皆様は「日本産淡水魚」と聞くとどのようなイメージを持ちますか?
「カッコいい」「シンプル」「飼育が難しそう」など様々なイメージがあると思います。
確かに日本産淡水魚は海外から輸入されてくる熱帯魚のような色彩の派手さはありませんが、活発に泳ぐ姿や繊細な色合いは熱帯魚にも負けない「美」の1つと言えます。
そこで今回は釣り人の間で「渓流の女王」と名高い川魚「ヤマメ」の飼育方法などについて皆様にご紹介させていただきます。
ヤマメは釣り人でなくても名前を聞いた事があるという方も多い有名な川魚の一種で、釣りの難易度や見た目の美しさから女王と呼ばれています。
1,日本河川の女王・ヤマメの特徴について
・分類は?
ヤマメは「サケ目サケ科サケ亜科タイヘイヨウサケ属」に分類されている川魚の一種で、サケやマスと同じ仲間です。
・大きさはどのくらいなの?
大きさは20〜30cmくらいの個体が多いですが、生息地によっては30〜40cmほどにまで成長する個体もいます。
・ヤマメの見た目は?
見た目はサケの幼魚に近い体型をしています。
背ビレ、胸ビレ、腹ビレ、尻ビレ、尾ビレの他に「脂ビレ」という膜状の小さなヒレがあるのも特徴です。
背ビレ、脂ビレ、尾ビレが腹側のヒレより濃いめの色をしており、背中側の体色も暗緑色と黒褐色のドット模様が散らばっています。
これはヤマメを上から見ると川底の砂や小石に紛れるための保護色となり、天敵から身を守っています。
また、ヤマメの体側には「パーマーク」と呼ばれる若干細長くなった木葉や小判のような形をした特徴的な模様があります。
このパーマークは個体差があり、数や色に違いが見られます。
他にも体側を彩る淡い茜色と腹側の白銀色、胸ビレ、腹ビレ、尻ビレの黄〜朱色も美しく、ヤマメを美魚へと至らしめています。
・ヤマメの生息地はどんなところ?
ヤマメは重要な水産物として知られており、日本各地で放流されているのですが、天然の個体は関東地方から北の地域(東北地方や北海道)の他、日本海側の全域、瀬戸内海側の九州地方の一部地域にのみ生息しているとされています。
ダム湖に遡上する個体もいますが、その大きさは40cm近い大きさになるため初めて見る方はあまりの大きさにヤマメと気付かないそうです。
⭐生息地で体色が変わる!
先ほど体色に個体差がある事について少し触れましたが、生息地によっても体色に違いがある事でも知られています。
まずは熊本県です。
熊本県の河川には、30〜40cmにも達するヤマメが生息しているのですが、ヤマメは「ある魚」と非常に関係が深いため、このサイズ感になるとパーマークも薄れてしまい銀色の体色になってしまう事がほとんどです。
しかし、この地域のヤマメはそのサイズであっても赤みをしっかり残すため地域の方や釣り人達は「紅ヤマメ」と呼んでいます。
もう1ヶ所は下北半島の「大畑川」です。
この河川に生息しているヤマメはパーマークが小さめですが、体色が濃く、青緑色をしている事で知られています。
また、名前も「スギノコ」と呼ばれているそうです。
・何を食べているの?
サケの仲間らしく肉食性の魚であるヤマメは主にカワゲラなどの水生昆虫や水面に落下してきた昆虫、口に入るサイズのエビやカニなどの甲殻類や小魚などを捕食します。
・寿命はどのくらいなの?
ヤマメの寿命は2〜3年と言われていますが、大切に飼育できれば4年近く生きる個体もいるようです。
2,ヤマメの生態について
先ほどまではヤマメの特徴についてご紹介いたしましたが、ここではヤマメのもう1つの「姿」についてご紹介させていただきます。
皆様ご存知のヤマメですが、生物学上では「ある魚」の陸封型(河川残留型)である事が分かっています。
その魚こそ、ヤマメのもう1つの姿である「サクラマス」です。
サクラマスはヤマメの降海型の姿であり、北海道や東北地方などの北に位置する地域では比較的数が多いとされています。
サクラマスの「サクラ(桜)」の由来ですが、普段はドット模様が散りばめられた暗色の背中に銀色の体、70cmもの巨体という見た目をしていますが、繁殖期を迎えると婚姻色として桜や桃の花のような美しい体色が浮かびあがるため、そのように名付けられたそうです。
ヤマメの降海型はある程度成長し、海に降る時期が近付くとパーマークが消えて全身がほぼ銀色になります。これを「スモルト(銀化)」と呼び、他のサケやマスの仲間にも見られる特徴です。
このスモルトは湖やダム湖に生息地している陸封型のヤマメにも起こるため「銀化ヤマメ」と呼ぶ事もあります。
サクラマスになる降海型ヤマメはスモルト化するのに3年近くかかるとされており、サクラマスとなって遡上し産卵をすると死んでしまうそうです。
3,ヤマメの入手方法について
日淡として名高い種類ではありますが、いざ飼育のために探すとなるとなかなか難しい面があります。
そんなヤマメの入手方法は2つあります。
1つはペットショップです。特に日淡に強いショップや力を入れているショップであればタイミングさえ合えば入荷する事があります。
近くに日淡を扱っているショップがない場合は通販で入手しましょう。
2つ目は野生採集です。ヤマメは川釣りの人気魚であるため、カワゲラなどを餌にして静かに釣りをすれば釣り上げる事もできます。
■野生採集の最大の注意点とは!?
ヤマメが生息している河川が近くにあるという方にとって野生採集はかなり用意にヤマメをゲットできるチャンスでしょう。
しかし、ヤマメは重要な水産資源であるが故に地域によって少々異なりますが「禁漁期間」というものが設けられています。
これは産卵期間である10月から翌年の2月、そこからさらに4月まではヤマメを取ってはいけないと定められています。
4,ヤマメの飼育での注意点について
特徴からお察しの通り、ヤマメは日淡の中ではオヤニラミやカワアナゴより飼育難易度が高い種類です。
しかし、ヤマメの特徴や生息環境をしっかりと理解して再現できれば初心者でも飼育できます。
〜ヤマメ飼育の注意ポイント🐟️〜
- 水温は低水温にし、できる限り20℃は超えないようにする。
- 薬品や水質の悪化に弱いため綺麗な水質を心がけ、薬浴させる場合は規定量の1/5〜1/2にする事。
- 酸欠に弱く水流を好むためフィルターは強力な物にする事。
- 活発に泳ぐので水槽のサイズは最終的に120cm以上を念頭に置く事。
- 神経質で遊泳力が強く飛び出しやすいので水槽にフタは必ずし、場合によっては固定できるようにする事。
5,ヤマメの飼育方法について
①導入、水合わせについて
ヤマメをショップや通販、野生採集してきたら、水槽に入れる前に水合わせを行います。ヤマメは神経質な面があるため慎重に作業しましょう。
ショップや通販で購入した場合はヤマメの入った袋を水槽に浮かべて水温を合わせます。野生採集の場合はバケツやクーラーボックス内の水温と水槽の水温を比べ、差がないようであればそのまま水合わせに移ります。
いつもなら袋のまま水合わせする方法も書いていますが、今回に関しましてはバケツや衣裳ケースに移してから水合わせをする方法を推奨したいと思います。
その理由ですが、ヤマメはサケの仲間らしく遊泳力が強いため一度パニックになると袋くらい簡単に飛び出してしまい怪我を負ってしまう事も少なくありません。
この飛び出しを防ぐためにフタをしやすいバケツや衣裳ケース、クーラーボックスなどに移してから水合わせ方法が個人的には無難だと思いそちらをご紹介させていただきます。
そのやり方ですが、エアチューブの片端の先に小石などの重りを付けて水槽に入れ、もう片端は軽く吸って水槽の水を呼びます。(「呼び水」といいます)
この呼び水をした端の部分は水の流量を調節するため水が止まらない程度に結んだり調節弁を装着します。
この水合わせの間は酸欠になりやすいので、ヤマメのいる容器の中にエアレーションをするようにしましょう。
水合わせの時間は1時間〜2時間ほどですが、水合わせをして特に異常が見られなければ水槽にヤマメを放ちましょう。
②水槽について
ヤマメの水槽ですがショップで見かけやすいヤマメのサイズは10〜18cmくらいである事が多く、活発に水槽内を泳ぎ回るので10〜15cmくらいを1〜3匹であれば60〜90cm水槽で飼育し、成魚であれば120cm以上の水槽で飼育するのが望ましいです。
水槽の設置場所ですが、ヤマメは神経質なので人が頻繁にバタバタと通る場所はあまりオススメできません。
③水質、水温について
ヤマメは中性〜弱アルカリ性の綺麗な水質を好んでいるため、水量が限られる飼育下ではフィルターや濾過材を駆使してこの水質を保たなければなりません。
水温についてですが、ヤマメは温水系ではなく「冷水系」の種類なため低水温には非常に強いですが高水温には滅法弱いという特徴があります。
そのため飼育水温は5〜18℃くらいが良く、20℃を超えると次第に体調を崩したり餌を食べなくなって死んでしまうため注意が必要です。
④フタ、水温計について
遊泳力が強く神経質という性質があるヤマメは飛び出しやすい種類でもあるためフタは必須となります。
上部式フィルターやライトでフタを押さえる事はできますが、成魚になると飛び出した時の勢いも凄いため、フタを水槽のフタ受けにボルトで固定するなどの方法も考慮する必要があります。
水温計についてですが、水温の変化を目視しやすくするために設置しておくのがオススメです。
⑤底砂について
水質を弱酸性に傾ける作用がある底砂でなければヤマメの飼育に使う事ができます。
大磯砂や「湧き水の砂」、「渓流砂」などもオススメの底砂です。
⑥フィルターについて
ヤマメ飼育では濾過力の強さもかなり重要になってきます。筆者がオススメするのは濾過力の高い上部式フィルターと外部式フィルターです。
⑦水草について
水草もレイアウトできない事はありませんが、根付かない内はヤマメの遊泳力に負けて抜ける可能もあります。
しかし、上手く育ってくれれば水質の浄化も期待でき、水景にも変化がつくので水草を育ててみたい方は是非挑戦してみてください。
個人的にオススメする水草は「マツモ」「バリスネリア・ナナ」です。この水草は入手もしやすく育てやすいです。
また、バリスネリア系の水草は根付けばかなり抜けにくいため遊泳力の強い種類のレイアウトにも向いています。
他にも「コウホネ」や「ホウオウゴケ」などの水草も草体に特徴があるためレイアウトに使っても面白いです。
⑧混泳について
ヤマメは口に入るサイズのエビや小魚は捕食してしまうため、同サイズの種類との混泳が望ましいです。
よくあるのがイワナやアマゴとの混泳で、こちらは性質もよく似た種類同士なので同じ環境で飼育できます。
⑨給餌について
ヤマメ飼育で結構悩まされるのが給餌だったりします。
彼らは神経質なのでなかなか人工飼料を口にしません。さらには乾燥エビなどの乾燥飼料すら通用しない事もあります。
そのため基本的な給餌は冷凍アカムシやイトメ、ホワイトシュリンプ、ブラインシュリンプがメインになり、それに追加で餌用ヌマエビやブドウ虫、ミルワームなどの活き餌を与える事になります。
⭐女王様は「毒味役」をご所望!?
渓流の女王・ヤマメと渓流の王・イワナはどちらも神経質であり、どんなに好物を模した人工飼料であってもなかなか口にしようとせず、咥えても「毒を盛ったか!」といわんばかりにすぐ吐き出してしまう事が少なくありません。
そんな女王様を人工飼料に慣れさせる事ができたらどんなに楽だろう、と思った方。朗報です。実は慣れさせる方法があります。
その方法とは女王様の水槽に「タカハヤ」や「アブラハヤ」を混泳させる事です。
この「ハヤ」というコイの仲間は泳ぎが得意で雑食性なため、人工飼料にも簡単に餌付いてくれます。
最初は急に現れたハヤに驚いてしばらく様子を見ていますが、給餌の時に人工飼料を与え、それをハヤ達が美味しそうに食べているのを見ると時間差で食べに来るようになります。(それでも吐き出す事はある。)
⑩掃除、水換えについて
飼育している匹数や水槽の汚れ具合にもよりますが、目安として大体1週間〜10日に一度、1/4〜1/2の水換えをします。
方法は熱帯魚の時とあまり変わらないのですが、水がかなり冷たいので手がかじかむ場合は近くに手を暖められる物を用意しておきましょう。
まずは飼育器具の電源を切ります。
そして水槽の内面に生えたコケやヌメリなどの汚れを「スクレイパー」や「コケクロス」「メラミンスポンジ」などで落とします。
岩や流木が汚れている場合は歯ブラシで擦ります。
水草が伸びている場合はトリミングをし、伸びすぎた部分や殖えすぎた子株などをハサミで切って長さを整えましょう。
トリミングで出た不要な葉はネットや手で集めますが、この時ヤマメを驚かせないように注意が必要です。驚かせるとバシャバシャと飛沫をあげたり飛び出してしまう事もあります。
フィルターのストレーナーと揚水パイプの部分も汚れやすいので取り外し、専用のブラシなどで汚れを落とします。
あらかた掃除が終わったらクリーナーポンプを使って水ごと汚れを除去します。この時も揚水口が底に近い位置にくるため底でジッとしているヤマメを驚かせないように慎重に行いましょう。
水抜きまで終わったらフィルターや揚水パイプとストレーナーを戻し、新しい水を少しずつ足していきます。
この新しい水は事前にカルキ抜きや水温合わせを済ませておきます。
水を足す時は、水槽より高い位置に新しい水が入った容器を設置できる場合はホースを使ってサイフォンの原理を応用可能です。
水槽より低い位置の場合はコップやボウルなどで水を汲み、水槽の面に水を当てて衝撃を和らげながら足していきます。
水を足し終わったら飼育器具の電源を戻して掃除と水換えは終了です。
フィルターの掃除についてですが、目詰まり解消のために揚水パイプとストレーナー、ウールマット、補助フィルターの掃除は水槽掃除と一緒に掃除します。
ウールマットと補助フィルターの濾過材の汚れや傷み具合があまりにも酷い場合は新しい物と交換します。
生物濾過材の掃除は大体1ヶ月〜1ヶ月半を目安に行います。濾過材を洗う時は飼育水で優しくすすぐようにして汚れを落とします。
6,ヤマメがかかりやすい病気と治療方法について
ヤマメは繊細な魚故に飼育環境がくずれていると病気になりやすい傾向があります。
また、野生採集個体は寄生虫がいる事もあるため見つけ次第駆虫する必要もあります。
他にも養殖場で発生する病気もあり、その治療に使う薬が入手しづらい事も少なくないためヤマメは「病気を出さないように飼育管理をする事」が基本となる魚種です。
①水カビ病(綿かぶり病)
その名の通り、病魚から綿状の水カビが生える症状が特徴的な病気です。
水カビの菌糸が筋肉組織にまで入り込む事も多く、放っておくと生きたまま分解されてしまう恐ろしい病気です。
原因は餌の与えすぎや食べ残しを放置していたり、水槽内の生物濾過が上手く機能していないなどがあります。
特にヤマメのような冷水飼育の場合は水温が低いため濾過バクテリアの機能も鈍く、水カビが発生しやすい傾向があります。
治療方法ですが、アグテンやマラカイトグリーン、メチレンブルー、グリーンF系の魚病薬を使った薬浴を行います。
この時治療用の飼育水を塩分濃度0.3〜0.5%の塩水にする事で治療中の個体の浸透圧調整を促進させ体力の回復を助ける事ができます。
また、薬浴をする前に水カビのフサフサと生えた部分を患部を傷付けないようにハサミなどで切除したり、ヒレ先にちょっと生えている場合はピンセットで除去してから薬浴治療に移行すると薬の効きが良くなるのか水カビの消滅も早くなります。
治療中は3〜5日に一度半分の量の水換えをして新たに投薬します。
②エロモナス症
冷水でも熱帯でも関係なく出てきちゃう厄介な病気。それがエロモナス症です。
この病気は症状によって呼び名が変わり、ウロコが逆立つ「松かさ病」、目が飛び出す「ポップアイ」、体表や筋肉組織に穴が開く「穴あき病」があります。
この病気の原因となるエロモナス菌は常在菌の仲間であるため飼育環境が悪くなりバランスが崩壊すると発生しやくすなるので注意しましょう。
原因は病気の魚を導入してしまった事や水質の悪化・急変、古い餌を食べてしまった事などが挙げられます。
治療は観パラD、パラザンD、グリーンFゴールド、エルバージュなどの魚病薬を使った薬浴を行います。
エルバージュは特に効果があるとされており、水で少し溶いたものを筆や清潔な指で患部に塗る方法も治療方法として使う事ができます。
治療中は3〜5日に一度半分の量の水換えを行い、新たに投薬します。
③尾腐れ病
「カラムナリス症」と呼ばれており、尾腐れ病や口腐れ病、エラ腐れ病など症状が現れた部位によって名前が変わります。
初期症状は体の一部に白〜黄色っぽい付着物が現れ、充血も見られるようになります。症状が進行すると患部が爛れたようになっていき、ヒレは不自然にボロボロになってしまいます。
特に頭部で発生した場合は非常に危険で、見つけ次第すぐに治療する必要があります。
原因は水温の急変や水質の悪化、外傷からの感染などが挙げられます。
治療は2通りあり、その内の1つは塩水浴です。
これはヤマメの耐塩性とカラムナリス菌の塩分に弱いという特徴を利用した治療方法でもあります。
10Lに対し50gの塩を混ぜた塩水を治療に使いますが、個人的には普通の食塩よりはマグネシウムなどのミネラルが豊富な粗塩の方がオススメです。
塩水浴の場合は5〜7日に一度半分の量の水換えを行います。塩水浴はカラムナリス症の初期症状の時に使えますが、進行している場合は完治はかなり厳しいです。
2つ目は薬浴です。
魚病薬は観パラD、パラザンD、グリーンFゴールド、グリーンFなどを使います。
薬浴の場合も5〜7日に一度半分の量の水換えをしてから新たに投薬して様子を見ます。
④ウオジラミ症
「チョウ症」とも呼ばれる寄生虫症の一種です。
半透明な円盤状の体を持つ「ウオジラミ(チョウ)」という寄生虫が体表などに寄生した状態であり、吸血されるため痒みに襲われたり貧血になったりとかなりのストレスがかかってしまいます。
また、この病気になると寄生虫を落とそうと底砂や岩に体を擦り付けてしまい、それでできた傷口が新たな病気の原因となってしまうため非常にタチが悪いです。
主な原因は寄生された魚を水槽に導入してしまった事が挙げられます。特にヤマメは野生採集個体の場合は寄生されている可能性があるので十分に注意しましょう。
治療方法は駆虫薬を使った薬浴です。
リフィッシュやトロピカルNという薬品を使います。リフィッシュは非常に強力な分薄めるのが大変なためトロピカルNの方が使いやすい印象があります。
駆虫薬を使うと酸欠になりやすいためエアレーションをしっかりと施しましょう。
治療を始めてしばらくするとウオジラミが病魚の体から剥がれ落ち、底に溜まっていきます。
⑤吸虫病
「ダクチロギルス症」「ギロダクチルス症」とも呼ばれる寄生虫症の一種です。
「吸虫」という寄生虫がエラに寄生する事で起きる病気で日淡では見かけやすい病気でもあります。
エラに寄生されるため、病魚は酸欠状態に陥り動きが鈍くなったりエラブタの動きが早くなったりします。
また、寄生虫を落とそうと体を底砂や岩に擦り付けるため外傷ができる事もあり、この傷口が感染症の原因になる事もあります。
この吸虫病が進行するとエラブタが膨れて閉まらなくなり、大量の寄生虫によって窒息死してしまうのです。
原因は寄生された魚を水槽に導入してしまった事が挙げられますが、吸虫病は所見で見抜くのは難しく、野生採集個体だけでなくペットショップで迎えた個体が持っている事もあるのでエラはよく観察するようにしましょう。
治療には駆虫薬を使った薬浴を行います。駆虫薬はウオジラミ症の治療と同じで、リフィッシュやトロピカルNを使います。
治療中は酸欠症状を和らげるためにしっかりエアレーションをし、病魚が弱っている場合はエアストーンの上に頭部(特にエラ)がくるように位置を調節しましょう。
治療期間は念のため3日ほど薬浴を続け、寄生虫が落ちきるのを確認したら水を換え、体力回復のために養生させます。
7,ヤマメを取り巻く問題について
釣り人やアクアリスト、グルメも虜にするヤマメですが、意外な問題があるようです。
それは「放流」で、養殖場で繁殖させた個体を河川に放流しているのですが、これが自然界で問題になっています。
本来は個体数の維持などの理由があって行われている行為である放流もやり方が良くないと悪い結果が待っています。
その1つが「交雑」です。自然界での彼らは「棲み分け」をしているため、基本的にはあまり交雑は進まないそうです。
しかし、イワナの棲み家やアマゴの棲み家にヤマメを放流してしまったため交雑が起きてしまい、近年では「カワサバ」という交雑種が見られるようになりました。
このカワサバも見た目が燻し銀のかっこよさがあるため人気があるとされていますが、本来であれば、そこまでたくさん見つかってはいけない存在なのです。
また、養殖された個体を放流すると元々その河川にいたヤマメ達とは違う存在なので「遺伝子汚染」という形になってしまい地域固有の純血のヤマメはかなり少なくなってしまったと考えられています。
2つ目は「病気」です。これはヤマメに限らず有名なところでは「アユ」が知られています。
これらの人気が高く重要な水産資源は養殖されて日本各地で放流されるのですが、その際に養殖場で発生した病気を持ち込んでしまう事があります。
一時期は「冷水病」という病気を持ち込んでしまい、放流した先の河川の魚達が大量死した事もあったようです。
しかも冷水病の治療方法は見つかっておらず、ワクチンを摂取させた個体を放流する案もありますが、そのワクチンすら未完成なため自然終息は不可能という意見まであります。
資源を守るのも大事だけど自然の形も出来る限り崩してはならない。
まとめ
今回は渓流の女王・ヤマメの特徴や飼育方法などについて皆様にご紹介させていただきました。
ヤマメは日淡の中でもかなり美しい種類であり、神経質な性質と鋭い姿勢、纏う体色はまさに女王の気品に溢れています。
また、泳いでいる姿は力強く、流線型の体が無駄なくしなる様子などは、まるでトライアスロンの選手のようなカッコ良さを持ち見る物を虜にする凄味を感じます。
そんな女王様は飼育に一癖二癖ありますが、飼育環境を整える事さえできれば飼育も夢ではありません。
しかも30cmで大型熱帯魚にも負けない美しさとカッコ良さ、ワイルドさを兼ね備えながら爽やかさまで見せつけてくるという他の追随を許さない迫力と貫禄は日本淡水魚ならではの特徴です。
この圧倒的日本の美を是非ご自宅に迎え入れてみてはいかがでしょうか。