ブラインドケーブフィッシュの飼い方・混泳は難しい
画像引用元:未来アクアリウムヤフー店
この記事をお読みの方で「熱帯魚」ことさら「カラシン目」に属する魚に詳しい方は、色とりどりの鮮やかな魚を連想される方が多いのではないでしょうか。
カラシン目の中にはテトラという、例えば熱帯魚専門店ではなくともホームセンターなどでよく見かける「ネオンテトラ」がいます。
蛍光灯に照らされ、赤と青のバンドがキラキラ光る様は万人受けするようで、多くの飼育書でも「初心者向け熱帯魚」として記載されていることが多いです。
- 他にも金色がかった体色の「コンゴテトラ」
- やや地味ですがひらひらとしたヒレが魅力の「ブラックテトラ」
と仲間がたくさんいます。
ただ視野を「~~テトラ」ではなく「カラシン目」に向けると、その奇抜な生態の魚の多さや
と大いに驚かされることでしょう。
今回はその中でも、そして「熱帯魚全体」のみならず「生物界全体」を通しても、その特異な生態から生物学の分野でも研究対象にされている「ブラインドケーブフィッシュ」「ブラインドケーブカラシン」についてお話していきます。
‐ブラインドケーブフィッシュ(カラシン)とは‐
この魚はブラインドケーブ『カラシン』とも呼ばれます。
メキシコの一部地域の完全に光の閉ざされた洞窟に住んでいます。
全長は成魚で8~10㎝です。寿命は2~3年ほどです。
名前の由来
やや舌がもつれそうな名前ですが、30年ほど前は今でいう差別用語で商取引されていたので、無理やり英名で流通せざるを得ませんでした。英語に詳しい方でしたら「Cave Fish」から「洞穴魚」と推測されますよね。
『洞』窟の『穴』に住む魚と書いて「洞穴魚」と言います。さて普通の考えでは光のささない環境で生物が生きていけるのか、と感じますよね。
実際そのような羽目になった生き物は殆どが絶滅したのでしょう。
ブラインドケーブカラシンの生態・特徴
「ブラインド」の名を冠する様に、彼らの目は薄い皮膚で覆われていて完全に目としての機能を失っています。
面白いことに発達の過程では卵から稚魚のうちはきちんとした「目」を持ちます。成魚になるにつれ目が消失するのです。
また彼らの体表に色、もっと突き詰めると色の素である「メラニン」は一切なくアルビノ(白変種)の様相をしています。簡単に言えば目がなく真っ白な魚です。
研究者の間では目がないことで15%、体表の色素など余分なものがないことで30%、同じカラシン目の魚よりエネルギー代謝が抑えられると報告されています。
「嗅覚」「触覚」の異様な発達
彼らは視覚がない代わりにその他の4感、特に「嗅覚」「触覚」が異様に発達しています。魚には「側線」という器官があり、これは触覚にあたる器官です。
そのため流木や岩、水草といった障害物もこの器官で察知し、容易に避けることができます。ブラインドケーブカラシンはこの「側線」が「目」としての役割も兼ね備えています。
そして遠くの餌も容易に嗅ぎ付ける「嗅覚」です。
前述したとおり彼らは暗闇の、そして非常に食べ物が乏しい環境に生息しています。
繁殖
繁殖に関してはその生息地の封鎖性もあり、野生化では未だ謎が多いです。
飼育下でも国内では偶発的な例を除いては、ペットショップなどに安定して卸せるほどの事案は筆者は耳にしたことがありません。ただ欧米諸国などではその繁殖形態が認知・確立されており、観賞魚・実験魚としての流通の発信源となっています。
ブラインドケーブカラシンは成魚になると8~10㎝になり、メスのほうがオスよりややがっしりし、そして性成熟すると放卵しやすいそうです。
そのタイミングで一つの水槽にワンペアを隔離すると容易に産卵・受精・孵化までに至ります。
-基本的な飼い方-
非常に飼いやすい魚と書きましたが、実際筆者の経験では全くと言っていいほど飼育に手がかかる魚ではありません。
彼らに限らずアルビノの魚は色素がないので太陽光は遮断できず、日の下では致命的な皮膚疾患に陥ります。ただ蛍光灯・LEDといった人工的な光はほぼ無害です。ですので水槽の照明機器に気を使う必要は全くありません。
エサ
餌はテトラミンなどのフレークフードから、ナマズ用の沈下性の餌・冷凍赤虫。そして植えてある水草の新芽など様々なものを食べる雑食性です。
餌については全く心配ありません。市販のもので十分です。
値段はおおよそですが300~500円前後で購入できると思います。非常に安価ですがそれ故に大事に育てて頂きたい魚です。
飼育温度
飼育温度は先に述べた「洞穴魚」なので一般的な27~28℃より2~3℃低めがいいと書いてある飼育書もありますが、筆者の場合は30年前の夏場(しかも冷却ファンといった商品もなく水槽クーラーなどは業務用寄りで今より桁数が1つ高い時代でした)30℃を超えても餌食いも全く落ちずに、他の魚より元気に泳ぎ回っていました。ですので一般的な熱帯魚の水温27~28℃で全く問題ありません。
床砂や流木
床砂や流木等のオブジェは入れても入れなくとも問題ありません。上記の様にこの魚は障害物はものともしません。水草は時折ですが新芽などをかじってしまうことがあります。
混泳:NGではないが・・
さて、その独自な生態・飼いやすさから触手が動いている方も多いと思いますが、唯一この魚混泳にやや注意が必要です。
というのもその独自な生い立ちから「睡眠」を司る脳の部分が多魚種と比べて異様に委縮し未発達です。
そもそも昼も夜も光を感じることができないので、体内時計には組み込まれていません。
生き物が寝ないなんてことあるのかとにわかに信じがたいと思いますが、広く生き物を見れば毎日まとまって7~8時間すべての脳を休められる人間のほうが特殊なんです。
といっても特別なモノではなく、極論はちあわせをしないようでしたら流木・岩・アナカリスなどの安価な水草を放り込んでおくだけでいいです。障害物を敏感に避けてくれるので、見た目以上にセーフティーゾーンがそこには存在しています。
まとめ
というように非常に興味深く一度は飼育して頂きたい魚なのですが、最近はほとんど店頭で見ません。
これは輸出制限や絶滅といった深刻な類のものではなく、単純に人気がないからでしょう。
私が飼育していた当時もメジャーな魚とは言い難い存在でした。ただ今は昔とは違い規制(両生類まで)はあるものの通信販売などで手に入れることができます。
実際本稿を書く際検索してみましたが、生態通販という上で流通量は安定しているようです。
どちらにせよ地味ですが、地球で一種の珍しい魚です。