スペースを取らない小型水槽や独特な形をしているインテリア水槽などは水量が少なかったり形状的に使えるフィルターが限られてしまい、飼育できる種類や数が限られてくる事があります。
その中でも飼育しやすく人気があるのが「グラミー」の仲間達です。
本ブログでは以前「ピグミーグラミー」「チョコレートグラミー」についてご紹介した事がありますが、今回は明るいカラーと温和な性格で初心者から熟練者まで幅広い人気を誇る小型美魚・ゴールデンハニードワーフグラミーについて皆様にご紹介させていただきます。
1,ゴールデンハニードワーフグラミーの特徴について
①分類について
ゴールデンハニードワーフグラミーと記し続けるのも大変なので「GHDグラミー」と表記させていただきます。
GHDグラミーは分類上「Trichogaster chuna var.」または「Colisa sota var.」とされています。
②どんな所に生息しているの?
GHDグラミーは改良品種のため自然界に存在していませんが、改良の基礎となった「ハニードワーフグラミー」はインド原産のグラミーです。
ハニードワーフグラミーは他のColisa属のグラミーより小型ですが、原種のままでも十分過ぎる美しさを誇るため今でも人気があります。
川の上〜中流、湿地に生息しており、群れやつがいで生活していると考えられています。
⭐ドワーフグラミー系は改良品種が多い!
熱帯魚の中には原種より改良品種の方がメジャーな種類も多く、原種が地味な事は珍しくありません。派手なイメージのあるグッピーも原種はグレーな体色が多く、あまり出回りません。
GHDグラミーの原種・ハニードワーフグラミーは元々美しい種類ですが、より明るく美しい種類を作るために改良されました。
③どんな見た目をしているの?
改良前の段階でも美しい種類ではありますが、GHDグラミーは原種の琥珀色の体色ではなく、明るく濃厚なイエローを発色します。
幼魚の頃から明るいイエローは健在で、成長とともに雌雄で体色の差が出てきます。
メスの場合は、全身淡いレモンイエローに白銀色の腹ビレ(アンテナ)、背ビレ、尻ビレもうっすらとレモンイエローに染まり、オレンジ色の縁取りがあります。
尾ビレは淡いオレンジ色に染まり、エラブタと喉元が白銀色、体表に1本の褐色のラインが入ります。
オスの場合はより濃厚なイエローを発色し褐色のラインは無く、尾ビレは濃厚なオレンジ色に染まります。このオレンジ色は個体によっては体の後半部分まで染まるため、非常に美しいです。
また、背ビレ、尻ビレの後半部分もオレンジ色に染まり、前半部分はイエローに染まります。
特に背ビレはホワイトイエローの縁取り、腹ビレは個体によっては黄色と白銀のツートーンカラー、エラブタから胸にかけて黒い発色が出てメリハリのある見事な姿になります。
雌雄ともに目の周りは濃いオレンジ色の発色があるため他のグラミーより派手に見えます。
グラミーの仲間の腹ビレは針状に長く伸びるため「アンテナ」と呼ばれており、飼育していると実際に腹ビレで仲間と触れ合ったり、気になる物に触れる様子が見られるため触覚として機能していると考えられます。
⭐赤みが強いタイプがいる!
黄金色の体色にヒレのオレンジ色が特徴的なGHDグラミーですが、中にはオレンジ色が赤くなっているタイプもいます。
そちらは「ゴールデンハニーレッドドワーフグラミー」と呼ばれており、目も赤みが強くなっています。
④大きさはどのくらい?
GHDグラミーはドワーフグラミーの中でも小型で、大きくなっても約4cmほどしかありません。
⑤どんな物を食べているの?
自然界にGHDグラミーは存在しないので原種・ハニードワーフグラミーの様子になりますが、蚊やユスリカなどの落下昆虫やイトミミズなどの水生生物、ミジンコや稚エビなどの小型甲殻類を主に捕食しているとされています。
⑥どんな性格をしているの?
GHDグラミーはとても穏やかで人懐こい性格をしているため、単独飼育でも混泳水槽でも愛されている熱帯魚です。
⑦どこでお迎えできる?気になるお値段は?
彼らはポピュラーな種類なので、総合ペットショップやアクアショップであれば高確率で取り扱っています。
なかなか見つからない場合は通販を利用すると、より簡単に見つけられ、お迎えもしやすいです。
2,ゴールデンハニードワーフグラミーの珍しい特徴について
GHDグラミーやピグミーグラミー、ベタなどは水流が緩やかな場所や酸素量が少ない止水域などに生息しています。
そのような場所は普通の魚は生息しづらい環境なのですが、彼らは当たり前のように生活できるのです。
何故なら彼らには「上鰓器官」と呼ばれる特殊な構造をした補助呼吸器官を持っているからです。
この器官は「迷宮器官(ラビリンス器官)」とも呼ばれており、エラさえ湿っていれば空気から直接呼吸して酸素を取り込む事ができます。
⭐魚が木登り!?
ベタやグラミーは「キノボリウオ亜目」に含まれています。
このキノボリウオも熱帯魚としては古くから有名で、今では学名の「アナバス」と呼ばれる事が多いです。
アナバスは全身が淡褐色をした約20〜25cmほどの大きさの魚ですが、上鰓器官によって水面で呼吸できるだけでなく浅瀬や濡れた地面を胸ビレを使って移動できるとんでもない根性の持ち主でもあります。
3,ゴールデンハニードワーフグラミーの飼育の注意点について
GHDグラミーは比較的酸欠にも強く、丈夫で美しいためアクアリウム初心者にもオススメの熱帯魚です。
しかし、その丈夫さを過信し過ぎて飼育管理が疎かになってしまうと体調を崩してしまい、短命になってしまう事もあります。
〜🍯GHDグラミーの飼育で注意すべきポイント🍯〜
- 強い水流が苦手なので、水流は緩やかになるように調節すること。
- スマトラやグリーンバルブのように気が強く、ヒレをつつく種類との混泳は避けること。
- 成熟すると同種間で小競り合いをする事があるので隠れ家を用意すること。
- フィルターを取り付けづらい水槽で飼育する場合は水質管理に気を遣うこと。
主にこれらが挙げられます。
4,ゴールデンハニードワーフグラミーの飼育方法について
①お迎え
GHDグラミーは非常にポピュラーな熱帯魚なので、アクアショップや総合ペットショップであれば見つけやすいです。
少なくともピグミーグラミーやチョコレートグラミーよりは取り扱われています。
タイミング悪く見つからなかったり、近くに熱帯魚を扱っているショップが無い場合は通販を利用すると簡単にお迎えもできるのでオススメです。
ショップでGHDグラミーを見つけたら、まずは健康チェックをします。
ヒレが不自然に裂けたり溶けたりしていないか、キビキビと元気良く泳いでいるか、体表に付着物や充血はないか、ウロコが逆立ったり目が飛び出していないかなどを確認します。
②導入、水合わせ
GHDグラミーをご自宅に迎え入れたら、水槽に導入する前に水合わせをします。
袋ごと水槽に20分ほど浮かべ、最初に水温を合わせます。水温が同じくらいになったらパッキングを開封し中の水を1/4ほど捨て、同じくらいの量の水槽の水を袋に入れ、20分ほど様子を見ます。
特に異常が見られなければ、袋の中の水がほぼ水槽の水になるまでこの行程を繰り返します。
最後の水合わせ後も異常が見られなければ、水槽に解き放ちます。
GHDグラミーは性格が陽気な部分があるので、水槽に導入直後も隠れてばかりではなく、環境を知ろうと泳ぎ回ってアンテナで気になった物に触れたりする様子が観察できます。
Q,水槽に袋を浮かべられない時はどうするの?
A,一度バケツなどに移してからヒーターを使って水槽と同じ水温に設定するか、チューブでかなり時間をかけて水合わせをします。
小型水槽やインテリア水槽で起きがちなのが袋を浮かべられず水温合わせができないという問題です。
この場合は一旦バケツなどに開封し、他に使っていないヒーターがあれば使って水槽と同じ水温にする方法があります。
ヒーターが無い場合はバケツ内の水をグラミーの体がしっかり隠れるくらい残し、水合わせの水量をかなり絞ってゆっくりと水合わせするという方法もありますが、この方法はある程度の水質変化や酸欠に強いグラミーの仲間だからこそ使える部分があるので水質・水温変換に敏感な種類の場合はあまりオススメできないので注意が必要です。
③水槽、フタ
GHDグラミーは小型なので30〜45cm水槽でもペアで、1匹だけ飼育するのであれば17〜25cm水槽でも飼育できます。
5匹以上飼育する場合は60cm水槽がオススメです。
フタについては使うフィルターによりますが、水位を下げれば飛び出しを抑制する事ができます。しかし、筆者としては水位を下げられない場合はフタの使用をオススメいたします。
④水質、水温
チョコレートグラミーやピグミーグラミーより水質に神経質ではないGHDグラミーは中〜弱酸性の水質で飼育する事ができます。
しかし、アンモニアや硝酸などの有害物質が多い環境は好ましくはないため、定期的な水換えが必要です。
特に水量が少ない小型水槽やフィルター設置が難しいタイプの水槽は環境の急変がしやすいため、こまめな水換えなどをして飼育環境を整えるようにしましょう。
水温の適応範囲も広く、約20〜28℃の範囲であれば飼育できます。
⑤底砂
水質を弱アルカリ性に傾ける作用が無い底砂であれば飼育に使う事ができます。
GHDグラミーは水草との相性が良い事と水質の関係でソイルが良く使われている底砂です。
⑥フィルター
GHDグラミーの飼育は水槽のサイズに見合ったフィルターであれば、どのタイプのフィルターでも使う事ができます。
どちらかと言うと気にすべきは「水流」で、ネオンテトラやゼブラダニオのようにスイスイと活発に泳がず、ゆったりと泳ぐのがGHDグラミーです。
⑦隠れ家(シェルター)
GHDグラミーは成熟してくると仲間同士で小競り合いをする事があるため、複数匹飼育する場合は隠れ家をいくつか用意してあげます。
⑧水草
GHDグラミーは水草にイタズラせず、体色も水草の緑と良く映えるため水草レイアウト水槽でも人気があります。
扱いやすい水草として「アマゾンソード」「アヌビアス・ナナ」「エキノドルス・ラティフォリウス(チェーンアマゾン)」「パールグラス」が挙げられますが、GHDグラミーは原種が元々インド原産なのでアジア系水草もオススメです。
「タイ・ニムファ」や「ウォータースプライト」「ミクロソリウム」「ハイグロフィラ」「クリプトコリネ」なども育てやすく魅力的な水草となっています。
また、浮草であれば「アマゾンフロッグビット」「サルビニア・ククラータ」などの葉にある程度の大きさがあるものが育てやすく、GHDグラミーの生態にも似合います。
⑨ライト
昼夜のメリハリをつけたり水草を育てるのに必要な光を供給するアイテムです。
本格的なレイアウト水槽をお考えの方はメタルハライドランプ(メタハラ)がオススメですが、省エネしつつ明るい水槽を楽しみたい場合はLEDタイプがオススメです。
⑩混泳
GHDグラミーは基本的に穏やかで陽気な性格をしているため、スマトラやブラックルビーなどのように気が強くヒレなどをつつくような種類でなければ混泳を楽しめます。
アフリカン・ランプアイやカージナルテトラ、レッドテトラ、エンペラーテトラも相性が良いですし、主に上層を泳ぐメダカの仲間とも混泳ができ、広い水槽であればゴールデンな相方としてアプロケイルス・スマラグドとの混泳もこなします。
底モノにもイタズラをしないため、コリドラスやクーリーローチ、プレコ、オトシンクルス、ビーシュリンプなども良い混泳相手になります。
ビーシュリンプなどの稚エビは捕食されやすいため、少しでも生存率を上げたい場合はウィローモスやエビシェルターを活用すると良いでしょう。
⭐水質が合えば不思議な魚と混泳できる!
GHDグラミーは混泳相手にちょっかいをかける事はほとんどないため、多くの種類と混泳させる事ができます。
中でも見た目が面白い「淡水カレイ」は動きも相まって魅力的な混泳相手になります。
淡水カレイは数種類が日本に入荷しており、その生息地によって好む水質が違うため、導入する前に水質が合っているか確認する必要があります。
⭐サイズに差があるけど混泳できる!
GHDグラミーは小型種ではありますが、体高があるため同じサイズの熱帯魚と比較すると大きく見えます。
そんな彼らは温和な性格のナマズの仲間とも混泳が可能で、アジア原産のアジアクリスタルキャットやトランスルーセントグラスキャットとも混泳できる他、南米原産のトーキングキャットやレオパードタティア、レモラキャットとも仲良くできます。
ナマズの仲間の多くが肉食性で夜行性ですが、これらのナマズ達はあまり魚を口にしないため襲われる心配はほとんどありません。
⑪給餌
GHDグラミーは品種改良されて生まれた熱帯魚なので、原種よりは比較的飼育しやすくなっています。そのため人工飼料にも良く慣れ、餌問題で困らされる事はほとんどありません。
人工飼料はフレークタイプ、顆粒タイプでも良く食べてくれるので、是非お気に入りの人工飼料を与えてください。
また、乾燥ミジンコやイトミミズ、冷凍アカムシ、コペポーダ、ブラインシュリンプも食い付きが良いので定期的に与えて色揚げや体力作りのサポートをするのもオススメします。
給餌の間隔ですが1日2回、3〜5分ほどで食べきれる量を与えます。GHDグラミーは餌を食べると胸下あたりがふっくらしてくるので、それを目安に与える量を調節します。
食べ残した餌は水質悪化の原因になるのでクリーナースポイトで取り除くようにした方が無難です。
⭐実は芸を覚える!
GHDグラミーは人に慣れるだけてなく賢い魚です。
餌の時に大好物のアカムシやイトミミズをピンセットに挟んでギリギリ水面から届くくらいにしておくと、ジャンプして餌を取ろうとします。
とは言えGHDグラミーのジャンプ力はあまりないのでギリギリ取れる感じです。
さらに高さを数mm上げると、今度はラビリンス器官を上手く使って極小水鉄砲をします。これも飛距離はありませんが、健気に頑張る姿がとても可愛らしいです。
⑫水換え、水槽掃除
水槽のサイズや汚れ具合、飼育している匹数にもよりますが、大体1週間〜10日に1度、1/4〜1/2の量の水換えをし、水槽を掃除します。
水質悪化した飼育環境は目に見えた段階だと結構マズイので、より詳しく水質の状態が知りたい方は「スターターテストキット」を使って検査し、メモ帳などに記録を残すようにすれば、水換えの間隔を割り出す事ができるので、気になる方は是非参考にしてみてください。
まずは飼育器具の電源を切り、ライトやフタ、水温計を取り外して安全な場所に移動させます。ヒーターの場合は水を抜いた時にヒーターが空気中に出ないのであれば電源を入れたままでも結構です。
水槽の壁面についたヌメリや茶ゴケなどの汚れはコケクロスやメラミンスポンジ、スクレイパーなどで擦り落とします。
この時、人に良く慣れたGHDグラミーだと飼い主と触れ合えるチャンスだと思っているのか、手に纏わり付いてアンテナで触ってくるという可愛らしい妨害をしてくる事があるのでぶつからないように注意が必要です。
レイアウトしている流木や石が汚れている場合は、歯ブラシなどで汚れを落とします。この時もGHDグラミーが寄ってくる事があるので腹ビレのアンテナをブラシに巻き込まないように注意しましょう。
また、レイアウトを変更したい場合は、流木や石を水槽から取り出してからタワシなどで汚れを落とします。
水草が伸びすぎていたり、枯れ葉が目立つようであればトリミングをして不要な部分をカットします。
トリミングは普通のハサミでもできますが、細かく調整をしたい場合はアクアリウム用トリミングバサミをオススメします。
また、トリミング中もGHDグラミーが興味を持って近付いてくる可能性もあるため水槽を見ながらカットに巻き込まないように注意が必要です。
浮草のトリミングは簡単で、枯れている部分や溶けている部分をカットするだけで良いです。
場合によってはかなり小さくなったと感じるかも知れませんが、悪くなった葉をカットすれば、新しい葉が生えやすくなります。
トリミングで出た不要な葉はネットや素手で集め、燃えるゴミとして処分しますが、この時も間違ってグラミー達を掬わないように注意しなければなりません。
揚水パイプがあるタイプのフィルターの場合は取り外し、中に溜まった汚れを専用のブラシで落とします。
掃除が終わったらフィルターのポンプに装着し直しても大丈夫です。また、ウールマットや一体型濾過材の場合は目詰まりを解消するために飼育水で水荒いします。
濾過力がかなり落ちていたり、繊維の傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換しましょう。
水槽掃除が大体終わったら、クリーナーポンプで水ごと汚れを排出します。底砂に吸水口を近付けるとかなり汚れが取れますが、近付け過ぎると底砂を吸ってしまうので距離感を見つつ吸い取っていきます。
水を抜き終わったら、新しい水を足していきます。新しい水は水温も合わせ、カルキを抜いた状態にします。
水の足し方は色々ありますが、あまり水流を起こさないように足せば大丈夫です。強い水流を起こすとGHDグラミーが巻かれてしまうので、焦らず足し水をしてください。
水を足し終わったら、飼育器具を戻して電源を入れれば水換えと水槽掃除は終了です。
生物濾過槽は2週間〜1ヶ月に一度、飼育水で洗いますが、濾過材が脆くなって崩れやすくなっていたり、交換時期が近付いているようであれば新しい濾過材と交換します。
5,ゴールデンハニードワーフグラミーがかかりやすい病気と治療方法について
比較的丈夫で水質にも敏感ではないため飼育しやすい熱帯魚ではありますが、気を抜いて飼育管理が疎かになってしまうと体調を崩してしまうことがあります。
①腹水病
あまり聞きなれない病気かも知れませんが、グラミー系がかかりやすい病気の1つです。
初期症状として食欲がなくなり、あまり活動しなくなってしまいます。症状が進むと徐々に腹部が膨張し、白いフンを出すようになります。この病気はエロモナス症を併発する可能性が高いため注意が必要です。
この病気は消化器などの内臓が病気になる事で腹水が発生してしまうと言われており、原因はストレスや内臓の細菌感染、鮮度が悪い古い餌を与えたり餌の量や与える回数が合っていない事とされています。
治療方法は薬浴を行い、使う薬品はグリーンFゴールド、観パラD、パラザンD、エルバージュです。
この病気は内臓疾患なので、薬浴をする時に少しだけ薬品入りの水を取り、普段食べている餌を浸して「薬餌」も作っておきます。
グリーンFゴールドの薬液に餌を10〜20分ほど浸し、乾燥しやすい場所でしっかり乾燥させれば薬餌は完成です。これは治療中の主食であり、エロモナス症の治療時にも使えます。
まずは病魚を治療用水槽に隔離し、規定量の薬を投薬して治療します。治療中は薬餌を与え、3〜5日に一度半分の量の水換えをしてから新たに投薬します。
お腹の膨張が収まり、病魚も活動的になって普通のフンが出るようになれば治療は終了です。
②エロモナス症
致死率が高く、治療も困難な病気です。穴あき病、松かさ病、ポップアイといった症状があり、前述した腹水病が重症化すると併発する恐れがあります。
初期症状は体表の至る所に充血が見られ、症状が進行すると共にウロコが逆立ったり、白く変色して剥がれ落ち、体表組織に痛々しい穴があいてしまいます。
原因としては、病気の魚を導入してしまった事や水の腐敗による水質悪化、古い餌を食べてしまった事などが主に挙げられます。
治療には薬浴を行い、使う薬品はグリーンFゴールド、観パラD、パラザンD、エルバージュを使います。この治療時も前述した腹水病の治療に使った薬餌を作り、与えられるように準備しておきます。
病魚を治療用水槽に隔離したら、薬品を規定量入れて治療を開始します。治療中は3〜5日に一度、半分の量の水換えをして新たに投薬します。
③カラムナリス症
症状が出る部位で呼び方が変わり、尾腐れ病、口腐れ病、エラ腐れ病と呼ばれています。
初期症状は体表やヒレなどの一部に白〜黄色っぽい付着物が現れます。この時充血も見られるため、見つけたらすぐに治療をしましょう。
尾腐れ病の場合は尾ビレが次第に溶け始め、裂けてボロボロになってしまいます。感染した病魚は弱々しく水面を漂うようになり、死に至ります。他の症状も酷いもので、頭部が爛れたようになってしまいます。
原因は水温や水質の急変、病気の魚を導入してしまった、小競り合いの傷から感染した事などが主に挙げられます。
治療方法は薬浴を行い、使う薬品はグリーンFゴールド、グリーンF、観パラD、パラザンDなどです。
治療中は5〜7日に一度、半分の量の水換えをし、その後新たに投薬します。食欲があれば薬餌も食べさせ、内側からも殺菌するようにします。
④ウーディニウム症
コショウ病、ベルベット病とも呼ばれる病気で、発生すると病魚の体表やヒレに白〜淡黄色の粉状の付着物が現れる他、体を小刻みにプルプルと震わせる、ヒレをたたんで力無く泳ぐなどの症状が見られます。
特にGHDグラミーの場合は体表が明るい黄色なので付着物が確認しづらいため、見落としやすいです。
ちなみに筆者の感覚として、GHDグラミーは白点病よりこの病気の方がかかりやすい気がします。
原因は病気の魚を導入してしまった事や水質の悪化が挙げられます。特にこの病気は水換えや水槽・フィルターの掃除を疎かにしていると発生しやすい病気としても知られているため、飼育環境も早急に改善しなければなりません。
治療には薬浴を行い、使う薬品はグリーンF系、マラカイトグリーン、メチレンブルーです。
病魚を治療用水槽に隔離したら規定量の薬品を投薬し、治療を開始します。
治療中は5〜7日に一度、半分の量の水換えを行い新たに投薬します。これを体表の付着物が消え、魚が元気を取り戻すまで続けます。
6,ゴールデンハニードワーフグラミーの繁殖方法について
GHDグラミーは大切に飼育しているとペアがいた時に繁殖することがあります。
調子が良いと頻繁に産卵するため、チャレンジする機会も他のグラミーの仲間より多く、難易度は熱帯魚の中では比較的易しい方です。
むしろ繁殖に関して言えば、本ブログでご紹介したピグミーグラミーとチョコレートグラミーの方がずっと難しいです。
①繁殖形態について
GHDグラミーはピグミーグラミーやベタのように、ラビリンス器官を使って水面に丈夫な泡巣を作る「バブルネストビルダー」です。
この泡巣を作るのはオスで、強度を上げるためなのか浮草や水草に絡めるように作る事があります。
オスを1匹だけ飼育していても泡巣を作るため、見つけたら繁殖できるくらい立派に成長したという証拠になります。
泡巣ができるとオスはメスにアプローチし、ペアが成立すると泡巣の下で産卵します。
②雌雄判別について
特徴の項目でオスとメスの体色の違いを紹介していますが、ここでは改めて雌雄の違いについて触れていきたいと思います。
〜♠️オスの特徴♠️〜
- メスより体色が濃厚。
- メスより体高が低く、スマート。
- 成熟するとアゴや胸が黒く発色する。
- 尾ビレの全体と背ビレ、尻ビレの後半部分のオレンジ色が濃い。
- 背ビレの前半分から後半の上部がホワイトイエローの発色になる。
- 成熟したオスはメスにアプローチしたり、同種のオスと小競り合いをするようになる。
- 成熟すると泡巣を作るようになる。
〜♥️メスの特徴について♥️〜
- オスより体高があり、成熟したメスはお腹がふっくらする。
- 体色がオスより薄く、淡いレモンイエロー。
- 背ビレや尻ビレにオレンジ色の縁取りがある。
- 体側の真ん中あたりに黒褐色のラインが1本入る。
③繁殖に必要なアイテムについて
GHDグラミーの繁殖は自然繁殖と人工繁殖があります。しかし、どちらにしても繁殖するための環境を整えなければなりません。
まずは30cmキューブか45cm水槽を用意します。そして使うフィルターは水流があまり強くないスポンジフィルターか投げ込み式フィルターを使います。
特に投げ込み式フィルターは水槽で片隅に設置しておけば、反対側はあまり水面が揺れないので泡巣を作りやすくオススメです。
底砂は敷かない方が卵の回収をしやすいので敷きません。
水草は水質浄化効果が高いマツモやクロモを数本入れ、浮草としてアマゾンフロッグビットなどを入れます。
④産卵行動を確認したら
産卵行動を確認したら、メスは元の飼育水槽に戻します。
この時コップで追いかけると水流で泡巣が壊れたり、卵が落ちてしまう事があるので毛羽立ちしてないネットで素早くメスを移動させます。
⑤卵が孵化したら
GHDグラミーの卵の孵化は早く、25℃くらいの水温だと1〜3日には孵化します。
孵化したばかりの稚魚は頭を上にして泡巣や巣材の水草にくっついており体色も黒いため、まるで極小サイズのオタマジャクシのようです。
なお、お腹にはヨークサックがあるため1〜2日は餌を食べなくても大丈夫です。
⭐パパグラ、子育て大奮闘!
パパになったオスグラミーは、泡巣から稚魚が落ちてしまうと素早く向かい、口で優しく咥えて泡巣に戻します。
また、稚魚が泳ぎだすようになると、遠くに行きすぎた我が子を連れ戻しに行ったり、普段はフレンドリーな飼い主に対してもヒレを広げて威嚇するようになります。
⑥稚魚の餌について
ヨークサックを吸収した稚魚は餌を食べられるようになります。
しかし、口がとても小さいので、PSBやインフゾリア、沸かしたての活きたブラインシュリンプベビーを与えます。
餌を食べた稚魚のお腹は膨らみ、食べた物の色が透けて見えるのでルーペなどで観察すると分かりやすいです。
⑦稚魚のお世話について
パパグラに子育てをさせている場合は、水換えはサイフォンの原理を利用し、呼び水したエアチューブで底に溜まったゴミだけを回収して、抜いた分だけ水を補充します。
この間、パパグラが攻撃してくる事もあるので飼い主はひたすら耐えましょう。
人工繁殖をしている場合は死んでしまった稚魚や食べ残しをクリーナースポイトで取り除き、減った分の水をスポイトで優しく足します。
⑧稚魚の成長について
孵化してから1週間ほど経つと、極小オタマジャクシのような姿から変化が起きます。
体色も透明感が出て、見た目もGHDグラミーというよりはピグミーグラミーに近い見た目になります。泳ぎも上手になって頻繁に泳ぐ様子も確認できるようになります。
それでもまだまだ5mm前後なので、餌切れに注意しながらPSBと沸かしたブラインシュリンプベビーを与えます。
孵化から15日ほど経つと、ピグミーグラミーのようだった尾ビレも扇のように開いて少しGHDグラミーっぽくなります。
食欲も旺盛なので、PSBとブラインシュリンプベビーを与え、時々ベビー用パウダーフードも与えます。
食べ残しや死んでしまった稚魚はクリーナースポイトなどで回収し、減った分の水を足すようにします。
孵化から約1ヶ月後には、1cm前後の大きさに成長します。この頃になると、見た目はまだピグミーグラミー感が拭えませんが、体側にハッキリと黒褐色のラインが確認でき、尾ビレにもオレンジ色が出てきます。
また、親魚ほど長くはありませんが、腹ビレも伸びて確認できるようになります。
このくらいまで育つと多少水換えしても耐えられるようになるので、慎重に、でもいつもより多めの水換えをして水質を改善します。
稚魚達の餌はPSBと沸かしたブラインシュリンプベビー、パウダーフードを継続して与え、しっかりと成長させていきます。
稚魚のお腹はもう中身が透けて見えないので、お腹の膨らみ具合を見ながら餌を与える必要があります。
大分飛ばして順調に成長していれば、孵化から約2ヶ月半頃にはショップで販売されている2cmほどの幼魚サイズになります。
そこまで成長すると、見た目は親魚そっくりで体色はメスに似ています。
餌もPSBとパウダーフードを卒業し、ブラインシュリンプベビーだけでなく細かい顆粒タイプの人工飼料や小さなイトミミズ、ミジンコも食べられるようになります。
まとめ
今回は濃厚なイエローとオレンジが美しいグラミーの仲間・ゴールデンハニードワーフグラミーについて皆様にご紹介させていただきました。
GHDグラミーは小型で美しいだけでなく、とても飼育しやすい種類なので初めてアクアリウムを始める方にもオススメです。
水質も敏感ではなく餌も良く食べて人に慣れやすいのはとても魅力的ですし、酸欠に強いため独特な形でフィルターが設置できないインテリア水槽でも飼育を楽しむ事ができます。
その場合はこまめなメンテナンスが欠かせませんが、難しい事ではないので思い切り飼育を楽しんでください。
また、繁殖難易度もグラミー系の中では低めなので、健康なペアと極小サイズの餌さえ用意できれば稚魚を育てやすいです。
もしご自宅の水槽に太陽のような煌めきが欲しいという方は、この黄色い妖精を迎え入れてみてはいかがでしょうか。