イエローフレークモレイ・ヤマウツボの生態・飼育方法を解説!
皆さん「ウツボ」という魚はご存知の方が多いと思います。
もしかしたら「あれが魚?」と思う方もいるでしょう。
少し鋭い方は「ウツボってあのダイバーさんから餌をもらって、意外に人懐こい大きな海水魚でしょ?」と海に住むウナギのような魚を連想される方が多いと思います。実は世界を見渡すと、川・沼・湖といった淡水にも彼らは住んでいるんですね。
ただ「淡水」と断言してしまうとウツボにとって非常に迷惑な話になってしまいます。何故かというと多くの熱帯魚屋さんで「淡水ウツボ」として売られている個体は、実は純粋な淡水域に住む魚ではありません。
ごく限られた種を除き、河口域、つまり川の淡水と海の海水が混ざり合う「汽水域」と呼ばれるエリアにその多くが生息しているんです。
‐淡水?ウツボの生態‐
「淡水ウツボ」というのはあくまで流通名・商標名です。正式名称ではありません。
今現在、一般的に手に入る淡水ウツボは、相当の専門魚店でない限り、
- イエローフレークモレイ(イエロースポットモレイ)
- ヤマウツボ(フレッシュウォーター・レオパードモレイ)
の2種に限られると思います。小売店は案外ざっくりとしており、この2種とも淡水ウツボとして売りに出されることがままありますが、この2種の生態は相反するものなので注意して下さい。
‐イエローフレークモレイ‐
画像引用元:フィッシュジャパン様
こちらの「イエローフレークモレイ」が一般的に熱帯魚店でよく見かけることができるウツボです。全長は最大で30~50㎝ほど。
こう書くと大きく感じるかもしれませんが、意外と細身で肉厚がなく、また体を曲げていることが多いので、海のウツボから感じる重厚感は全くありません。
適正温度は27~28℃です。
価格は1000円前後と海水ウツボと比較すると非常に安価です。
食性・エサ
食性は肉食性です。
同サイズの魚なら積極的に襲うことはないと思いますが単種飼育が無難だと思います。同種のウツボであれば問題なく混泳はできます。
筆者が過去に飼育していた際は「冷凍エビ」「冷凍ザリガニ」などの甲殻類に並々ならぬ食欲を見せてくれました。逆に人工飼料には全く餌付いてくれませんでした。
他の冷凍餌(冷凍赤虫・冷凍イトミミズ)や活イトミミズも食べるには食べてくれましたが、飼育初期は見向きもしませんでした。例外的ですがお刺身のかけら(マグロ・イカ・タコ)はかなり食いつきがよかったです。
餌の方は実際かなり苦労しました。最終的には生活圏内にある熱帯魚ショップが冷凍スジエビを取り扱っていたので、エビの中に少し人工飼料や赤虫を入れ、だましだまし食べてもらう手法が最も有効だと思います。
ペットショップでの販売
困ったことにこのイエローフレークモレイはほぼ全てが「淡水ウツボ」と表記して売りに出されています。
非常に地味な体色で体表は薄い茶褐色、蛍光灯の角度でほのかな緑にも見えます。
水質・水作り
一番大事なことは、このウツボは基本的に「純淡水魚」ではないということです。
上記したように主に汽水域がその生息地となります。
ですが完全に淡水で飼育不可か、
と聞かれるとこれもまたノーと言わざるを得ないんですよね。
アルカリ性に傾いた水、具体的には床材やろ材に「サンゴ砂」を使ってみて下さい。
それでももし調子が悪いようでしたら、60㎝水槽の標準規格の水量がおおよそ50ℓですから、まずその1/10の5ℓを市販の人工海水の素を用いて海水にし、45ℓの淡水と混ぜ汽水を作ってください。
簡単に言うと飼育水の総量の1/10を海水にするということです。
ウツボは鱗がないので水が合わないと体表が白く白濁したり、傷がつきやすくなります。純淡水でその様子ならば1/10、2/10、3/10と徐々に濃度を濃くして見て下さい。
この場合は焦らず、もちろんウツボの様子が激変したら話は別ですが、そのような様子が見られない限りは最低でも一日単位で、エアホースでゆっくりと水合わせしてください。
イエローフレークモレイの特徴
ウツボは照れ屋です。
もっと言えば隠れるところ=シェルターがなければストレスがたまり餌食いなども悪くなるので、必ず「ウツボの体の太さより一回り大きな」筒状のものを入れてあげて下さい。
また欲を言えば様々な大きさの筒状シェルターを用意しウツボに選んでもらう形がより良いと思います。
シェルターがないと落ち着かず延々と水槽内を漂い落ち着かずストレスを溜めてしまいます。
水槽のサイズ
次に水槽のサイズなんですが、筆者は当時15㎝弱の個体を45㎝水槽で飼育していました。
ただ成長速度は遅く急速に巨大化するような種ではないため、各々のライフステージに合った水槽で同サイズの他魚よりかは長期飼育できると思います。それでも最終的には90㎝水槽は必要になることでしょう。
イエローフレークモレイは十数年ほど前に安定し流通し始めました。それまでにも変則的ですが入荷自体はあったと記憶しています。ただ当時は輸送状況などが悪かったのか、極端に疲れが見える個体が多かったり、かと思えば急に竹ひごサイズの極小サイズが入ってきたりと個体自体に優しくない売り出され方でした。
ただ最近は店頭には随分安定した個体が入ってきています。
前述のようにナマズ用の沈下飼料を最初から食べたという話も聞きます。
ヤマウツボ
画像引用元:WORLD RIVERS.net様
英名を「フレッシュウォーター・レオパードモレイ」と言います。
こちらのウツボは陸封型と言います。
進化の過程の何らかの理由でこのウツボは、
大海と隔絶され淡水に完全に対応するよう進化を遂げました。
体色は地味なヒョウ柄です。
淡い茶色の皮膚に、黒ないしは濃い茶色のスポットが無数に並んでいます。
大きさ・水槽サイズ
こちらの種は70㎝程度とかなりの大型になります。
となると大型水槽が必須と考えがちですが、ご多分に漏れず淡水ウツボと同様柔軟な体、シェルター内に折りたたまることが多く、60㎝水槽でも意外と違和感はありません。
ヤマウツボの特徴・混泳は?
また非常におとなしい性格ですので他魚との混泳も問題ないとよく耳にします。
実際口に入るサイズの魚でなければチャレンジしてみてもいいかもしれません。その際は必ず注意深く細目に様子を見てあげて下さい。
ヤマウツボは前述のイエローフレークモレイ(以下淡水ウツボ)と比べ拍子抜けするほど飼育が容易です。まず導入当初からほぼ人工飼料を食べます。逆に冷凍エサなどは栄養バランスを考えたおやつ程度に考えてもいいと思います。
飼育の際の留意点はただ一つで『必ず淡水で飼うこと』のみです。
アルカリ性にこだわる必要もありません。水質は弱酸性で良いと思います。
ただ淡水ウツボと違い高価な種(昨年12月は行きつけのショップで9800円でした)です。生体を向かい入れる際費用も十分な判断材料です。こちらの方も参考になさって下さい。
まとめ
総じて熱帯魚コーナーにいるウツボは大型種ですが海産のものほど成長はしません。
一般に海水域の生物の方が同じ種類でも巨大化傾向にあるのでこれは自然な流れなのかもしれません。
筆者が若いころは「ウツボが自宅、しかも熱帯魚として飼える」と目を輝かせたものです。
同じように考える仲間も多かったのではないでしょうか。
飼いたいけど自分に飼えるのかな…と思うことはこの趣味を続けていると何度も思いますよね。