はじめに
(©︎Charm様)
この話を要約すると、煤のような体色のために回りから見向きもされず馬鹿にされていた雛鳥が孤独に冬を乗りきり、春になって湖面を覗くとアヒルより美しい白い羽と気品ある姿の白鳥に成長していた、という物語になっています。
実はアクアリウムの世界にもこの童話に通じるような小型カラシンがいるのです。それが今回ご紹介する「テトラ・オーロ」になります。
入荷直後や幼魚の時のテトラ・オーロはお世辞にも美しいという体色ではなく、初見であれば誰もが地味過ぎてあまり見向きもしない種類だったりします。
ですが数ヶ月後、きちんと成長した個体となった姿は幼魚とはかけ離れた清廉で美しい姿のため、その姿を見て初めてテトラ・オーロを好きになったという方もいるという「別の意味で初見殺しするタイプ」の小型カラシンと言えます。
1,テトラ・オーロについて
(©︎Charm様)
①どんな姿をしているの?
テトラ・オーロはネオンテトラよりやや体高があり、どちらかというとファントムテトラ系に近い体型をしています。
目は大きめで、目の周囲がメタリックに輝きます。
体色は透明感のある灰色に、お腹側は若干緑がかった銀色、尾柄に大きな黒いスポットが1つと小さな白いスポットが2つあります。
各ヒレの内、背ビレ、腹ビレ、脂ビレの一部が白く染まります。
②生息地は?
ブラジルやパラグアイ等の河川に生息しているとされているため、飼育する時も南米の河川と同じように弱酸性の水質を心がけるとかなり飼育しやすくなります。
③大きさはどのくらい?
(©︎Charm様)
テトラ・オーロは大きくなっても3cm程の大きさで、ショップに入荷する個体のほとんどが2〜2.5cm程の幼魚や若魚です。
④どんな性格をしているの?
テトラ・オーロはとても大人しい性格をしており、ちょっと臆病な面があります。
基本的に小競り合いもせず、群れを作る性質があるため群泳を楽しめるだけでなく、追いかけ回してくるような気が強い種類や捕食してくるような種類でなければ混泳もできます。
ビーシュリンプやチェリーシュリンプ等のエビの仲間とも相性が良く、混泳の選択肢がかなり広いテトラと言えるのも特徴の1つです。
☆アピストのペアとも混泳可能!
とても穏やかな性格のテトラ・オーロが他の魚に対してちょっかいをかける事はほとんどなく、自分より大きな魚を見ると威嚇せず群れで少し離れた所を泳いだりします。
そのためテトラ・オーロは南米産アピストのペアとも混泳ができ、アピストの方も卵や稚魚をいじめるような相手ではないのを分かっているのか追いかけもせずに子育てに没頭します。
☆大切にしてくれるなら…
テトラ・オーロは臆病なので、飼育を初めてからしばらくは水槽を泳ぎ回るという事が少ないです。
また、目の前で動く物に怯え、餌の時も一旦水草の陰に逃げ込んでから恐る恐る出て来て食べる事もあります。
そんな怖がりな彼らと根気強く向き合っていると、ふとしたタイミングで寄ってくるようになります。
⑤どんな物を食べているの?
テトラ・オーロは野生下では小さな魚の卵やミジンコ、イトミミズ等の水生生物等を食べていると考えられています。
⑥どこで入手できるの?大体のお値段は?
ちょっとマイナーな熱帯魚も取り扱っている総合ペットショップやアクアショップであれば、テトラ・オーロを見つけるのはそんなに難しくはありません。
もし、身近に取り扱っているショップが無い場合は通販を利用すると簡単に見つける事ができます。
大体のお値段についてですが、世界情勢によって値段の上下があるため、1匹あたり400〜700円位が目安です。
☆ワイルド個体もオススメ!
現在流通しているテトラ・オーロのほとんどは東南アジアで繁殖された「ブリード個体」なのでお値段も比較的お手頃だったり飼育しやすい面があります。
成長した時の姿もブリード個体は美しいですが、稀に入荷してくるワイルド個体はさらに豪華で美しくなります。
⑦飼育する時の注意点は?
◆テトラ・オーロの飼育の注意点
- 水質に敏感なので水合わせや水質悪化に気を付ける事。(特にワイルド個体)
- 入荷直後の個体は体力的に弱っている事が多いのですぐに購入しない事。
- 臆病な面があるため目の前で急に動いたり、気が強い種類と混泳させない事。(慣れた個体でもパニックにさせないため急な動きは控える)
- 口が小さいので餌のサイズに気を付け、餌のサイズが大きい場合はすり潰したりハサミで細かくする事。
テトラ・オーロは餌も選り好みせず何でもよく食べ、混泳もこなす飼いやすい小型カラシンではありますが、同じく入門種であるネオンテトラと比較すると少々神経質な面があります。
2,テトラ・オーロの飼育方法について
①購入について
ペットショップやアクアショップで購入ができますが、注意点にもあるように、入荷直後の個体は疲れて弱っている事が多いのですぐ購入しないようにします。
また、ショップ側も入荷間もない場合はトリートメントをしていたり、値札を付けないようにしています。
値札も付いて販売開始されているテトラ・オーロを見付けたらトリートメントはしてあっても、購入前には必ず健康チェックをするようにしましょう。
◆チェックするポイント◆
- ヒレもピンと立てて元気よく泳いでいるか。
- 体表が荒れていたり、粒々あるいは粉状の付着物がないか。
- 体が白濁していないか。
- ヒレが不自然に裂けていたり、溶けていないか。
- 充血が見られたり、ウロコが膨らんでいないか。
- 力無く底砂の上にいないか。水流に流されていないか。
- 不自然に体が膨らんでいたり、ガリガリに痩せていないか。
②水合わせ、導入について
テトラ・オーロをご自宅に迎えたら、まずは水合わせをしましょう。
ブリード個体でも水質に敏感な一面があり、ワイルド個体であればさらに敏感なので、ショック状態にしないためにも決して外してはならない作業です。
まずは水槽からあらかじめバケツ等に水を取って置き、その後袋ごと20分程浮かべて水温を合わせます。
水温を合わせ終わったら袋を開け、中の水を1/4〜1/3程捨てて水槽の水を同じくらいの量入れて10〜15分程様子を見ましょう。
特に異常が見られなければ、同じ作業を2〜3回繰り返し、最後の水合わせも問題がなければ水槽にゆっくりと放ちます。
テトラ・オーロは小さいので、この時袋の中に引っ掛かって残っていないかも確認するようにしてください。
テトラ・オーロを導入し終わったら、あらかじめバケツ等に取っておいた水槽の水を水槽に戻して水合わせと導入は完了です。
導入直後のテトラ・オーロは水草や流木の陰に隠れてあまり姿を見せてくれませんが、慣れてくると少しずつ姿を現し、群れを作って泳ぐようになるのであまり心配せず気長に待ちましょう。
水質の悪化に弱いため導入直後の給餌は避けて、緊張もほぐれ、お腹も空き始めた翌日か翌々日くらいから給餌を始めると食べ残しも少なく水を汚さずに済みます。
水合わせの方法は自分のやり易い方法を取るのがベストではありますが、お迎えした匹数が数十匹にも及ぶ場合は袋を水槽に浮かべる水合わせ方法より、バケツや衣装ケースに一度放ってからエアーチューブを使った水合わせ方法の方が個人的にはオススメです。
理由としては、魚達が袋から水槽へ飛び出さないので水質変化によるショックになる可能性を減らせる事と、袋を浮かべるために水槽から大量の水を取る作業を省けるというのがあります。
③水槽、水質、水温について
本種は成長しても3cm程の小型カラシンなので、30〜45cm水槽でも5〜8匹程飼育する事もできます。
また、60cm水槽であれば本種のみなら数十匹単位の大群泳を見る事もでき、多くの種類との混泳も楽しむ事ができます。
水質は弱酸性を好んでいますが、慣れさせれば中性でも飼育は可能です。
しかし、本来の体色や姿を見るのに時間がかかってしまうため、できればウォーターコンディショナーや底砂を活用して弱酸性で飼育するのがオススメです。
水温は23〜27℃くらいあれば特に問題なく飼育できます。水温が急変しないように、サーモスタッド付きヒーター等を入れて水温を一定に保つようにしましょう。
④フタについて
テトラ・オーロは普段はおっとりしているのですが、少々臆病なので何かの拍子に驚いてパニック状態になり、水槽から飛び出してしまう事があります。
ゆっくり泳いではいますが、元々遊泳力の強いカラシンの仲間なので決して油断せず水槽にフタをするようにしましょう。
⑤底砂について
弱アルカリ性に傾ける作用が無い底砂であれば、基本的にどの底砂でも飼育に使う事ができます。
人工的に作られたガラス砂や川砂、山砂等も色味が美しいため使って楽しいですが、水質を弱酸性に傾けられるという点であればソイルを使うのが無難です。
⑥ライトについて
昼夜のメリハリをつけたり水草を育てる場合は必要なアイテムです。
Q,電気代を節約したい!
A,電力消費が少ないLEDのライトを使うか、思い切ってライト無しの飼育も選択肢に入れてみてください。
最近は世界情勢や某感染症の影響もあってか懐事情も切実な事もあります。アクアリウムと爬虫類・両生類の世界はどうしても電気に頼る部分が大きくなるので電気代も高くなりやすいです。
そんな中、少しでも電気代を節約したいという場合はライトをLEDに変えたり、バックスクリーンの裏側に発泡スチロールを入れてヒーターの負荷を少しでも軽くします。省エネタイプのフィルターを使うのもオススメです。
さらに電力を抑えたいという場合は、レイアウトに水草を使わないか少ない光量でも育つ水草にし、ライトを使わないという手段もあります。
⑦水草について
本種は水草にほとんどイタズラをしないため、あらゆる水草をレイアウトする事ができます。
育てやすい定番の水草として「アマゾンソード」や「バリスネリア」「ウィローモス」「アヌビアス」等がありますが、十分な光量と二酸化炭素があれば「パールグラス」や「リスノシッポ」「リシア」等のちょっと難しい水草の栽培も挑戦できます。
⑧隠れ家について
ちょっと臆病な彼らにとって群れでいる事も大事ですが、ちょっと隠れられる場所もあると落ち着きやすいです。
⑨フィルターについて
基本的にどのフィルターでも飼育に使う事ができますが、飼育する匹数や水槽のサイズに合わせてフィルターの種類やサイズを決めるのがオススメです。
⑩給餌について
テトラ・オーロは人工飼料にも慣れやすく、コレ1つで終生飼育できたりします。
ただ、体が小さい分口も小さいので餌を与える時は顆粒タイプの人工飼料を与えたり、指で細かくすり潰したり、冷凍アカムシが大き過ぎる場合はハサミで細かくして食べやすくする等の工夫が必要です。
給餌は1日1〜2回、3分程度で食べきれるくらいの量を与えます。テトラ・オーロは沈下性の餌も浮上性の餌もよく食べに来てくれるので観察もしやすく、群れ全体、混泳もしているのであればタンクメイトにもしっかり餌が行き渡ったかも確認するようにしましょう。
⑪水換え、掃除について
テトラ・オーロは水質悪化に弱い面があるため、健康に飼育するためにも水換えは怠ってはいけないお世話となります。
基本的には他の魚達と同じように、飼育している匹数や水槽の汚れに合わせ、大体1週間〜10日に一度水換えと掃除を行います。
水換えと掃除をする時は必ず飼育器具の電源を切るようにしてください。特にヒーターは火傷の原因になったり、空気に触れると空焚き防止機能が働いて買い換えになる事もあります。
水槽についたヌメリやコケ等の汚れはスクレイパーやメラミンスポンジで擦り落とします。
ショップには「コケクロス」という水槽内の汚れを落とすのに使える商品もありますので、拭き掃除にオススメの逸品です。
石や流木に付いた汚れは歯ブラシ等で、フィルターの揚水パイプは取り外したら専用のブラシを使って汚れを落とします。
この時あまり激しく水中で動くとテトラ・オーロ達が怯えてパニック状態になる事があるため、できる限り焦らずゆっくり掃除します。
水草が伸びすぎていたり、枯れている場合はトリミングして不要な葉を切ったり長さを調節します。
この時も焦ってチョキチョキしていると、隠れていたテトラ・オーロのヒレを傷付けてしまう可能性があるため、どこにいるか把握しながら慎重に進めるようにしましょう。
トリミングで出た不要な葉等はテトラ・オーロを捕まえないように慎重に回収した後燃えるゴミとして処分します。
水槽内の大体の掃除が終わったら、クリーナーポンプを使って水ごと汚れを排出します。水槽のサイズや汚れ具合にもよりますが、1/4〜1/2の量の水を換えます。
水を排出し終わったら新しい水を水槽に足していきます。カルキ抜きをし、水温も合わせた水を魚達を驚かせないようにゆっくりと足していき、足し終わったら飼育器具を戻し、電源を入れて水換えと水槽掃除は完了です。
フィルター内部の掃除は大体1ヶ月に一回くらいですが、投げ込み式、外掛け式、パワーフィルター、スポンジフィルター、上部式・外部式フィルターのウールマットの場合は1〜2週間に一度、飼育水でもみ洗いして詰まりを解消しますが、濾過材の傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換します。
生物濾過槽を掃除する場合も飼育水で軽くすすいで汚れを落とします。
フィルター内部を掃除するとどうしても濾過バクテリアが減ってしまうので、心配な方は市販の濾過バクテリア材を添加するのをオススメいたします。
Q,物理濾過材を長持ちさせたい!
A,別売りのストレーナースポンジやカートリッジを装着してみてください。
水槽掃除をする時どうしても気になるのが濾過材に汚れが詰まる事です。
上部式・外部式フィルターの場合は物理濾過を担うウールマットを洗えば良いのですが、投げ込み式や外掛け式等の一体型濾過材だと汚れが詰まる度に洗うため、繊維や濾過材の傷みが酷くなりやすく、すぐに新しい物と交換しなければならない事もあります。
少しでも物理濾過材の寿命を伸ばしたいという場合は、別売りのストレーナースポンジやカートリッジを装着する事でウール部分の汚れを抑える事ができます。
濾過容量の大きな外掛け式フィルターだとストレーナースポンジ以外に物理濾過用のマットもあるため二重装着して一体型濾過材を守る方法もあります。
3,テトラ・オーロがかかりやすい病気と治療方法について
小型カラシンの中でも飼育しやすい部類に入ると言われるテトラ・オーロですが、水質の急変や悪化に弱いため、水槽内の環境が崩れると一気に体調を崩して病気になってしまう事があります。
①カラムナリス症
この病気は症状の出た部位によって呼び方が変わり、尾腐れ病、口腐れ病、エラ腐れ病等があります。
カラムナリスという細菌による病気で、感染力や致死率の高い恐ろしい病気の1つに挙げられます。
発症の原因として水温の急変や水質の悪化によって体力や免疫力が低下してしまう事、病気の魚を水槽に持ち込んでしまった事等が挙げられ、水質に敏感なテトラ・オーロがかかりやすい病気の1つとなります。
初期症状は魚体の一部に白〜黄色っぽい付着物が確認でき、さらには充血も確認できます。
尾腐れ病の症状は感染した尾ビレが溶け始め、次第に裂けてボロボロになって弱々しく水面を漂うようになり、病魚はやがて死に至ります。
治療方法として、治療用水槽に移してから薬浴を行います。
観パラDやグリーンFゴールド、グリーンF、パラザンD等の魚病薬を使います。5〜7日に一度、半分の量の水換えを行い、再び投薬して薬浴をします。
②ウーディニウム症
コショウ病、ベルベット病とも呼ばれる病気で、病魚は体表に白コショウの粉末でもまぶしたかのような乳白色〜薄黄色っぽい粉のような物が付着しているのが特徴です。
また、かかった魚はヒレをたたんで力無く泳いだり、体をプルプルと震わせたりします。
発症の原因は、水質悪化や病気の魚を持ち込んでしまう事等が挙げられますが、水槽やフィルターの掃除を怠っていると発生しやすくなる事でも有名です。
ウーディニウム症が発生したら、水槽やフィルターの掃除が不十分な可能性があるため、今一度飼育方法や掃除について見直すようにしましょう。
治療方法として治療用水槽に移してから薬浴を行い、グリーンF系の魚病薬やマラカイトグリーン、メチレンブルーを投薬して薬浴します。
薬浴を開始したら5〜7日に一度、半分の量の水換えを行い再び投薬をします。
また、ウーディニウムは塩分にも弱いという特徴があるため、発症して間もない場合は10Lの水に対し、30〜50gの塩を混ぜて塩水を作り、塩水浴をする事で治療する事もできます。
合わせ技としては塩水とマラカイトグリーン等の魚病薬を併用するという方法もあります。
③白点病
発生条件が少しでもあると気付いた頃に発生するという、何とも図々しい病気です。
症状として、体表やヒレ、エラ等に白い小さな点が出現しますが、放っておくと点の数がどんどん増えていき最終的には病魚は弱って死んでしまいます。
また、痒いのか痛いのか病魚の方も白点を落とそうと体を流木や底砂に擦り付けてしまい、できた擦り傷が細菌感染症の原因になってしまう事もあります。
発症の原因は、水温の急変や水質の悪化、病気の魚を水槽に持ち込んでしまった事等が挙げられます。
うっかりしているとテトラ・オーロの小さな体に白点が付いてしまう事になります。
治療方法として治療用水槽に移してから薬浴を行います。使用するのはメチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF系、アグテン等の魚病薬です。
白点病は発生しやすい病気でありながら、病気が進行している程完治まで時間がかかってしまう病気でもあります。
メチレンブルーやグリーンF、マラカイトグリーンで薬浴する場合は1週間に一度半分の水換え、グリーンF系の中でもグリーンFクリアーは2週間に一度、アグテンの場合は3日に一度くらいの感覚で半分の水換えを行った後新たに投薬して薬浴します。
これを体の白点が無くなるまで続けます。
④エロモナス症
致死率、感染力、治療の難しさ等から発生させたくない病気のトップに輝く非常に悪名高い細菌感染症です。
症状はカラムナリス症のように様々で、病魚のウロコの下に分泌液が溜まった事により鱗が逆立って膨らんで松かさのようになったり、目が出目金のように飛び出したり、体に穴が空いたように爛れてしまったり等の症状が見られます。
初期症状では体表の数ヶ所に充血も確認する事ができます。
発症の原因は、水の腐敗による水質の悪化や体力と免疫力の低下、病気の魚を持ち込んでしまった事等が挙げられますが、魚達が古い餌を食べた事で発症する事もあります。
原因菌は「エロモナス・ハイドロフィラ」という常在菌であり、前述した発症原因によって魚達の免疫力や水槽環境のバランスが崩れると一気に発生する事があります。
治療方法は治療用水槽に移してから薬浴を行い、グリーンFゴールドや観パラD、パラザンD、エルバージュ等の魚病薬を投薬して薬浴します。
治療を始めたら、3〜5日に一度、半分の量の水換えを行い、再び投薬して薬浴をします。
エロモナス症は非常に死亡率が高く治療も難しいため、水換えの頻度を増やす、水槽内の善玉菌を増やす等の対策をしてキレイな水質を保ち、エロモナス症が発生しにくい環境を作る事が一番です。
4,テトラ・オーロの繁殖について
飼いやすいけどまだまだマイナーなテトラ・オーロは大切に飼育すると美しい姿を見せるだけでなく、水槽内で繁殖する事もあります。
メスにアプローチする姿はテトラ・オーロが最も美しくなる瞬間であり、飼育者のお世話が報われた瞬間でもあるのです。
①これぞ、テトラ・オーロの真の姿!
幼魚や成熟していない若魚の時の体色はあまり目立つものではなく、小型カラシンの中ではなかなか地味な部類です。
しかし、飼い主の懸命なお世話によって大切に育てられたテトラ・オーロは成長と共に美しさを開花させていくのです。
成魚になったテトラ・オーロの体色は琥珀ともハチミツとも取れる黄金色になり、白い縁取りだけだったヒレが不規則に伸びていきます。
この特徴はオスにかなり顕著に見られ、ブリード個体であってもこのヒレは体長と同じくらい伸びます。
ワイルド個体の場合はブリード個体よりも体型がシュッとしており、背ビレ、腹ビレ、尻ビレがさらに不規則に伸びますが、その長さはブリード個体の長さを凌駕します。
幼魚とは全く違う、清廉で神々しさすら感じさせるその見た目は、別種と見間違えてしまう程の豪華さがあります。
☆真名判明!?君の名は…?
先述した通り、大切に飼い込む事で幼魚とは全く違う雰囲気の美魚に大変身してしまうテトラ・オーロ。
「オーロ」には宝や金という意味があると言われており、成魚の黄金色の体色を表しています。
そしてもう1つ、彼らには呼び名があるのです。
それが「ベールフィン・テトラ」。「羽衣(ベール)のヒレを持つテトラ」という意味で、立派に成長したオス個体は体に似合わずヒレが長過ぎて名前通り「羽衣をまとった」ような見た目になります。
このヒレは先に行く程白色が濃くなり、全体的に青白いため青系のライトが当たるとヒレの色が顕著になって天使や精霊のような幻想的かつ神秘的な雰囲気を醸し出します。
②雌雄判別について
テトラ・オーロはしっかり飼い込んだ個体であれば、カラシンの仲間の中ではかなり雌雄判別がしやすい種類です。
そんな彼らの判別のポイントがこちらになります。
♠️オスの特徴
- 背ビレ、腹ビレ、尻ビレが長く伸びる。
- 体色の黄金色もメスより濃いめ(状態が良いとさらに濃くなる)
- お腹がふっくらしていない。
- メスに対して各ヒレをたなびかせながらアプローチする。
♥️メスの特徴
- オスのように各ヒレが伸びない。
- 尻ビレ前半が白く、オスより鋭角。
- お腹がふっくらしている。
- 黄金色というよりは薄いハチミツ色の体色になる。
- 繁殖可能になるとオスにアプローチされるようになる。
また、ポイントが分かり、判別に慣れてくると幼魚の段階でも見分けられるようになります。
幼魚の段階で見分ける場合は「尻ビレ」に注目しましょう。
メスの場合は前半が白く、ヒレの角度も鋭角です。しかし、オスの場合は尻ビレが無色〜うっすらと飴色であり、丸みを帯びて少し大きめになっています。
最初は分かりにくいですが、特徴が何となく違う両者を見比べながら観察すると分かりやすいです。
③繁殖形態は?
テトラ・オーロはバラまき型の産卵を行う事が知られており、ペアが寄り添い体を震わせながら産卵します。
その時のオスは、長いヒレでメスを優しく包みます。
また、彼らのオス同士の戦いはファントム系カラシンとは違って激しい小競り合いに発展する事はほとんどありません。ヒレをピコピコと動かして長いヒレをたなびかせ、互いに見せ合います。
まるで「僕の方が長くてキレイだよ!」「オレの方が枝分かれ部分がカッコいいぞ!」と言い合っているようにも見えますが、本当にこのくらいで終わってしまうのです。
オスの自慢のベールを評価するのはメスです。無駄な戦いでベールの品質を落とし、メスに振り向いて貰えない方が死活問題というのもあるのでしょう。
メスへのアプローチもファントム系カラシンと違って穏やかで、メスの目の前で長いヒレをたなびかせてアプローチします。
④産卵行動を確認したら
狙って繁殖させない場合はジェリービーンズ・テトラの時と同じように「自然繁殖」という流れになります。
水槽内の環境が整いサイクルがしっかり機能していると、水槽内には微生物がたくさん発生します。
卵から孵化した稚魚はお腹のヨークサックを吸収し終えると水槽内に発生した微生物を食べて成長します。
この場合、水換えやフィルターに吸い込まれてしまったり親魚に食べられてしまう事が多いのです。
少しでも稚魚の生存率を上げたい場合は、目の細かいストレーナースポンジをフィルターに装着するか、思い切ってメインフィルターをスポンジフィルターに変える事でフィルターへの吸い込みを僅かながら抑制する事ができます。
自然繁殖を計画している場合は、テトラ・オーロが成魚になった段階でフィルターを底面式フィルターに変えるとフィルターによる稚魚の吸い込み事故がほぼ無くなります。
狙って繁殖させる場合は2〜3ペアを別の水槽に隔離して飼育しますが、その方法は以前ご紹介させていただいた「コーヒービーン・テトラ」と同じ内容ですので宜しければそちらをご参照ください。
⑤稚魚の餌について
テトラ・オーロの稚魚はとても小さいため、産まれてすぐの稚魚ではブラインシュリンプのベビーすら口にする事ができません。
自然繁殖の場合は水槽内に自然発生した微生物が稚魚達の餌となりますが、より栄養を吸収させるためにもPSBを添加したり、稚魚用パウダーフードを与えます。
水草の茂み等で微生物やパウダーフードを食べながら成長した稚魚は1ヶ月もすれば8〜10mm程の大きさに成長し、視認しやすくなります。
それでもまだまだ親魚のような体型ではありませんが体色もうっすら灰色がかってきます。
さらにパウダーフードとPSBを続け、全長が1.5cmを超えてきたらブラインシュリンプのベビーを与えてみます。
食べるようであれば、少しずつメインの餌をブラインシュリンプベビーに切り替えていきます。
可能であれば、並行して親魚に与えている餌と同じ物を細かくして与え、味に慣れさせても良いです。
まとめ
今回は成長すると美魚に変身する小型カラシン「テトラ・オーロ」についてご紹介させていただきました。
水質に気を付ければとても飼いやすい種類ですが、実際稚魚の段階ではあまり見向きもされず、カラシン版「みにくいアヒルの子」と言えるちょっと切ない種類でもあります。
しかし、お迎えして大切に飼育する事でテトラ・オーロの灰色の体は黄金色に、お腹の銀は輝きを増し、元から清楚なヒレは長く伸びた羽衣となり神秘的な美しい姿へと変身するのです。
それはまるで、自分を大切に育てあげてくれた飼い主への感謝と恩返しのようでもあります。
そして、その姿を眺められるのは数ある派手な体色の熱帯魚の中から地味な体色である本種の幼魚を可愛がり育てあげた飼い主だけの特権なのです。
大人しい性格なので混泳もこなしますが、その長いヒレや美しい体色はタンクメイトにも負けず、お互いの体色や体型を引き立てながらしっかりと存在感を放ちます。
そんな育てがいのある清楚系小型カラシンをご自宅の水槽に是非迎え入れてみてはいかがでしょうか?