はじめに:日淡達の餌〜人工飼料、乾燥飼料編〜
命ある者必ず何か栄養を摂取して生きています。
そのため生き物を飼育するうえで「餌」はとても大事な要素となっています。
昔は自然で捕れたミミズやボウフラを餌にする事もありましたが、現代では人工的に栄養面や素材、形状を考えて作られた「人工飼料」「乾燥飼料」が市販されているため飼育がとてもしやすくなりました。
生態の研究が進むにつれて人工飼料も様々な種類があり、製造業者によってはオリジナリティや力を入れてる部分があったりとかなり多様性が見られます。
1,人工飼料、乾燥飼料とは?
「人工飼料」とは、その名の通り人工的に作られた餌のことです。
飼育する種類によっては人工飼料1つで終生飼育できてしまう程クオリティが高く、商品によっては特殊な菌を混ぜる事で魚達の腸内環境を整えたり、食べ残しの分解をして水質悪化を抑制する性能まで併せ持つ物もあります。
「乾燥飼料」とは、ミジンコやブラインシュリンプ、ヌマエビや赤虫等を天日乾燥させたりフリーズドライ(凍結したものを真空状態に置く事で水分を昇華、乾燥させる方法)して作られた餌のことです。
これ単一で飼育というよりは、オヤツとして与えたり、人工飼料メインで栄養の補助として与えられたりします。
これらの人工的に作られた飼料はビタミンやミネラルを添加されて栄養を強化されているだけでなく、商品によっては飼育している魚達の色揚げや輝きをアップさせる効果がある物もあります。
2,どんなタイプがあるの?
人工飼料には形状や特徴が様々あり、飼育している生き物の種類によって使い分けができます。
ここでは人工飼料の主なタイプである
- 「浮上性タイプ」
- 「沈下性タイプ」
- 「張り付けタイプ」
- 「練り練りタイプ」
についてご紹介させていただきます。
①浮上性の人工飼料
浮上性のタイプは与えると水面にプカプカ浮いています。
水に浸かって水分を含むとゆっくりと沈んでいく物もあります。
水面に浮くので上層を泳ぐメダカ系や層を問わずに泳ぎ回る金魚やカラシン系のような遊泳力の強い種類、ゆったりと泳ぐフグ等の給餌にもピッタリです。
②沈下性の人工飼料
沈下性のタイプは与えるとすぐに沈んでいく特徴があります。
コリドラスやプレコ、ドジョウ等のように低層を生活圏としている種類や沈む時の動きから視認性があり、中層を泳ぐ種類にも向いています。
沈んでからゆっくりと水分を吸って柔らかくなるため、エビ用の人工飼料のほとんどは沈下性です。
主に顆粒やペレット、シート、タブレット、お留守番フード等があります。
③張り付けタイプの人工飼料
最近販売されるようになった水槽面等に軽く押し付けて張り付ける事で給餌するタイプとなります。
張り付けなければ沈下性のタブレット型人工飼料です。
④練り練りタイプの人工飼料
こちらも張り付けタイプの人工飼料のように特徴的な人工飼料です。
何もしなければ粉末状の人工飼料ですが、飼育水を少量混ぜて練って粘土状にしてから使います。
3,人工飼料の様々な形状について
人工飼料には様々な形状があり、それぞれ特徴も異なります。
ほとんどの商品に前述した浮上性、沈下性等も加わってくるため選ぶ時にはどんな形状でどんなタイプなのかも把握するとご自宅で飼育している魚達が食べやすい餌が分かりやすいかと思います。
①粉末型
まるで小麦粉のように細かい人工飼料です。
粉状という特徴から非常に浮上性が強く餌粒が細かい事からメダカの稚魚用フードが主に知られています。
②顆粒型
粒が細かい人工飼料です。
ゆっくり沈むため視認性も良く、小型種にとって食べやすい大きさなので人工飼料の中でもフレークフードと同じくらいポピュラーで人気のある人工飼料です。
金魚用(特に和金用)のフードは浮上性が高いです。
☆お前が食うんかい!〜筆者の体験談〜
かつて筆者は多くの種類の魚達を混泳させて楽しんでいました。
もちろん混泳なので与える餌の種類は考えていたのですが、ある日、浮上性の強い金魚用の顆粒フードをアプロケイルスに与えていたところ、タンクメイトであるアロワナテトラがあろう事か、人工飼料をあの大きな口でバクバク食べていたのです。
アロワナテトラには普段は乾燥ヌマエビや肉食用ペレットフードを与えていたのですが、アロワナテトラが上層を泳ぐ性質がある事と、どうやら同居人(?)であるアプロケイルスが美味しそうに浮上性人工飼料(金魚用)を食べている事で警戒心がなくなって食べ始めたようでした。
③フレーク型
薄くてパリパリとしたフレーク状の人工飼料です。
浮上性が高く、水を吸うとゆっくりと沈んでいきます。
④ペレット型
顆粒フードより粒が大きい人工飼料です。
商品によっては「カーニバル」のように浮上性が高い物もありますが、基本的には沈下性です。
⑤タブレット型
沈下性の人工飼料です。円柱よりの形状もあります。
他のフードより硬めで形状が崩れにくく、少しずつ食べるのに適した形をしています。
⑥シート状
フレーク型よりやや厚みがあるシート状になっている人工飼料です。
沈下性が強く硬めですが、水を吸うと表面が少しずつ柔らかくなっていきます。
主にエビ用、小型プレコやオトシンクルスの餌として向いています。
4,動物質?植物質?
魚達には「食性」があり、それぞれ魚や甲殻類を好んで捕食する種類やコケや藻を主食にしている種類等がいます。
人工飼料もそれに合わせて作られており、商品によってはハッキリと草食用、肉食用と分けている物もあります。
グッピーや小型カラシン等の小型種だとそこまで食性分けしている事はありませんが、「グッピー」や「カラシン」、「メダカ」等と分けていたりします。
「肉食用」として販売されている商品は原材料にオキアミやイカ、魚、カイコ等の動物質をたくさん含んでおり、ナマズやアロワナ、アピスト等の肉食性が強い種類向けになっています。
「草食用」の場合は原材料が海藻やスピルリナ、小松菜等の植物質がふんだんに使われており、草食性が強いプレコやオトシンクルス、シャークローチ等のタニノボリの仲間にも対応しています。
特に肉食草食の表記がない商品の場合は動物質と植物質がどちらもバランス良く含まれています。
5,色揚げ、煌めき揚げ用の人工飼料について
人工飼料や乾燥飼料の中には色揚げ効果や魚達の体の煌めきを高める効果がある商品もあります。
色揚げにはカロテンやアスタキサンチン、キトサン、スピルリナ等が関係しており、与え続けると魚達の体色が美しくなります。特に体色に赤色がある種類はかなりメリハリのある色になります。
また、赤系アジアアロワナの飼育ではよく色揚げのために主食の人工飼料に色揚げ効果のある人工飼料を使う他、キトサン等を豊富に含む乾燥ヌマエビやザリガニを与える事もあるようです。
煌めき、輝き揚げの効果のある人工飼料は熱帯魚用というよりは改良メダカ用としてショップで見る事ができます。
ラメメダカや幹之メダカ等の輝きが強い品種は輝きの秘密である「グアニン」を増やす事で輝きを増すとされています。
6,筆者が思う、一応コレも人工飼料!
先程まで色々と人工飼料の特徴等についてご紹介させていただきましたが、“魚用とは書いてないけど飼育に応用できる餌”についてご紹介させていただきます。
①乾燥ワカメ、コンブ
昆布〆の刺身やワカメのお味噌汁等でお世話になっているこの食材が魚達の餌として使えたりします。
与える時はカルキ抜きした水や飼育水で戻した物を水槽に沈めます。草食性の強いヌマエビやビーシュリンプ、プレコやオトシンクルス、ファロウェラ等が食べてくれます。
淡水魚ではありませんが、海水魚のハギやキンチャクダイの仲間も食べるので食が細いと感じたら与えてみると良いかも知れません。
②海苔
与えるのは味付け海苔や韓国海苔ではなく、味無しのタイプの海苔です。
水を含むとバラけやすい面がありますが、小型のカニやエビ、オトシンクルスの他、マリンアクアリウムならギンポやハギ等の草食性が強い種類の良い餌になります。
③鰹節
水に触れるとお出汁が出てしまって水が汚れやすい面がありますが、ザリガニやカニ等の動物質大好きな種類やゲンゴロウも食べてくれます。
④乾燥コオロギ、バッタ
主に爬虫類や両生類の主食や小動物のたんぱく質補給用として使われていますが、サイズさえ合ってしまえばアロワナやポリプテルス、ピラニア等の餌にする事もできます。
まとめ
今回は人工飼料と乾燥飼料について皆様にご紹介させていただきました。
人工飼料と乾燥飼料は今でも様々な種類が販売されており、ショップのオリジナルフードが販売されていたりします。なのでショップによってはオリジナルフードを与えている場合があるため生体を迎える時に与えている餌を店員さんに聞いてみるのも良いと思います。
最後の方では人工飼料というよりは乾燥飼料として応用できる物を紹介してみましたが、私達の日常生活の中でも餌として応用できる食材は様々あるのでお買い物の際に応用を考えてみても楽しいと思います。