バンジョーキャットの飼い方:はじめに
画像引用元:アクアランドまっかちん楽天市場店様
「キャットフィッシュ」という魚をご存知でしょうか。
横文字ではピンときませんよね、実はこれ英名で「ナマズ」です。
ナマズというとあのヌボーッとした大きなヌルヌルの魚を日本人の方は連想されるかと思います。
ところが世界は広い、実はあれ「ニホンナマズ」といって、世界中にたくさんいるナマズのわずか一種類に過ぎないんですよね。
ちなみに釣り人に外道と言われ、忌み嫌われ、しかも毒ひれを持つ海水魚の「ゴンズイ」なんかも唯一の海水で暮らすナマズだったりします。
今回は、ナマズの奇魚「バンジョーキャットフィッシュ(以下バンジョーキャット)」の興味深く面白い生態について書いてまいります。
バンジョーキャットとは?
名前の由来
なぜ、「バンジョーキャット」といわれるのかというと、彼らのその体型にあります。
バンジョーという楽器をご存知でしょうか。(上記写真がバンジョーです)
ギターやベース、果ては二胡などに似た弦楽器なのですが、それらに共通しているのは音を出す部分が大きく、指で弦を抑える部分がほっそりしていることです。
バンジョーキャットもその名の通り胴体部分が大きく、ほっそりした長い尾っぽが特徴です。
安直ですが、その楽器のバンジョーに似ているキャットフィッシュ=ナマズですから、バンジョーキャットフィッシュ(バンジョーキャット)と呼ばれるようになったわけです。
見た目
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見た目ははっきり言うと地味です。ほぼ茶褐色。カラーバリエーションはなく、見栄えがない魚です。ですがそれを補って余りあう魅力が本種にはあります。
大きさ
バンジョーキャットは一般的にはほぼ小型魚に入る部類です。
中型魚と書いてある本もありますが、成長は遅く小さな水槽でも問題なく終世飼育が可能でした。
おそらくこれは野生個体(ワイルド)の話でしょう。
野生個体は人の手で育てた個体とは同じ種類といえないほど大きく、そしてうまく言えませんが風格のある個体がいます。
なぜか人の手で水槽で飼うと、サイズは野生に劣りその水槽のサイズに見合った育ち方・サイズになるようですね。
これはすべての種には当てはまりませんが、ほかの種でもよく耳にします。
通常の飼育下では相当頑張って10㎝に届くか届かないかくらいでしょう。
いわゆる同種のチャカ・チャカなどのようにいわゆるフィッシュイーター(魚食魚)ではありませんので、混泳もでき混泳魚のサイズも気にすることはないでしょう。
むしろ混泳魚に攻撃・捕食されることがあるので逆に注意するのは混泳魚のほうになります。
バンジョーキャットの生態
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ナマズの仲間は夜行性が多く、このバンジョーキャットも例外なく夜行性です。
底砂が大磯土・田砂・ソイルであろうが、日中水槽のライトを照らしているときはほぼ底砂の中に潜っています。
潜りにくくても一生懸命潜ろうとします。
ここで気を付けないといけないのは底砂の種類ですね。ナマズの仲間には鱗がありません。ちょっとしたスレ・傷で、たやすく感染症などで落ちてしまいます。
バンジョーキャットにはきめの細かい底砂を用意してあげて下さい。
ディスカスなどでよく見るベアタンクはNGです。
バンジョーキャットに限らず飼育する観賞魚の多くはシェルター(隠れ家)がないと落ち着かず、多大なストレスを受けてしまいます。
そのシェルターをバンジョーキャットの場合は床砂に潜るということで補っているんですね。
潜れなかったとしてもバンジョーはジーッとほぼ動かず底砂の上にたたずんでいます。模様や体色が茶褐色」なので擬態をしているという説もあります。
お勧めは田砂などのきめ細かい底砂です。
また基本的に夜行性ですので、昼間は隠れているつもりでひょっこりヒレなどが砂の中から出ている、その辺りで安否を確認してあげて下さい。
夜は昼間が嘘のように活発に動きます。
昼行性の低層魚を混泳させている方はシェルターや流木を入れるなどして、お互いの安眠を妨げないように気を付けてください。
バンジョーキャットの餌:沈下性がベスト
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ですが飼育下では明るい間でも、餌を落とすと底砂の中からもぞもぞと這い上がってきて、飼育者にその姿を見せてくれることがよくあります。ここは個体差によることが大きいです。
彼らが好む餌は基本的に冷凍性の生餌(冷凍赤虫・イトミミズ・ミジンコ)ですが、人工飼料も積極的に食べます。
ただ気を付けてほしいのは浮上性の餌ではなく沈下性の餌をあげること。
ただ筆者の経験では、水を十分に吸って沈下したテトラミンも食べてくれました。基本は床砂まで落ちる餌なんです。
ただ気を付けていただきたいのは、ナマズの口は総じて大きく、食道がなく胃に直結しているので「えっ」という餌もつるんと飲み込みます。
頭が入ればどこでもすり抜けられる猫のようなものですね。
飼っている個体の口の大きさを飼い主さんは注意深く観察してください。口の大きさほどの餌なら難なく飲み込みます。
ただ注意すべき点としては大きい餌は消化に時間がかかり「食滞」という状況に陥ることがあります。
餌が大きすぎて消化に時間がかかり栄養がいきわたらず衰弱するということです。
混泳・多頭飼い:OK!
結論から言うと混泳・多頭飼いにおすすめの魚です。
多頭飼いしても喧嘩などはめったにしません。
ただあまり多くを飼うと潜れるスペースなどが狭くなるのであまりお勧めできません。その水槽に合った個体数に留めて下さい。
具体的に60㎝水槽だから何匹…と断言はできません。
水槽のレイアウトや混泳させる魚の種類などで大幅に変わると思います。
※参考までに筆者は当時40㎝水槽にグッピー3ペア、コリドラスパレアタス3匹、バンジョーキャット2匹を混泳させていて全く問題がありませんでした。
飼育下の温度:27℃くらい
熱帯魚の平均水温が26・7℃と言われています。
私が飼育していたとき今のように電子式サーモスタットというのは非常に高価で、バイメタル式サーモスタットを使用していました。
ほぼそれ以外選択肢がなかったからです。
バイメタル式というのは今のようにデジタルで希望の水温を指定するものではなく、温度に依存する合金を使ったもので、前述の26・7℃以上になると合金の接点が外れヒーターに通電しなくなるというものでした。
一般的にナマズの種類は他の熱帯魚より2~3℃ほど低めの温度が良いといわれています。
ただ昼間ジーッと砂に潜るバンジョーキャットのみ飼育する方はおそらくかなり少数かなと思います。多くの方は混泳という道を選ぶでしょう。
常識的な温度(27℃前後)であれば問題なく飼育できます。
国内繁殖例は少ない
安価で手に入る魚ですが、こと繁殖となると国内文献では全く情報がありません。
今筆者は外国産両生類イモリを飼っていて文献などを参考にすることがありますが、日本で例のない繁殖方法を確立させているのはEU諸国が非常に多いですね。
ただ英語というハードルがあります。繁殖までの熱意がある方はぜひ、ワールドワイドで調べることをお勧めします。
さてここまで書きましたが、実は最近あまりショップで彼らを見かけないのが現状です。
これは輸出規制がかかったり、絶滅の危機に瀕しているということではなさそうです。いわゆる業界用語の「底モノ」低層魚のニーズが年々変わってきていることが要因に感じます(あくまで個人の意見ですが)。
ごくたまに入荷されても300~600円ほどの昔と変わらない値段で売りに出されていることがほとんどです。
一般的に昨今のペットショップで見かける底モノは、種類が増えたコリドラス、そしてポリプテルスがほとんどです。