はじめに:
現代に生きる古代の幻獣ポリプテルス・セネガルス
突然ですが、ゲームやファンタジー小説が好きな方の中には物語を彩る伝説上の怪物や幻獣達に憧れを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな叶わないとされた夢を叶えてしまうかも知れない種類が、なんとアクアリウムの世界には存在しているのです!
その種類こそ、今回皆様にご紹介する「ポリプテルス・セネガルス」です。
その見た目、迫力、泳ぐ姿はまさしく天駆ける龍の如し!そして飼育もしやすいと良いとこ取りの古代魚の仲間となっております。
1,ポリプテルスの特徴について
画像引用元:チャーム様
「ポリプテルス」とはアフリカ産の古代魚の一種です。
後述する特徴から「龍魚」と呼ばれる事もあります。
頭部がやや扁平で体型は棒状ですが、ガーパイクよりは柔軟性があり、胸ビレをはためかしながらしなやかに泳ぎます。
この仲間の背ビレは「小離鰭(しょうりき)」と呼ばれ、三角形の幾つにも分離した状態で背中に生えており、その見た目から「たくさんのヒレ」を意味する学名「ポリプテルス」と名付けられました。
この仲間は条鰭類(一般的な魚類)の中でも最古の部類と言われている他、生きた化石と名高いシーラカンスの近縁種ではないかと考える学者がいる程現在の魚類とはかけ離れた特徴を幾つも持っています。
①ガノイン鱗
以前危険生物としてご紹介した「ガーパイク」等の古代魚が身に纏う強固な鎧です。
②鼻
ポリプテルス・セネガルスが、鼻管を使って底砂を探っている様子 pic.twitter.com/e9b4FSRtRb
— 古明地宏樹 (@haigyo3komeiji) May 10, 2021
ポリプテルスの鼻は細い管のようになっており、鼻先からチョコンと飛び出しています。
③鰓呼吸と空気呼吸
魚類なので基本的には鰓呼吸ですが、生息地の環境や古代からの知恵の影響もあってか、ポリプテルスの仲間は空気呼吸もできます。
④胸ビレ
ポリプテルスの仲間はウチワのように丸みを帯びた大きめのヒレをユラユラパタパタと動かして泳ぎます。
この特徴はシーラカンスとも共通しているため、近縁種説の裏付けの1つとされています。
⑤稚魚にはまさかの…
ポリプテルスの稚魚をショップで見られる機会は滅多にありませんが、その姿は他の古代魚とも一線を画しています。
なんと稚魚にはウーパールーパーのように「外鰓」があるのです。これは成長と共に体に取り込まれてしまう稚魚特有のものですが、この特徴は「両生類と魚類の進化の分岐点」と考えられています。
2,ポリプテルス・セネガルスの特徴について
画像引用元:チャーム様
ポリプテルス・セネガルスは大型種が多いポリプテルスの中で最もポピュラーかつ小型の種類で、成長しても30cm程しかありません。
中〜大型種のポリプテルスと比較すると頭部は少し丸みがあって可愛らしく、穏やかな表情に見えますが、ヒレやウロコの質感等から小さい体に見合わない厳かな印象を与えます。
背中には丈夫な棘条がある小離鰭が尾ビレに続いており、尾ビレは菱形をしています。
セネガルスは模様がほとんどなく、灰〜淡褐色の体色にヒレも同系色か少し濃いくらいなので菱形の尾ビレはまるで東洋の龍の尻尾のようです。
胸ビレはウチワのような形になっており、泳ぐ時や移動する時に使われますがホバリングや方向転換にも使われています。
3,生息地は?
セネガルスはその名が表す通り、アフリカ大陸にあるセネガルとスーダンという国の河川や湿地帯に生息しているとされています。
流れが緩やかなの水中の溶存酸素量が少ない環境で生き抜くのに前述した空気呼吸が役立っています。
4,何を食べているの?
セネガルスに限らずポリプテルスの仲間は魚食性です。
自然下では口に入るサイズの小魚やエビ、カニ等の甲殻類、水生昆虫を捕食していると考えられています。
☆飼育下では餌に苦労するかと思いきや心配ご無用!
実は人工飼料にも慣れやすく、ナマズ用の沈下性の人工飼料の他、慣れてくると浮上性の人工飼料、乾燥飼料も食べてくれます。
冷凍飼料であれば赤虫やホワイトシュリンプ、ブラインシュリンプ(ベビーではない)もよく食べます。
5,気になる性格は?
水草に胸ビレを置き、涼し気な顔の #ポリプテルス・セネガルス 🐠
— 海中水族館シードーナツ (@seadonut) August 6, 2020
暑い日が続きますので熱中症にも充分気をつけてくださいね💕 pic.twitter.com/p1CoLPRhG9
古代魚は性格が荒そうと思われがちですが、ポリプテルスの仲間はとても穏やかな性格をしており、口に入るようなサイズや気性がかなり荒い種類、「ちょっと特殊な種類」でなければ混泳もできます。
☆古代魚はめっちゃ人懐こい!
古代魚は人によく慣れる個体が多く、中には初見なのに久しぶりに会った友達の如く寄ってきて離れないという「コミュ力お化け」の個体までいます。
普段はポヤポヤした感じのポリプテルスですが、意外と人の事をよく観察しており、自らの存在を飼い主にアピールすべくホバリングをしたり泳ぎ回ったり水槽から顔を上げて視線を送ってきたりとあの手この手で気を惹こうとする可愛らしい一面があるのです。
6,他にどんな種類や品種がいるの?
ポリプテルスの中でもセネガルスは小型で飼いやすく独特の見た目から人気があるため品種改良もされています。
セネガルスの改良品種として有名なのは「アルビノ」と「ロングフィン」で、アルビノは黒色色素が欠乏した事により赤い眼と乳白色の体を持つ美しい品種です。
ロングフィンは各ヒレを長く改良した品種で長く伸びたヒレと鼻管が豪華な印象を与えます。
また、セネガルスに負けず劣らずのポピュラーなポリプテルスの仲間も3種類ご紹介させていただきます。
①ポリプテルス・エンドリケリー
70cm前後まで成長する大型種です。
他のポリプテルスと比較して顎がシャクレているのがチャームポイント。
茶色の体に黒褐色のバンドが特徴で、野性味漂う厳つい見た目と堂々とした姿から大型種マニアからも高い人気を誇っています。
②ポリプテルス・デルヘッジ
学名の訳し方で「デルヘッツィ」や「デルヘジー」等の表記がある40〜50cm程の中型種です。
淡茶〜淡褐色の体色に黒いバンド模様が入りますが、個体によってバンドの形や本数が大きく異なり、中には「そんな物は捨ててきた!」と言わんばかりにバンド模様が完全に失われた個体もいます。
③ポリプテルス・オルナティピンニス
成長すると最大60cm近く成長すると言われている中型種ですが、飼育下では40cm前後で成長が止まる事もあります。
7,セネガルスの飼育の注意すべきポイントとは?
ポリプテルスの仲間はかなり丈夫なのでアクアリウム初心者でも基本を守れば飼育も簡単な種類です。
- 魚食性が強いので口に入るサイズの種類とは混泳させない事。また、導入する「コケ取り部隊」に気を付ける事。
- 水の汚れにはある程度耐性はあるが、定期的に水換えと水槽掃除をする事。
- 食べ残しはできるだけ早く回収する事。
- 低層を主な生活圏にしているためヒーターにはヒーターカバーを取り付け、設置箇所は低層から10cm程離した場所にする事。(火傷防止)
- 寿命が長く、長いお付き合いになる事をしっかり視野に入れる事。(一説には30年生きた種類がいる)
特に「コケ取り部隊」と「食べ残しの回収」は飼育のネックになるので忘れないようにしましょう。
ポリプテルス・セネガルスの飼育方法について
①導入、水合わせについて
セネガルスは熱帯魚を扱っているペットショップであれば比較的見つけやすい種類です。
基本的には外鰓が無い幼魚か成魚が売られている事がほとんどです。また、運が良ければ前述したアルビノやロングフィンを見る事もできます。
ショップでセネガルスを見つけたら購入前に、このブログのお約束「健康チェック」をしましょう。
体表の付着物やヒレの状態、泳ぎ方をしっかりとチェックします。
異常がなければお気に入りの個体を選び、購入します。
無事セネガルスを自宅に連れてきたら必ず水合わせをしましょう。水合わせの前には水槽に袋ごと浮かべて水温を合わせます。
セネガルスはいつもご紹介している「袋のままの水合わせ」だと何かの拍子に袋から飛び出したり袋を傾けて水合わせが済む前に水槽へダイブする事があるため、今回は「バケツを用いた水合わせ方法」をご紹介いたします。
まずバケツの中に袋の水ごとセネガルスを放ちます。次にエアチューブを用意します。このエアチューブの片方の端に石等の重りを輪ゴム等でくくりつけ、導入する水槽に入れます。
次に水槽に入れていない方から少し吸って水槽の水を呼び込みます。この時強く吸いすぎると水を飲んでしまうので注意してください。
呼び水ができたら口に水が来る前に素早く指でエアチューブを押さえるか端を指で塞ぎ、セネガルスがいるバケツに持っていきます。
そのまま水を入れると流入が早すぎて水合わせの意味がなくなってしまうため、エアチューブを軽く結んで流入量を抑えるようにしましょう。
水滴が「ポタポタ」くらいの水量を目安にゆっくり時間をかけて水に慣れさせ、バケツの中の水がほとんど水槽の水になり、30分以上経ってもセネガルスに異常が見られなければ水槽に導入します。
導入初日はまだ環境に慣れていないため給餌は控え、導入から2〜3日目くらいの環境に慣れ始めてお腹が空いてきた辺りから餌を与えるようにしましょう。
☆水合わせに使えるアイテム!
エアチューブを用いた水合わせは正直どのくらいエアチューブを結ぶべきか、水の流入量が分からない等の悩みがあると思います。
エアチューブを用いた水合わせをする時に重宝するのが「空気調節弁」です。色んなタイプがあり、エアレーションの量を調節する時によく使われますが、エアチューブの中間に装着する事で流入量の調節がかなり楽になります。
■エアチューブ水合わせの失敗談!〜筆者と恩師、それぞれの苦難〜
エアチューブを用いた水合わせの失敗あるあるが「呼び水の失敗」です。
慣れないうちは私もよく飼育水を口にしました…。
私の失敗例として、マリンアクアリウムで新しい魚の導入のためにエアチューブを用いた水合わせをしようと呼び水をした時の事です。
勢い余って海水が口に入り、しょっぱさと独特の味わいに悶絶しながらすぐに水を吐き出して口をすすぎに行きました。
理由はその水槽にいたのが「フグ」だったからです。キンチャクフグ系だった事もあり、今思えば割りと命の危機だったのかも知れません。
この話を恩師にした時、恩師もかつての失敗談を笑いながら語ってくれました。
どうやら恩師の時代ではカエルやサンショウウオ等の両生類も水換えや水合わせの時にエアチューブを使っており、大量にいた時はホースでやっていたそうです。そして勢い余ってカエルの飼育水を口にして悶絶したと語ってくれました。
カエルの種類は教えてくれませんでしたが、種類によってはフグ毒やコブラの毒より危険と言われる「バトラコトキシン」を持つ種類もいるので恩師の方が危険度が高く、なんやかんや九死に一生を得た事と「私もまだまだだな…」と思ったのは良い思い出です。
②水槽、水質、水温、フタについて
セネガルスは10〜15cm程の幼魚であれば45cm水槽でも飼育できますが、成魚に育った事を考え60cm水槽での飼育をオススメします。
ちなみに60cm水槽でフィルターも高性能な物を使うと2〜3匹は飼育でき、「ある行動」も確認する事ができます。それ以上の匹数を飼育したい場合は90cm以上の水槽を用意した方が無難です。
セネガルスは中性〜弱酸性の水質を好んでいます。適応範囲も広いので弱アルカリ性にさえしなければ初心者でも飼育を楽しむ事ができます。
水温は24〜28℃くらいであれば飼育できますが、水温の急変は体調を崩す原因になるので必ずヒーターを入れて水温を一定に保つようにしましょう。
フタについてはどんな種類にも言える事ですが、必ず水槽にはフタをするようにしましょう。
セネガルスもおっとりした泳ぎの魚ではありますが、小さくても「古代魚」です。
そのためフタはプラスチック製よりは重量があるガラス製や、入手できれば厚みがあるアクリル板を加工した物を使うと飛び出しを抑制する事ができます。
③底砂について
弱アルカリ性に傾ける作用があるサンゴ砂以外であれば飼育に使う事ができます。
様々な砂や砂利が使えますが、その中でも私のオススメの底砂は「渓流砂」です。砂粒もある程度大きく、セネガルスが泳いでも舞い上がりにくい特徴があります。
また、砂の色も自然な明るさなのでセネガルスのワイルドな雰囲気が引き立ちます。
☆実は「底砂を使わない」選択肢も…
セネガルスを始めとするポリプテルスの仲間や大型魚を飼育する時に敢えて「底砂を使わない」という方法もあります。
これは「ベアタンク」と呼ばれる非常にシンプルな飼育方法ですが、シンプル故に管理がとても楽&生体がよく見えるというメリットがあります。
④フィルターについて
セネガルスは魚食性の種類なので水を汚しやすい面がある事を考慮して濾過力のある上部式フィルター、外部式フィルターがオススメです。
また、パワーフィルターに投げ込み式フィルター、上部式フィルターに投げ込み式フィルターを併用する事で水質悪化の抑制に繋がるため気になる方は是非参考にしてみてください。
Q,投げ込み式フィルターを入れたら魚に引っくり返されちゃった!対処方法は無いの?
A,「キスゴム」を使う事である程度対処できます。
古代魚や大型種は力が強いので投げ込み式フィルターをそのまま水槽に入れただけでは簡単に引っくり返したり移動させてしまいます。
そして、引っくり返されたりした弾みで吸着したゴミや汚れが水中に舞ってしまう事もあるので見た目や水質的にも不安が出てしまいます。
このような事態を防ぐため、投げ込み式フィルターを併用する場合はエアチューブに「キスゴム」を取り付けて水槽の壁面に張り付けてしまいましょう。
これだけで投げ込み式フィルターが引っくり返される事態は大分収まってくれます。
⑤隠れ家(シェルター)について
人にもよく慣れる性格のセネガルスですが、隠れ家があった方が落ち着きやすい面があります。
これに関してですが、常に見られ続ける状態ではなく、時々自分の時間を過ごせる場所が彼らにも必要という事なのだと思います。
⑥水草について
私はポリプテルスの飼育に水草を使った事はありません。というのも低層を生活圏とし、パワーのある彼らの水槽に水草を植えると抜いてしまう可能性があるため植えない方が無難と判断したからです。
「アマゾンソード」等のエキノドルスの仲間や「ラージリーフ・ハイグロフィラ」等の大型のハイグロフィラの仲間は底砂にしっかりと根を張るとなかなか抜けません。
また、石や流木に活着させた「アヌビアス」や「ミクロソリウム」「ボルビディス」等の水草や「ウィローモス」等のコケ類であれば隠れ家としてそのまま設置できるので、水質改善や水槽内をより華やかにしたい方にオススメです。
⑦混泳について
セネガルスは口に入らないサイズの魚であれば混泳させる事ができます。
同種とも混泳はできますが、他種であれば「クラウンローチ」や「ピクタス」「レモラキャット」といったナマズの仲間、「エンゼルフィッシュ」等の体高があったり10cm以上になる種類であれば食べられる心配はありません。
■むしろ気を付けたい「コケ取り部隊」
セネガルスを始めとしたポリプテルスの仲間にはどう足掻いても相性が悪い種類がいます。それが「プレコの仲間」です。
プレコや大型になるファロウェラの仲間は、コケ取りとしてポリプテルスの水槽に導入してしまうと茶色くて硬いポリプテルスの体を大好きな流木と勘違いして吸い付いてしまうのです。
どちらも流木やコケを削り取る頑丈な歯とアゴを持つため、種類や場合によってはたったの一晩でポリプテルスの体をボロボロにしてしまいます。
私がかつて学生時代に学校で見た光景ですが、当時タンクメイトになっていたセルフィンプレコによって齧られたエンドリケリーのウロコは無数の傷によって白く濁り、ヒレや体表から血が滲んでしまう程の悲惨な状態になってしまっていました。
⑧照明について
照明があると昼夜のメリハリをつけたり観賞の時に見やすくなるのであると便利です。
⑨給餌について
セネガルスは人工飼料にも慣れやすいので、ショップや問屋で既に人工飼料に慣れている個体は人工飼料のみで飼育できます。
「カーニバル」のような浮上性のタイプや「キャット」のような沈下性の餌、乾燥ヌマエビもモリモリ食べてくれるので初心者にも安心です。
また、冷凍飼料の食い付きも良いので人工飼料に慣れている個体の場合はオヤツ程度に与えるとメニューに飽きが来ず、食欲を保つ事ができます。
給餌の間隔ですが、1日に1〜2回、または2日に1回時間をかけて少しずつ餌を与えます。
また、人工飼料の場合は水を吸って膨らむという性質上、食後にちょっとしたタイムラグが発生しやすいため、少しずつ与えて食べ残しが出ないように気を付けてください。
食べ残しが出た場合は大きなスポイトやネットを使って取り除き、水質の悪化や腐敗を防ぎます。
Q,人工飼料を食べない場合の対処方法は?人工飼料に慣れさせるにはどうすれば良い?
A,活き餌や冷凍飼料を与えつつ、ゆっくりと人工飼料に慣れさせましょう。
セネガルスも性格色々。極稀に人工飼料に餌付いていない個体がいる事もあります。
その場合は無理やり人工飼料を与えず、反応が良い口に入るサイズのヌマエビやアカヒレ等の活き餌やアカムシ、ホワイトシュリンプ等の冷凍飼料を与えて様子を見ましょう。活き餌は管理をしなければならないため、最初は冷凍飼料から与えます。
冷凍飼料にすら反応が無い場合は活き餌を使いますが、反応があった場合は冷凍飼料をしばらく主食にします。
食欲も問題なく、餌に対しての警戒心がなくなってきたと感じたら人工飼料に少しずつ慣れさせていきます。
解凍した冷凍飼料の液を人工飼料に染み込ませてから冷凍飼料と一緒に与え、口に入れた時に吐き出さずに飲み込んだ場合は給餌の度にこれを続け、少しずつ人工飼料の量を増やしていき、人工飼料に切り替えていくようしましょう。
☆慣れると手から受け取ってくれる♪
ポリプテルスは基本的に低層を生活圏にしていますが、よく慣れた個体は餌を見ただけで泳ぎだし、水面直下で待機する事もあります。
この時クリルやカーニバルをピンセットや指で挟んで水面に近付けると「パクッ」と受け取ってくれます。
ポリプテルスは噛む力が強いので本当に手から与える場合は飼い主側にも慣れが必要ですが、先が丸いピンセットからであれば双方ともに安全なので、ちょっとした触れ合いを楽しむ事ができます。
◇アルビノの場合はちょっと気遣いが必要!
乳白色の体と白いヒレが美しい品種・アルビノですが、セネガルスに限った事ではなく「普通種より視力が悪い」と言った一面があります。したがって餌を見つけたり食べたりするのが少し苦手です。
こちらが食べたと思っていても意外と食べれていない事が多いので、アルビノに餌を与える時は、なるべく口元に餌を落としてあげるようにしましょう。
また、浮上性の餌に慣れさせる場合も、最初は水を含ませた物をピンセット等で口元に持っていって食べさせ、味や匂い、色等を覚えさせます。
そこから給餌のたびに少しずつ高度を上げるようにしていくと、浮上性の人工飼料を与えた時に匂いと弱いながらも視覚をたよりに餌を食べに来てくれるようになります。
⑩水換え、掃除について
飼育している匹数や水槽のサイズ、水槽の汚れ具合にもよりますが1週間〜10日に1度、1/3〜1/2の量の水換えをします。
飼育器具の電源を切ってから掃除を開始しますが、ベアタンクで飼育している場合は壁面や底面の汚れをメラミンスポンジやスクレイパー等で落とし、その汚れをクリーナーポンプで水ごと排出します。
また、フィルター内部のウールマットは目詰まり解消のために洗い、傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換します。
揚水パイプも取り外してブラシで汚れを擦り落として目詰まりの原因を解消しましょう。
後は揚水パイプをフィルターに戻し、カルキ抜きと水温を合わせ終わった新しい水を水槽に足し、器具の電源を入れて水換えと掃除は終了です。この管理の楽さはベアタンクならではのメリットです。
底砂や流木等をレイアウトしている場合は壁面のコケやヌメリ等の汚れをメラミンスポンジやスクレイパー、石等の汚れが目立つ場合は歯ブラシ等を使って擦り落とします。
揚水パイプやウールマット、投げ込み式フィルターも併用している場合はベアタンクの時と同じように洗い、傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換します。
水草をレイアウトしている場合は枯れ葉やコケが生えてしまった部分等をトリミングし、それによって出た不要な葉はネット等で集めて燃えるゴミとして処分しましょう。
壁面やレイアウトアイテムの掃除が終わったら汚れを水ごとクリーナーポンプを使って排出します。底砂の隙間には意外と汚れが溜まっているので底砂を吸い出さないように注意しながら掃除を進めましょう。
水の排出が終わったらカルキ抜きと水温合わせを済ませた新しい水を水槽に足し、それが終わったら飼育器具に電源を入れて水換えと水槽掃除は終了です。
1ヶ月に1回は上部式フィルターや外部式フィルターの中にある生物濾過材を洗いますが、こちらは飼育水で軽くすすぐようにしてバクテリアの急な減少を抑えつつ汚れを落とします。
ポリプテルス・セネガルスがかかりやすい病気と治療方法について
ポリプテルス・セネガルスというお魚を飼い始めました!
— しょうた 守護神NG川 (@closer_nagakawa) November 15, 2019
前々から飼いたいと思っていたお魚なので非常に興奮しております pic.twitter.com/ByyAosCvuO
セネガルスは体は小さいですが、水の汚れにも多少の耐性があったり硬いガノイン鱗という特徴のおかげでアクアリウム界で憎たらしい病気の1つ、「白点病」にもかかりにくいという面があります。
しかし、セネガルスの強さにあぐらをかいて飼育管理が疎かになってしまうと流石の彼らも病気になってしまいます。
また、セネガルス等の古代魚の仲間はナマズの仲間と同じように「薬品に弱い」という特徴があるため、1度病気を出してしまうと治療が難しく、治療に使う魚病薬の量も必ず「規定量の1/5〜1/2」くらいに抑えなければショック死してしまう事すらあります。
①エロモナス症
恐らくアクアリウム界最悪最凶の病気と言っても過言ではない病気です。致死率も高く、治療も難しいためエロモナス症を出さないように普段からしっかりと飼育環境を整え、維持するようにしましょう。
発症の原因は病気の魚の持ち込みや水質の悪化、体力の低下、古い餌を食べてしまった事等が挙げられます。
治療方法は前述の通り、使用量を1/5〜1/2に抑えた魚病薬を使った薬浴です。グリーンFゴールド、エルバージュ、観パラD、パラザンDのいずれか1つを使ってください。
まずは病魚を治療用の水槽に移動させます。次に魚病薬を投薬していくのですが、様子を見ながら少しずつ、ゆっくりと投薬していきます。
これには薬品にゆっくりと慣れされる事とショック状態になる確率を減らすためという意味合いがあります。
治療期間中は3〜5日に1度水換えをし、再び投薬をします。これをエロモナス症の症状がなくなるまで続けます。
②水カビ病
綿かぶり病や綿カビ病とも呼ばれる病気です。セネガルスはガノイン鱗のおかげもあってか重症になる事は少ないのですが、気を抜いているとヒレ等に水カビが生えた可哀想な状態になってしまいます。
発症の原因は水カビが生えるの要因となる餌の食べ残しを放置してしまった事や、水槽内の生物濾過が正常に機能していない事等が挙げられます。
治療についてですが、ヒレ先に水カビが少し生えている場合はピンセット等で取り除きます。
また、広範囲に水カビが生えている場合は患部を傷付けないように水カビの根元部分をハサミで切除します。
ヒレ先や患部の症状が軽い場合は治療用水槽に病魚を移してから塩水浴による治療を行い、塩水は水10Lに対して30〜50gの塩を混ぜて作ります。
この状態で病魚を飼育し、治療から1週間以上経っても水カビが生えてこなければ治療は終了です。
患部の症状が酷い場合は薬浴を行い、魚病薬はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系の魚病薬のいずれか1つを使います。
こちらの場合も治療用水槽に病魚を移してから投薬をしますが、少しずつ時間をかけて投薬します。
治療期間中は5〜7日に1度水換えを行い、再び投薬をします。水カビに侵食された患部がセネガルス本来の体色とウロコの透明感が戻ったら治療は終了です。
③寄生虫
セネガルスに限らずポリプテルスの仲間や古代魚、大型肉食魚は高確率で寄生虫の症状が出やすいです。
症状は寄生虫によって様々で、錨のような頭部をしており病魚の体のあちこちからヒモ状の体を出している「イカリムシ病」や約1cm程の半透明な円盤状の体を持ち、体液を啜る「ウオジラミ(チョウ)症」、エラに寄生された事によって体液を吸われたり呼吸困難に陥って動きが鈍くなってしまう「吸虫病(ダクチロギルス症、ギロダクチルス症)」等があります。
発症原因は主に寄生虫に寄生されてしまった魚を水槽に持ち込んでしまった事が挙げられますが、活き餌を与えている場合は餌になった小赤等が媒介となる事もあるため油断大敵です。
治療方法ですが、イカリムシ病の場合はそのまま薬浴をしても効果が薄いため、まずは体から飛び出しているヒモ状の虫体をピンセットで引き抜きます。
この時体内にイカリムシの頭部が残ってしまうとそこから再生してしまうため、頭部まで慎重に引き抜きましょう。
治療方法は治療用水槽に病魚を移してから薬浴を行います。
薬浴には熱帯魚用の駆虫薬・トロピカルNを使うのですが、かなり強力な薬品なので使用量を規定量の1/5〜1/3くらいに留め、より時間をかけて様子を見ながら少しずつ投薬します。
また、エラに寄生される「吸虫病」の場合は病魚は既に酸欠状態になっているため、強めのエアレーションをして呼吸を少しでも楽にしてあげてください。
駆虫薬が効いてくると水槽の底に寄生虫がボトボトと落ちてきます。2〜3日薬浴を続けてそれ以上寄生虫が出てこなければ治療は終了です。
寄生虫による症状はイカリムシのように分かりやすいものもあれば、ウオジラミや吸虫のようにしっかり観察しないと見落としやすいものもあるため、健康チェックは毎日して異変に少しでも早く気付けるようにすると対処がしやすくなります。
ポリプテルス・セネガルスの繁殖について
ポリプテルス・セネガルス
— 半田水園 春日井店 (@hansui_kasugai) October 31, 2018
最大30cm前後、性格も大人しく混泳もさせやすい種類で人気があります✌️
ただいま当店にいる子たちはまだまだ小さいサイズなので、これから成長させる楽しみがありますよ😍そして人工飼料への餌付きもばっちりです🍙めちゃくちゃよく食べます🍙#古代魚 #ポリプテルス pic.twitter.com/pj8ndt2sEn
実はポリプテルス・セネガルスは健康に育ったペアがいれば60cm水槽でも繁殖行動をする事が知られています。
①成熟するまでの年数と雌雄判別について
セネガルスは小型種ですが、繁殖ができる立派な成魚になるまで2〜3年かかります。
特に産卵するメスの成熟具合は繁殖においてかなり重要です。複数匹で長年飼育している場合は自然とペアができている事もあります。
ここでセネガルスの雌雄判別についてですが、しっかりと飼い込まれた個体はある違いが出てきます。それは「尻ビレのサイズ」です。
オスの尻ビレは大きく幅広いため目立ちますが、メスの尻ビレは小さくてあまり目立ちません。
②繁殖形態について
セネガルスは産卵によって繁殖をします。
完全なベアタンクだと産卵できる場所がないため繁殖行動自体が見られませんが、ウィローモス等の水草があると産卵場所として認識し、次第に繁殖行動を取るようになるのでペアの行動に注意しましょう。
産卵間近になると、オスがメスを追いかけたり、寄り添うような行動が目立ってきます。
まとめ
今回は水槽で飼える小さな龍「ポリプテルス・セネガルス」についてご紹介させていただきました。
大きくなる種類が多い古代魚の中でも小型で丈夫で愛嬌のあるセネガルスはアクアリウム初心者でも飼育しやすく、熱帯魚の魅力と古代魚の野性味、そしてポリプテルス特有の龍のような姿をもって飼い主の心を満たしてくれます。
また、人懐こい性格や指や人を追いかけてしまう仕草も可愛らしいですが、水中を泳ぐ時の姿は東洋の龍のように幻想的な雰囲気があります。
これはポリプテルスと同じように龍魚と呼ばれるアロワナの泳ぎとは全く異なっており、「ポリプテルスだからこそ」味わう事ができる贅沢と言えます。
水中を駆け、低層ではどっしりと構えながらも飼い主が好きで堪らない小さな龍が、貴方も知らない心の隙間を埋め、ゆったりとした癒しの時間を与えてくれる事でしょう。