はじめに
清楚な美しさと力強い泳ぎを見せる日本淡水魚は、大型水槽で遊泳スペースを広くして飼育する事でより迫力と野性味、スピード感のある水景を眺めることができます。
しかし、こう思ったことがある方も中にはいるのでは無いでしょうか?
日淡は確かにミニマムサイズの種類もいるのですが常に見られる種類ではありませんし、日淡の多くは遊泳力が強いので水槽もある程度広くする必要があります。しかし、アクアリウムの世界は広く、深いです!
熱帯魚ではありますが、小型水槽で飼育でき、日淡に通じる美しさを持つ種類がいるのです。
東南アジア出身のこの魚は、しっかり飼い込むと日淡の「ある種類」によく似た美しい色彩を見せてくれます。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンってどんな種類?
画像引用元:チャーム charm 楽天市場店
エリスロミクロンは全長2〜3cm程しかない超小型のコイの仲間です。
群れを作り、その小さな体で各ヒレを振るわせながらキビキビと泳ぐ様子が可愛らしい種類ですが、ミクロラスボラの中では性質は臆病な面があります。
飼育環境に慣れるまでは水草や流木の陰に隠れて泳ぐ程臆病なので、気が強い種類との混泳は避けた方が無難です。
また、入荷、導入直後の個体や若い個体は赤みがかった茶色の縞模様、尾柄にブラックスポットという地味な体色をしていますが、大切に飼い込む事でオス個体は目を見張るような美しいメタリックブルーの縞模様と白い腹、各ヒレが淡い朱色に染まり、エラブタの赤も際立ちます。
別名はあるの?
多くのショップでミクロラスボラ・エリスロミクロンという流通名で販売されていますが、最近では元々コイの仲間でもダニオの仲間に分類されいるという事もあり、「ダニオ・エリスロミクロン」と呼ばれる事もあります。
生息地は?
東南アジアの国・ミャンマーにある「インレー湖」に生息しています。
この湖は中性〜弱アルカリ性の水質のため、エリスロミクロンの飼育にもこの水質を再現する必要があります。また、この湖の水温も20〜25℃と低めの水温となっています。
何を食べているの?
エリスロミクロンはとても小さな種類なので、野生下では蚊やユスリカのように小さな落下昆虫やエビ等の生まれたばかりの幼生、微細なプランクトン等を餌にしているとされています。
飼育下では人工飼料に慣れるまでは冷凍、あるいは沸かしたブラインシュリンプのベビーやコペポーダを与えます。人工飼料を与える場合は、細かい顆粒タイプの餌や、フレークタイプを指で細かく擂り潰しながら与えます。
入手できる場所と大体のお値段は?
熱帯魚も扱っている総合ペットショップやアクアショップで販売しています。
前者の方は常に見られる訳ではありませんが、後者の方は比較的取り扱っている事が多いです。近所のペットショップで取り扱ってなかった場合は通販で購入できます。
1匹あたり大体300〜500円程で販売されている事も多く、中にはまとめ売りをしているショップもあります。
他にどんな仲間がいるの?
エリスロミクロンが含まれていた「ミクロラスボラ」には小型の種類がたくさんいます。
常に見るのは難しい種類もいますが、群泳で発揮されるその美しさは見る者を虜にしてしまう程の魅力を秘めています。
・ミクロラスボラ・ハナビ(ファイヤーワークス・ラスボラ)
画像引用元:チャーム charm PayPayモール店
こちらもミャンマーのインレー湖出身の小型種です。
2〜3cm程の小型美種で、絶好調の発色を見せると体の深紅や紺色の体色に金の細かなスポットが「花火」のような美しさがあります。
エリスロミクロンよりは活発な性格をしており、オス同士の小競り合いやメスへのアプローチも積極的です。
・ミクロラスボラ・ルベスケンス
「ミクロラスボラ」と呼ばれる小型種の中では少し大きめの種類です。
全長は4〜5cm程で、ピンクがかった体色と体側に入る濃厚な朱色のラインが可愛らしく、「ピンク・ラスボラ」と呼ばれる事もあります。
そのピンクの群れはファンタジーな雰囲気を醸し出し、水草にも良く映えます。
・ミクロラスボラ・ブルーネオン
ミクロラスボラの中で最もポピュラーな種類です。
背中側は光の反射によって青く輝き、全身はメタリックグリーンに染まっています。
ミクロラスボラは中性〜弱アルカリ性の水質を好む種類が多い中、ブルーネオンは弱酸性の水質を好んでいるため飼育の際はご注意ください。
・ミクロラスボラ・ナナ
ナナには「小さい」という意味があり、小型種揃いのミクロラスボラの中でも小型の種類です。
背ビレのブラックスポットもよく目立ち、絶好調だと尻ビレの先端も黒い発色をします。
・ミクロラスボラ・ガテシィ
「ミクロラスボラ・パープルネオン」とも呼ばれる種類で、同種と比べるとスマートな体型をしています。
一見ブルーネオンのように見えますが、体側の体色はネオングリーンの中に青みがかった紫色の輝きが見えます。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンの飼育のポイントは?
ちょっぴり臆病な性格ですが、
飼い込むとじわじわと美しさを放ってくれるエリスロミクロン。
飼育難易度はそれほど高くはありませんが、その小さな体を雑に扱ってしまうと短命に終わってしまいます。
そんなミクロラスボラ・エリスロミクロンの飼育のポイントは
- 体が小さいので水流は穏やかにする事。
- 口も小さいので餌のサイズも細かくする事。
- 中性〜弱アルカリ性の水質を保つ事。
- 高水温に注意する事。
が主に挙げられます。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンの飼育方法について
・購入、導入について
エリスロミクロンはとても小さい魚なので健康チェックが難しいかも知れませんが、しっかりと様子や体を観察して健康的な個体を入手するようにしましょう。
体表に白い粒々した物や粉状の付着物、充血はないか、ウロコが逆立っていたりしていないかも観察します。また、ヒレが不自然にボロボロになっていたり、溶けているように見える個体は購入を避けます。泳ぎ方もフラフラしていたり、ずっと水底でぐったりしている個体も購入は避け、キビキビとヒレを動かして元気良く泳いでいる個体を選びましょう。
お目当てのエリスロミクロンを購入できたら、お次は水槽への導入です。
いきなり水槽に入れてしまうと体の小さなエリスロミクロンは環境の変化に耐えられずに弱ってしまったり、最悪ショック死してしまう事もあります。
まずは水を少し抜いた水槽に魚の入った袋を15〜20分程浮かせて水温を合わせます。
次に、袋の口を開いて中の水を1/3程捨て、水槽の水を袋に足します。その後10〜15分程様子を見て、エリスロミクロンに異常が見られなかった場合は先程と同じ事を2回程繰り返します。
これらの作業が終わった後もエリスロミクロンに異常が見られなければ晴れて水槽に導入しましょう。
Q.網を使って導入しても大丈夫?
A. 網を使っても良いですが「網の状態」に気を付けましょう。
アクアリウムの必需品の1つと言えるのが「網」です。
魚を移す際や水槽内を漂うゴミを取り除くのにも使えます。
しかし、魚を掬う際に網を使う場合は網の繊維が傷んで毛羽立っていないか確認しましょう。
理由ですが、魚にとってはこの毛羽立った部分がウロコや体表を傷付けたりする危険な物であり、体の小さな小型種の場合は網に触れただけで簡単に体表が擦れてしまいショック死する事もあります。
・水槽、水質、水温について
エリスロミクロンは小型種なので、30cm水槽から飼育する事ができます。
30cmキューブであれば5〜10匹飼育する事ができ、
使用するフィルターによっては10匹以上を水槽に入れる事ができます。
45cmや60cmであれば更に多くの匹数を飼育できますが、
体が小さいので見失わないように注意が必要です。
飼育ポイントの1つ目ですが、
エリスロミクロンは生息地の環境によって中性〜弱アルカリ性の水質を好んでいます。
この水質をキープする事はエリスロミクロンの健康的な飼育と色揚げにも効果的なので頑張って環境維持に努めるようにしましょう。
飼育ポイント2つ目は水温です。
生息地であるインレー湖は水温は20〜25℃と低めの水温のため、サーモスタット付き、あるいは温度がピタリと決まっているヒーターを入れて水温を保ちます。
メダカ飼育用のヒーターに23℃で設定されている商品もあるのでオススメです。また、水温がちゃんと保たれているか確認するために水温計も取り付けておくと安心です。
・フタについて
エリスロミクロンは臆病な性格ですので、何かの拍子に驚いてパニックになり水槽から飛び出してしまう事があります。コイの仲間という事もあって遊泳力は意外と強いのです。
・照明器具(ライト)について
昼夜のメリハリをつけたり、水草を育てるためにもライトは必要な道具の1つです。ライトの照明時間を管理してくれるタイマーも販売されているので合わせて使ってみるのも良いでしょう。
・フィルターについて
エリスロミクロンの飼育は基本的にどのフィルターを使っても大丈夫ですが、水流を穏やかにする必要があります。
これは飼育ポイントの3つ目で、
体の小さなエリスロミクロンは強い水流だと泳ぎ疲れてしまい、体力を落として弱ってしまいます。
元々穏やかな水流を好む種類なので、どんなフィルターであっても水流を調節するようにしましょう。
また、上部式フィルター、外部式フィルター、パワーフィルター、外掛け式フィルターの場合は必ずストレーナーにスポンジを取り付けるようにすると、エリスロミクロンがストレーナーに挟まれてケガをする可能性を減らす事ができます。
・底砂について
エリスロミクロンは中性〜弱アルカリ性の水質を好んでいるため、底砂は大磯砂や川砂を使ったりメダカ用のソイルにサンゴの骨や小さな貝殻を少量入れた物が向いています。
・水草や隠れ家について
エリスロミクロンは臆病な面があるため、慣れないうちは水草や流木の陰、レイアウトグッズの中で隠れながら泳いでいる事が多いです。
そのため水槽レイアウトを複雑にし過ぎると姿を確認できず、健康チェックがおろそかになってしまうため注意が必要です。
エリスロミクロン自体は水草にイタズラをせず体色も美しい種類なので水草レイアウトと非常に相性の良い魚です。水質に適応できる水草であれば植える事ができます。
「アヌビアス・ナナ」や「ウォーターカーナミン」等もショップで入手しやすい水草です。現地の環境に寄せてみたい方は「クリプトコリネの仲間」や「ミクロソリウム」も育て易くオススメです。
・水草レイアウトの注意点について
水草レイアウトの失敗談で意外とあるのが「二酸化炭素中毒」です。
水草はライトが点いている間は光合成をして水中に酸素を放出します。水草の種類によっては葉から細かい気泡を放出する様子も観察でき、理科の授業で学ぶ「光合成」の様子がより良く分かると思います。
しかし、ライトが消えて水槽内が暗くなると水草は「呼吸」をします。今度は水中に二酸化炭素を放つため、水槽内の二酸化炭素濃度が上がってしまいます。
もし、ふんだんに水草を使った水草レイアウト水槽で飼育する場合はライト消灯時は必ず水槽に「エアレーション」をすると、この事故を防ぐ事ができるので一式揃えておくと安心です。
・給餌について
飼育ポイントの4つ目です。
エリスロミクロンは体だけでなく口も小さいため、餌のサイズに気を遣ってあげましょう。冷凍か沸かしたてのブラインシュリンプベビーは大きさも小さいので非常に良い餌です。
イトミミズやアカムシを与えたい場合はハサミで細かくしてから与えます。
人工飼料を与える場合はフレークタイプの餌は指で細かくすりつぶしながら与えます。顆粒タイプは粒がかなり細かいタイプも販売しているため、そちらを利用するのも良いです。
餌は1日1〜2回、3〜5分で食べきれる量を与えます。
エリスロミクロンは慣れるとすぐに人前に現れて可愛らしい姿と餌を食べる様子を見せてくれるようになります。その姿を見ながら、しっかりと各個体が餌を食べているか確認をするのも忘れないようにしましょう。
・混泳、タンクメイトについて
エリスロミクロンは大人しい性格で小型種なので、気が強い種類や体が大きく活発な種類との混泳には不向きです。
例)ゼブラダニオ、シクリッド、ソードテール等
しかし、同サイズの種類や大人しい種類とは混泳ができます。
ミクロラスボラを集めたり、アフリカンランプアイの仲間やレインボーフィッシュであるバタフライレインボーの仲間とも混泳ができます。
コケ取りにはヌマエビやイシマキガイの仲間を入れられます。
Q.巻き貝の飼育の注意点は?
A. 高水温と水質の急変、悪化に気を付けましょう。
イシマキガイやイガカノコガイは水槽に入れるとガラス面に張り付いてコケやヌメリを食べてくれる働き者です。
しかし、高水温や水質の悪化に弱い面があるので導入の際はヌマエビと同じようには水合わせをしてから水槽に入れましょう。その後は水質に気を付ければせっせとコケを食べてくれます。水質は中性〜弱アルカリ性を好んでいます。
飼育中、もし巻き貝が死んだ場合はすぐに取り除くようにします。
これは、死んだ貝はすぐに腐敗して水質を急変、悪化させてしまうからです。巻き貝も活発に活動しているか観察するようにしましょう。
・水槽の掃除、水換えについて
飼育している匹数や水槽のサイズにもよりますが、
週に1回、1/4〜1/2の量の水換えをします。
ガラス面のコケやヌメリはスポンジやスクレイパーを使って落とし、底砂や流木等の根元に溜まった汚れはクリーナーポンプを使って水ごと吸い出します。
レイアウトに使っている流木や石が汚れている場合は水槽から取り出し、流水を当てながらブラシで汚れを擦り落としていきます。
水草が伸びていたり枯れた葉や子株が殖えてきた場合はトリミングを行い、水草の長さを調節したり殖えすぎた子株や枯れた葉を切り、網等を使って取り除きましょう。この時に出た子株は取っておくと別の水槽のレイアウトに利用できます。
Q.トリミングで出た水草はどう処理すべき?
A. 燃えるゴミに入れて回収日に出します。
水草をトリミングすると意外と枯れた葉や余分な葉が出てくるものです。
これらはそのまま燃えるゴミとして処理します。
決してやってはいけないのが「近くの川や山に捨てる事」です。水草は水上で生きられる種類も多く、中には日本の河川等に帰化してしまい在来種を脅かしてしまう事もあります。日本の自然を守るためにも、トリミングで出た水草は燃えるゴミとして処理しましょう。
フィルターの掃除ですが、これは毎回する必要はありません。しかし、濾過材の目詰まりやウールの部分に汚れが溜まっている場合は洗って汚れを落とします。
パワーフィルター、投げ込み式フィルター、外掛け式フィルターは複数の濾過材が1つになっているため、先程ご紹介したような掃除をします。濾過材の傷みや劣化が酷い場合は新しい物と交換します。揚水パイプやインペイラー、ストレーナーの内部にも汚れが溜まりやすいので専用のブラシで汚れを落としましょう。
上部式フィルター、外部式フィルターの場合は2週間〜1ヶ月に1度掃除をしますが、ウールマットは汚れやすいため水換えの度に汚れを確認し、洗って汚れを落とします。
繊維の傷みや汚れが酷くなったら新しい物と交換します。生物濾過材を洗う場合は飼育水で洗うとバクテリアの減少を多少抑える事ができます。
底面式フィルターの場合は底砂自体が濾過材となるので、数ヶ月に1度、水槽をリセットして底砂を洗います。
器具や水槽の掃除が終わったら、器具を水槽に設置しカルキ抜きをした新しい水を水槽に入れていきます。水も満たされたら器具の電源を入れて水換えは終了です。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンがかかりやすい病気と治療方法について
・白点病
色んな記事でも紹介していますが、本当によく聞く病気です。
症状は、体表に白い粒々とした物が付着し、放っておくとどんどん広がっていってしまいます。そして白点がエラを塞いだり、痒みからくるストレスで病魚は弱って死んでしまうのです。
発生のキッカケは水質の悪化や水温の急変、病気の魚を水槽や入れてしまった事等が挙げられます。
治療方法ですが、魚病薬を使った「薬浴」と塩水を使った「塩水浴」があります。エリスロミクロンは弱アルカリ性の水質を好んでいるので塩水浴も治療方法として使えます。
まず、病魚を別水槽に隔離します。薬浴をする場合はメチレンブルーやマラカイトグリーン、アグテンやグリーンF系の魚病薬を規定量入れて薬浴を行います。数日おきに1/2水換えをして、薄くなった分魚病薬を足します。全身の白点がなくなったら、水換えをして少しずつ薬を薄めてから元の水槽に戻します。
塩水浴の場合は10Lの水に対して50gの塩を入れて作った塩水の中で病魚を飼育します。これは「浸透圧」を利用したもので、白点病の原因となる寄生虫は浸透圧に耐えられず死んでいき、体表から離れていきます。全身の白点がなくなったら元の水槽に戻します。
☆意外と使える塩について
このように白点病治療にも使える「塩」ですが、魚のコンディションを高めるために水槽に少量入れるという方法もあります。ここにも浸透圧が関わっており、淡水魚は体内の塩分を出さないために排尿はほぼ淡水ですが、次第に塩分が失われてしまい調子がイマイチになる事もあります。
ここで少量の塩分を摂取すると体や腎臓の負担が減り、元気になる個体もいます。最近ではそのための塩タブレットも販売されているので、気になる方は是非試してみてください。
・水カビ病
病魚が綿を被ったように見える事から「綿かぶり病」とも呼ばれます。
発生のキッカケは、水槽内の生物濾過が上手く機能していない事が原因です。残った餌に発生した水カビの一部が魚体に触れたりする事で発症します。エリスロミクロンは小さいので、この病気にかかるとすぐにカビに覆われて死んでしまうので注意が必要です。
治療方法は魚病薬を使った薬浴を行います。魚病薬は白点病と同じメチレンブルーやマラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系の薬を使います。隔離した病魚はしばらく薬浴を行い、数日おきに1/2の水換えをした後、薄くなった分の薬を足していきます。全身のカビがなくなり、菌糸が入り込んで白濁した患部にも透明感が戻ってきたら元の水槽に戻しましょう。
治療している間に水槽の環境を改善する必要がありますが、生物濾過を活性化するためにバクテリア剤を添加すると改善しやすいです。また、カビや一部の細菌、寄生虫は塩分に弱い面があるため、塩を少し加えて弱アルカリ性の水質で飼育すると発生しにくくなります。
・松かさ病
分泌液のせいでウロコが逆立つため「松かさ病」と呼ばれています。また、体表に充血が見られる事もあります。
発生のキッカケは水質の悪化や病気の魚を水槽に入れてしまった事、古い餌を食べてしまった事が挙げられます。
治療方法は魚病薬を使った薬浴です。観パラD、パラザンD、エルバージュ、グリーンFゴールド等の魚病薬を使います。
数日おきに1/2の水換えを行い、薄くなった分薬を足します。松かさ病はかなりしつこい病気なので、普段から発症させないように飼育管理をしていきましょう。
番外編! 実はエロモナス菌は「常在菌」だった!?
松かさ病や穴あき病等の恐ろしい病気の原因菌であるエロモナス菌。実は水槽内に常にいる菌と言われています。普段は魚の免疫力に負けて無害なのですが、これが水質の悪化等で魚の免疫力が弱まってしまったりエロモナス菌が爆発的に増えてしまったりすると病気が発生するのです。
でも、言い換えてしまえば病気の魚を持ち込まず、しっかり飼育管理してあげれば発症しないとも言えます。
最近では魚の免疫力を上げる餌や善玉菌入りの餌も販売されているので、エロモナス菌が気になる方や魚をより健康的に飼育したい方にオススメです。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンの繁殖について
「こんな小さい魚繁殖できるの!?」と思う方もいるかも知れませんが、
大切に飼育されたエリスロミクロンは水槽内でこっそり繁殖をする事があります。
・雌雄判別の方法は?
エリスロミクロンはミクロラスボラの中でもとても雌雄判別がしやすい種類です。
オスの特徴
- 各ヒレの朱色が濃くなる。特に尻ビレが濃い。
- 体側の縞模様の幅が広く、メタリックブルーに輝く。
- オス同士でフィンスプレッドをする。
メスの特徴
- 各ヒレの朱色はそんなに強く発色しない。
- オスと比べてお腹がふっくらしている。
- 縞模様が不明瞭で色も地味。
☆状態良く飼い込まれた個体はまるで○○!?
状態の良いエリスロミクロンの発色はとても美しく、その姿はミニマムサイズの「オイカワ」のようです。
日本淡水魚のオイカワも繁殖期になると美しい色彩を放つのですが、この色彩は「婚姻色」であり、この色彩が出たオイカワは数週間で命を落とすと言われている期間限定の美色なのです。
しかし、エリスロミクロンの発色はオイカワのようにタイムリミットがある訳ではないので、その発色を長く楽しむ事ができます。これもエリスロミクロンの長所と言えるでしょう。
・産卵はどのように行われるの?
エリスロミクロンは複数のオスがメスを追いかけ、水草の根元やウィローモスの茂みの中で寄り添うようにして産卵します。
産卵になかなか気付けない事も多く、ストレーナーにスポンジカバーを付け、状態良く管理された水槽であれば、稚魚と「こんにちは」する事もあります。
・エリスロミクロンを狙って繁殖〜産卵させる方法
30cm水槽に成熟した2〜3ペアを入れて飼育します。
水槽内には稚魚用の投げ込み式フィルターとウィローモスを入れておきます。
環境に慣れてくるとオスがメスを追いかけるようになり、ウィローモスの茂みや人目につかない場所にペアで入るようになります。これをしばらく観察したらペア達を元の水槽に戻してあげましょう。
・卵の管理について
産卵された卵は水温20〜25℃で管理します。
26、27℃でも管理できますが、元々エリスロミクロンは水温の低い所の種類という事と卵の発生、成長が早すぎて奇形が生まれないようにしたいので、筆者は低めの水温で管理します。
25℃であれば7〜9日程で孵化が始まりますが、水温が高いともう少し早く孵化が始まります。
・仔魚〜幼魚までの飼育方法について
孵化したばかりの仔魚のお腹にはヨークサックという栄養分がつまった袋があるため2〜3日は餌を取らなくて大丈夫になっています。
体はまだまだ未熟なので泳ぐ事はできないので水底にいますが、向きを変えたりはできます。
孵化から2〜3日目から仔魚に餌を与えます。
仔魚は非常に小さいため、与える餌も一苦労です。餌には微生物を与えますが、PSBがあればそれを添加します。
この頃にはお腹のヨークサックがなくなり、ピョンピョンと泳ぐようになります。見た目は金魚の稚魚である「針子」のようです。
孵化から10日目くらいになると、稚魚は餌を食べるために積極的に泳ぐようになります。
大きさはまだ1cmにも満たないですが、見た目は親魚の形に近付いています。餌にはPSBを添加しますが、稚魚用のパウダーフードも食べるようになります。
孵化後20日目には、より活発に水槽内を泳ぐようになります。尾ビレも少しずつ形成されています。大きさは5〜7mm程ですが、見た目は仔魚ではなく稚魚と言った感じになります。餌はPSBと稚魚用パウダーフードを与えます。
水底に残った餌やフン、死んでしまった稚魚がいる場合はスポイトで取り除きます。稚魚用フィルターも汚れが溜まっているようであれば取り出して洗います。減った分はカルキを抜いて水温を合わせた水を水流を起こさないように足します。
孵化後30日頃には稚魚の見た目も親魚に似てきます。まだまだヒレも小さく、スマートな体つきをしています。模様はまだありませんが、体は飴色に染まっています。
餌にはPSBと稚魚用パウダーフードを与えます。
孵化後40日頃になると、見た目はほとんど親魚と変わらなくなります。成長が早い個体だと体色が少し暗くなり、体側にうっすらと縞模様が浮かび上がってきます。尾ビレの付け根部分にもうっすらと朱色に染まってきます。大きさは約1cm弱程です。
泳ぎも上手くなり、餌取りもスムーズになります。この頃からは冷凍か沸かしたてのブラインシュリンプベビーを与えられます。環境維持のためにもPSBを添加します。
孵化後50日頃になると大きさも1.5cm程になり、ショップで売られている稚魚と変わらなくなります。ここまでくれば繁殖は成功です。小さいですが安心して飼育管理ができます。
孵化後60日頃になると、体側の縞模様や各ヒレの朱色も明瞭になってきます。大きさ的にも親魚と同居可能なので、親魚水槽に移しても良くなります。
エリスロミクロンは成長が早いのであっという間に未成魚になります。
小型種の繁殖は難しいので成功すれば飼育に自信がついてきます。エリスロミクロン以外のミクロラスボラを始めるキッカケになるかも知れません。
まとめ
今回はミニマムサイズの日本淡水魚のような魚、ミクロラスボラ・エリスロミクロンの飼育方法やかかりやすい病気、繁殖について等をたっぷり詰め込んでご紹介させていただきました。
ペットショップで見かけると割りと地味な体色をしているためイマイチその魅力に気付きにくい魚ではありますが、大切に飼育する事でその魅力を開花してくれる育てがいのある小型美種です。また、縞模様の出方も若干個体差があるため、ショップで見かけたらお好みの縞模様を選ぶ楽しみもあります。
飼育に関しても最初はビビって隠れてしまったり神経質な面がありますが、環境に慣れるととても丈夫で積極的に水槽内を泳ぎ回るようになります。
この時のエリスロミクロンは他の熱帯魚にはない、どこかシンプルながらかっこよさもある独特の美しさと爽やかさがあり、飼育者や見た者の目を華麗に奪います。
小さいけれど大切にしてくれた分輝きを放つ小型美魚、ミクロラスボラ・エリスロミクロンは必ず飼育してくれた方々の努力に応えてくれる魚です。