はじめに
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透明感のある熱帯魚と聞いて皆様はどんな種類を思い浮かべますか?
グラスゴビーやブラッドフィングラステトラ、以前紹介したペルーグラステトラも透明感のある熱帯魚の一種です。体の中まで透けて見える透明感はまるで繊細なガラス工芸品のような美しさがあります。
今回ご紹介するのはアジアクリスタルキャットという東南アジア原産の小型ナマズの仲間です。「クリスタル」の名前の通り透明感のある体を持っていますが、同じく透明な体を持つナマズの仲間、トランスルーセントグラスキャットとはまた違った表現をしています。
クリクリとした目やヒゲを使って気になる物に触れる仕草や独特の泳ぎ方から水槽のマスコット的な存在としてジワジワと注目を集めています。そんなゆるキャラ系小型ナマズの特徴や飼育方法、豆知識等を紹介していきたいと思います。
気になった方は是非この記事を参考にして飼育してみてください。
アジアクリスタルキャットについて
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生息地は?
マレーシアやタイ、インドネシア、ボルネオの流れの緩やかな河川に群れを作って生息していると言われています。
何を食べているの?
自然下では8本ものヒゲを使って川底に潜むイトミミズ等の底生生物や小型の水生昆虫、ミジンコのような細かい甲殻類等を食べています。
飼育下でも動物質の餌が好物なので冷凍アカムシやイトミミズ等を与えると食い付きがとても良いです。人工飼料も食べるようになりますが、慣れるまでに時間がかかるのでそれまでは冷凍飼料をメインに与えるようにしましょう。
他の流通名は?
アジアクリスタルキャット以外にはアジアグラスキャット、ドワーフフライングキャット、ドワーフイエローキャット等の呼び名があります。
この名前のどれもがこのナマズの特徴を良く表現しています。
大体のお値段は?
常に熱帯魚ショップにいるような種類ではありませんが、1匹あたりの値段は約400〜700円前後です。わりとリーズナブルな値段なので、入荷さえしていれば手に入れやすい種類です。
群れを作る性質があるので、ある程度まとまった数を購入すると1匹で飼うよりも落ち着くのが早くなり、群泳や群れで餌を食べる様子を見る事ができます。
その特徴は?
大きさは約4cm程の小型のナマズで、ウロコは無く体表はヌルヌルした粘液が保護しています。
ナマズらしからぬシャープな顔つきをしており、クリクリとした大きな目が印象的です。
動物質の餌が好物ですが、口を大きく開く事ができないため、魚の稚魚や稚エビのようなサイズでなければ食べられる事はありません。
透明感のある流線型の体をしており、その体色は爽やかなレモン色で「クリスタル(水晶)」というよりは、まるで宝石の「シトリン(黄水晶)」のようです。各ヒレの付け根には黒いスポット模様があり、鼻先から尾ビレの付け根まで体側の真ん中を1本の黒いラインが入っています。頭部にも短い黒いラインが入っていますが、こちらも鼻先を起点に2本のラインが後頭部まで入ります。
背ビレ、胸ビレの棘条はかなりしっかりしていて鋭いため、網を多用するとすぐに毛羽立ってしまいます。
ナマズの仲間の中でも泳ぎが得意な種類で、腹ビレをバラバラに動かしたり、尻ビレを波立たせるように動かす事で泳ぐ向きや高さ、位置等を微調整しながら泳ぎます。
体は透明なのでエラや内臓が透けて見え、餌を食べたかすぐに分かります。また、メス個体だとお腹に明るい黄緑色の卵を持つようになるため雌雄判別もしやすいです。
実は日本にもいる○○の仲間!
アジアクリスタルキャットはナマズの仲間ですが、私達が普段見慣れたナマズとはかけ離れた見た目をしています。
しかし、そこは圧倒的種類数を誇るナマズの仲間です。実は日本にも良く似た種類が生息しています。
それは「ギギ」「ギバチ」という種類です。
この仲間は基本的に8本のヒゲがあり、胸ビレの棘条を動かし、棘条の付け根を丈夫な関節に擦りつける事で「ギーギー」あるいは「ギギギ…」といった音を出す事ができます。この特徴は骨板を持つドラス科、特にトーキングキャット系にも見受けられます。
アジアクリスタルキャットも体は小さいですが立派なギギ科のナマズで、水槽から飛び出してしまったり網で掬われたりすると、小さいながらも「ギーギー」と音を出します。
若干のカラーバリエーション
調子が良いと体色の発色が良くなり、透明感も増す本種ですが、中には黒いラインが薄かったり背面に薄墨色が出ている個体もいたりします。
ちょっとした変化ではありますが、実際に見てみると個性が際立ちます。
透明魚の宿命!分かりやすいけれど…
調子が良ければ美しい透明な体を見られますが、体調が良くないと体が白濁してしまい、その透明感が失われてしまいます。特に本種は水合わせに失敗するとすぐに体が白濁してしまいます。
うっすらと濁っている程度であれば数日で透明感を取り戻す個体もいますが、中にはさらに白濁してしまう個体もいるので注意が必要です。
混泳は大丈夫?
アジアクリスタルキャットはとても大人しい性質なので、いじめてくるような気が強い種類でなければ混泳が可能です。ですが、ルビーラスボラのような極小サイズの熱帯魚は食べられる可能性があるので注意が必要です。
昼行性?夜行性?
アジアクリスタルキャットは夜行性の種類ですが、飼育環境に慣れれば明るい時間帯でも低層を泳ぎ回ります。
ライト消灯後は普段は低層を泳ぐ彼らも羽を伸ばして中層〜上層まで泳ぎ回るようになります。飼育環境に慣れてない間は水槽の隅っこや水草の陰の中に隠れている事が多いです。
ふわふわ留まってスーっと泳ぐ?
アジアクリスタルキャットの泳ぎ方は独特で、ホバリングをしたり、飛ぶようにスーっと泳いだりします。基本的な泳ぎ方は体を僅かに左右にくねらせるようにして泳いでいますが、ホバリングをする時は腹ビレ左右に動かし、尻ビレを波立たせるように動かして位置を保っています。
スイスイ泳ぐ時は全身と尾ビレを使い、腹ビレと尻ビレをあまり動かしません。また、スピードを出す時は背ビレと胸ビレの棘条を少したたみ、水の抵抗を受けにくい体勢を取ります。
流通名の1つ、ドワーフフライングキャットの「フライング」はこの水中を泳いでいる様子を「飛んでいる」事に見立てているそうです。
アジアクリスタルキャットの生態や特徴の紹介のお次は飼育方法について紹介していきたいと思います。
アジアクリスタルキャットの飼育方法について
画像引用元:チャームpaypayモール店様
水槽、水質、水温について
群れを作る4cm程の小型ナマズなので、30〜45cm水槽なら3〜6匹程を飼育する事ができます。
より大きな群れが見たい方は、60cm水槽で飼育で10〜20匹を飼育すると群れで戯れあいながら泳ぐ姿を楽しめます。
水質は弱酸性〜中性を好んでいます。
水温は24〜26℃が適温です。水温の急変や高水温に弱い面があるのでヒーターを使って水温を一定に保ちましょう。
水温が気になる場合は水温計をガラス面の見やすい所に設置すると水温が分かりやすいです。
フタについて
アジアクリスタルキャットは低層を主な生活圏にしていますが、暗くなると上層の方もふわふわと探検に出かけます。
何かの拍子に驚くと水槽から飛び出す可能性があるので水槽には必ずフタをするようにしましょう。
フィルターについて
本種は特に不向きなフィルターがないので、水槽のサイズや匹数に合わせてフィルターを選びましょう。
小型水槽であれば、投げ込み式、スポンジ、パワー、外掛け式、底面式フィルターがオススメです。
60cm以上の場合は上部式フィルターや外部式フィルターを使用しますが、ナマズの仲間の中では珍しく水が汚れにくい種類なので、60cm水槽の場合は扱いやすい上部式フィルターがとても便利です。
底床について
観賞魚飼育用の川砂や田砂、ソイル等であれば問題なく使用する事ができます。ポピュラーな底床である大磯砂はセットしてからしばらくは中性〜弱アルカリに傾くため、水質テスターで確認し、安定するまでは本種の導入は控えるようにしましょう。
導入について
アジアクリスタルキャットは最初の導入が肝心です。
水質や水温の変化に敏感なため、時間をかけて水合わせを行います。
この時、水槽の水質や水温が適切でないと体が白濁してきたり、体が痙攣を起こして硬直してしまいます。特に硬直して歪んだ体は元に戻る事はなく、そのまま拒食して弱っていく事があるため絶対にそうならないように水槽内の水質、水温を適切に管理して水合わせを行う必要があります。
また、アジアクリスタルキャットは網等による擦り傷に弱いだけでなく、鋭い棘条があるので極力網は使わずにコップ等で掬うようにしましょう。
給餌について
彼らは動物質の餌が好物なので、餌には冷凍のアカムシやイトミミズを与えます。慣れれば人工飼料も食べるようになりますが時間がかかるので少しずつ慣れさせるようにしましょう。
餌は1日1〜2回、3分程で食べきれる量を与えますが、胃袋までスケスケなのでどのくらいの量を食べたか一目瞭然です。
お腹がパンパンであれば、給餌の感覚を1日あけてお腹の様子を見て、減っているようであれば与えるようにします。
Q:なるべく人工飼料に餌付かせたい!
「冷凍飼料も良いけれど、栄養バランスの良い人工飼料を食べてほしい!」
と思う方もいらっしゃると思いますので、私流の人工飼料の慣らせ方も紹介します。
その前に、まず理解していただきたい事があります。彼らにとって人工飼料はまさに未知との遭遇です。形も味も食感も、彼らが知っている物ではありません。
なので無理強いはせず、ゆっくりと餌である事を教えるようにします。
ちなみに私は沈下性の顆粒タイプの人工飼料を使います。
餌は基本的にアカムシ等の冷凍飼料ですが、こちらは好物なのですぐに食べてくれます。与える人工飼料は解凍したアカムシ等にほんの少量混ぜてスポイトで与えます。すると、普段食べている物の匂いが人工飼料に移り、気になった個体がアカムシ等と一緒に人工飼料を口にするようになります。
人工飼料を口にすると「あもあも」と口を動かして食感を確認したり、飲み込んで危険な物じゃないかを確認するために吐き出したりします。
初日ですぐ食べるようになる個体は稀なので、これを給餌の度に繰り返します。しばらくすると味や食感に慣れた個体が少しずつではありますが冷凍飼料と一緒に食べるようになります。
このタイミングで冷凍飼料に混ぜる人工飼料の量をちょっとずつ増やして与え、様子を見ます。問題なく食べるようであれば、少しずつ冷凍飼料と人工飼料の比率を置き換えていきます。これで人工飼料に餌付かせる事ができます。
ポイントは彼らを「時間をかけて、無理強いさせない事」です。
例えば野菜嫌いのお子さんに野菜をすぐに無理矢理食べさせようとしてもなかなか食べないでしょうし、むしろ泣いたり食事を拒否される事もあるでしょう。でも、大好きなグラタンやポタージュの中に細かく刻んだ物やペースト状にした野菜を入れるとわりとすんなり食べてくれたりもします。
彼らも似たようなところがあるので、気長にやるのが一番です。
乾燥飼料の注意点について
乾燥アカムシやイトミミズも動物質なので人工飼料よりは反応が良かったりしますが、このタイプの餌を与える場合は少し注意が必要です。
乾燥飼料はビタミン等を添加して栄養価を高めていますが、乾燥しているので空気をたくさん含んでいます。アジアクリスタルキャットは乾燥飼料を食べても空気を吐き出すのが苦手で、場合によっては餌よりも含まれていた空気で胃が圧迫されてあまり食べれていなかったり、その空気の浮力に負けて体が浮いてしまう個体が出たりします。
そのため乾燥飼料を使う場合は事前に飼育水に浸して柔らかくなった物を与えるようにしましょう。若干の栄養は流れ出てしまいますが、空気に邪魔されて体内に吸収されないよりは幾分かマシです。
柔らかくなった事で彼らも咀嚼がしやすくなり、より空気が体内に入らないようになります。もし乾燥飼料を与える時は是非参考にしていただければ幸いです。
隠れ家について
泳ぎが得意であっても、彼らもやっぱりナマズの仲間です。隠れる場所があると隠れたい個体が中に隠れて落ち着きやすくなります。流木や石を使って隠れ家を作ってあげましょう。
水草について
水草の鮮やかな緑色や赤色はアジアクリスタルキャットの透明感のあるレモン色の体と良く合います。水草にイタズラをする事もないため、コリドラスを除いて数少ない水草水槽にもオススメの小型ナマズとされている程です。
東南アジア原産の熱帯魚なので、クリプトコリネやハイグロフィラ、ウォーターウィステリア等の東南アジア産の水草をオススメしたいところですが、原産国無視で相性が良いのでご自分のお好きな水草を植えてレイアウトしましょう。
やはりナマズの仲間なので…
ライトが点灯している間は光合成をしてくれる水草ですが、消灯して暗くなると動物と同じように呼吸をします。すると水槽内の二酸化炭素濃度が上がってしまい、中の魚達が酸欠状態になってしまう事があります。
やはり彼らも例に漏れず酸欠に弱いため、消灯時は必ずエアレーションをするようにしましょう。
混泳について
アジアクリスタルキャットはとても大人しい性質なので、スマトラやエンゼルフィッシュのような気が強い魚や魚食性の魚、さらには極小の魚でなければ混泳する事ができます。
テトラ系のカラシンの仲間やグラミーの仲間、ダニオやラスボラの仲間とも混泳が可能で、性質が穏やかなタティア系のナマズの仲間やコリドラスとも一緒に飼育できます。
ここでの注意点は、本当に大人しいので逆にイタズラされないか日頃から観察する事と、餌の時にどうしても先手を取られてしまうので、他のタンクメイトが寝静まる消灯後に餌を与えるようにしましょう。
水換え、掃除について
水槽のサイズや匹数、汚れ具合にもよりますが1〜2週間に1度、1/3〜1/2の量の水換えをします。足し水は必ずカルキ抜きをしてから使います。
底砂の中には汚れが溜まりやすいのでしっかりと水ごと汚れを取り除きます。
レイアウトに使った石や土管等を洗う場合は一旦水槽から取り出してからタワシや歯ブラシ等で汚れを擦り落とします。
水温計も水槽から取り出してから水に濡らした柔らかい布等で汚れを落とします。
ガラス面に付いたヌメリや茶ゴケ等の汚れはスポンジで擦り落とします。
フィルターの掃除については使っている種類によって違いますが、共通の物としてパイプやストレーナーは汚れが溜まりやすいので専用のブラシを使って汚れを落とします。
投げ込み式、パワー、外掛け式フィルターの場合はフィルターの濾過材が一体化したタイプの物が多いため、水槽内の飼育水を少し取り出してその水で洗い、目詰まりの原因となる汚れを洗い流します。繊維の傷みや汚れが酷い場合は新しい物と交換します。
底面式フィルターの場合は底床の砂や砂利が濾過材の役割を果たすため、水抜き作業の時にしっかりと底床の汚れを取り除くようにします。数ヵ月に1度、底面式フィルター自体を取り出し、中の方も洗うようにしましょう。
スポンジフィルターの場合は、汚れをキャッチしているスポンジ部分をしっかりもみ洗いして汚れを落とします。スポンジがボロボロに傷んできたら新しい物と交換します。
上部式フィルターと外部式フィルターは水換えの時に物理濾過材であるウールマットを洗い、目詰まりの原因となる汚れを洗い流します。よく水気を切ってからフィルターに戻します。繊維の傷みや汚れが酷くなってきたら新しい物と交換します。
生物濾過材や科学濾過材は2週間〜1ヶ月に1度、あらかじめ取っておいた飼育水で洗います。汚れが落ちたらフィルターに戻します。
水草の手入れ(トリミング)について
水草も生き物なので枯れてしまったり増えたり成長したりします。そんな水草を切ったり間引いたりして手入れをしましょう。
枯れたりヒゲ状のコケ等が目立つ場合はその葉を切ります。子株を増やしていくタイプは子株と親株を繋ぐ部分を切り離して間引きます。また、アマゾンチドメグサのように茎と葉の間から根っこがたくさん伸びてくるタイプの水草は、高さがあまりないようであれば伸びている根っこを切り取ります。
手入れの後は目の細かい網で魚を掬わないようにしながら細かい葉や根っこ等を取り除きます。
アジアクリスタルキャットがかかりやすい病気と治療方法について
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白点病
水質の悪化や水温の急変、病気の魚を水槽内に持ち込んでしまった事が原因で起きる病気です。体に小さな白点がポツポツと出始め、放置すると全身に広がってエラ等を塞いでしまい死に至ります。
本種は飼育環境に慣れない内はこの病気に特にかかりやすく、かかると体の白点を落とそうと頻繁に底砂やレイアウトの石等に体を擦り付けてしまい、体表の粘液が剥がれて擦り傷を負ってしまう事があります。
また、ナマズの仲間は総じて薬品に弱く治療のための薬浴にも厳重な注意が必要なので、日頃から彼らの体調や飼育環境に気を付けるようにしましょう。
治療についてですが、本種は弱アルカリ性の水質に弱いため塩水浴による治療ができません。また、薬品にも弱いので規定量の1/5〜1/2の量を様子を見ながら投薬し、薬浴を行います。魚病薬はメチレンブルーやマラカイトグリーン、グリーンF系の薬品を使います。
本種を含め、ナマズの仲間は規定量より少ない量で薬浴しても肌荒れを起こしてしまう事があるので、その場合は感染症を予防するためにアグテンやグリーンFゴールド等の感染症に効果のある魚病薬を併用し、病魚の様子を見ながら白点が無くなるまで治療を続けましょう。
水カビ病
水質の悪化や水槽内の生物濾過が上手く機能せず、水カビが生えやすい環境で発生しやすい病気です。水温が低いと水カビが発生しやすくなるとも言われています。
発生した水カビに長時間触れ続けたり、ちぎれた微細な水カビが体表に付着し、そこから水カビが繁殖してしまいます。病状が進行するとまるで綿をかぶったような見た目になってしまう事から「綿かぶり病」の別名があります。
治療方法は、まず病魚を隔離し、体に付着した水カビの除去を行ってから魚病薬を使った薬浴を行います。生えている水カビが糸屑程度の僅かな量であれば、ピンセット等で除去してから薬浴を行います。
生えている範囲が広い場合は患部を傷付けないようにハサミで水カビのフサフサ部分を切除してから薬浴を行います。切除に自信がない場合はそのまま薬浴に移ります。
魚病薬はアグテンやグリーンF系の薬品、メチレンブルーを規定量の1/5〜1/2の量を病魚の様子を見ながらゆっくりと投薬し薬浴を行います。
水カビに侵食された患部は白く濁り、脆くなっています。また、水カビのフサフサ部分がなくなっても菌糸が患部に残っているため、患部の組織が再生して元の体色に戻るまで治療を続けます。
エロモナス症
水質の悪化や古い餌、鮮度の低い餌を食べてしまった事等が原因で起きる病気です。感染力が強いだけでなく、死亡率が高くて治療も難しいという非常に厄介な病気です。
発症すると魚体の至るところに充血が見られ、肌荒れを起こしたりします。食欲もかなり落ち、泳ぎ方もフラフラとして水流にも負けて流されてしまう程弱ってしまいます。
治療にはエルバージュや観パラD、パラザンD等の魚病薬を使った薬浴を行います。規定量の1/5〜1/2の量を病魚の様子を見ながら投薬します。
エロモナス症は治療にかなりの時間がかかり、病気にかかった個体も長期の治療に耐えられない事が多いため、水槽内の環境を良好に保ち、発生させないように努めましょう。
拒食症
水質や水温の違いによるショックを受けたり、ストレスを受け続けると餌を食べなくなって拒食症になってしまいます。
アジアクリスタルキャットはナマズの仲間の中でも比較的よく泳ぐ種類のため、拒食によって餌からの栄養を得られないとすぐに痩せてヒョロヒョロになってしまいます。
原因がショックによるものでない場合は、水槽の環境がその個体にとってストレスが溜まる状態になっているため、改善する必要があります。混泳の場合はタンクメイトにいじめられていないか、群泳の場合は餌を奪われ続けてないか等を確認しましょう。また、本種を含めナマズの仲間は振動にもデリケートなため、水槽の近くで走り回ったり乱暴に物を置いたりするとビックリしてストレスを溜めてしまいます。
餌を食べなくなって2〜3日経っても食欲がない場合は、その個体を隔離し、薄暗い環境にして療養させます。餌も人工飼料ではなく、栄養価の高いアカムシやイトミミズを与えます。特にイトミミズは脂肪分が多いので水を汚しやすい面がありますが、その分失った体力の回復に向いています。
痩せ具合にもよりますが、早期発見で治療ができれば決して治せない病気ではありません。
アジアクリスタルキャットの飼育方法と病気と治療方法についてのお次は繁殖について紹介していきたいと思います。
アジアクリスタルキャットの繁殖について
本種の繁殖は全く聞いた事がありませんが、状態良く飼育された個体は卵を持ってくれます。そして人知れず産卵しているのか、しばらくするとお腹の卵がなくなっています。しかし稚魚はなかなか確認できない…何ともやりきれない思いです。
「卵を持ち、産卵までしてくれているのだから繁殖を成功させたい!」と思う方のために、繁殖のヒントになりそうな事を紹介したいと思います。
ヒント1.ギギの仲間である事
アジアクリスタルキャットはギギの仲間です。ギギやギバチの繁殖は現在でも謎が多いのですが、川底に産卵するとオスがその卵が孵化し、稚魚になって泳げるようになるまで守ると言われています。
ギバチと違い遊泳力のある本種がそのような行動を取るかは不明ですが、無くはない話だと思います。
ヒント2.ナマズの仲間である事
ギギという「ナマズ」の仲間なので、ナマズの生態を顧みるのも良い結果に繋がるかもしれません。
ナマズはオスがメスの体に巻き付くような繁殖行動を取り、川底や水草の根元等にばらまくように産卵すると言われています。中には水位の低い田植え直後の田んぼに入り込んで繁殖行動を取る事もあるそうです。
産卵後は卵を守る事はなく、卵は1週間程で孵化し、稚魚はヨークサックを吸収してすぐに餌を求めて散らばっていき、時折共食いをしながら成長していくそうです。
産卵行動が同じかは分かりませんが、個人的には1番可能性が高そうな産卵行動だと思います。
ヒント3.生息地の環境を模倣してみる
本種の生まれ故郷である東南アジアの河川は川底が細かい砂地や泥であるため水も濁っている事が多いようです。透明感のあるレモン色の体色もそういった環境であれば濁った水の中に見事に溶け込めるでしょう。
上手く隠れられている事は安心感を彼らに与えてくれます。産卵も生息地を模した環境であればしやすいでしょうし、卵も育ちやすいと思います。
そもそも何故卵が見つからないのか?
本種は体が透明なので卵を持てばその様子を観察する事ができます。
薄黄緑色のキレイな色をしていますが、大きさ自体は非常に小さいため飼育下で産卵しても底砂に混じって分からなくなったり、フィルターに吸い込まれたり、あるいは群れの仲間やタンクメイトに食べられている可能性がかなり高いと個人的に思っています。
そのため、前述したヒントにプラスしてこのような対処も効果があると思います。
対処1.ペアを隔離する
生息地を模した環境の産卵用隔離スペースを用意してそちらにペアを移してしまうのもアリだと思います。食害を押さえる事ができますし、お腹の卵がなくなったらすぐにペアを元の水槽に戻せば、後はゆっくり卵を探せます。
対処2.ベアタンク+網目の板
ベアタンクとは底砂を敷かず、必要最低限の物しかない非常にシンプルな飼育方法の事です。
このベアタンク水槽の底から約1〜2cm程の高さの所に網目の板を張りって底を区切ります。グッピーの産卵箱に近い原理です。そうする事によって卵が網目を通って親魚の口が届かない底に落ちるので食べられる可能性を減らせます。また、底砂がないので産卵後の卵の発見がしやすくなります。
稚魚が生まれたら?
卵の大きさから鑑みるに生まれてくる稚魚も相当小さい事が分かります。おそらく微生物クラスの物しか食べられないかも知れません。繁殖の際には極小稚魚の飼育に欠かせないPSBがあると心強いかも知れません。
また、通販では実際に稚魚の餌として微生物を販売している事があるので購入しておくと良いでしょう。
種類が違うだけで繁殖方法も大きく変わりますが、それが分からなくても、生息地の環境に近付けたり近い仲間について調べれば可能性は見えてきます。
彼らは育った水槽で卵を持ち、産卵しているのですから環境や体は繁殖が可能であるという事です。そこに繁殖を成功させるための手法を加え、観察し、お世話をする事で飼育下での「繁殖方法」が出来上がるのです。
動物園や水族館で繁殖させてない種類が一般家庭やペットショップで繁殖したという話は意外と聞くものです。アジアクリスタルキャットの繁殖の第一人者になってみたい方は是非、この記事を参考にしながら挑戦してみてください。
繁殖方法の考察のお次はアジアクリスタルキャットに近いギギの仲間について紹介していきたいと思います。
熱帯性小型ギギの仲間達!
チャンドラマラキャット
別名「ゴールデンホバリングキャット」とも呼ばれている、約5cm程の大きさのギギの仲間です。
生息地はインド、バングラデシュと言われています。
アジアクリスタルキャットのようなシャープな体型というよりは少しガッシリした感じで、コロコロっとした印象があります。体側に黒いラインが1本入り、背中側に細かく不明瞭な灰色の模様があります。調子が良いと体全体が淡い黄金色に染まります。
ショップで見かける事は殆どありませんが、通販だと見つけやすいです。性質は温和で小型種との混泳もできます。
バタシオキャット
「バター+塩=バタ塩」みたいな風に聞こえますが、そんな美味しそうなものではなく、学名から来ています。
暗めの体色に体側の黒いラインがシンプルにカッコいい「ワンライン・バタシオキャット」と黄色みがかった明るく透明感のある体色に頭部と肩口の褐色の模様、尾筒手前の黒いワンスポットが特徴的な「ワンスポット・バタシオキャット」が日本に輸入される事があります。
体型は日本のギギ等に近い見た目をしていますが、どちらも8〜10cm程の大きさで温和というより若干臆病な性質です。
ショップでも通販でも殆ど目にする事のない激レアナマズではありますが、どちらも独特な魅力を持った種類です。
レイオカシスの仲間
日本のギギによく似た見た目をしています。大きさも似ていて大体10〜20cm程の大きさです。「レイオカシス・シアメンシス」という茶褐色の体色に不明瞭な黄褐色の帯のような模様が特徴の種類は少々気が強いです。
他の仲間は縄張り意識がありますが、隠れ家を多くレイアウトする事で多少の小競り合いはあるものの比較的穏やかに飼育が可能です。
ショップで常に見られる種類ではありませんが、ごく稀に「レイオカシス sp」という名前で売られている事があります。
ゆる〜く可愛く!アジアクリスタルキャットのチャームポイントについて
1. 気になったら調べちゃう
本種以外にもナマズの仲間はヒゲで餌や周囲の物を探る事は有名ですが、アジアクリスタルキャットはとても好奇心が強いタイプの種類だと個人的に思っています。
その理由がヒゲで何でも触って調べる事です。普通ナマズは持ってるヒゲの内の数本ぐらいしか使わない事が多いですが、アジアクリスタルキャットはちょっとでも興味が出た物は触れなきゃ気がすまない一面があります。
昔レイアウトとして水槽内にビー玉を幾つか入れた事がありましたが、そのビー玉が気になってしまい、餌の時間になるまでずっとヒゲでビー玉を触り続けていました。しかもヒゲを8本全て使って触っていました。さらにはタンクメイトの1匹であるレモラキャットに集団で触りに行くという、まるでアイドルの握手会のような行動もありました。
8本のヒゲを全て顔の前に真っ直ぐ伸ばして、気になる部分にそっと触れます。お腹がいっぱいの時でもこの行動はよく見られ、慣れた個体だと水槽のガラス面に押し付けた指にすらヒゲを伸ばす事があります。ヒゲをぴこぴこ動かして探求心の赴くまま、一生懸命知ろうとする仕草がとても可愛いです。
2. 食い意地が張っている
ナマズの仲間にあるあるな話ですが、本種もやっぱり食い意地が張っています。
ある日、好物のアカムシを与えると、その中にあからさまに太いアカムシがいました。飲み込めるか不安になりながら様子を見ていると、早速1匹がビックサイズのアカムシを咥え、モグモグし始めました。
しかしなかなか飲み込めずにいると、もう一方を別の個体が咥えて奪い合いになりました。しかしどちらも「口を離したら盗られる」と思っているのか、端を咥えたままお互いにクルクル回り始めたのです。
他にもアカムシがあるのに飲み込めるか分からない大物を選ぶあたりがちょっと抜けててクスっと笑えてしまいます。
ちなみに我が家ではこのやり取りを見ていたレオパードタティアがアカムシの真ん中を咥えてそのまま奪っていました。
3. やっぱり平和が1番
本種は本当に大人しく、温和な種類で仲間同士のいざこざは殆どありません。タンクメイトとして入れたタイガーオトシンやアプロケイルスともケンカする事なく、たまにヒゲで触れるくらいでした。
水槽の主、レモラキャットとも良好で、一緒に土管の中に入ったり水草の陰で立ち泳ぎをして遊ぶ様子も見られました。
チョコレートグラミーのタンクメイトとして混泳させた事もありましたが、チョコグラが少しでも嫌がる素振りを見せると追いかけず、ヒゲで触れようとしませんでした。
ヒゲで触れ始めたのはチョコグラが慣れてきて胸ビレのアンテナで先に触れてからだったので、魚の世界にも「気遣い」や「距離感」といった精神があるのかも知れません。常にゆるく平和を貫く姿は可愛らしさだけでなく、見ているだけでも癒されます。
あると楽しいレイアウトアイテムについて
・ジャングルジム
ビーシュリンプ等の隠れ家用に販売されているキューブ型のジャングルジムがありますが、それを幾つか購入してグルーガンやレイアウト用接着剤を使って接着し、大きなジャングルジムを作る事ができます。
好奇心が強い彼らなので、気になった個体から次々とジャングルジムに入っていきます。気に入るとずっと遊んでいるので見てて飽きないです。
・グラスサンド
ガラスやプラスチックが原材料の透明カラーのレイアウトアイテムです。
透明以外にもブルーやレッド、グリーン等のカラーがありのでお好きな色を選んで透明カラー同士のコラボを楽しんでみてください。
まとめ
今回はナマズ界の可愛い系ゆるキャラ、アジアクリスタルキャットについてたっぷりと盛り込んでみました。
飼育環境に慣れるまでは病気にかかりやすい節がありますが、一度慣れるとかなり丈夫で相当飼育環境が悪くない限りは病気になりにくくて飼いやすい種類です。また、混泳に関してもかなり気が強い種類でない限りは難なくこなしてくれる超優等生でもあります。
ショップで常に見られる種類ではありませんが、美ししさ、可愛らしさ、性格の良さを兼ね備えた素晴らしい小型ナマズである事に間違いはありません。
方法が確立していませんが、繁殖が可能かも知れないというロマンも、彼らの4cm程しかない小さな体に詰まっています。
色んな可愛い要素が詰まった水中のゆるキャラに興味を持った方は是非、ご自宅に迎え入れて見てはいかがでしょうか?