はじめに
初めて日本産淡水魚を飼育する時、川でのガサガサやタナゴ釣りで捕まえた魚やペットショップでスイスイと優雅に泳ぐ魚達を迎える事の2択かと思います。
この時オイカワやバラタナゴ等と同じくらいポピュラーで人気のある種類が今回ご紹介する「ヨシノボリ」という魚です。
川底をピョンピョンと跳ねるように泳いだり、高水温に弱い日淡の中でも丈夫な種類なので初めての方でも飼育しやすく生態を楽しめるハゼの仲間となります。
1,ヨシノボリとは?
①ヨシノボリの分類
ヨシノボリは「ハゼ亜目ハゼ科ヨシノボリ属」に分類されているハゼの仲間です。
河川や湖、沼地に生息しており、種類によっては一生を淡水で過ごす種類や仔魚〜稚魚の間は海で生活する種類もいます。
②ヨシノボリの特徴
ヨシノボリの平均的な大きさは5〜10cm程ですが、大きい種類だと10cmを超える事があります。
ここまでサイズの違いにバラつきがあるのはあまり細かく分類されていない事も関わりがあります。
ここではヨシノボリの仲間の中でも見かける機会が多い「カワヨシノボリ」をモデルに解説させていただきます。
体型は皆様ご存知のハゼの見た目ですが、頭はやや扁平で大きい分口も大きいです。目は頭部の上寄りに位置しており、つぶらな目をしています。
胸ビレはウチワ型で大きく、主にこのヒレを使って川底をピョンピョンと跳ねるように移動します。
背ビレは第一、第二と分かれており、成長したオスの個体の第一背ビレの一部は長く伸長します。
第二背ビレと尻ビレは丸みを帯びた平行四辺形、尾ビレは若干エッジのあるウチワ型です。
腹ビレは以前このブログでご紹介したカワアナゴとカジカと違い、円盤型の吸盤状になっています。
体色をある程度変化させる事ができ、淡い灰色〜茶色、黒褐色に変わり、頭部には橙〜朱色のラインが入ります。体色が明るい時は、体表にオレンジ色の細かいドット模様が浮かびます。
また、各ヒレの内側が濃い赤色、それを縁取るように外側は白〜黄色の発色を見せ、ハゼの中でも派手な部類に入ります。
③生息地
ヨシノボリは非常に生息範囲が広く、世界的に見てもロシアや東南アジアにも分布しています。
日本では本州、四国、九州、五島列島等の河川や湖、沼地に生息しています。
④何を食べているの?
ヨシノボリは野生下では主にカワゲラの幼虫やボウフラ、イトミミズ等の水生生物や魚の卵、口に入れば小魚やエビ、ミミズ等も捕食しています。
時々岩場や川底に生えた藻類を食べる事もあります。
とても食欲旺盛な魚なので、飼育下では人工飼料にもすぐに慣れてくれ、飼育しやすい面があります。
⑤どんな性格をしているの?
ヨシノボリは縄張り意識が強いため、同種や姿が似ている種類が近付くと口を大きく開けて威嚇したり追いかけたりする事があります。
また、口に入る物なら何でも食べようとするため、体の半分くらいある魚を襲う事もある程貪欲です。
そのため混泳を考えている場合は飼育する匹数やタンクメイトの大きさを考える必要があります。
気が強い分好奇心も強く、飼育環境に慣れた個体だとガラス越しの指を追いかけたり、水槽に指を入れると腹ビレの吸盤でピトッと吸い付いてくる可愛らしい一面もあります。
⑥どこで入手できるの?
日淡を扱っているペットショップであればヨシノボリも販売している事があります。
また、通販を利用する事で購入もできますが「ヨシノボリMix」という形でまとめ売りされている事もあり、一度に多種多様なヨシノボリを飼育する事もできます。
近くにヨシノボリが生息していそうな川や湖があれば採集用三角ネットを利用して捕獲する事もできます。
⑦どうして「ヨシノボリ」という名前なの?
ヨシノボリの特徴として吸盤状の腹ビレが挙げられます。
この腹ビレを使う事である程度流れがある場所でも流される事なく生活する事ができ、岩場や護岸も登る事ができます。
この特徴からか「葦にも登る魚」という事で「葦登」と呼ばれるようになったと言われています。実際は葦に登るような事はほとんどありません。
ちなみに植物の「葦」ですが他にも漢字では「芦」「蘆」と表記される事があります。「葦(あし)」は転じて「悪し」に通じるとされるため、それを嫌って「よし(転じて「良し、善し」)」と呼ぶそうです。
⑧ヨシノボリの飼育時の注意点は?
ヨシノボリは日淡の中でも飼育しやすく、野生個体を採集する以外にもペットショップで見かける機会が多い魚です。
☆ヨシノボリの飼育の注意点☆
- 複数匹飼育する場合は広い水槽を用意する事。
- 隠れ家を必ず作る事。
- タンクメイトのサイズに気を付ける事。特にエビは小さい種類だと食べられてしまうので注意!
- 自慢の腹ビレでフィルターの出水口からフィルター内部に入る事があるので数が少なくなったと感じたらフィルター内部もチェックする事。
- 日淡の中では丈夫ですが、水換えを怠らないようにする事。
- 複数匹飼育すると餌が足りない事があるためしっかりと食べさせる事。
- ハゼの仲間は薬品に弱い種類が多いので、薬浴する場合は規定量の1/2〜1/5にとどめる事。
2,ヨシノボリの飼育方法について
①導入、水合わせ
ペットショップで購入する場合は購入前に必ずヨシノボリをしっかり観察し、異常が無いかチェックしましょう。
ヒレが不自然にボロボロになっていないか、体表に付着物は無いか、ウロコが逆立っていたり充血が無いか、痩せていないか、水流に負けていないか等を見て特に異常が見当たらなければヨシノボリを迎え入れましょう。
ガサガサ等で自然から捕まえてきた場合は、寄生虫や病気の原因となる菌を少しでも抑えるためメインタンクにそのまま移さず、一度「トリートメントタンク」に移してメチレンブルー等で数日薬浴か塩水浴をしてからメインタンクに導入するのが無難です。
袋に入っている場合は、あらかじめメインタンクから水をある程度バケツ等に取って置き、袋ごと水槽に浮かべて水温を合わせます。
20分程経って水温が大体同じくらいになったら袋を開けて中の水を1/4〜1/3捨て、水槽の水を足します。
そこから15〜20分程様子を見て、異常が見られなければ袋の中の水がほとんど水槽の水になるまでこの作業を繰り返します。
最後の水合わせが終わった後もヨシノボリに異常が見られなければメインタンクに放ちます。その後はバケツ等に取って置いた水槽の水を戻して水合わせは完了です。
採取等でバケツや水槽にヨシノボリがいる場合は、ヨシノボリが入っている入れ物をメインタンクより低い位置に置きます。
エアチューブの片端に石等の重りを付けてメインタンクに入れ、もう片端を軽く吸って水を呼び、軽くエアチューブを結んで水の流入量を調節しながら水合わせを行います。
大体1時間くらい水合わせをしますが、バケツの容量によっては溢れる場合があるので様子を見ながら行います。
水合わせ後、ヨシノボリに異常が無ければメインタンクに移します。
導入直後はヨシノボリはすぐに隠れてしまいますが、慣れてくると少しずつ姿を見せてくれるようになります。
②水槽、水質、水温
カワヨシノボリは5〜6cm程の小型種なので2〜3匹位で隠れ家をたくさん用意できれば45cm水槽でも飼育できます。
しかし、ヨシノボリは分類カオスな魚なので、カワヨシノボリ以外の採取個体やヨシノボリMixで購入した場合は成長する事も加味して60cm水槽かそれ以上の水槽での飼育をオススメします。
水質は中性で飼育しますが、極端な弱アルカリ性や弱酸性に傾かなければ適応してくれる強さがあります。
水温は5〜26℃くらいの範囲であれば飼育できますが、水温の急変が続くと体調を崩してしまうため、水温が設定されているヒーターやサーもスタッド付きヒーターを入れて水温を一定に保ってあげましょう。
③フタについて
ヨシノボリは飛び出すイメージが沸きにくいと思いますが、ガラス面を上の方まで登っている時にビックリしたりすると水槽から飛び出してしまう事があります。
④ライトについて
ヨシノボリは昼行性なので昼夜のメリハリをつけるためにもライトがあった方が個人的には良いと思います。
⑤隠れ家について
ヨシノボリは縄張り意識が強いため、複数匹で飼育しているとしょっちゅう小競り合いをしてしまいます。
その時隠れられる場所が多い程大事に至るのを抑制できるので隠れ家はたくさん用意してあげましょう。
是非、土管やハゼ用土管、塩ビパイプや石を組み合わせたりしてヨシノボリのためのリラックスルームを作ってあげてください。
⑥水草について
ヨシノボリは水草にイタズラをしないため、水槽内に水草を植える事ができます。
水質浄化力が高い「アナカリス」や「マツモ」「カボンバ(金魚草)」も安価で入手しやすく育てやすい水草ですが、「バリスネリア」や「ウィローモス」、「ホウオウゴケの仲間」も爽やかで美しい水草です。
ヨシノボリ自体が低層を主な生活圏にしているため熱帯魚飼育のように水草を密に植えるという事は無いと思いますが、ライトが消える夜間は水槽内の二酸化炭素濃度が上がるため、水草をたくさん植えていると感じた方は酸欠防止として水槽のエアレーションをしておくのをオススメいたします。
⑦底砂について
水質を極端な弱アルカリ性や弱酸性に傾ける作用が無ければ基本的にどの底砂でも飼育に使う事ができます。
⑧フィルターについて
基本的にどんなフィルターでも飼育に使う事ができますが、外掛け式フィルターや上部式フィルターの場合は出水口からヨシノボリが登ってくる事があるので注意が必要です。
⑨混泳とタンクメイト
ヨシノボリは混泳はできない事はありませんが、口に入る大きさだと食べてしまうためタンクメイトの大きさには注意が必要です。
無難な組み合わせとしてはタナゴの仲間がオススメですが、ヨシノボリの口に入らない大きさであれば混泳可能です。
また、一方でヨシノボリを捕食する可能性のある種類との混泳も控えるようにしましょう。
⑩給餌について
ヨシノボリは食欲旺盛なので人工飼料や乾燥飼料、冷凍飼料で十分飼育する事ができます。
慣れれば浮上性の餌も食べてくれますが、慣れるまでは沈下性の人工飼料や冷凍飼料を与えます。
1日2回、食べきれる量を与えますが、ヨシノボリは代謝が良いのか餌が足りないと痩せやすいため、しっかり餌を食べたか給餌後は必ず確認するようにしましょう。
Q,ちょっと痩せてきてるような…
A,栄養価の高い餌を与えて様子を見ましょう。
餌への食い付きが良いのにちょっと痩せてきている場合は寄生虫や何らかの病気の可能性もありますが、具合が悪そうな訳ではないのであれば栄養価の高い餌を与えて様子を見てみましょう。
冷凍アカムシやイトミミズ、ディスカスハンバーグ等の栄養価が高い餌を与え、体型がふっくらしてくれば一安心です。
⑪掃除、水換え
飼育している匹数や水槽の大きさ、水槽の汚れ具合にもよりますが、大体1週間〜10日に一度、掃除と水換えをするようにしましょう。
まずは飼育器具の電源を切り、水温計を設置している場合は取り出します。
ガラス面のコケやヌメリ等の汚れはメラミンスポンジやスクレイパーで擦り落とします。
たまに「スクレイパーがない!」「メラミンスポンジが無い」という方がいますがその場合は文房具の「三角定規」がとても使いやすいです。
石や土管等に付いた汚れはブラシで擦り落としますが、レイアウトの変更や汚れが酷い場合は水槽から取り出してからタワシ等で汚れを擦り落としましょう。
水草が伸び過ぎてしまった場合はトリミングをして長さを調節したり、枯れたりコケむした葉等を切除します。
切り取った水草はネットを使うと回収しやすいです。トリミングで出た不要な水草を回収する時はヨシノボリやタンクメイトを一緒に掬わないように注意が必要です。
集めた水草は帰化を防ぐために燃えるゴミとして処分します。
あらかた汚れが落とせたら、クリーナーポンプを使って低層から水ごと汚れを排出します。
この時小さなヨシノボリだと水流に引っ張られてしまう事があるためポンプをヨシノボリに向けないように注意してください。
水を抜いたら新しい水を水槽に足していきます。この新しい水は必ずカルキ抜きを行い、水温も合わせておくようにして飼育している魚達が中毒症状やショック状態にならないようにしましょう。
水を足し終わり、飼育器具の電源を入れたら水換えと掃除は完了です。
フィルターの掃除は濾過材が一体型の物がほとんどの投げ込み式フィルター、外掛け式フィルター、パワーフィルター、スポンジフィルターの場合は目詰まりを解消するために飼育水で軽く濯いだりもんだりして汚れを落とします。汚れや繊維の傷みがあまりにも酷い場合は新しい物と交換しましょう。
上部式フィルター、外部式フィルターの場合は水換えの時に物理濾過を担うウールマットの目詰まりを取るために飼育水で軽くもみ洗いします。こちらも汚れが酷かったり繊維の傷みが酷い場合は新しい物と交換します。
揚水パイプも水換えの時に洗います。意外と内部に汚れやヌメリが溜まっている事が多いため、専用のブラシで汚れを落としましょう。
上部式フィルター、外部式フィルターの内部の掃除は大体1ヶ月に一回を目安に行いますが、生物濾過材を軽くめくった時に下に汚れが溜まっているようであれば、飼育水で軽く濯いで汚れを落とすようにしましょう。
3,ヨシノボリがかかりやすい病気と治療方法について
ヨシノボリは日淡の中でも適応能力が高く、丈夫なため飼育しやすい部類に入ります。
しかし、適応能力の高さを過信していると体調を崩して病気になってしまいます。
①寄生虫
日淡飼育の時に悩まされやすいのがウオジラミ(チョウ)や吸虫等の寄生虫だったりします。
ペットショップだと一度トリートメントする事が多いため頻繁には見かけませんが、野生採集個体だと寄生虫がエラや体表にくっついている事があります。
寄生虫による被害ですが、ウオジラミは半透明な円盤型の体で魚体に張り付いて体液を吸うため体表に充血や出血跡が見られたり、寄生された魚の方も体液を吸われるため貧血状態になったりストレスで弱ってしまいます。
吸虫はエラに寄生するためエラブタが閉まらず膨らんだように見え、寄生された魚は呼吸困難に陥るため動きが鈍くなったり徐々に弱って死んでしまいます。
治療方法は駆虫薬を用いた薬浴ですが、ハゼの仲間は薬品に敏感な種類が多いため、ヨシノボリの場合も使用量を規定量より減らして使う必要があります。
使うのは「トロピカルN」という駆虫薬です。
寄生虫に寄生された魚を治療用水槽に移したら、トロピカルNを投薬して薬浴をします。
②白点病
アクアならどこにでも出てくると言っても過言ではない病気です。
初期症状は体表やヒレに小さな白い点が数個ついているだけですが、症状が進行するにつれて白点の数が増え、全身を覆うようになってしまいます。ここまで進行してしまうと魚の死亡率もかなり高いです。
また、白点はかなり不快らしく、病魚は白点を落とそうと体を流木や石等に擦り付けてしまい、それでできた傷が細菌感染症の原因になるという二次災害を引き起こす憎たらしい病気でもあります。
発症の原因は水質の悪化や水温の急変、病気の魚を水槽に持ち込んでしまった事等が挙げられます。
治療方法は塩水浴か薬浴を行います。ヨシノボリはある程度の塩分には耐えられるため、白点病の症状がまだ軽い場合は塩水浴が良いと思います。
塩水浴用の塩水は水10Lに対して塩を50g溶かした物を使います。
塩水を張った治療用水槽に病魚を移し、1週間程様子を見ます。水換えの頻度は5〜7日に一度、半分の量を換え、新しい塩水を入れます。これを白点がなくなるまで続けます。
薬浴の場合はメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系の魚病薬を使います。
病魚を治療用水槽に移したら、少しずつ魚病薬を投薬して治療します。メチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンFで薬浴をした場合は1週間に一度、アグテンの場合は3日に一度、グリーンFクリアーの場合は2週間に一度半分の量の水換えを行い、新たに投薬します。
③水カビ病
「綿カビ病、綿かぶり病」とも呼ばれる病気で、その実態は魚のヒレや体表、傷口等に水カビが着生してしまっている恐ろしい病気です。
水カビが生えているのはもちろんですが、患部には水カビの菌糸が入り込んでしまっているため白く濁った状態になっています。
発症の原因は、水槽内の生物濾過が機能していない事とそれに併せて餌を与え過ぎた事が挙げられます。
生物濾過が機能していないと水カビが生えやすくなってしまうのです。
治療方法は薬浴を行います。その前にヒレ先にちょっと生えたくらいであればピンセットで、体からフサフサ生えている場合は患部に触れないようにハサミでフサフサ部分を除去します。
除去に自信がない場合や範囲が広い場合はすぐに薬浴します。
使うのはメチレンブルー、マラカイトグリーン、アグテン、グリーンF系の魚病薬を使います。
アグテンの場合は3日に一度、メチレンブルー、マラカイトグリーン、グリーンF系の場合は5〜7日に一度半分の量の水換えをしてから新たに投薬するようにします。
治療は水カビが消え、患部の白濁がキレイになるまで続けますが、菌糸の侵食によって患部の一部が欠落した場合はキレイに治る事はほとんどありません。
④エロモナス症
「松かさ病」「ポップアイ」「穴あき病」等症状によって呼び方が変わる病気であり、感染力や致死率も高いので非常に厄介な病気です。
初期症状として、体表やヒレに充血が見られます。進行していくとウロコが徐々に逆立ったり、ウロコや表皮が白く爛れたようになってしまったりとどんどん凶悪さが増していき、病魚の方も次第に弱って死に至ります。
発症の原因として、水質の悪化や体力・免疫力の低下、古い餌を食べた、病気の魚を水槽に持ち込んでしまった等が挙げられます。
治療方法は薬浴を行います。治療に使う魚病薬はグリーンFゴールドや観パラD、パラザンD、エルバージュです。
病魚を治療用水槽に移したら、魚病薬を投薬します。
3〜5日に一度、半分の量の水換えを行い、再び投薬します。エロモナス症は一度発症するとかなりしつこいため、早期発見早期治療ができるようにしましょう。
4,奇跡は起きる!?ヨシノボリの繁殖について
ヨシノボリの仲間の中には一度海に降る性質のある種類もいますが、カワヨシノボリのように一生を淡水で過ごす種類もいます。
しかも、カワヨシノボリを複数匹飼育していたところ、水槽内で産卵していたという話もあります。
①ヨシノボリの雌雄判別について
繁殖するには健康でしっかり成熟したペアが不可欠な訳ですが、雌雄が分からなければそれもかないません。しかし、ヨシノボリはよく観察すると雌雄判別しやすい種類だったりします。
オスの特徴
- 縄張り意識が強く、オス同士だとケンカをする。
- お気に入りの隠れ家(巣穴)を保持している。
- 警戒心が強い。
- 背ビレがメスに比べて大きく、第1背ビレの一部が長く伸びる。
メスの特徴
- オスと比べて穏やかな性格なので小競り合いも少ない。
- 警戒心が無いため人に慣れやすい。
- 繁殖期に入ると腹側が青みがかり、抱卵すると黄〜オレンジ色に変わる。
- オスと比べて背ビレが小さく、背ビレの先っぽに緑色っぽい発色がある。
②繁殖形態について
ヨシノボリは基本的に石の下に穴を掘り、その石に卵を産み付けるという繁殖形態を取ります。
このように隠れ家で産卵、繁殖する形態の事を「ケーブスポウナー」と呼びます。
繁殖期に入るとオスはメスに対して行動を取り、メスを巣穴にエスコートします。この時のオスの動きはダンスに例えられる事もあります。
エスコートされたメスは巣穴の天井部分に細長い形をした卵を産み付け、産卵後は卵をオスに託して巣穴を出ていってしまいます。
残ったオスは1匹で甲斐甲斐しく孵化するまで卵を守り育てるのです。
☆繁殖に使える意外なアイテムとは?
ヨシノボリは野生下では平たい石の下に巣穴を作る事が知られています。
狭くて暗い場所を再現するため、繁殖用にアイテムを量産しても良いかも知れません。
塩ビパイプを縦に割った物や欠けた植木鉢も活用してくれますが、筆者が敢えてオススメするのは「竹炭」です。
竹炭フィルターという物が市販されているのですが、それを半分に割った物を活用します。
◆複雑?関心?野生の巣穴事情について
ヨシノボリは隠れ家として暗くて狭い所が好きな訳ですが、最近のヨシノボリの巣穴事情はちょっと変わってきているそうです。
私達の世界では河川や海への「ポイ捨て」が問題になっており、川底や沼底からタイヤや自転車、靴や家電が出てくる事もあります。特に多いのが空きビンや空き缶で河原や海に流れ着く事もしばしば。
そんな空き缶や空きビンをヨシノボリ達は巣穴として上手く利用しているというのです。
川底の空き缶を拾ったら中からヨシノボリが出てきた、なんて事も今では見られるらしく、彼らの生きる姿勢に関心する一方で、ポイ捨てが止まらないためゴミを利用する状況を作らせてしまったという個人的には何とも複雑な心境です。
③産卵後のお世話について
基本的に産卵後の卵はオスがお世話をするのですが、それも孵化までの事であり、稚魚が産まれるとオスが食べてしまう事があります。
これを防ぐためには卵を育成用水槽に移動させます。そして卵に優しく水流を当てるようにエアレーションを設置します。
卵は10〜15日程で孵化するため、それまでに育成用水槽に移すようにしましょう。
④孵化した後のお世話について
卵のお世話が順調に進むと、いよいよ孵化が始まります。
産まれたばかりの稚魚はお腹にヨークサックがあるので1〜2日程は食べなくても平気ですが、ヨークサックが無くなると餌を求めて水底を動き回るようになります。
この時の稚魚の口はとても小さいため、微生物クラスの餌しか食べる事ができませんので、栄養補給としてPSBを添加したり、通販でゾウリムシ等のインフゾリアを購入したりして餌を確保しなければなりません。
インフゾリアはキャベツの水に沈めて放置するだけでも発生させられますが、匂いもあるので持続的に続けるのは難しい部分もあります。
また、水換えもしなくてはなりません。
☆極小稚魚育成の秘密兵器!
このように極小サイズの稚魚の育成は餌問題で行き詰まりやすいのですが、逆にこの状態を栄養たっぷりの餌を与えて乗りきりさえすれば、極小稚魚育成の心労の幾つかは減ってくれます。
極小稚魚に対して筆者がオススメしたい餌は「ワムシ」です。
通販で購入できるこの微細なプランクトンは餌にクロレラを与えて維持します。また、塩水の生き物なので人工海水は必需品です。
このワムシ、何が凄いかというと「めちゃくちゃ小さい」ため大抵の極小稚魚の餌として使う事ができます。
しかも栄養価も高いため、しっかり食べさせる事ができれば稚魚の育ちも早く、ブラインシュリンプベビーに餌を切り替える事も容易になるのです。
筆者はワムシをヤドカリやクマノミの繁殖の時にしょっちゅう使っていましたが、コレがあるかないかの差はかなり大きかったです。
まとめ
今回は日淡ハゼの代表格・ヨシノボリについて皆様にご紹介させていただきました。
ヨシノボリは河川でのガサガサで捕獲できたり、ペットショップでも見かける機会が多いのでとても親しみやすい魚です。
しかも水質や水温の適応力がタナゴ並みに高いので飼いやすいハゼの仲間でもあります。
ちょっと性格が強かったり分類カオスな部分もありますが、低層の砂の上をスキップするようにピョンピョン泳ぎ、ガラス面にピタリと張り付いてみたり、大きな口いっぱいに餌を頬張る姿は愛嬌たっぷりです。
繁殖に関してヨシノボリの繁殖難易度はかなり高いのですが、挑戦してみたいという方は是非参考にしていただければと思います。