『ヒガイ』
きっとこの名前を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか?
川釣りが相当お好きな方でなければ分からない、とてもマイナーな淡水魚なのですが、それと同時に「一体どんな魚なんだろう?」と興味も沸いてくるはずです。
この魚はマイナーでありながら、ある事で名誉を手にした、淡水魚界でも隅に置けない凄い魚なのです。
1,ヒガイの特徴について
①分類
ヒガイは生物学的な分類では「コイ目コイ科カマツカ亜科ヒガイ属」となっており、カマツカにも近い種類である事が分かります。
また、最近ではカマツカ亜科ではなくヒガイ亜科と表記される事があります。
②大きさはどのくらい?
ヒガイ中でも最も小さいカワヒガイで全長約10〜15cm、アブラヒガイ、ビワヒガイは全長約20cmほどになります。
③どんな見た目をしているの?
その見た目は、顔は細めで体は泳ぎに適した流線型で、若干扁平な体型をしています。
その体色は黄色みがかった茶色に、背面は黒や灰色の暗色、お腹は白っぽい色をしています。
体には不規則な黒っぽい斑のような模様、または体側に黒〜黒褐色のラインが1本走ります。
④どんなところに生息しているの?
アブラヒガイとビワヒガイは、滋賀県の琵琶湖の固有種ですが、後者のビワヒガイは東北や関東、北陸地方等の広い範囲で放流されています。
カワヒガイは西日本に点在しており、濃尾平野や中国地方の一部、壱岐島等に生息しています。
水がキレイな河川の中〜下流域や池に生息しており、その中層〜下層を泳いでいます。
⑤何を食べているの?
ヒガイはコイやフナと同じ雑食性の魚で、自然下では底の石に生えている藻類やユスリカの幼虫、ミミズのような動物質、底砂の中の有機物を食べています。
⑥気になる性格は?
ヒガイの性格は活発ではありますが、他の魚達にイタズラをする事は少ないため混泳させる事もできます。
⑦どこでお迎えできるの?気になるお値段は?
ヒガイは日淡の中では結構レアな種類でもあるため、常に取り扱われている魚ではありません。
しかし、日淡にも力を入れているアクアショップや総合ペットショップ、日淡専門店などでお迎えする事ができます。
気になるお値段の方ですが、大体の目安としてカワヒガイ1匹あたり、約1000〜1500円前後の事が多いです。
■以外とピンチ!?ヒガイ達の現状
実はこの魚、ビワヒガイ以外は窮地に立たされている状態だったりします。
琵琶湖固有種のアブラヒガイは近年生息環境の悪化によってその数を減らしており、極めて絶滅に近い絶滅危惧種として、カワヒガイも準絶滅危惧種として環境省のレッドリストにリストアップされています。
2,ヒガイの飼育で注意すべきポイントについて
飼育する日淡の中ではまだまだマイナーな存在なヒガイの仲間達ですが、他の魚をイジメる事が少なく、活発に泳ぐ姿がとても美しく、根強い人気があります。
〜🐟ヒガイの注意すべきポイントについて🐟〜
- 餌はなるべく多品目を与える事。
- 餌の与えすぎには注意する事。
- 酸欠に弱いためエアレーションをして溶存酸素量を増やす事。
- 遊泳力が強いので広い水槽を用意する事。
3,ヒガイの飼育方法について
①お迎え
ヒガイは基本的には「カワヒガイ」が観賞魚として流通しており、ショップによっては川魚MIXとして販売されている事もあります。
ですが、カワヒガイも日淡に強いショップやアクアショップ、総合ペットショップでなければなかなか見つからない種類でもあります。
最寄りのペットショップやアクアショップでヒガイが見つからなかった場合は通販の利用がオススメです。
また、河川での採集もお迎え方法として有効ですが、ヒガイの仲間である「アブラヒガイ」は絶滅危惧種なのでタモに入った場合はすぐにリリースしましょう。
ショップでヒガイを見つける事ができたら、すぐに購入はせず健康チェックをして病気を持っていないかチェックします。
元気よくキビキビ泳いでいるか、ヒレが不自然に裂けていないか、体表に付着物や充血がないか、エラブタが膨らんでいないかなど細かく観察して安心して飼育できそうであれば、改めて店員さんにお願いしてお迎えしたい匹数をパッキングしてもらいましょう。
②水合わせ、導入
ショップであれ採集であれ、水槽に導入する前に必ず水合わせをします。
まずは袋ごと水槽に30〜60分ほど浮かべ、水温を合わせます。
水温合わせが終わったら、バケツや衣装ケースなどにヒガイ達を移し、エアチューブと調節弁を使って少しずつ水槽の水を足していきます。
この方法を使う場合は、水合わせ中に酸欠になったり飛び出すのを防ぐため、エアレーションをしながらフタをするようにします。
目安としてヒガイ達の入れ物に水槽の水が4/5ほど入った状態で1〜2時間ほど様子を見て問題がなければ水槽に移します。
袋で水合わせをする場合は約1/5の水を捨て、その後同じくらいの量の水を水槽から足して30分ほど様子を見ます。
特に以上がなければこの作業を繰り返し、最後の水合わせの時もヒガイ達の様子に異常がなければ水槽に放ちます。
③水槽
ヒガイはタナゴやモツゴより遊泳力が強く、水槽の中〜底層を泳ぎ回ります。
そのため水槽のサイズは最低でも90cm以上がオススメです。これほどの広さがあればヒガイの群泳だけでなく他種との混泳もする事ができます。
④水温、水質
ヒガイの飼育では、元々日本の気候に慣れているためヒーターを使わない「無加温飼育」も可能です。
しかし、水温の急変が続くと流石のヒガイも体調を崩す可能性があるため、ヒーターにヒーターカバーを装着して飼育するのが個人的にオススメです。
水温は15〜26℃くらいであれば問題なく飼育できます。水温固定タイプやサーモスタット機能付きのヒーターでヒーターによる事故を防止するようにしましょう。
水質は中性を好んでいますが、極端な酸性やアルカリ性に傾かなければ飼育できます。
⑤底砂
川魚飼育用の底砂であれば、ヒガイの飼育に特に問題はありません。
⑥フィルター
基本的にどのフィルターも飼育に使う事ができますが、なるべく溶存酸素量を増やしつつ水質を維持するために、メインフィルターを上部式フィルターか外部式フィルターにし、サブとして投げ込み式フィルター、パワーフィルターを併用する事をオススメいたします。
⑦隠れ家(シェルター)
ヒガイは群泳する事もありますが、繁殖期に入るとオス同士が激しくケンカをしたり、メスにしつこくアピールする事もあります。
⑧水草
絶対に栽培できないという訳ではありませんが、ヒガイは柔らかい水草は食べてしまう事があるため、その習性を受け入れながら水草をレイアウトする必要があります。
「バリスネリア」の仲間の中でも「バリスネリア・ナナ」はスレンダーな葉が美しく、爽やかな印象は日淡であるヒガイにもオススメです。
また、「アマゾンソード」「アヌビアス・ナナ」「ウォータースプライト」もヒガイの水槽にレイアウトしやすい水草です。
⑨混泳
ヒガイは活発に泳ぎ回りますが、基本的に他種に攻撃する事はありません。
バラタナゴやドジョウ、オイカワ、カワバタモロコ、ムギツクとも混泳できる他、肉食性の種類ではオヤニラミやドンコ、カジカの幼魚、ウナギの幼魚などとも混泳できます。
⑩給餌
ヒガイは自然採集した個体でなければ人工飼料にも慣れやすく、乾燥飼料や冷凍飼料にも食い付きが良いです。
一方で自然採集した個体の場合は人工飼料にすぐ餌付く事は少ないので、しばらくは冷凍飼料をメインに少しずつ人工飼料に慣らしていく必要があります。
ヒガイは雑食性で、昆虫から藻まで様々な物を口にするため、餌のメニューも増やしておく必要があります。
人工飼料に慣れている個体であれば、川魚用、草食性用、肉食性用の人工飼料を混ぜて与えたり、ローテーションを組んで与えるようにしましょう。
冷凍飼料も食い付きがよく、栄養価が高いため自然採集個体でない場合はたまに与えるとタンパク質の補給になります。
ホワイトシュリンプ、アカムシ、ブラインシュリンプ、イトミミズが個人的にオススメです。
給餌の目安ですが1〜2日に2回、数分で食べきれる量を与えます。
⑪掃除、水換え
飼育している匹数や水槽のサイズ、汚れ具合などにもよりますが、目安として1週間〜10日に1度1/4〜1/2の量の水換えと掃除をします。
まずは、感電防止のために飼育器具の電源を切り、水槽のフタを外します。水温計も付けている場合はこの段階で取り外し、安全な場所に置きます。
準備ができたら、水槽の内壁から掃除をしていきます。ヒガイはガラス面に生えたコケも食べる事がありますが、コケの繁殖力には追い付けないため掃除が必要です。
メラミンスポンジやスクレイパー、コケクロスなどを使ってガラス面に着いたコケやヌメリなどを落とします。
レイアウトに使っている石や流木などにもコケが生えたり汚れてしまっている場合は、歯ブラシなどで汚れを擦り落としますが、レイアウトを変えたい場合は水槽から取り出してからタワシなどで汚れを擦り落としましょう。
水草が伸びすぎていたり枯れ葉がある場合は、トリミングが必要です。
ハサミで水草の長さを揃えたり、枯れ葉やコケが酷い部分などをカットします。この時、隠れているヒガイ達を驚かせてしまったり、ヒレまでカットしないように注意が必要です。
トリミングで出た不要な葉はネットや素手で集め、燃えるゴミとして処分しましょう。決して野外に捨ててはいけません。外来種問題が発生してしまいます。
フィルターは揚水パイプとストレーナーを外し、専用のブラシで汚れを落とします。意外とパイプ内部はヌメリのある汚れが溜まっている事が多いので見落とさないように注意が必要です。
水槽内の掃除が終わったら、底に溜まった汚れをクリーナーポンプで水ごと排出します。
石同士の隙間などに汚れが溜まっている事も多いので、なるべくヒガイ達を驚かせないようにしながら汚れを排除しましょう。
水抜きが終わったら、揚水パイプとストレーナーをフィルターに戻し、新しい水を足していきます。
新しい水は、あらかじめ水温を合わせ、カルキ抜きも済ませておきます。
水を足す時は、ガラス面に注ぐようにして勢いを抑えながら足す方法や水面にビニールを敷いてその上から水を足す方法、底面にお皿を敷いてその上から水を足す方法などがあります。
水足しが終わったら水温計などを取り付け、飼育器具の電源を入れれば水槽掃除と水換えは完了です。
フィルターを掃除する場合ですが、投げ込み式フィルター、パワーフィルター、外掛け式フィルターの場合は濾過材が一体型である事が多く、目詰まりしやすいため、水槽掃除の際に飼育水で洗って目詰まりを解消します。
もし、濾過材の汚れや傷みが酷かったり濾過力がかなり落ちてきたようであれば新しい物と交換しましょう。
外部式フィルター、上部式フィルターは普段は揚水パイプとストレーナー、物理濾過を担うウールマットを洗います。ウールマットも汚れや繊維の傷みが酷くなってきたら新しい物と交換します。
生物濾過槽の濾過材は2週間〜1ヶ月を目安に飼育水で濯ぐようにして洗いますが、濾過材によって交換目安が違うため、交換の日にちが近付いてきたら新しい物と交換しましょう。
4,ヒガイがかかりやすい病気や治療方法について
ヒガイは体調が良いと燻し銀のような美しさを見せてくれる日淡ですが、水質の悪化や急変に弱く、そのような状態が続くと体力を落として病気になってしまうことも少なくありません。
①水カビ病
「綿カビ病」「綿かぶり病」などとも呼ばれる病気で、病魚に水カビが生えてきてしまう症状が特徴です。
体内に菌糸が入り込んでしまうため、患部が白く爛れたようになり、病気の進行と共にカビも増え死に至ります。
原因として、餌の与えすぎや残った餌を放置してカビを発生させてしまった事や飼育環境の中で生物濾過のサイクルが上手く機能できていない事が挙げられます。
本来であれば、食べ残しにカビが生える前にバクテリアが分解するのですが、水質や水温などの問題でバクテリアよりもカビの方が活性化している状態と言えます。
この水カビにヒガイが長時間触れてしまったり、千切れた菌糸がヒレや体表の傷付いた部分に付着して増殖してしまうのです。
治療方法は薬浴を行います。使う薬品はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系です。
薬浴前にヒレ先などの僅かな部分であれば、ピンセットなどで取り除いてから薬浴をする方法もあります。
また、水カビが生えている付け根部分を患部を傷付けないようにハサミで除去してから魚病薬を患部に塗布してから薬浴をする方法もあります。
患部は菌糸によって脆くなっているため、不安な方はそのまま薬浴に移行しましょう。
治療用水槽に病魚を移動させたら、薬品を様子を見ながら規定量投薬します。治療用の水に少し塩を足して塩分濃度0.3〜0.5%の塩水にしておくとカビの増殖を抑えつつ、浸透圧によって体力の回復を助ける事ができます。
治療が始まったら、5〜7日に一度、半分の量の水換えをしてから再び投薬をします。これをカビがなくなり、患部の白濁がなくなるまで続けます。
②エロモナス病
症状によって「松かさ病」「ポップアイ」「穴あき病」などと呼び名が変わる病気です。
初期症状では体表の至るところに充血が見られ、次第にウロコが逆立ったり、白く剥離して体表に穴が開いてしまったり、目が飛び出してしまいます。
原因は水の腐敗による水質の悪化や古い餌を食べてしまった事、病気の魚を導入してしまった事などが挙げられます。
治療方法には薬浴を行い、使う薬品はパラザンD、観パラD、エルバージュ、グリーンFゴールドなどです。
治療用水槽に病魚を移動させたら、様子を見ながら規定量投薬して治療を開始します。この間、3〜5日に一度、半分の量の水換えをして新たに投薬します。
③白点病
熱帯魚だけでなく日淡もかかってしまう厄介な病気が白点病です。
初期症状ではヒレや体表に小さな白い粒々が数個付着した状態ですが、症状の進行と共に徐々に数を増やしていき、最終的にはエラブタなどを塞いでしまい死に至ります。
また、白点病にかかると痒いのか、体表やヒレを底砂や石、流木などに擦り付けて傷ついてしまう事があります。
この時にできた傷が細菌性の病気の感染源になる事が多いので色んな意味で厄介な病気なのです。
原因は水温や水質の急変や悪化、病気の魚を導入してしまった事などが挙げられます。
治療には薬浴を行い、使う薬品はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系を使います。
まず、病魚を治療用水槽に移動させ、様子を見ながら規定量投薬して治療を開始します。
使う薬品によって水換えと投薬の頻度が変わり、アグテンは3日に一度、メチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF系は1週間に一度、グリーンFクリアーは2週間に一度、半分の量の水換えをしてから再び投薬します。
④怪我
病気ではないのですが、ヒガイにはよく見られるのでご紹介させていただきます。
ヒガイは繁殖期に入るとオス同士争ったりする他、何かの拍子に驚いてしまうとガラス面や石などにぶつかってしまう事があり、鼻先やヒレが擦れて怪我をする事があります。
飼育環境が良ければそのまま飼育しているだけで治る事もありますが、怪我から細菌性の病気が発生する場合もあります。
怪我を治療する場合は、怪我をした個体を治療用水槽に移動させ、メチレンブルーやグリーンFゴールドで約1週間薬浴します。薬浴が終わったらメインの水槽に戻してあげましょう。
⑤寄生虫症
その名の通り、寄生虫によって引き起こされる病気です。
ショップであれば事前に駆虫している事がありますが、稀に寄生されている事があります。また、自然採集個体も寄生されている可能性があります。
ヒガイに寄生しやすいのはチョウ(ウオジラミ)や吸虫(ダクチロギルスなど)です。
チョウは0.5〜1mmほどの円盤状の体を持つ半透明な寄生虫で、主に体表やヒレに寄生します。
吸虫はエラの中に寄生するため、エラブタが膨らんで閉まらなくなり、寄生虫が増えると呼吸困難となって死に至ります。
治療方法は駆虫薬を使った薬浴です。リフィッシュとトロピカルNという駆虫薬がありますが、リフィッシュを使います。
リフィッシュは酸欠になりやすくなるため、治療用水槽に病魚を移動させたら酸欠にならないようにエラの近くで強めのエアレーションをします。
5,ヒガイの繁殖について
日淡の中でも観賞魚としてはマイナーな種類のヒガイですが、タナゴと同じように繁殖を狙う事ができます。
①ヒガイの雌雄判別について
繁殖期に入ったヒガイの雌雄判別はとても簡単です。これらの特徴が現れたら成熟している証拠です。
〜♠️オスの特徴♠️〜
- 婚姻色が出る。
- オス同士争うようになる。
- 目の周りが赤くなる。
- 口からエラブタにかけて「追い星」がでる。(←超重要)
〜♥️メスの特徴♥️〜
- 体色が地味なまま。
- 体型、特にお腹あたりがふっくらしている。
- 産卵管が伸びてくる。(←超重要)
②繁殖をさせるためには?
ヒガイを繁殖させるためには、まずは冬を経験させます。
ヒーターを切り、10℃ほどの水温で3ヶ月ほど飼育する事で水温を上げた時に繁殖の可能性が上がります。
また、繁殖のために水温を上げた後は淡水性二枚貝を水槽に導入します。この二枚貝は死んでしまうと水質が一気に悪化してしまうため、高水温や水質に気を付けながら、二枚貝専用の餌を与えて弱らせないようにしましょう。
二枚貝を見つけると、婚姻色を表したオスがメスをエスコートし、産卵管を二枚貝に差し込んで産卵が始まります。
産卵したのを確認した場合は二枚貝を専用の水槽を立ち上げて移動させましょう。
③稚魚の飼育方法は?
二枚貝から出てきた稚魚は、すでに大きさが1cmほどあるため、市販のベビー用フードを与えれば食べてくれます。
また、稚魚が出きったら二枚貝は親魚水槽に戻すようにし、二枚貝が死んだ場合の水質悪化を防ぐようにします。
稚魚はメダカのように上層を泳がないため、沈みやすいベビー用フードをお腹の具合を見ながら少量ずつ、こまめに与えるようにしましょう。
水換えですが、稚魚が小さい間はエアチューブとクリーナースポイトを使って吸い込まないように慎重に水抜きと水足しをしていきます。
また、死んでしまった稚魚がいる場合は水質の悪化を防ぐためにスポイトですぐに取り除きます。
これを2ヶ月半ほど繰り返すと1cmほどだった稚魚も3〜4cmほどに育ち、ベビーフードだけでなく刻んだ冷凍アカムシやブラインシュリンプベビーも食べられるようになります。
7,ヒガイの豆知識について
先ほどまでは、ヒガイの特徴や飼育、繁殖方法などについてご紹介させていただきましたが、ここからはヒガイの豆知識や意外な利用方法などについてご紹介させていただきます。
①ヒガイは川魚では珍しい食用魚!
川魚の中にはアユやイワナのように食用にされる種類がいますが、ヒガイも食用魚の1つとして古くから知られています。
レベル1 :塩焼き、素焼き
ヒガイ本来の味を堪能できる一品です。素焼きは生姜醤油で食べるそうです。
焼く事によって独特の風味があるみたいですが、それも良いアクセントになるようです。
レベル2 :つけ焼き、甘露煮
ウロコや内臓を取り、みりんと醤油ベースのたれを塗りながらじっくりと強火の遠火で焼き上げた「つけ焼き」。素焼きした物を甘辛く炊いた「甘露煮」。どちらもご飯に合いそうです。
レベルMAX :なれずし
ヒガイのなれずし自体が非常に珍しく貴重なのだとか。
「なれずし」とは、魚を米飯と塩で乳酸発酵させた発酵食品です。長く漬け込まれて熟成しているため、独特の酸味や食感が味わえるとの事です。
⭐ヒガイは○○な魚!思わず天皇陛下も感動!
これは明確な当時の記述が残っています。
今から130年程前の1890年(明治23年)4月9日の出来事です。
明治天皇が琵琶湖の疎水開門式に出席した際に、県庁で食事をとったそうです。そこで献上されたのが瀬田川で取れたヒガイです。
さっぱりとした旨味のある白身は明治天皇を虜にし、わざわざ東京まで取り寄せる程に好まれました。
⭐その後談…
ある本には、明治天皇を喜ばせたこの魚はとてもめでたい魚として茨城県霞ヶ浦に移植、繁殖も成功したという記述があります。
その作者曰く、「この魚の(上手い)使い方が今でも不完全である。」「小ぶりな個体を生かして京都方面に、大ぶりで死んだ個体を東京へ送り出している。」と記しており、その結果、「この魚の本当の美味しさを、東京の人は分からないだろう。」と語っています。
②人工繁殖もできる!?
本来であれば、繁殖には二枚貝が必要な種類でもあるヒガイですが、ベテランや水産試験場などではサケのように人工繁殖されている事もあります。
産卵管が出たメスのお腹を押して卵を回収した後、今度はオスのお腹を押して精子を出して卵にかけて受精させます。
まとめ
今回はマイナーだけど美しい日淡・ヒガイについて皆様にご紹介させていただきました。
ヒガイはどちらかと言うと釣り人やアウトドア好きな方に馴染みがあるため、アクアリウムの世界ではまだまだマイナーです。
しかし、繁殖期を迎えた時の美しさや、タナゴにはない疾走感のある泳ぎは野性味が溢れ、特別な瞬間を見せてくれる事でしょう。