、オスも放精して受精卵となります。
人前で産卵行動を取らない時も多々あり、その場合は貝を大体3日後くらいに取り出し、元の貝用容器に戻します。
貝の中の卵が孵化し、稚魚となって出てくるまで約20日〜30日前後かかると言われています。
それまで貝を死なせないようにグリーンウォーターを与え、水替えをして行きます。
また、貝用容器でも稚魚育成は可能ですが、もしもの事を考えて貝の容器と同じように別容器を準備します。
稚魚が出てくる予定日の1週間〜10日前に繁殖に使った貝をこの別容器に移します。
そして同じようにお世話をします。
水替えのタイミング
貝はキレイな水質を好んでいるため、グリーンウォーターを与えた後、水が透明になったタイミングで交換します。
スポイト等でフンを取り、水を1/2程換えますが、その新しい水にグリーンウォーターを混ぜて入れます。
稚魚が出てきたら…
貝から出てきた稚魚の大きさは1cmにも満たないとても小さな体ですが、姿は親タナゴそっくりです。
一つの貝から10匹前後の稚魚が生まれます。
環境の変化に敏感なため、貝は取り出して元の貝用容器に戻します。
稚魚の餌は、細かくすりつぶした人工飼料やブラインシュリンプのベビーが適していますが、グリーンウォーターも少し入れてあげると補助的な餌となります。
また、最近はメダカの稚魚用でパウダータイプの初期飼料があるので、そちらも与える事ができます。
最初はエアレーションのみですが、2cm程の大きさになったら稚魚用の投げ込み式フィルターを使う事ができます。
また、3cm程の大きさまで育てば親タナゴの水槽に入れる事ができます。
繁殖に役立つ!?意外なアイテムについて
タッパー
保存容器で知られるタッパーですが、貝の扱いが格段と楽になります。発泡スチロールの中に砂を敷かず、タッパーに砂を敷き詰め、その中に貝を置くとしっかり潜ってくれます。
タナゴの病気の対処法
タナゴが病気になってしまった時は、
ホームセンターやアクアリウム店で病気を治す為の治療薬を購入出来るので早めに対処しましょう。
対処薬:アグテンで治療できる病気
白点病
体に小さな数ミリの白い綿のような物が付着し、魚をどんどん弱らせていきます。
水カビ病
ヒレが無くなった所などから、ミズカビは付着してしまいます。水カビ病は菌による病気です。
尾ぐされ病
ヒレに白い点のような粒が付着していきます。ヒレがかじられたように、無くなっていきます。尾ぐされ病は菌による病気です。
アグデンの使用方法
薬を水槽の大きさに合わせて適量分、水槽にそのまま注入するだけです。
病気になっていない魚も泳いでいますが、病気予防にもなるので、薬の入った水槽に一緒に入っていても問題ありません。
対処薬:リフィッシュで治療できる病気
イカリムシ病
魚たちの体に長いヒモ状の物が刺さってしまう病気です。
リフィッシュの使用方法
こちらも、薬を水槽の大きさに合わせて適量分、水槽にそのまま注入するだけOKです。
まとめ
タナゴ自体はキレイな水を維持する事ができれば餌もよく食べ、よく泳ぐ丈夫な魚です。
大事に飼育し、ちゃんと育てる事ができて初めて、繁殖期にあの鮮やかな色を見る事ができます。
期間限定のその美しさは、まるで四季折々に咲く花のようです。他にも種類はたくさんおり、種類によって発色のパターンも違って、いずれも美しい姿を見せてくれます。
二枚貝の飼育はどうしても手間がかかってしまいますが、繁殖が成功し、貝から出てくる稚魚の神秘的な誕生の瞬間を見た時の感動と驚きは大切な宝物となり、今までの苦労も報われる事でしょう。
おまけ:ちょっとしたタナゴの豆知識の紹介
日本固有種の宝庫!でもピンチな種類も…
タナゴ類は日本固有種が多い事でも有名ですが、保護されている種類もいます。
そこにはセボシタビラやイタセンパラ、ミヤコタナゴ等があげられます。
生息環境の悪化や護岸によって産卵する貝が減ってしまったり、外来種によって住みかを奪われてしまった事が要因の一つとなっています。