はじめに
アクアリウムの世界では多くの種類の魚達が飼育されており、その美しさもそれぞれです。
今回ご紹介する種類は「ネオンドワーフレインボー」というパプアニューギニア原産の小型種です。未成魚の段階でも美しい種類で、飼い込んだ個体は目の覚めるような発色を見せてくれます。また、ペットショップで入手しやすく丈夫なため初心者に人気の熱帯魚でもあります。
ネオンドワーフレインボーってどんな魚?
ネオンドワーフレインボーは「レインボーフィッシュ」と呼ばれるグループの中でも「メラノタエニア属」の仲間です。メラノタエニアには「木葉」という意味があります。
「ネオン」の名の通り、うっすらとした飴色の体と体表が強いネオンブルーに染まり、背ビレ、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレの縁が黄色〜赤色に染まる美しい種類です。また、興奮すると頭部から背中の前半分くらいが強いゴールドカラーを発色します。背ビレが2つに分かれている特徴があり、前半部分は小さく後半部分は尾柄近くまで続きます。
大きさは4〜6cm程の小型種で、10cmを越える事もある大型種揃いのメラノタエニア属の中では最小クラスです。体型は日本に生息しているタナゴの仲間のように扁平ですが、タナゴと比べて全体的に若干丸みを帯びており、小さめの頭部が少し突出しています。
性格は穏やかで群を作って泳ぐ性質があります。
別名はあるの?
基本的には「ネオンドワーフレインボー」の名前で流通していますが、ショップによっては稀に「プラエコックス・レインボー」と表記している事もあります。
生息地は?
イリアンジャヤやパプアニューギニアの河川に群を作って生息していると言われています。河川の水質は中性〜弱アルカリ性の綺麗な水なので、飼育水もそれを再現する必要があります。
何を食べているの?
ネオンドワーフレインボーは雑食性で、野生下ではボウフラやケラの仲間のような小型の水生昆虫やミジンコのような小型甲殻類、落下昆虫や柔らかい藻類を食べていると言われています。
飼育下では好き嫌いもなく人工飼料だけでも飼育できますが、
乾燥飼料や冷凍アカムシ等の冷凍飼料も非常に食い付きが良いです。
また、スピルリナ等の植物質を含んだ餌を与えるとヒレの発色が良くなります。
入手できる場所と大体のお値段は?
ネオンドワーフレインボーは熱帯魚の飼育初心者にもオススメな小型美魚として観賞魚も扱っているペットショップであれば大体販売されています。
そのお値段もかなりリーズナブルで、1匹あたり180〜200円前後で販売されており、ショップによっては数匹まとめ売りされている事もあります。
群を作る性質があるので数匹まとめて購入した方が魚も落ち着きやすく、お値段も5匹購入したとしても1500円程度なのでかなりお得な熱帯魚だと思います。
他にどんな仲間がいるの?
ネオンドワーフレインボーの他にもポピュラーな種類が多く、どの種類もネオンテトラやグッピーに負けない高い人気を誇っています。
・ハーフオレンジレインボー
成長すると体の後半部分が明るいオレンジ色に染まるメラノタエニアの仲間です。
前半部分はやや暗めのブルーやグリーンに染まり、メリハリのある美しさが本種の強みです。
飼育も簡単で温和な性格と成長すると約10cmにもなる存在感たっぷりの体から、大型の水草レイアウト水槽で群泳を楽しむ愛好家も少なくありません。
・ブルーレインボー
派手な体色が多いメラノタエニアや熱帯魚の中でも落ち着いた色彩を放つ種類です。
腹側はうっすらとオレンジ色が乗り、暗めのグリーンの体色の上にブルーの光沢がクールな美しさを演出します。
・コームスケールレインボー
「コームスケール(櫛のようなウロコ)」を持つレインボーフィッシュの仲間です。
体型はメラノタエニア属と変わりませんが、こちらは「グロッソレピス」というメラノタエニアとはちょっと違う種類です。
成長すると15cm近くまで成長する存在感のある種類であり、成長する毎に体高が盛り上がってくるため貫禄に溢れた姿となります。その体色は明るいレンガ色にシルバーの光沢を放つウロコという深みのある美しさをしています。
ネオンドワーフレインボーの飼育のポイント概略
性格も穏やかで美しく、丈夫なために初心者向けとしてオススメされる程飼育難易度が低い種類ではありますが、何も気にせず飼育を始めると体調を崩したり早死にしてしまいます。
そんなネオンドワーフレインボーの飼育ポイントは
- 中性〜弱アルカリ性の清浄な水質を保つ事。
- 餌の与え過ぎに注意する事。
- 隠れ家を用意する事。
が主に挙げられます。
ネオンドワーフレインボーの飼育方法について
・購入、導入について
とてもポピュラーな種類であるため熱帯魚を扱っているショップであれば、ほぼ確実に販売されています。その殆どが東南アジア等で繁殖されたブリード個体であり、まだ真の発色を見せていない2〜3cm程のあどけない幼魚です。
すぐに購入したいところですが、まずは健康チェックをします。
体に白い点や粉状の付着物がないか、ヒレや口先が不自然にボロボロになっていないか、充血やウロコの膨らみがないか、泳ぎ方もキビキビとして元気が良さそうか等しっかり観察してチェックをしましょう。これを怠ると水槽内に病気や寄生虫を持ち込んでしまう原因となってしまいます。
水槽に導入する際は、必ず水合わせを行います。
まず、水を少し抜いた水槽に袋ごと15〜20分程浮かべて水温を合わせます。次に、袋を開けて中の水を1/3程捨て、水槽の水を足します。その後10〜15分程様子を見て、ネオンドワーフレインボーに異常が見られなかったら先程と同じ事を2回繰り返します。再三観察して異常がなければ水槽に導入します。
Q,何で導入直後に餌をあげたらいけないの?
A,魚達は新しい環境になれるまで時間がかかるから。
家族として迎え入れたらやっぱりすぐに餌をあげたくなる。その気持ちは良く分かります。犬や猫、小鳥等なら家に連れて来てから数時間後には餌を食べさせても良いと思います。
しかし、魚はそうはいきません。魚達は新しい環境になれるまで時間がかかり、餌を与えてもあまり食べなかったり吐き出してしまう事が多いのです。このような残餌は腐敗して水槽の水質を悪くする原因になってしまいます。
また、魚達は稚魚でない限り、犬や猫と違って毎日餌を食べなければ体調に支障が出るような生き物ではありません。そのため導入後は1〜2日程様子を見てから餌を与えると、環境にも慣れ空腹になった事から餌食いが良くなり残餌も少なくて済むようになります。
・水槽、水質、水温について
ネオンドワーフレインボーは大きくても5〜6cm程の大きさのため、2〜3匹であれば30〜45cm水槽でも飼育できます。また、10匹かそれ以上の群を飼育したい場合は60cmかそれ以上の大きさの水槽での飼育が水質が安定しやすいのでオススメです。
水質は中性〜弱アルカリ性の新しくてキレイな水を好んでいるため、水質の維持に努めましょう。
水温は23〜27℃くらいが適しており、最高でも28℃を越えないようにサーモスタットや自動設定ヒーターで水温を安定させます。また、ヒーターの故障や水温がすぐに分かるように水温計を設置すると安心です。
・フタについて
ネオンドワーフレインボーは意外とよく泳ぐ種類なので、何かの拍子に驚いて水槽を飛び出してしまう事があります。飛び出し防止のためにもフタはしっかり設置しましょう。
・照明器具(ライト)について
ライトは昼夜の明るさのメリハリをつけられるので、規則正しい生活リズムを作る他、レイアウトに使う水草の健康な成長を促したり、魚達の観賞のためにも必要なアイテムです。ライトの点灯、消灯を自動でやってくれるタイマーも販売されているため兼用するのもオススメです。
・フィルターについて
飼育ポイントの1つです。
ネオンドワーフレインボーは水が古くなったり汚れたりするのを嫌う種類のため、水質には気を使う必要があります。
小型水槽であれば、投げ込み式フィルター、パワーフィルター、外掛け式フィルター、底面式フィルター等が手軽に使いやすいです。また、60cm水槽やそれ以上の大きさの水槽の場合は濾過力の高い上部式フィルターや外部式フィルターが適しています。
濾過材は汚れやアンモニアを吸着する作用のある炭やゼオライトが重宝します。どちらも水質をアルカリ性に傾ける作用がありますがゼオライトは特にアルカリ性に傾ける作用が顕著なので、個別で使い分けたい方は使用量の調節をする必要があります。
・底砂について
ネオンドワーフレインボーの飼育には、極端に水質を酸性に傾ける作用のある底砂でなければ使用する事ができます。中性〜弱アルカリ性に保ちやすい大磯砂や川砂、珪砂等がオススメです。
・水草や隠れ家等のレイアウトについて
飼育ポイントの2つ目です。ネオンドワーフレインボーをはじめとするレインボーフィッシュの仲間は水草にイタズラをする事が少ないため、水質に適応できる水草であれば植える事ができます。
「ミクロソリウム」や「ウォータースプライト」、「アヌビアス」「アンブリア」等は水質の適応力が高いのでオススメの水草です。
植え込まれ、茂った水草は魚達の良い隠れ家となります。
岩や流木も水槽内に自然な雰囲気を与え、魚達の隠れ家になってくれます。しかし、流木はそのまま使うとアクが出てしまい水質を急変させてしまうため、使用する際はあらかじめショップでアク抜き済みの流木を購入しておくとレイアウトの際に便利です。
アク抜きをしていない流木の場合は鍋で煮詰めたり水で満たした大きめのバケツに流木を沈め、数日かけてアク抜きをする必要があります。
Q,流木のアク抜き時間を早めたい!
A,「炭」 を使ってみよう。
しかしアク抜きは必要な工程です。アク抜きをしていない流木を水槽に入れて水質が急変させて魚達の調子を崩すわけにはいきません。
「急がば回れ」「焦りは禁物」なのがアク抜きなのですが、あるアイテムをアク抜きバケツに入れる事でその時間を多少短縮する事ができます。
それは「炭」です。
特に吸着力が強いと言われる「ブラックホール」という炭商品は実際にアク抜きに使われる事もあるため、どうしても時間を短縮したい方は是非試してみてください。
・水草レイアウト水槽の際の注意点について
レインボーフィッシュと水草は非常に相性が良いため、水草レイアウト水槽にテトラ系やグッピーと同じくらい高確率で泳いでいます。
しかし、そこには落とし穴があります。水草はライト点灯時は光合成を行い酸素を水中に放出してくれるのですが、ライト消灯時の水草は「呼吸」をするため、水中の二酸化炭素濃度が上がってしまいます。その結果、夜寝ている魚達が酸欠を起こしてしまい、最悪の場合は死んでしまったり後遺症が残ってしまう事があります。
これを防ぐためにも、ライト消灯時に必ずエアポンプとエアストーンを使って水槽内にエアレーションを施しましょう。
・給餌について
ネオンドワーフレインボーは好き嫌いなく何でもよく食べてくれます。
人工飼料も顆粒、ペレット、フレーク等タイプを問わず、乾燥飼料や冷凍飼料も食い付きが良いです。
給餌は飼育ポイントの3つ目になっています。扁平な体に見合わずよく食べる魚なので、つい餌を与え過ぎてしまう事もあるかも知れません。数日に1回与え過ぎてしまうくらいならまだ良いのですが、これが毎日続いてしまうと肥満になってしまい、ヤケに肉厚な体型になってしまいます。
肥満は食用魚なら「脂が乗っている」として喜ばれますが、アクアリウムの世界では好ましい状態ではありません。たっぷりついてしまった内臓脂肪が内臓を圧迫したり機能不全を引き起こす原因となってしまい、突然死を遂げたり繁殖に支障が出てしまいます。
そのため、毎日餌を与える場合は1日に1〜2回、3分程で食べきれる量を与えます。1日置きの場合は2〜3回に分けて3分程で食べきれる量を与えます。
・混泳、タンクメイトについて
ネオンドワーフレインボーはとても穏やかな性格をしており、水質に適応さえすれば様々な種類と混泳する事ができます。
弱アルカリ性の水質であれば、レインボーフィッシュやバンブルビーゴビー等と混泳する事ができます。
また、中性の水質の場合はハニードワーフグラミー等のグラミーの仲間やラスボラ等の小型のコイの仲間、ゴールデンデルモゲニーやグラスエンゼルとも混泳が可能です。グッピー、プラティの仲間との混泳も楽しむ事ができます。
水槽にコケ取り要因を迎えたい方は、水質を中性に維持するとオトシンクルスの仲間やタニノボリの仲間、イガカノコガイ等の貝類やヤマトヌマエビの仲間を導入できます。
Q,ネオンテトラやエンゼルフィッシュとの混泳をしたいけど無理なの?
A,好む水質が極端に違わなければ混泳は可能です。
ネオンドワーフレインボーは若干弱酸性寄り程度であれば適応してくれる事も多く、中性の水質を維持する事ができればエンゼルフィッシュやネオンテトラ等とも混泳させる事ができます。
しかし、極端に酸性寄りの水質を好む種類との混泳は避けた方が無難です。ネオンドワーフレインボーは酸性寄りの水質だと肌荒れを起こしやすくなってしまいますし、中性の水で極端に酸性寄りの水質を好む種類を飼育すると体色が褪せてしまったり、体調を崩したりする事があります。
・水槽の掃除、水換えについて
水槽やフィルターの汚れ具合や飼育している匹数にもよりますが、ネオンドワーフレインボーは古い水や汚れた水を嫌うため、1週間に1度、1/3〜1/2の量の水換えを行います。
ガラス面のヌメリやコケ等の汚れはスポンジやスクレイパーで落とし、底砂や隠れ家に溜まった汚れはクリーナーポンプで吸い出します。
レイアウトに使っている流木や岩が汚れている場合はブラシで汚れを擦り落としますが、あまりにも汚れている場合は1度水槽から取り出し、流水に当てながらブラシで汚れを擦り落とします。
水草が伸びすぎている場合は、伸びすぎた部分をハサミで切り揃えたり、殖えすぎた子株やコケだらけの葉を切ってトリミングします。トリミングによって出た不要な葉は大きめのネットを使うと取り出しやすくなります。子株は水を張った別容器に保管しておくとレイアウトの時に再利用できます。
フィルターの掃除についてですが、
投げ込み式フィルターやパワーフィルター、外掛け式フィルターは意外と汚れやすく目詰まりもしやすいので目詰まり解消も兼ねて軽く洗います。オールインワンタイプの濾過材のため、何度も洗って使っているうちに濾過材の汚れや傷みが酷くなったり濾過力が落ちて来たと感じたら新しい物と交換します。
底面式フィルターの場合は底砂自体が濾過材となります。そのため底面式フィルターの掃除は数ヶ月〜半年に1度くらいの感覚で底砂から取り出してから洗います。この際は底砂も取り出し、洗っておくとかなりの汚れを落とす事ができます。
上部式フィルターの場合は、物理濾過材であるウールマットを主に洗います。水にさらして揉み洗いして汚れを落としますが、何度も洗って使っているうちにボロボロのヨレヨレになってしまった物は新しい物と交換します。
外部式フィルターも同じで、物理濾過材を主に洗います。
濾過材の中でも科学濾過材や生物濾過材は頻繁に洗う必要はなく、科学濾過材は2〜3週間に1度、生物濾過材は相当汚れていない限りは2〜3週間に1度か2週間〜1ヶ月に1度くらいの間隔で軽くすすぎ洗いをします。
揚水パイプやストレーナーも内側は意外と汚れているので、パイプ用のブラシを使って汚れを落とします。
器具やレイアウト、底砂の掃除や水抜きが終わったら水を足していきます。この水は必ずカルキ抜きをして、水温を水槽の水と合わせておきます。この水を水槽に足し終わり、切っていた電源を戻せば水槽掃除と水換えは終了です。
Q,水換えや掃除で減った分のバクテリアはどうしよう?魚達の体も心配。
A,水換えや掃除によって濾過バクテリアが多少なりとも減ってしまうことは仕方ありません。
濾過バクテリアが自然に増えるのを待つという手もありますが、「濾過バクテリアを足す」という方法もあります。濾過バクテリアは商品として販売されており、水換え後に水槽に添加する事で濾過バクテリアを増やす事ができます。
ネオンドワーフレインボーがかかりやすい病気と治療方法について
丈夫な種類としても知られているネオンドワーフレインボーですが、水質が悪化したり水温が急変すると体調を崩してしまいます。
・白点病
症状としては、初期段階では体に数個の小さな白い点が見られます。症状が進行するにつれて白点の数は増えていき、全身が白点まみれになってしまいます。この白点はエラを塞いでしまうため、病魚は呼吸困難になってしまったり、食欲も落ちて最終的には死んでしまいます。
発生の原因は水温の急変や水質の悪化が主な原因なので、水温を一定に保ち、良好な水質を作り、維持する事が予防策となります。
治療方法は魚病薬による薬浴と塩水による「塩水浴」があります。薬浴の場合ですが、アグテンやメチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF系の魚病薬を隔離水槽に規定量投薬します。この薬浴の間は3〜5日に1度、1/2の量の水換えを行い、減った分の薬を足します。
白点病はしつこい病気でもあるため、治療には長い期間を要する事もあります。白点がなくなってきたら、1/3〜1/2の量の水換えを数日毎に行い徐々に薬を薄めていきます。
塩水浴は白点の少ない初期段階の時に用いられる治療方法で、アルカリ性にも耐性のある種類であれば使う事ができます。方法は、水10Lに対して塩を50g入れて作った塩水の中に病魚をしばらく泳がせます。塩水が効いてくれれば数日後には体の白点が落ちている事もあります。
・ウーディニウム症(コショウ病、ベルベット病)
症状は、体表に白〜黄色っぽい色の粉状の付着物が現れ、病魚はヒレをたたんでフラフラと力なく泳いだり、時々体をプルプルと小刻みに震わせたりします。伝染力も強いため、場合によっては水槽を1度リセットし、魚達をトリートメントする必要が出てきます。
原因は水質の悪化や病気の魚を水槽に連れ込んでしまった事が挙げられますが、水換えやフィルターの掃除をサボったりしていると急に発症する事もあります。
治療には魚病薬を使った薬浴か塩水による塩水浴を行います。
薬浴の場合はメチレンブルーやマラカイトグリーン、グリーンF系の魚病薬を規定量投薬して治療します。薬が効いてくると底面に粉のような物が落ちてきます。薬浴中は5〜7日に1度1/3〜1/2の量の水換えを行い、減った分の薬を足します。体表の粉のような付着物がなくなったら、3日毎に水換えを行って徐々に薬を薄めていき、薬がほぼなくなったら水槽に戻します。
症状が軽い場合は塩水浴による治療ができます。10Lに対して30〜50gの塩を溶かして作った塩水に病魚を泳がせます。また、この塩水にマラカイトグリーンを混ぜる事でよりスムーズに治療を進める事ができます。
・水カビ病(綿かぶり病)
原因は水槽内の生物濾過が機能しておらず、餌の残りにカビが生えてしまう状態になっている事等が挙げられ、そのカビの一部が魚の傷口等に付着した事で発症してしまいます。
治療には薬浴を行いますが、ヒレ先や体表にほんの僅かに付着している程度であればピンセットで除去してから薬浴をしますが、症状が進行している場合は患部を傷付けないように水カビの根元部分を切り取ってから薬浴を行います。症状がかなり進行していたり水カビの除去に自信がない場合はそのまま薬浴します。
魚病薬はグリーンF系の薬やメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン等を使います。綿かぶり病の患部はカビの菌糸が浸食しているため白く変色し組織も脆くなっているため、症状の進行度によっては完治にかなりの時間がかかります。
薬浴治療の間は3〜5日毎に1/3〜1/2の量の水換えを行い減った分の薬を足します。薬浴は患部の白濁が治まるまで続けます。病魚が治るまでの間に飼育環境の改善をする事も忘れずに。
・松かさ病
病原菌がウロコの下に入り込み、分泌物が溜まってしまう事でウロコが逆立ってしまいます。体に充血が見られる事もあります。
原因は水質の悪化や病気の魚を水槽に連れ込んでしまった事等が挙げられますが、残った餌等の古い餌を食べてしまった事で発症する事もあります。
治療にはグリーンFゴールドや観パラD、パラザンD、エルバージュ等を使い、薬浴を行います。治療中は3〜5日に1度、1/2の水換えか全換水をして新たに魚病薬を投薬します。松かさ病に限らずエロモナス病は治療にかなりの時間が必要になるため、普段から健康チェックや水質管理に気を遣うようにしましょう。
ネオンドワーフレインボーの繁殖について
ネオンドワーフレインボーは、レインボーフィッシュの中でも比較的繁殖が容易な種類です。水質を清浄に保ち、しっかり飼い込めば産卵行動を見せてくれる事もあります。」
・ペアがいないと始まらない!雌雄判別について
繁殖をする際に健康に飼う以外の重要なポイントがあるとすれば、ちゃんと雌雄がいるかどうかだと思います。幸いにも、ネオンドワーフレインボーは雌雄判別が簡単な種類なので、慣れてしまえばショップでも簡単に狙って揃える事ができます。
雌雄別の特徴
オスの特徴
- しっかり飼い込むと背ビレ、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレの縁が赤く染まる。
- オス同士が小競り合いをするようになる。
- メスにアプローチをするようになり、その際に頭部から背中にかけてゴールドの発色を見せる。
- 体高がメスより若干高い。
メスの特徴
- オスより体高がやや低め。
- お腹がふっくらしており、体も若干厚みがある。
- しっかり飼い込むと背ビレ、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレの縁が黄色に染まる。
これらの特徴が挙げられます。
この特徴を当てはめれば、ショップで販売されている幼魚サイズでも雌雄判別をする事ができるので、ペアを揃えて繁殖を目指したい方は必見です。
産卵はどのようにして行われるの?
ネオンドワーフレインボーはライトの点灯、消灯関係なく産卵を開始します。
オスはウィローモスや背の低い水草の元にメスをエスコートします。この際に体色を暗くして頭部のゴールドラインを強く発色させるため、点灯前の水槽では非常に目立ちます。
メスはオスと体をピッタリと合わせ、小刻みに震えながら産卵をします。1度の産卵数は少なく、時間帯や日にちを変えて小分けにして産み付けられます。産まれた卵は1mm程の大きさで粘着性があり、水草やウィローモスにくっついています。
卵の管理方法について
産み付けられた卵は非常にカビが生えやすいため、回収したらそのままキレイな水を張った隔離水槽に移すか、メチレンブルーを水で薄めた物に1度浸けてから隔離水槽に移します。このメチレンブルーを利用した防カビ方法は休眠卵ではない卵生メダカの繁殖にも利用できます。
卵の管理の水温は23〜27℃くらいで良く、隔離してから2〜3日もすれば未受精卵は白濁するので発覚次第スポイトで取り除きます。エアレーションは水流の発生や酸欠防止のためにかけておきますが、卵が水流で巻かれてしまわない程度の弱めのエアレーションにします。
この状態を7〜10日程維持していると、何も問題がなければ少しずつ孵化が始まります。産まれたばかりの仔魚は小さく、5mm程の大きさしかありませんが、お腹には大きなヨークサックが付いているので2〜3日は餌を与える必要はありません。
仔魚〜幼魚までの管理方法について
ネオンドワーフレインボーの仔魚は、親と同様に水質にデリケートな面があるため、いかに水を汚さずキレイな水質を維持するかが大きなポイントとなってきます。
孵化後2〜3日の間はヨークサックが吸収され、泳ぐようになるまで様子を見ます。
ヨークサックを吸収し終わって泳ぐようになってから餌を与えますが、仔魚は非常に小さいためPSBと稚魚用のパウダーフードを与えます。また、ミカヅキモやミドリムシ等のプランクトンが通販で取り扱われている事もあるため、事前に購入して与えるという方法もあります。
餌を食べるようになると、当然フンをするようになります。とても小さいフンですし仔魚の体も非常に弱いため、まだ水換えはせず、フンが気になるようであればスポイトで残餌ごと取り除きます。死んでしまった稚魚もいれば、こちらもスポイトで取り除きます。
孵化後10日程経つと、仔魚の体も多少しっかりしてきます。泳ぎ方は弱々しいですが、少しずつ泳げる距離が延びてきます。まだ口が小さいため、餌にはPSBを規定量添加し、パウダーフードも少量与えます。仔魚によっては水面までやって来て積極的に餌を食べる個体も出てきます。
孵化後20日程経つと、その大きさや体つきもメダカの稚魚のようになってきます。しかし、まだ小さいためPSBとパウダーフードが手放せません。この頃になると少量の水換えであれば耐えられるようになり、スポイトで底面の残餌やフン、死骸を取り除いたら、あらかじめ用意しておいた新しい飼育水を足していきます。
孵化後30日程経つと、か弱い見た目をしていた仔魚も魚らしい見た目になり、稚魚と呼べる姿に成長します。まだ口は小さいのでPSBとパウダーフードを与えますが、食欲は旺盛なのでしっかり食べているか確認しながら与えるようにします。
孵化後40日程が経つと、大きさも1cmを越えてきます。より魚らしい姿になり、胸ビレも確認でき、丸い形であった尾ビレも二又に分かれてきます。まだまだ口は小さいですが、ブラインシュリンプのベビーくらいであれば食べれるようになっているためブラインシュリンプを孵化させるか冷凍のブラインシュリンプベビーを解凍して水流に乗せるようにして少量与えます。残餌やフン、死骸はスポイトで取り除き、水を足します。
孵化後50日程が経つと、個体によっては1.5cm程の大きさに育っている個体もいます。この頃になると、より魚らしい見た目となり、背ビレや腹ビレ、尻ビレも小さいながら確認できるようになります。体もウロコに包まれるようになり、透明な体色も薄炭色っぽくなり、僅かながら光沢が見られるようになります。
孵化後60日程が経つと、成長の早い個体は2cm程の大きさにまで成長します。こうなってくると水換えも親魚のようにやっても問題はなくなります。体高も僅かに出てきて尾ビレも二又に分かれています。親魚のような強いネオンブルーはまだ発色していませんが、ウロコの光沢は僅かにネオンブルーの輝きが見えるようになります。
孵化後80日程が経つと、ほぼ親魚のミニマムバージョンのような見た目になります。餌も細かくした人工飼料を食べられるようになり、体高は親魚と比べると低いですが、ネオンブルーの光沢が見られるようになります。背ビレ、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレもうっすらと黄色っぽく染まってきます。
稚魚が成長するにつれて、ネオンブルーの光沢の面積が増えていく様子を楽しめますし、さらに1ヶ月程経てばショップで販売されている個体とほぼ同じくらいの大きさになります。
その頃には雌雄それぞれの特徴が出始めるので、その変化を観察して生体を見る「目」を養う事もできます。何より自分の手で育て上げた魚なので、その喜びも大きな物になり、とても愛着の湧く個体となるでしょう。
Q,稚魚が頭を下にして滑るような泳ぎ方をする。尾ビレも何だかくっついてるみたい…。
A,頭を下にして滑るようにして泳ぐのは「ベリースライダー」という病気の症状で、主にメダカ等の稚魚に見られる病気です。
水質の悪化によって神経に障害が生じてしまい、正常に泳ぐ事ができなくなってしまいます。神経障害のため完治は望めず、かかってしまった稚魚も短命に終わってしまいます。
尾ビレがくっついてしまい、泳ぎづらそうにしている症状は「ハリ病」という病気で、こちらもメダカ等の稚魚によく見られる病気の1つです。ベリースライダーと同じように水質の悪化が原因で怒る病気ですが、前述した病気と違って神経系出入りないため治療をする事ができます。
10Lに対して30〜50gの塩を溶かして作った塩水で塩水浴をさせると症状が改善する事があります。
また、メチレンブルーによる薬浴でも効果があります。しかし、尾ビレがくっついてしまうという症状のため、治療した後もその後遺症で尾ビレの形が歪になってしまいます。
まとめ
この魚は本当に美しいだけでなく、丈夫で飼いやすく繁殖も楽しむ事ができます。
繁殖もグッピーやプラティのように簡単ではなく、少しコツがいるため楽しみが尽きない魚でもあります。
混泳についてもネオンドワーフレインボーはとても大人しく、水質さえ合えば多くの種類の魚達をタンクメイトとして華やかな混泳を観賞できます。これだけのポテンシャルを秘めていながらお値段も安価という非の打ち所のないこの魚が気になる方は、是非ご自宅に迎え入れてみてはいかがでしょうか?