‐アーチャーフィッシュとは‐
画像引用元:チャーム楽天市場店
「アーチャーフィッシュ」という言葉ではピンと来ない方が多いと思います。
子供のころ図鑑などが好きな方なら尚更のことで、
テレビなどでも動物番組でよく特集されていた記憶があります。
水面に出た枝があります。そこを餌になりそうな昆虫が歩いています。この魚は水鉄砲のようにその虫を口から射出する水で射抜き、水面に落ちてきた所をまんまと食べてしまいます。
なぜ水鉄砲が打てるの?
その秘密はアーチャーフィッシュの特異な口の構造になります。
さらに特異なのはアーチャーフィッシュは水の屈折までも計算し標的に命中させることができるということです。
水の内外は垂直に見る以外は、光の性質上屈折が起こります。実際にそこにいないものが虚像として見えてしまう、簡単に言うと位置が少しずれて見えてしまいます。
アーチャーフィッシュはそのずれによる誤差も見事に計算し水鉄砲を使いこなし獲物に当てています。
アーチャーフィッシュの生態
アーチャーフィッシュの生態なのですが、完全な汽水魚です。
河口付近の川と海、淡水と真水が混ざり合う場所に住んでいます。ですので図鑑や熱帯魚雑誌では汽水魚の特集などで扱われることが多いです。
明らかにやせ細ったり、ひれがボロボロになっている個体などはもちろん注意が必要ですが、長期飼育し水槽の環境に慣れてくると意外と水質に関してはうるさくない印象を受けます。
彼らは主にマングローブ林が生い茂るような熱帯の環境で暮らしています。食性は完全な肉食、前述の昆虫はもちろん、水生昆虫・ミミズ・甲殻類そして口に入るサイズなら小型の魚すら食べてしまいます。
水槽で飼う際には完全な『表層魚』であり、水面を泳ぐことを好むことを覚えて下さい。
混泳をさせるなら底生魚・中層魚と相性が良いです。
テッポウ魚ということで水鉄砲をよく飛ばす印象がありますが、実際飼育すると容易に人工飼料に餌付きその特異な生態を見ることは滅多にありません。
ただ基本は水面からジャンプをして食べることがほとんどなので、その生態を見たいのであればなるべく水深を浅めに曳いてあげるのもちょっとしたコツとなります。
この魚はなんと日本の西表島にも生息しています。1980年に初めて国内種として認定され、その限定的な生息域から環境省のレッドデータブックにリスト入りしています。
↑全身真っ白のプラチナタイプなんてのもおります。
‐アーチャーフィッシュを実際に飼育してみよう‐
水槽は大きめで
アーチャーフィッシュは自然界では30㎝になるともいわれています。
ですがこれまでの熱帯魚人生で一度だけワイルド個体でその大きさを見たことがあるだけで、多くは10~15㎝の中型魚として販売されています。
アーチャーフィッシュに限らずショップで取り扱っている熱帯魚は多くの種が図鑑資料などで見る最大値になることはありません。水槽という限られた切り取られた環境下と自然下の広々とした環境を考えると当然のことと言えるでしょう。
汽水と言うけれど?
汽水魚ということで多少人工海水を混ぜたほうがいいのかもしれませんが、前述の様にあくまで個人の感想としてはそこまで神経質にならずとも元気に飼うことができました。
汽水で飼う場合は必ず「比重計」を使って下さい。
飼育水の塩分濃度を把握することができるからです。真水:人工海水が3:1~1:1と飼育書によりまちまちで、幅広く書かれていますが個体差がありますので、まずは薄めの汽水3:1、真水3人工海水1から始め徐々に個体の体調・状態を見て人工海水の比率は調節してください。
水は必ず蒸発するのでそのままだと塩分濃度は濃くなります。比重計の値に注意し根気よく比率を調節してあげましょう。水質は海水よりですので弱アルカリ性に合わせます。
エサは?
餌はフレークフードやクリルなど浮上性の餌をあげます。絶対ではないですが、水表を好む魚なので浮く餌のほうが食い付きがいいです。
中には偏食個体もままいますので、そういった個体には活イトミミズ、生餌、爬虫類の餌用コオロギなどから慣らすといいでしょう。生きている餌を用意しにくいのであれば冷凍餌、
冷凍赤虫・冷凍川エビなども食いつきがいいです。
水鉄砲撃たないんかい
私は昔よく近所に飛んでいる蝶などを捕まえ、彼らの水鉄砲を観察しようとしましたが水面と水槽のふたの間にスペースがなければあっけなくジャンプして捕食します。
実はアーチャーフィッシュの水鉄砲は意外にも成功率は低く獲物は捕らえますが落とせないことがしばしばなんです。
アーチャーフィッシュマニアの友人などは敢えて「アクアテラリウム」を作りマングローブの苗などを植え「アーチャーフィッシュ仕様特別水槽」を作っていました。
余談ですがアーチャーフィッシュと相性のいいマングローブの苗は1000円前後で時折ペットショップで市販されています。
市販価格1000円ほどのものでも現地では雑草のようにそこかしこに落ちていました。
‐アーチャーフィッシュの繁殖‐
長年専門誌を購読しWebページなどもチェックしていますがどうしてもその情報は引っかかりません。一説ではその口の大きさからマウスブルーダー(シクリッドなどによく見られる口腔内、つまり口の中で卵稚魚などを保育する繁殖様式の魚の総称です)ではないかと言った研究者もいましたが、彼らの生態的にもかなり突飛な説です。
イメージ的には相当広い水槽が必要になるのかもしれません。水面が浅くてもよいので広い水槽、自然に負けないスケールでしかもアーチャーフィッシュのみ飼育するとなると、やはり手を出す人は自ずと少なくなるようです。見た目から雌雄を同定することも困難なのでかなりの個体数を同時に飼育する必要もあります。
これらの条件を揃えられ、アーチャーフィッシュが大好きだという方はぜひともチャレンジして下さい。
‐アーチャーフィッシュの飼育で注意すること‐
混泳はなるべく避ける
まず既にお話したとおり相当テリトリー意識の強い魚です。
同種はもちろんのこと他の魚にも攻撃を仕掛けることがあります。
ただ本来この魚たちは水質も生育環境も大きく異なるので、どちらかの生体に無理をかけます。そう考えるとアーチャーフィッシュ単種飼育がベストですが、それでは物足りないという方は同じ汽水魚がいいでしょう。
淡水アンコウと呼ばれるライオンフィッシュや淡水ウツボ、モノダクティリスなどの動きの素早い中型魚などがあげられます。ただフグの仲間は絶対にやめて下さい。
より混泳を安全にするならば表層に位置できるシェルターを用意するのがトラブルを避ける最善策です。
アマゾンフロッグピッドなどのようなやや大型になる浮草、もっとメジャーな例ではホテイアオイなどを入れてもいいかもしれません。
水面まで直立する大きさの流木などもいいでしょう。流木である必要性はなくサンゴの死骸なども生息する環境を考えるとマッチしています。
水槽にはふたをしてあげよう
そして事故死、とりわけ飛び出しが多い魚です。必ず蓋をして下さい。
それがどうしても無理、難しい環境なのであれば水深を水槽の半分以下にして下さい。45・60㎝規格の水槽であれば単純な計算ですが半分の水深では飛び出すのは理論上不可能です。
ですが生き物は良い意味でも悪い意味でも人の考えは常に裏切るので、水深を浅くして飛び出し事故が無くなるということは絶対ではありません、やはり素直に蓋をしてあげてることを強くお勧めします。
‐最後に‐
飼育方法について書かせていただくとついつい一番の最善策を書いてしまいます。
この記事を読んだとおりにしたら死んでしまったなど、命の責任という観点から見れば当然のことですが、それによって飼育を避けたり難しい魚だとは思わないでください。
一昔前と比べ水槽も標準規格サイズのみならず、様々なタイプの水槽が各社から開発されています。餌はもちろん水質調整剤やコンパクトでも能力の強いフィルターも数多く市販されています。
生き物の飼育は居住地や水槽を置いてある場所、そして何より皆様の生活様式により、一つとして同じものはありません。
ぜひとも私の失敗談や基本的なことを100%鵜呑みにはせず、貴方とアーチャーフィッシュにとってお互い心地よいアクアライフ生活を作り上げることを楽しみにしています。